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2021.1.9 カタボシイワシ

5日に今年初の漁に出たところ、うまくコノシロを獲れました。
幸先がよいことではありますが、年初から緊急事態宣言がでたことを考えると浮かれる気分には到底なれません。
幸先が良いけど先行きは不安、と、真逆な感情に心が揺れて何とも言い難い気分です。
心配してもしょうがないのでいつも通り気楽な文を書きます。

大量のコノシロの中によく見ると、似ているけど違う魚が混じっていることがあります。

カタボシイワシです。
画像 真ん中がコノシロ、上下がカタボシイワシです。
ニシン目ニシン科で、コノシロやサッパ、マイワシやカタクチイワシの同類です。

網に混じる比率としては、コノシロ数万尾に対して1尾といったくらいで、きわめて少ないです。

私がこのカタボシイワシを見るのは、大量のコノシロに数尾混じっている時のみです。
それ以外では1年の漁を通しても見かけることはありません。

いつも不思議に思うのは、このごく少数のカタボシイワシはいったい、どういう経緯でコノシロの群れに混じるのか?ということです。
さきほど挙げたニシン科の魚は全て、大きな群れを作ることから、このカタボシイワシも通常は大きな群れで生活していると考えられます。
しかし、東京湾内でカタボシイワシの群れを獲ったという話は、聞いたことがありません。
それどころか、この魚を知らない漁師も多いくらい、なじみがありません。

本来はどこか遠くで群れなしている魚が、数尾だけ東京湾内に泳いできてコノシロの群れに加わる、理由と目的は?

異国のカタボシイワシの群れからはぐれて迷子になったところに、たまたまコノシロの魚群に出会い、同類だからなんとなく混じってしまったうっかり者なのか?
それとも、生息域拡大のために東京湾進出をもくろみ、同類のコノシロの群れに紛れ込んで環境調査をするスパイ的な奴なのか?

答えはわかりようもないのですが、生物はほんとに不思議です。

このカタボシイワシは市場では全く人気がありません。
そもそもあまり馴染みがないうえに、小骨が多いのがその理由とされています。

どんなものか確かめようと捌いてみたところ、まずウロコの固さに驚きました。

写真のピンセットの先にあるのがそれぞれのウロコで、見やすいように黒く塗りました。
上がカタボシイワシ、下がコノシロです。

全長はほぼ同じなのに、ウロコの大きさが全く違うのがわかると思います。

コノシロのウロコは薄く小さく、爪でこすれば簡単に剥がれるほどです。
一方、カタボシイワシのウロコは厚く大きく、身をしっかりと覆っており、包丁を力強く当てなければ剥がれません。
そしてバリバリバリ!と大きな音を立ててあちこちに飛び散ります。

スーパーなどで売っているニシン系の魚のウロコは、こすれて殆ど剥がれているのが普通ですが、カタボシイワシは自然には剥がれない固さですね。

「ちょっと今日は魚の塩焼きにするか」、なんて考えて、マイワシと同じ感覚でカタボシイワシを買って帰ったら、家で1尾ずつウロコをバリバリ剥がさにゃならんのは手間ですね。
そして三枚に下ろそうと身に包丁を入れると、コノシロと同じように、身に小骨が多く入っていてそれを断ち切る感触があります。
刺身と酢締めにして食べましたが、私にはイワシ系よりコノシロ・サッパ系に近い味に感じられました。

おいしかったのですが、やはり捌く手間や小骨の多さから、敬遠されるのもむべなるかな、といった感想でした。

この魚は近年になり、相模湾あたりで漁獲されることが増えてきたそうです。
東京湾内湾まで入ってくるのも時間の問題なのかな、とも思います。

2020.12.26 今年終了

25日、出漁予定日でしたが北風が強めだったために時化、今年の漁は終わりました。
来年の初出漁までは10日近く間があるために、網の掃除をしました。

揚網作業中に網の中に巻き込まれてそのままになってしまった魚を、1尾残らず取り除きました。
この時は2日前に網を張った時の魚が残っていました。
こういうものを私たちは「ヒヤメシ」と呼びます。

寒い今の時期だし量が少なかったので今回のものは原型を留めていますが、気温の高い時期や量が多い時だと網の中で腐って発酵してしまい、むせかえるほどの匂いを発します。
ヒヤメシが体に付くと、ちょっとやそっと洗ったくらいでは匂いが落ちません。

なので防御は万全に。
網をきれいにしたところで、今年の仕事は終了しました。

今年は毎年恒例の会社の忘年会が行われず、区切りというかケジメのない、なんだか気分的にスッキリしない1年の終わりかたでした。

2020は率直に言って大変な年でしたが、2021は良い年になればいいですな。

 

2020.12.14 コノシロとジャコ

コノシロ漁を継続しています。

今のところ出漁回数は少ないですが、出れば獲れるのでありがたいです。

去年の12月は10回出漁し、年末までコノシロは獲れつづけたので、今月も同じように獲れればと希望をもっております。

コノシロが獲れるのはありがたいのですが、今年は「ジャコ」が非常に多く、だいぶ苦労を強いられています。
「ジャコ」とはコハダのことです。

上がジャコ、下がコノシロ


私たちが現在ターゲットにしているコノシロは、水産加工業者に引き取ってもらっています。
加工業者には、コノシロは大きいほど喜ばれ、小さいものは敬遠されます。
理由は聞いたことがないので私の推測ですが、要は処理の効率の問題なのではと思います。
機械にしろ人手にしろ、1尾の魚を捌いたときに取れる加食部の量は、全長に対する重量は倍以上の比率で上がっていきます。
10cmのコハダと20cmのコノシロでは、捌く手間はさほど変らなくても、加食部の重量に2倍以上の差がでます。

イワシやサバなどであれば、全長に関係なくぶつ切りにして缶詰にできるでしょうが、コノシロをぶつ切りにした缶詰はありません。
やはりコノシロ系は捌く必要があると思われ、そうなれば大きいほうが効率が良し、となるのではと思います。

現在、私たちは去年とほぼ同じ漁場で働いていますが、去年はこの漁場にはコノシロしかおらず、魚群探知機に大きな反応が映ればすぐに網を張れました。
しかし今年はこの漁場にジャコが大量に発生し、大きな魚群を作っているのです。

今年は、「コノシロ」、「ジャコ」、「コノシロとジャコの混じり」の魚群が存在します。(あとカタクチイワシも大量に居ますが、網の目をすり抜けるサイズなので問題にはなりません)

親方と運搬船の船長が使っている魚群探知機は、群れの中の魚のサイズがわかる高性能なものですが、さすがにコノシロとコハダはサイズが近すぎて見分けがつけがたいそうです。

網を張って入ったのがジャコの大群だった場合、全部逃がすので、時間も手間もだいぶ無駄になります。

今、船橋では、3つの船団がコノシロを狙って漁をしています。
そうすると、どこかの船が網を張るのを待ち、その結果を見て判断するという戦法も考えられます。
しかし、それは必ずしもうまくいくとは限りません。
なぜならこれらの魚群は近距離で混在していることが多いのです。
どこかの船がコノシロが大漁でも、そのすぐ横で網を張ってもそちらはジャコが大量ということが往々にして起こります。


コノシロは月単位でみると継続的に獲れてはいますが、一日単位でみると、その日に一番早くコノシロの魚群を見つけた船が量的に優位な傾向があります。

網は早く張りたいけどジャコは嫌だ。しかし魚群探知機ではサイズが判断できない。

そこで親方が苦肉の策で実行したのが、コレ。

船の舷側から竿を出して、釣りです。
これで魚探ではわからない群れのサイズを把握しよう!という考えです。

これまでに2回、竿をだして釣りをしてみましたが、釣れたのはカタクチイワシ1尾のみでした。

結局いまのところ、確証の持てないままに「コノシロっぽい」反応で網を張るしかありません。
実は釣りの他に一つ作戦があるのですが、それはまだ実行していないので、いずれまた。

2020.11.28 太刀魚

たちうお タチウオ 太刀魚。
漢字で書くとかっこいいですね。
ここ数年、東京湾の湾奥にどんどん進出してきています。
最奥部の船橋港内にまで入ってくることもあるようです。

なかなかの大物が獲れます。
大きな太刀魚の塩焼きは、私としては塩焼きの中でトップランクの味です。
釣ると引きが強くて面白いらしく、色々な情報媒体で紹介されているようで、休日ともなると釣りのボートが多く出ています。
釣りで引きを楽しんだうえに帰っておいしく頂けたら、もう、たまらんですね。

ときに、太刀魚の大きさを測る指標って、ちょっと変わっています。
魚の大きさは通常、頭から尾までの長さを計測し、センチメートル表記で表すのが一般的です。

しかし太刀魚の場合は、体高(腹ビレの付け根から背の縁)を測ります。
しかも何故か、計測の単位は「人の指の数」なのです。
サイズを人に伝える時は、「指2本、小さいよ」とか、「指4本!悪くないサイズだ!」というかんじです。

上は「指5本の太刀魚」となります。
「何cmの太刀魚」という表現を、私はしないし、あまり聞いたことがありません。水産会社の人とも「指何本」で話します。

初めて聞いた方は、なんで太刀魚は全長ではなく体高で表すの?と思うかもしれません。
私も気になって少し調べたことがありますが、その理由を明確に述べている文は見つけられませんでした。

そこで私が考えた理由がコレです。

尾っぽ。しっぽ?

ほとんど身がありません。
というか、どこが尾っぽの始点なのか、いや、そもそもこれは尾っぽなのか?ということすらわかりません。

全体像を見ればわかりやすいかと思いますが、この、細~い尾というか、体の後端。

こんなとこまで全長に含めるのは、詐欺のような気がしませんか。
食べられるトコないし。
太刀魚を捌くときに私は、上の写真のサイズの場合、後端20cmほどは切って捨てます。


そして私が今まで見た感じでは、太刀魚の全長と太さ(この場合は体高)は、必ずしも比例していないように思います。
上の2尾並べた写真の個体は指4本ちょいで全長120cmですが、先ほどの指5本の個体は118cmでした。
写真はありませんが、指5本でも1m以下のものも見たことがあります。

全長が当てにならなければ重量で計測しては?となりますが、それはそれで、季節により抱卵や、胃の内容物によって大きく変化します。

その点、魚の体高は時期や個体による変化は少なく、それらを勘案したうえで、太刀魚は体高で測るのが良いと落ち着いたのではないか、と思います。

そして何故、単位が指なのかといえば、「何cm幅」と言われるより「指 何本分」と言われたほうが、直感的に想像しやすいからではないでしょうか。
サッと自分の指を出して確認できるし。

以上が私の推測です。

しかしこの「指何本」というのは、あくまでも漁師や釣り人の仲間内での話であり、市場ではキッチリと重量で取引されています。
さきほど重量は個体差が大きいと書きましたが、その個体差は市場の人が目利きして単価で調節するから特に問題はないのでしょう。

太刀魚の尾っぽ?に関しては、もう少し書きたいことがあるのですが、それはまたの機会にします。

2020.11.14 コノシロ再び

新型コロナのせいで日常が全く変わってしまった昨今。
恒常的な魚価の低迷が私たちの生活に大きく影響を及ぼしています。

それに加え、数年前から台風などで出漁できないことが多くなってきたこと、秋口にサバがほとんど来なかったことなどが合わさり、先月の水揚げは過去最低レベルでした。
数年前までだったら、これからの時期、狙える魚種は来年の春くらいまでほとんどなく、つまり今期の漁獲はもはや絶望的でした。
しかし去年は今の時期からしばらくコノシロが獲れ続け、いくらか稼ぎになったので、今年もそれを期待していたところ、ありがたいことに今年もコノシロが獲れました。
11月に入ってから3回、コノシロの漁獲があり、ちゃんと売れました。

漁獲と同じく大事なのが、獲った魚がちゃんと売れるかどうかです。

ありがたいことに私たちのコノシロは引き受けてくれる水産会社があるので、安心して漁獲できます。
今年は一回に引き受けてもらえる数量に制限がかかりました。
まあその制限量は、一回の漁獲としては程よい位の量だし、今のところ一回ごとにリセットされるので、大きな問題ではありません。

問題なのは、網に入る魚の量の調整が難しいことです。

昨日、網を張ったら、かなりの量のコノシロが入ってしまいました。

まずは全体の量をある程度、把握するために網を小さくします。
わかりづらいと思いますが、真ん中あたりで網を2つに区切っています。

この後、前方側の網の中の魚は元気なうちに全て逃がしました。

そして、残った網を締め込みました。
締めこむとは、魚が泳ぐスペースをなくすくらいまで網をあげることです。そうしないとタモで魚がすくえません。

そして運搬船に積んだのですが、網の中にいた魚が予測より多く、制限量を超えてしまいました。

水産会社は制限以上の量は引き受けられません。
かといって、網の中の魚をそこらに放つこともできません。
なぜかというと、いったん締めこんでしまった網の中の魚は、ほとんど死んでしまうのです。(コノシロやイワシなど、量を獲る魚の場合です)

普段、私たちは即座に運搬船に積み込んで氷締めにするから問題ありませんが、例えばこの魚をそのまま海に放つと、数日にわたって海面に漂い、鳥や他の魚に食べられなかった分は潮の流れによっては陸地に流れ着き、悪臭を放ちます。
私たちの漁場は海苔の養殖場にほど近いので、そちらに流れ着いても大きな迷惑をかけてしまうことになります。
そういった理由で、網の中の数十トンの魚をどうするか困った事態になりました。

最終的に、船橋港のほかの巻き網船団に引き取ってもらうことになり、他船団の運搬船に魚を積んでもらいました。
その船団は私たちとは別の卸先があり、そちらにはコノシロを引き受けられる余裕があったようです。

正直に言うと今回引き受けてくれた船団は、同じ船橋港で働く巻き網船団ではあるけれど会社が違い、親方同士は普段あまり交流はありません。
どちらかというと距離を置くような関係性ですが、
しかし今回、親方同士は話しあった結果、まさに助け船を出してくれました。

別に漁師に限ったことではないけど、こういう事態って意外と、思いもよらぬ方向から思いもよらぬ批判が飛んできたりすることがあります。
なのであくまで私個人の感想として書きますが、今回の事態はとてもありがたく思います。

N船団の親方はじめ皆さま、ありがとうございました。

2020.10.28 ボラ

先日、ボラが大量に網に入りました。

正確な量はわかりませんが、おそらく30トンほど、数にすると3万尾ほどです。
ボラが網に入ると、海面がとても賑やかになります。
ボラはジャンプが得意で、網を乗り越えようと海面でジャンプを繰り返します。
網に入っている量が多いと、あたり一面でバシャバシャと水しぶきをあげて跳ね回り、それは壮観です。

網を最終的に絞り込んだあたりになると、私たちの目前で飛び跳ねまくります。
人の顔くらいの高さまで飛んでくるので、運が悪いと顔面に当たります。
バシュッ!と、ロケットみたいな勢いがあることに加え、ボラの頭はかなり固いので、これを食らうとたいへん痛いです。

このような、漁師しか見られない光景を撮影したいと私は前から思っていて、先週、アクションカメラを購入しました。
そしてこのボラの飛び跳ねている光景を撮影しました。
撮影した、つもりでしたが、、、カメラのスイッチがオフという痛恨のミスをしでかしてました。
「オフぅ」と思わず声がでました。

今回の機会を逃したのは本当に残念です。
ボラは需要が少なく、私たちは狙って獲ることがないので、ボラ大漁の風景というのは滅多にないことなのです。
今回、網に入った正確な量がわからないのも、少しだけ確保して後は海に逃がしたからです。

これを教訓に、カメラのスイッチ確認はしっかりせねばと心に刻みました。

このボラ大漁は、日曜日の昼間でした。
周囲には釣りをしている小型のプレジャーボートが多くいましたが、中にはこちらに近寄ってきて動画を撮っている人もいました。

撮影した人、その動画はレア物ですぞ。

2020.10.17 モッコ

「モッコ」って、ご存じでしょうか?

物の運搬に適した網で、私たちはこれに氷を入れて運搬船に積みこみます。
このモッコには氷が500kgほど入り、季節や捕獲魚種により増減しますが、だいたい5個から十数個、運搬船に積んでいます。
氷を積まずに出港することはあり得ません。

私たちが使っているモッコは既製品ではなく、昔の乗組員が作ったものです。
それほど負荷のかかる使い方はしないので、今のものは20年以上使っていると思います。

しかしさすがにあちこち摺り切れて穴が開いてきました。
今までは穴を補修して使っていましたが、この度、網長(あみちょう)の号令一下、新しいモッコを作ることになりました。

網長とは、網関係の仕事の統率を取る役職で、網の造詣が一番深い人が務めます。現在の大平丸網長は運搬船の船長です。

これがモッコの材料です。

16mmのロープ、主体となる網、ロープと網をうまくつなぐ細い網、縫うための紐(16打ち糸 2mm、3mm、4mm、平糸)。
この素材でモッコが作れます。

※マヨネーズ(350グラム)はサイズ比較用です。

既存のモッコの設計図などは無いですが、網長が改良を加えつつ新規に設計し見本を作ってくれたので、私たちはそれに従って作るだけなので楽なもんです。

このモッコを作るのにはいくつかの技術が必要です。

さつま(スプライス 綱の端に輪を作る)

折り返し(網の目がはじけないように端を折って縫う)

せる(動詞) (綱を保護するための補強 白紐が規則正しく巻いてあるのが
せった部分)

ちょうちょ(綱と綱を隣り合わせにしばる)

などです。

技術と言っても、一見ややこしく見えるでしょうが、実際はどれも簡単な手順の一つの工程を繰り返しているだけなので、誰でもできる作業です。
私は通算8時間ほどで完成しました。

今回、私を含め8人がモッコ作りを命じられましたが、網長は
「期限は定めないからいつでもいいよ」
と皆に言いました。

実はこの宿題が出されたのはひと月以上も前なのですが、完成させたのは4人だけ。
出来ていない4人のうち3人は、入社1~2年の若者たちです。

先ほど言ったように作業内容自体は簡単だし、先月も今月も時化だらけなので、時間は有り余っています。
あとはヤル気があるかどうかという話ですね。

網長は期限を定めませんでしたが、私はこういう宿題を出されたら、皆より先に作って優越感に浸りたいタイプです。
しかるに若い衆の場合、期限がないからどうでもいいや、という程度にしか思ってないのだろうなあ。
まあ私が彼らをせっついたりするのは筋違いなので、何も言いませんがね。

ところで、世間一般のモッコはどんな形なのかと思い、グーグルで画像検索をしてみました。
その時、ひらがなで「もっこ」と検索したところ、、、
なんだか、私の思うモッコと全く違う画像がチラホラ出てきて、驚きました。
何と言いますか、未知なる世界の扉が唐突に現れた感じ。
私は回れ右で引き返しましたが、
それが何か気になる人は、まぁ、自分で調べるがよろしい。

2020.9.29 気温

めっきり涼しくなってきました。
雨模様の天気が続き、日中でも肌寒いですね。

それでも最高気温も最低気温も、今月初旬からすると、せいぜい10度ちょい下がった程度なんですよね。

アメリカのデンバーでは今月、7日に33度だった気温が、翌日は1度にまで下がったとのニュースがありました。

砂漠のような極端な環境では1日の気温差が50度ちかくあるという話は聞いたことがありますが、普通の都市部の日常でこんな気温差があるなんて、冗談ではないですね。 

「暑い!!」と言いながらタンクトップでカキ氷を食べていた翌日には、セーターの上にダウンジャケットを着込んで熱々の煮込みうどんを食べるような状況です。

衣替えが間に合いません。
こたつを出す間もありません。
こんなことはしょっちゅうあることではなく、特殊な気象条件が揃ったからなのでしょうが、まあ身近では起こってほしくないですね。

さて、我々の話をしますと、今月半ばほどから、ジンタが網に混じるようになりました。

ジンタとは、マアジの特に小さいやつで、スーパーなどで「豆アジ」として売られているようなサイズを指します。
「昔はこんな場所にアジなんて居なかったんだがなあ」
というような場所で入ります。
たいした量も獲れず値段も安いですが、これがおつまみにすると最高なんです。
小さいから調理をするのは大変なので、エラと内蔵だけ取って揚げるのが楽です。

揚げれば頭ごと食べられます。
私は南蛮漬けにするのが好きです。

南蛮漬けって、野菜は生で栄養があるし、お酢はけっこう使うし、小魚を頭ごと食べられるし、なんだかとても体に良さそうな感じがします。

ひとつ留意点として、頭ごと全部食べられるということは、骨などのカルシウムはお酢によって漬け汁のほうに溶け出しているということです。
なので、カルシウムを取りたければ汁も共に摂取するのが良いようです。
その場合はやはり、汁の味付けは薄味にして醤油の使用は控えめにすべきでしょうね。

まあ私は、栄養摂取のみのために食べるのではないので、汁は濃いめの味付けですが。

2020.9.12 二重虹

9月7日午前6時。
漁を終えて帰港し、魚を水揚げしていた時のことです。

上空に美しい虹が現れました。
この写真ではかなり見づらく、スマホではたぶん見えないかもしれませんが、虹が二本かかっています。

二重虹
(ふたえにじ、ダブルレインボー)というらしいです。

以前も見たことがあり、記事にしたことがありました。

この二重虹はなかなか珍しい現象なので、見たならば吉兆、もしくは今まで頑張ったことに対する祝福、ととらえる考え方があるようです。

ちなみにこの日の水揚げですが、今年ナンバー1のスズキの漁獲量でした。
具体的に言うと、普段は1回の出漁でスズキが2トンも獲れれば御の字なのに、この日は4トン獲れました。

前回記事の2019年1月16日は、コノシロを大量に獲った日だったし、今回はスズキが大漁でした。
私は人生で二重虹を見たのはこの2回のみです。
今のところ私にとってこの二重虹は、確かに豊漁の祝福と言えます。

皆でこの虹を見ていた時、ふと、逆網(サカアミ)船長が真顔で私に問いかけました。

船長 「ああいう虹ってどうやったら出来るか知ってる?」
私  「(虹のできる条件?ええと、雨が降った後に太陽がどうのこうのだけど、、、しかも二重って、、、) わかりません。」

船長 「スズキを4トン獲ればいいんだよ」
私  「ぎゃっふぅん!!」

まあね。
仕事中にこういう冗談をサラッといえる、
サウイフモノニ ワタシハナリタイ

2020.8.29 危険な暑さ

暑さが衰えませんね。
夏がくる前の長期予報では、気象庁は猛暑を予想しましたが、どこかの地方の農民の観天望気では冷夏と予想しているというニュースを見ました。
これは気象庁に軍配があがりましたな。

今月の半ば辺りは本当に暑かったですね。

お盆明けの8月16日、仕事が終わった後、仲間が一人倒れてしまいました。
彼は船の上で仕事をしている時は頑張ってなんとか耐えていたようですが、陸に上がったところで一気にダメージが押し寄せてきたようです。
船から陸にあがり、目の前の駐車場に行ったあたりでつらくなり、ちょっと横になったら、そのまま起き上がれなくなってしまったのです。
体のあちこちが強張り、ちょっとでも動かそうとすると全身がツッたような状態になり苦しみ、救急車を呼びました。

結果は、脱水症状もしくは熱中症の疑いとの診断で、点滴を打ちながら安静にし、3時間ほどたったら動けるようになりました。
その後は順調に回復したのでよかったですが、病院で落ち着くまでに相当苦しんでいるのを目の当たりにし、暑さ対策や水分補給の大事さを改めて思い知らされました。

後日、会長とこの話をしていた時のことです。
会長に、「自分が若い時には漁は昼間に働いていた。今の、夜に働いているお前たちは楽なもんだ」
と言われました。

このセリフにはわたくし、ちょいとカチンときました。
「おうおう、温暖化が進んでいる今と昔じゃ、気温が違うにきまってるぜ!会長が現役時代の昔は、今よりずっと涼しかったはずだぜ!」
と啖呵を切りました。
もちろん心の中で。

そこで実際はどうなのか、過去の同日の気温を調べてみました。

今回、2020年の8月16日は最高35・4度、最低28・8度です。

ではデータで一番古い、今から59年前、1961年の気温は!
最高32・2度、最低24・8度でした。

あれ?思っていたよりもずっと暑い。

では50年前、1970年8月16日は?会長が30歳で現役バリバリの時代です。
最高34・4度、最低26・6度。
今年とほとんど変わりませんな。

ではでは1980年は?
最高22・1度、最低21度。
おお!めちゃくちゃ涼しいじゃないですか!
と思いきや、この日は雨でした。

では30年前の同日は?
最高34・5度、最低26・9度。
これまた今年と変わらんですな。

これが20年前になると、最高31・6度、最低25・2度ですが、もはや遠い昔とは言えないですね。

温暖化が叫ばれ始めたのがいつからだったかはともかく。
会長が今と変わらない気温の中、キツい昼間に働いていたのは事実でした。
しかも昔は今よりずっと手作業、力仕事が多かったのですから、それは汗をかいたことでしょう。
船には水を満たした大きなカメを積んでおき、ひしゃくを使ってゴクゴク飲み、梅干しもしっかり食べていたそうです。

和食は塩分が多く、日本人は塩分摂取量が多いと言われますが、今よりずっと汗をかく生活だった昔の人にとっては、それでちょうどよかったのだろうと思います。
ちなみに私は一回の出漁で麦茶を3リットル飲みます。
そのことを会長に話したら、「飲みすぎだ!!」と言われました。

なぜ?!
げせぬ。