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2021.8.30 船上のサラリーマン

今月半ばは気温が低く、最高気温が20度なんて日もあったのに、ここ数日は35度前後の夏らしい暑さが戻ってきました。

私たちは今の時期は夜に出港して働きますが、やはり暑いです。
船にはエアコンなんてついていないので汗だくになりますが、少しでも暑さを和らげるには服の選択も大事です。
作業着屋を覗けば今は、冷感・吸汗・速乾の機能をもった服がたくさんありますから、ほとんど皆、それを着ています。

普通の服を着て汗をかくと、重くなった上に肌に張り付き、いつまでもジットリとして不快です。しかし上記の機能性衣料はその不快をだいぶ軽減してくれるのでありがたいです。

暑いのに長袖なのは、素肌だと魚の粘液やクラゲのせいでかぶれたり、網を挙げる時に前腕が擦れて傷だらけになるのが嫌、という理由があります。

しかしこういった機能を持った衣料って、手ごろな価格で手に入るようになったのは割と最近になってからのような気がします。

私が新人で船に入った20年前くらいは、若者は皆、夏はタンクトップで働いていました。
そして、その当時の年季の入ったベテラン漁師達は何を着ていたかというと、多くはワイシャツでした。
こちら、今も現役のワイシャツ装備のベテラン漁師です。

作業着にワイシャツ???
と、初めて見たときは驚きましたが、聞くと、ワイシャツは濡れてもすぐに乾くし、肌触りがサラサラで心地よいのだそうです。
それにブランドものでもなければ安価だし、しかもけっこう丈夫で長持ちするとのことです。一枚が余裕で一年以上もつそうです。
我々の職場では汚れやらホツレなどの見栄えは気にしなくてよいし、通常よりずっと長く使えます。


こちらのベテランはもう70歳で船団の最高齢ですが、若者と遜色なく働いています。
昔から漁師一筋で経験は豊富であり、多くの修羅場も潜り抜けてきた人です。
そんなベテランが選択し続けているという事実が、ワイシャツの有用性の証といえるでしょう。
こうしてみるとワイシャツは良いことづくめですね。

まあ、持ち上げておいてナンですが、自分で使う気にはならないのですが。
いやだって、いくら見栄えを気にしない職場だからって、自分が沖でワイシャツを着てるシーンを想像すると違和感があるんだもの。

しかしワイシャツメーカーの人も、まさか沖で作業着にされているとは思っていないでしょうな。

2021.8.14 ヒラスズキ

スズキが旬を迎え、脂がのってとてもおいしいです。

先ほどキッチンのグリルでスズキのカマを焼いていたら、あまりの脂に火がついて燃え上ってしまいました。

私たちのメインターゲットのスズキですが、網に入ったものを海中から運搬船に上げた後、一尾ずつ手で拾いあげます。
そうして数多くのスズキを拾っていると、ごくまれに、ちょっと普通とは微妙に違うスズキに出会うことがあります。

それがヒラスズキです。
上がヒラスズキ、下がスズキです。
統計データは無いので私の感覚ですが、普通のスズキが数万尾に対してヒラスズキが一尾、といった程度で網に入ります。

ヒラスズキは生態に不明な点があり漁獲も少なく、スーパーなどでは見かけず、世間一般にはあまり知られていない魚だと思います。
しかしその味はスズキを上回るとされ、市場ではスズキの倍以上の値段で取引されています。
見た目はかなり似ていますが、区別するポイントをご紹介します。

①色。
今の時期のスズキは金色っぽくなりますが、ヒラスズキは全体が銀色です。

②体形。
尾っぽに近いほうの背びれ、そこから尾にかけて、スズキはなだらかですがヒラスズキは大きくクビレています。
③シタアゴ。
ヒラスズキにはシタアゴにウロコがあるが、スズキにはありません。
↑ヒラスズキ
↑スズキ
この三つのうち、③が生物学的な違いであり、ここを見るのが確実な見分け方のようです。
しかし捌いた時に包丁でこすってみましたが、普通のウロコのように剥がれるわけではなく、私にはちょっとわかりづらかったです。

さて。
お刺身にしました。
右がヒラスズキ、左がスズキです。
左のスズキはサク取りに失敗して変な形になってしまいました。人前に出すのは恥ずかしい代物ですがご容赦ください。

見たところ、身質に大きな差異は認められないと思います。
食べた感想ですが、どちらもおいしいです。

正直に言いますと私には、味にそれほどの違いは感じられませんでした。

値段が倍以上も違うのにはそれ相応の理由があるわけで、市場ではヒラスズキのほうがおいしいと評価されているのですから、私の感想には「味のわからねえ野郎だな!」と思われる向きもあることでしょう。

まあしかし、私はそう感じたので仕方ありません。
ヒラスズキの旬は晩秋から冬にかけてらしく、旬まっさかりのスズキと比較すべきではないのかもしれません。
魚って、旬とそれ以外の時期では味が大きく違いますものね。

ヒラスズキは今のところ、釣るか高値で買うかしか入手方法がありませんが、近年、養殖が始まっているようで、それが軌道にのれば身近な魚になるかもしれません。

2021.7.30 ハモの歯!!

70cmほどのハモが獲れました。
毎年この時期には数匹単位ですが網に入ります。
普段なら活かして運べばなかなか良い値段がするのですが、現在はコロナ禍であまり売れません。
親方に聞いたら持って帰ってよいと言われたので、ありがたくもらって帰りました。
わたくし、今までハモを食べたことも捌いたことも無く、楽しみでルンルン気分で持って帰りました。
そして捌く前に写真を撮っていたのですが、その時、非常に驚いたことがありました。

今回のタイトルである、ハモの歯。

それを見たときに、思わず、ウヒョッ!?と変な声が出てしまいました。
そのハモの歯とはこちらです。
まあ横からでは、何が変わっているのか多分わからないことでしょう。
では、正面から、上顎(うわあご)に注目してご覧ください。
おわかりでしょうか。

上顎の歯が、口の真ん中に一列に並んでいるのです。
とがった上顎の先端には牙のような歯が左右対称に生えているものの、普通だったら馬蹄型に歯が並んでいるべき場所には何もなく、真ん中に一直線に歯が生えています。

なんですかこれ?

なんでこんなことになっているの?

普通、歯って、上と下でだいたい同じ位置に対応しあって生えてますよね。
図にするとこんな感じで、凹と凹が合わさります。
これで歯で物をかみちぎったり、すりつぶしたりできるわけですよね。

しかるにハモは!
このように、下顎の凹と上顎の凸が嚙み合わさるのです。

う~む。
嚙み合わせは非常によろしい。
隙が無い。

しかし、この歯並び。
なんのメリットがあるのでしょう?

こんな変わった歯並びをした生物を、現生生物では私は他に知りません。
わざわざこんな進化をしてきて、そして生き永らえているのだから何らかのメリットはあるのでしょうが、いったいどんなメリットがあるのか私には想像がつきません。

ハモって、私としては、見た目からしてウナギやアナゴとたいして変わらないと今までは思っていたのですが、しかし実際はこんなに異質な魚でした。
見た目ってアテにならないもんですね。

2021.7.15 あじはあじなり

マアジが少々、網に混じって漁獲されます。
私たちの働く漁場で獲れるものは画像下の小振りのサイズが殆どで、上の大きめのサイズはあまり獲れません。
オカズとしてもらって刺身にしましたが、小さいものは三枚におろした片身がそのまま一口分なのでちょうどよいです。
私はマアジはいつ食べてもおいしいと感じます。
年中いつでも、食べると「うん、うまい!」と思い、旬で脂がのったものは「うおおお!うめえ!!」と思います。
おいしい、もしくは非常においしい、の二択しかなく、今までの人生で、マアジを食べてマズいと思ったことがありません。
魚の味にかんして、以前、季節外れの細いイワシを食べてはっきりとマズイと感じたことはあるし、自分が漁師だからといって採点を甘くしているつもりはありません。
マアジは、季節・場所・調理法を問わず、どこで食べてもおいしいものにしか出会っていません。

 

江戸時代の学者の新井白石が、その著書の「東雅(とうが)」という語源辞典でアジについて、
「アヂとは味なり その味の美をいうなり」と書いており、
「鯵ってのは味が良いからアジと言うんだよ」と聞いたことがある方も多いことでしょう。
アジがおいしいという意見には完全に同意できますが、ここで疑問なのが、なぜアジなのか?ということです。
四方を海に囲まれた日本において、おいしい魚は無数にいるのに、なぜアジが美味の代表に選ばれ、「味」の名を冠されたのか?

例えばマダイ。その姿・色・味の全てにおいて良しとされ、「あやかり鯛」という言葉があるくらい日本の魚界では重用されています。
マダイとマアジ、どちらがおいしいかと問われれば、私は非常に迷います。
また例えば、タイは高級であり庶民には手が届きづらかったとしても、イワシやサバは古来より大衆魚として愛されています。
イワシは平安時代には下魚とされ、貴族階級が口にすべきものではなかったのに、紫式部(or和泉式部)は好物で夫に隠れて食べていたという逸話が残されているほど、昔から味に定評があります。
サバは「鯖街道」なる道が歴史に残るほど人々の生活と切っても切れぬ関係の魚であり、味に関しても言わずもがなです。
「其味の美をいふなりといへり」というのが名の根拠であれば、マダイやマイワシやマサバがマアジと呼ばれてもよかったのでは?

 

新井白石さんの著書にイチャモンをつけてしまいましたが、この東雅という語源辞典に関するブリタニカ国際大百科事典の解説には、「こじつけも多い」なんて書かれています。

 

「味がいいからアジ!」てのはまあ、冗談半分の説と私は思っておきます。
ちなみに白石さん、鰯(いわし)については
「イワシはヨワシなり」と書いています。
なんかこういう例だけみちゃうとこの白石という人、ただの駄洒落かラップ好きのおじさんよね。

2021.6.29 アカクラゲ 毒の痛み

夏が近づき気温の上昇に伴い、アカクラゲの毒の威力も増してきました。


(毒の成分に季節ごとの変化はないと思いますが、夏場はそれを受ける人間の毛穴が開きがちになるため、アカクラゲ毒の痛みを強く感じます)

アカクラゲの毒は、人間に重篤な害は及ぼさないものの、仕事に少なからず支障をきたすほどのダメージは与えてきます。

アカクラゲ毒の痛みですが、系統としては「からさ」に近いと思います。
以前、アカクラゲが目に入った際の痛みを、「ラー油を目に垂らす」と比喩したことがあります。
しかし後になって、タバスコのほうが近いと気づきました。

ラー油は油分のせいで辛さがいくらかマイルドになるのに対し、タバスコの辛さはソリッドであり、そのヒリヒリ・ピリピリ感がアカクラゲが付着した感覚に近いです。

先日、自分の頬にラー油とタバスコを塗り付けて試してみたところ、そのように思った次第であります。
さすがに目に点す度胸はありませんでした。
まあ、殆どの方にはラー油だろうがタバスコだろうがどっちでも全く関係ないでしょうけれど。

そしてこのアカクラゲ毒ですが、人により効き具合がだいぶ違います。
アカクラゲが大量に入った時は、私はフェイスガードなしには仕事ができません。
しかし仲間の中には、フェイスガードは邪魔だからしないという者がいます。

↑スネまで浸るほどのアカクラゲの海

私も、フェイスガードなんて邪魔で着けたくありませんが、アカクラゲ汁が目に入る痛みに耐えきれないので仕方なくつけています。
着けない者に痛くないのか問うと、「いや、そりゃ痛いよ」と言いはします。
が、しかしそれでも、フェイスガードを着けなくても耐えられる時点で、私よりアカクラゲ毒に強いことに間違いありません。

このように、痛いと言いつつもどこかしら余裕を漂わせる者が船団に2人いますが、彼らには共通点があります。

2人とも、「からい食べ物に強い」のです。
例えば最近のペヤングの獄激辛みたいなやつを、「からいからい」と言いながら普通に食べちゃうのです。

私だったら、麺一本でむせて吐き出して終わりです。

身近なたった2人の例をもって法則を導き出すのには無理がありますが、とりあえず私の中では今、
「からい食べ物に強い者はアカクラゲ毒にも強い」という仮説が立っております。
俗説では「からい物に強い人は痛みにも強い」と言われることもあるし、あながち間違っていないかと思っています。

今まで散々アカクラゲの被害について書いてきましたが、例え購入した魚体に付着していても、水で洗い流せば全く何の問題もありませんので、ご心配なさらぬようお願い申し上げます。

クラゲについては書きつくしたかと思ってましたが、まだ書き足りないことがいくつか出てきたので、またいずれ。

2021.6.12 クラゲの季節

出漁すれば連日、クラゲが大漁御礼状態です。

大漁御礼とはもちろん皮肉で、実際は大迷惑です。
東京湾内湾で網に入るのは、主にミズクラゲとアカクラゲの二種類のみですが、ミズクラゲはその量の多さ、アカクラゲはその毒で我々を苦しめます。
詳しくは過去に何回か書いているのでそちらをご覧ください。

アカクラゲ↓

2020.6.15 東京湾アラート

2019.6.28 ミズクラゲ

私の感覚では今年はアカクラゲがちょっと少な目な気がします。
出漁回数がコロナ前に比べてはるかに少ないとはいえ、海面に見えるアカクラゲがここ数年では少ない印象です。
まあ、あくまでも「ここ数年では」という中での話です。
一昨年の今時期には、アカクラゲは年々増加し、今年(2019年)は過去最大の量がいる、と書いていました。

赤クラゲ2019 2019.5.19

私としてはこれらのクラゲの迷惑さについてほとんど書いてしまい、残るはもはや愚痴を書き連ねるくらいかと思っていましたが、そういえば、ミズクラゲの魚群探知機の映り方を書いていませんでした。
魚群探知機は、高周波と低周波の二つの音波を船の真下に発し、その反響で海中・海底の様子を探ります。
画面は真ん中で左右に分割され、左側が低周波で右が高周波画像です。画面の右に最新情報が表示され、左側にスクロールされていきます。

大雑把に解説すると、低周波は広範囲をあっさりと探査するのに対し、高周波は探査域は狭いがはっきりと映るというのがそれぞれの特性です。

実際のところは、私たちが働いているのは水深がせいぜい20数メートル程度までなので、画面には左右ともに似たような画像が映り、大きな差は私にはわかりません。
しかし唯一、ミズクラゲの大群を相手にすると、このようにハッキリと大きな違いが画面に現れます。

高周波には物体の反応が色濃く映っているのに、低周波には何も映っていない。
普通の魚の群れや何がしかの物体であれば、このような映り方はありえません。
これは数十~100トン単位のミズクラゲの群れで間違いありません。

ただ残念なことに、なぜクラゲのみがこのような映り方をするのかは、私にはわかりません。
推測としては、クラゲは95パーセントが水分だから、低周波だと突き抜けてしまって反応せず、高周波ではクラゲの残り5パーセントの成分をしっかりと拾い、このような映り方になる、のかなあ?と、アヤフヤながら考えております。
物理素人の私が適当に考えただけなので、信じて他人に話したりしてはいけませんよ。

とまあ、このようにミズクラゲは魚探に移ることは映ります。
しかし先ほど書きましたが、魚探が探れるのは船の真下のみです。
網を張るとき、その網に入る場所をいちいち全て探査などしません。
ですから、絶対量が多い以上、どうしてもクラゲが網に入って難儀します。

20年以上昔、大平丸船団のボスだった人のお言葉に、
「クラゲが怖くて東京湾で漁師ができるか!」
というものがあります。

ごもっとも。
ごもっともではあります。が、しかし。
クラゲ、東京湾から消えてくれないかなあ。

2021.5.29 小太刀魚

ここのところ、小さな太刀魚が網に少々混じってきます。


指2本ちょっとの大きさです。
魚が普通に売れる時勢ならば、このような小サイズでも需要はあり、スーパーなどでも売られています。
ですが今は全く売れないので、生きているならば可能な限り海に返します。
しかし今はアカクラゲが多い時期であり、一緒の網に入ってしまうとほとんどの小太刀魚は死んでしまうため、持って帰って乗組員のオカズになります。


一見すると細くてペラペラで、知らない人からすると「食べるトコあるの?」なんて思われがちです。
しかし実際のところは加食部はなかなか多く、あなどれません。

頭と腹を取り除き、三枚にしました。
太刀魚は他の魚のようなウロコがなく、皮はそのまま食べられるので、このままぶつ切りにすれば刺身の完成です。

刺身はこのサイズでも脂がとてものっています。
好きな人にはたまらんのでしょうが、個人的には太刀魚の脂は刺身で食べるには強すぎるので、私は普段は塩焼きにします。
今回の小サイズだと網で焼くのはちょっとやりづらいので、長い半身を端からクルクルと巻いて、揚げることにしました。


素揚げは味気ないと思い、塩コショウをしてから衣をつけて揚げました。


なんとも無念な仕上がりですが、言い訳させてもらいますと、私、揚げ物は大変なので殆どやったことがなく、こんな仕上がりになってしまいました。
見た目は悪いですが、しかし食べると中の身はフワフワでとてもおいしかったです。

そして中骨は塩コショウをしてからうっすらと小麦粉を振り、これも揚げました。

骨せんべい、いくらでも食べられる最高のおつまみです。
骨は焼くだけでも食べられますが、やはり、面倒でも揚げたほうがおいしいと思います。

小太刀魚はスーパーなどで売っているのを見かけると、お値段はそんなに高くないと思います。
捌くのはちょっと面倒かもしれませんが、味は上々です。
見かけたらぜひ味わってみてください。

 

2021.5.15 アオサギ

アオサギという鳥が港によく現れます。
見た目がスラリとして美しいうえに動きもゆったりとしており、船の上に佇んでいる姿は優雅で絵になります。

でもその鳴き声は、
「ギャアアア!」
という感じで、見た目からは想像がつかないワイルドさがあります。
この鳥はけっこう警戒心が強く、写真を撮ろうと近づくと、15メートルほどの距離でもすぐに飛び立っていってしまいます。
しかし最近、人にいくらか慣れているのか、5メートルくらいまでは逃げないヤツが現れました。
先日、仲間と港で話をしていた時に、このアオサギが私たちの近くに飛んできて、5メートルほど先でじっと佇んでいました。

そこで仲間が20cmくらいの魚を投げたら、喜んでくわえ、頭から飲み込んでいました。
こういうふうに、自分らがあげた魚をおいしそうに食べてくれると、なんだかこの鳥と友達になれたような気分になり、ちょっと心がほんわかします。

そんなほんわか気分に浸っていたら仲間の一人が、ショッキングな情報を持ち出しました。

「アオサギって、ウサギを食べるんだよ」

意外すぎてにわかには信じがたかったのですが、論より証拠と動画をスマホで見せてくれ、そこにはアオサギがウサギを頭から丸飲みにするシーンが収められていました。

さっきまで優雅と評していたのに裏切られた気分です。

我ながら不思議に思うのが、アオサギが魚を丸飲みするのを見ても全く抵抗感がないのに、丸飲みされるのがウサギだと途端に嫌悪感がでてくることです。
同様な感覚で、私は魚を捌くのは好きですが、ウサギを捌いて調理しろと言われたら尻込みしてしまいます。
同じ一つの生命に対するこの感覚の差はなんなのか、自分なりの回答としては、魚類と哺乳類の隔たりが理由かと思います。
魚はわれわれ哺乳類と見た目が違いすぎて、感情移入がしづらいから、丸飲みされているのを見ても何も感じないのだと思います。
では鯨やイルカみたいな魚類的形状の哺乳類の場合はどうなんだ、と言われても困っちゃうので、あまり突っ込まないでください。
アオサギの話に戻りますが、ウサギを飲み込んだことに衝撃を受けたと同時に、ちゃんと消化できるのか?と心配になりました。ウサギの毛皮とか骨なんて、魚類とは比較にならないほど強いでしょうから。
そんなもん大丈夫だから食ったに決まってるだろ、と言われるかもしれません。
しかし以前、鵜がボラを一度にたくさん食べすぎて、喉に詰まらせて死んでしまった話を知っているので、野生の生き物は無理をしてでも獲物の確保を優先することもあるのかな、と思った次第です。

コロナのせいで魚価が非常に安く、ろくに出漁していません。
出漁しなければ収入は当然なく、会社は苦しいはずです。

しかし意図せずとも出漁自粛になっている現状は、漁業資源の保護や回復に繋がっていると考えることもできます。
コロナ終息後の大漁を期待して、なんとか今を乗り越えたいと思います。

2021.4.29 ながれもの

ちょっと前ですが、港にこんなものが流れ着いていました。

長さ4m80cm、直径25cmの丸太です。
まっすぐな上にきれいに枝打ちされており、天然の流木ではなく、立派な商品であることがうかがい知れます。
なんでこんなものが海に漂っているのか?
理由はわかりませんが、なんらかの災害などで川や海に流されてくるのでしょう。

木はだいたい水に浮きます。

これは先ほどのものより小さい、長さ1m直径10cmほどの木ですが、水面に浮いています。
ただ、拡大してよく見るとわかるのですが、水面上にでているのはごく一部のみです。
先の5mの木も、このようにほんの一部を海面にのぞかせたままで、港に流れ着いてきたのです。
こういう、海上に浮かんでいるモノを私たちは「ナガレモノ」と呼びます。
このようなものにぶつかってしまうと、私たちの船は沈みはしませんが、へこんだり浸水したりと、迷惑な代物です。

まあ海は広いのでぶつかることはそうそうありませんが、それでも周りでは、ナガレモノにぶつかってドライブ(プロペラと駆動機関)が壊れた、といって他船に曳航されて帰ってくる話が年に1回は必ずあります。
船には排水量型と滑走型というタイプがあります。


滑走型とは、モーターボートみたいに船体の大部分を水面から浮かせ、水の抵抗を減らす船型です。滑走型がナガレモノに気付かなかった場合、プロペラを直撃してしまうのです。

海で推進機関が壊れたらどうするのか?
これはもう、誰かに助けを求めるしかありません。
法律では12m以下の船には無線機は備えていなくてもよいのですが、スマホにしろなんにしろ、通信機器は必ず用意しておき、仲間に助けを求めましょう。
助けてくれそうな友達がいない悲しい場合は、「118」に電話すれば海上保安庁に繋がることを覚えておくとよいでしょう。
「海のもしもは118番」と、海上保安庁が標語を掲げています。

ちなみに、この「118」で海上保安庁にかかってくる電話のうち、99パーセントが間違い電話か無言電話だそうです。
間違い電話はともかく、無言電話の場合、色々と確認作業が必要で、ときによっては航空機を派遣することもあるそうです。
皆さま、お間違えのなきよう、もう一度。
「海のもしもは118番」です。

 

2021.4.10 コノシロの抱卵と身の味について

巷間言われている
「子持ちの魚は卵に栄養が全ていくから身は痩せておいしくない」
という説が本当なのか、コノシロで検証を始めて1か月経ちました。
私がたどり着いた答えは、
「コノシロは卵を放つ直前までは身に脂があり、おいしい」でした。

以下に検証結果を画像付きで解説いたします。

3月30日、同じ網で漁獲したコノシロです。

別の魚種かと思えるほどに体形が違います。
重量は上の太いのが261グラム、下の細いのが203グラムでした。

捌いてみたところ、太いのは抱卵中で、細いのは放卵後でした。
(前回の記事で3/26に漁獲した抱卵中の大きな個体について、産卵まで半ばほどか?と書きました。しかし3/30の漁で放卵後の個体が同時に漁獲されたことを考えると、前回のも合わせ、これらの太った個体はほぼ放卵間近なのかもしれません。)

下の卵ですが、捌くときに失敗して傷付けたのではありません。状況的に、産卵後の収縮した卵巣とみて間違いないでしょう。

三枚におろしました。画像中の魚の位置関係は上が抱卵中の太いもので、2尾とも保存方法も捌き方も全く同じです。

歴然とした身質の違いが見て取れます。
子持ちのほうは全体に脂がまわっていて白いですが、産卵後は脂が抜けて筋肉本来の赤色が強く出ています。

刺身で食べたところ、どちらも見た目通りの味でした。
太いのは脂がのっており前回と変わらぬおいしさで、細いのは全然脂のない、純なコノシロ味でした。
純なコノシロ味というのは、コハダに比べて身の味や青臭さ(?)などを魚体サイズに比例して強くした感じで、率直に言って可もなく不可もなく、普通の青魚といった味です。

まあ私がおいしいとかまずいとか言ったところで、味覚や好みなんて人それぞれだし、私にはコノシロに対する贔屓目があるでしょうからなんのアテにもなりません。
しかし今回の画像をみれば、卵の成長度合いと身の脂の具合がわかり、味の想像もつきやすいかと思います。

最初の繰り返しになりますが、「身の栄養を卵に取られる」というのは、さもありなんという理屈ですが、実際のところは明確に知覚できるほどでもなく、卵を放出するまでは身に脂はしっかりとあっておいしい。
というのが私の結論です。

もっとも、今回の放卵前の魚は、1か月前の子持ち始めの魚と比べたら味は落ちているのかもしれません。
それと「脂があっておいしい」と書きましたが、脂の量のみが魚のおいしさを決めるとも思っていません。
言ってはナンですが、コノシロというのはそれほど厳密に味を追求されるような魚ではないと思っています。

子持ちのコノシロが売っていたら、「見た目は太いけど身は痩せてマズイんだろ」と敬遠するのではなく、「身は太いし卵(もしくは白子)も味わえるしラッキー♪」と手を伸ばせば、魚食ライフがいっそう豊かなものになるのでは、と思います。