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2022.11.27 大物はロマン

今月半ば程まではイナダの漁獲が好調でしたが、最近はだいぶ減ってしまいました。

魚群探知機の反応を見るとイナダの群れはまだ居るのですが、獲りづらい場所のものが多くなりました。

漁の成否には潮流の速さや水深が大きくかかわり、条件がうまくないと、目の前に魚が居ても獲れるとは限らないのです。

まあそもそも湾内に居なければどうしようもないので、居てくれるだけでまだ希望が持てるのでありがたくはあります。

イナダ(ブリ)のような回遊魚は、殆ど同じ大きさの仲間で群れを構成します。
おもしろいもので、ワカシ(40cm未満)、イナダ(約40~60cm)、ワラサ(60~80cm)、ブリ(80cm以上)という呼称に準じた大きさの仲間で群れます。

例えば、イナダとワカシの割合が半々というような群れは、私は見たことがありません。

また、イナダが1万尾獲れた時その中にワラサが100尾ほど混じることはありますが、ブリが混じることはありません。

魚社会にも群れのルールがあるのでしょう。

しかし今回、おきて破りの大物が現れました。

イナダの群れに1尾だけ、全長110cm、重量なんと17,5kgもある超弩級のブリが混じってきたのです。

こういう大きな魚の写真を撮るとき、カメラに対して魚を突き出したくなるものです。
しかしそうすると遠近感が狂ってサイズがわかりづらくなるので、私は撮影の時には魚体を体に近づけて持ってもらいます。

今回魚を持ってもらったのはパワー溢れる若者なのですが、
「重たいっす!」と言っていました。
掴みどころがないうえに優しく持たなければならないから、確かにきつかったでしょうね。


こんな大きなブリ、私は初めて見ました。

ペットボトルを余裕で上回る体高があります。


もしかしたらブリの最大記録では?と思い調べてみたら、日本では115cm、22,1kgというのが釣りでの公式記録だそうです。

まあ最大記録に及ばずとはいえ、それでも今回のブリは感嘆に値する大きさです。

写真では迫力が伝えられないのがもどかしいです。
ブリが大きすぎて周りのイナダが小さく見えます。
人で例えたら、少年野球チームの中にエンゼルスの大谷さんが居る感じですかね。

ちなみにこれほどのブリならお値段のほうもさぞかし、と思われるでしょうが、そうはなりませんでした。

このブリが入るサイズの発砲スチロールがなく、個別に出荷ということができなかったのです。

なので他のイナダとともに給食屋さんにまとめて出荷され、お値段もイナダと同じ単価で計算されました。

具体的な数字を書くのははばかられますが、福沢さんどころか新渡戸さんすらお呼びでないほどでした。

そんなんなら私が買いたかったくらいですが、まあ、この大きくて脂ののったおいしそうなブリを給食で食べることができた人がいると思えば、それで良しですね。

2022.11.14 マダイのエアー抜き

先月、マダイの漁獲は私が入社して以来最多の量でしたが、最近はだいぶ少なくなりました。

しかしマダイの代わりに今度はイナダが獲れだし、これまた過去最多の漁獲の日があるほどでした。

イナダとはブリの幼魚ですが、だいたい40cm~60cmのものを指します。

これは昨日のイナダです。

幼魚とはいえ1尾あれば一家族分のお刺身は充分に取れるサイズはあり、知名度に恥じない味のおいしさもあり、良い値で売れるありがたい魚です。

しかしこのイナダはそもそも東京湾の外から回遊してくる魚なので、いなくなる時はあっという間に消え去って獲れなくなってしまいます。

いつまで獲れるかは運次第です。
もうしばらく湾奥に居てくれることを願うばかりです。

さて、ここで話をマダイに戻し、前回の記事の補足でエアー抜きについて書きます。

網に入ったマダイは膨張した浮袋を自力で元に戻せず、腹を上にして水面を漂いどんどん弱ってしまいます。

それを人力で処置して泳がせるようにする技がエアー抜きです。

網だけではなく釣られた鯛も同じ状態になるため、活けマダイを狙う漁師や釣り人には必須の技術といえるかもしれません。

エアー抜きとは、要は浮袋に穴を開けて空気を出すという単純な話なのですが、体の真ん中にある浮袋に、他の臓器を傷つけずにどうアクセスするかが問題になります。

調べるといくつかの方法がありますが、私達は肛門の後ろからエア抜き器具を差し込みます。

魚体を傷つけないように甲板に柔らかいクッションを敷き、そのうえでエア抜きをします。

この方法ですが一見簡単そうに見えるでしょうが、器具を差し込む角度を間違えると内臓を傷つけ、魚を死なせてしまいます。

活かしの水槽の中で死んでしまった鯛は、今度は浮かび上がらずにそのまま底に沈んでしまい、値段はもちろん生きているものとは天地の差があります。

私はこのエア抜き係の一人ですが、最初の頃はしょっちゅう内臓を傷つけてしまっていました。

しかしある時、運搬船の船長にコツを教えてもらってからは、エア抜きの成功率は99パーセントになりました。

コツは非常にわかりやすく、一度それを教われば後は間違えようがないほど簡単なことです。

ただ、もったいをつけるようで申し訳ないですが、それを私がここに書くのは筋違いなので書きません。

気になる方は運搬船の船長に教わってください。
船長はこういう技術や知識などを全く惜しむことなく教えてくれます。

2022.10.29 真鯛

今月は時化が多かったのですが、真鯛が大量に獲れる日が数日あり、少ない出漁回数をある程度補ってくれました。

大量といっても「真鯛としては」という意味ですが、一日の漁獲量と一回の網で入った量、どちらも私の乗った22年間の中で最多記録を更新しました。

真鯛を狙った網はギャンブル的な要素が強くあります。

まず真鯛のいるポイントが根や障害物などのすぐそばなので、網が引っかかって切れてしまうリスクがけっこう高い。

そしてソナーと魚探で反応を確認してから網を張りますが、網の中に入っているかどうかが最後の最後までわからないのです。
全長750メートルほどある網の大半は機械を使って揚げますが、最後の10パーセント程は人力で船に揚げます。
スズキが網に入っている場合だと早い段階で網の中を泳ぎ回っている姿が見えるので、量の多寡がある程度わかります。

ところが真鯛の場合、他の魚だと姿が見えるくらいに網を絞り込んだ状態でも何も見えないのです。
そこで「ああ、この網には真鯛は入らなかったか」とがっかりしながら網の残りを揚げていると、突然、最後になって白い腹を見せて海面に浮かび上がってくるのです。

真鯛は浮袋での浮力の調整がうまくないようで、網に入って海中から引き揚げられると、浮袋が膨れ上がり腹を上にして海面に漂います。

面白いもので魚体の大小に関わらず、網に入った真鯛はほぼ全体が同時に浮かび上がってきます。

今回の一番の大漁の時、真っ先に気付いたのは親方です。

皆で網を揚げている時、先述のとおり網をある程度絞り込んでも魚の姿が見えなかった為、皆、この網は外れだと思っていました。
すると親方が突然、

「へえったぞお!!」と声を張り上げたのです。

「へえった」は「はいった」の江戸弁ですね。
文字で書くと野暮に思えるかもしれませんが、現場でこの言葉を耳にすると格好よく、活気がでます。

親方の視線の先を見ると、船尾方向の海面に真鯛が大量に浮かび上がっており、さらにそれを機に皆の手元辺りにも次々と真鯛が浮かび上がってきて、船上は大童となりました。

この写真、わかる人が見たら
「真鯛同士ががこすれている!網を締めすぎてスペースがないからだ!ウロコが落ちるし魚体に良くない!」
と言われるでしょう。

しかしこれ、実際のところはまだ全然網を締めていません。
通常の量の鯛であれば、網の一番最後に揚がる部分に逃げて行って、最後の締め込みの時に一斉に浮上してきます。
しかしこの時は網の中で鯛が渋滞のような状態になり、網を締めこまないうちから続々とあがってきてしまったのでした。

そして網を締め終わると運搬船に積み込むのですが、小さなタモで少量ずつ手作業ですくわねばなりません。

(上の画像は三年前のもの)

何故だかわからないのですが、鯛は一度膨らませた浮袋を縮める術をもたず、このまま水槽に入れても腹を上にしたまま漂い続け、最終的に死んでしまいます。

これを防ぐためはにエア抜きという作業が必要になります。
鯛の浮袋に穴を開けて空気を抜くのですが、この措置を施したうえで適温の水に入れれば、通常の姿勢に戻って元気に泳ぎます。

エア抜きや水槽の水温に関することなど書きたいことはまだあるのですが、長くなりすぎるのでそれはまたいずれにします。

2022.10.14 魚へん あき

めっきり寒くなりましたが、暦の上ではまだまだ秋です。

秋の風物詩に挙げられるサンマは漢字だと秋刀魚と書きます。
では、

魚偏に秋と書いて何と読むか、ご存知でしょうか。

ネットで「さかなへん あき」で検索すると真っ先に「かじか」とでてきます。

カジカは東京湾では獲れないのでイラストになりますが、顔の大きな愛嬌のある魚です。

この答えに「え?」と疑問を持たれた方はいらっしゃいませんか。

私がそうなのですが、魚に秋と書いて私は「イナダ」と認識していたのです。

こちらがイナダ。
私がこの漢字をイナダと覚えた根拠はこれです。

この誰もが知る国民的な柄の湯呑、ここにしっかりと書いてあります。

では先ほどのネットの検索結果か、この湯呑のどちらかが間違っているのだな?と思われるかもしれませんが、さにあらず。

どちらも正解なのでした。

いくつかの漢字辞典系のサイトで調べたところ、「鰍」の読みはもれなく、「かじか・いなだ・どじょう」と書かれていました。

実際にスマホとパソコンでそれぞれを平仮名から漢字に変換したところ、スマホではカジカのみでしたが、パソコンではカジカ・イナダ・ドジョウのいずれもが「鰍」に変換されました。

う~~~む。

カジカ・イナダのみならず、ドジョウという第三の伏兵までもが登場しおった。

いいんすか?これ。

一つの漢字に全く違う三種類もの魚をあてがってしまうなんて。

「きょうは かじかと いなだと どじょうを つりました」を漢字に変換したら、

となってしまいますぞ。

日本の漢字を司る方々、ほんとにこれでいいんすか?

なんて思っていたら、
魚へんに石で「カジカ」という漢字がありました。
この「鮖」はカジカとしか読まないようです。

それにしても、カジカという魚に鰍と鮖という漢字を二種類も与えるなんて、これはこれでまたややこしい。

ほんとにこれでいいんすか!漢字を司る方々!

2022.9.30 さんま

秋も深まり日中もだいぶ過ごしやすくなってきました。
代表的な秋の魚といえばサンマ、サバ、イナダ、秋鮭、戻りガツオが挙げられます。

上記のうち私達の漁場で獲れるのはサバとイナダですが、今年はどちらもまとまった回遊はなく獲れていません。

サバに関しては、10年くらい前までは秋になれば連日10トン単位で獲れたものですが、魚種交代か何か原因はわかりませんが、ここ数年はたまにイレギュラー的に数トン獲れる程度しか漁獲はありません。
海流の影響で東京湾が回遊ルートから外れたのか、それともサバの絶対数が減ってしまったのか、理由はわかりません。でもまた、運搬船をサバでいっぱいにするくらい獲りたいものです。

ちょっと前の話題になりますが、サンマの初水揚げをニュースでやっていました。
サンマも昔と比べると漁獲の時期や場所がだいぶ変わってきているようで、インタビューから聞こえるサンマ漁師の声は「獲れねえなあ」という嘆きが多いように感じます。

サンマは漁獲がだいぶ減っているのは知っていましたが、今年は少ないうえに魚体が小さいようです。

スーパーで買ってきました。

売り場にはだいぶ見た目の異なる二種類のサンマが売られていました。

メジャーの上側は1尾108円で86グラムと81グラム。
下は1尾199円で123グラムと118グラムでした。
皆さんはどちらを買いますか?

上側は国産の新サンマで、下は台湾産の解凍物でした。

上のサンマ2尾は、間違いなく国産新サンマ(といって売られていたもの)ですが、お腹が破れてしまって鮮度が良くないように見えます。

これは私の推測ですが、初めはもう少し高めの価格で売っていたけれど、あまりに値段と釣り合わない貧相な型と皆に思われ売れ残ってしまい、しかたなく見切り処分の投げ売りをしたのではないかと思います。

さすがにこんな状態の内臓は火を通しても食べたくないので、腹を出してから塩焼きにしました。

上が国産の生、下が台湾産の冷凍です。

見た目にたがわず、冷凍もののほうがおいしかったことは言うまでもありません。

ちなみに皿の上部の白い物体は、さんま塩焼きには欠かせない大根おろしで、富士山をイメージしております。

なんとなく遊び心で大根おろしで富士山を作ったつもりでしたが、出来を見たら中心が押し固められた大根おろしが皿の上半分を占めているだけですね。

己の造形センスのなさに絶望です。

絶望に打ちひしがれたまま食べたサンマは、はらわたは抜いたはずなのになぜかほろ苦い味がしたのでございました。

2022.9.13 ジンタ 南蛮漬け

ジンタが少々、網に混じってきました。

ジンタとは小さいマアジの地方名で、だいたい10cm未満のものを指します。
一般的には豆アジというほうが通りが良いかもしれません。

「ジンタ」という語をネットで調べると、「明治中期に興った市中音楽隊につけられた愛称」という記事と、小アジの記事が半々の割合で出てきました。

私は「ジンタ」という言葉に小アジ以外の意味があることを初めて知りました。
この市中音楽隊と小アジに関係性があるのかどうかはわかりません。

ジンタ(豆アジ)はスーパーでパック詰めにされて売っているのを見かけますが、私たちの網に入る程度の量では売りに出しても全く採算が取れません。
なので、いつでもオカズとして持って帰れます。

私は今回、南蛮漬けを作りました。

この写真には数十尾しか写っていませんが、フレームの外にある発砲スチロールにたくさん入っており、全部で百数十尾を捌きました。

だいぶ涼しくなってきたとはいえ魚の調理をするにはまだまだ気温が高く、一度に全ての魚を捌こうとすると鮮度が悪くなってしまうので、半分くらいずつ処理していきます。

小アジの処理は他の小魚に比べてとても楽で、時間がかからないのがありがたいです。
ご存じの方も多いでしょうが、「エラ、内臓、胸ビレ、腹ビレ、ヒレの付け根の固いところ」が、ひとまとめでヒョイッときれいに取れます。

処理が簡単な上に、今回程度のサイズなら骨もさほど硬くないので二度揚げの必要がありません。

揚げたらタッパーに並べて

その上に野菜を敷き詰め

さらに魚を並べて

また野菜をのせ、漬け汁を注ぎます。

数時間、冷蔵庫で味をなじませればおいしい南蛮漬けの出来上がりです。

とっても楽!!(他の小魚に比べて)

南蛮漬けには制作途中のお楽しみもあります。

揚げたてをつまみ食いです。

始めは何も考えずに塩コショウを振りましたが、試しに何もまぶさずに食べたところ、それでも充分においしかったです。

塩を使わずともおいしいなら、使わないほうがヘルシーでよろしいですね。
まあ揚げ物を大量に作ってヘルシーもへったくれもあるかい、というご指摘もありそうですが。

そういえば、素揚げは唐揚げに比べてカロリーやGI値(※)が低いと言います。
私はいつも魚に片栗粉をつけて揚げていましたが、今度、素揚げで南蛮漬けも試してみようと思います。

(※)GI値とは食後血糖値の上昇を示す指標

2022.8.30 ぎら ぜんめ ぎんだべら

タイトルは何のことかと思われる方も多いでしょう。

これは下の魚の私の周りでの呼ばれ方です。

この魚の標準和名は「ヒイラギ」で、「ぎら」「ぜんめ」「ぎんだべら」は地方名であり、私の知る船橋界隈での呼ばれ方です。

普通、同一種で呼び名が複数ある場合というと、その大きさで呼称が変化することが多いと思います。

いわゆる出世魚のことで身近な例では

セイゴ→フッコ→スズキ

シンコ→コハダ→コノシロ

ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ
など、何cm~何cmはこの呼び方、となっています。

しかしヒイラギの場合は大きさによる区分はなく、単に呼ぶ人の好みで上記の名のいずれかが使われます。

私は「ぎら」という呼び方を好みます。
元の「ひいらぎ」の語感に近いうえに短くて言いやすいのが理由です。
「ぜんめ」だと元の「ひ」「い」「ら」「ぎ」の一文字も使われていないし、「ぎんだべら」だとヒイラギより一文字多くて長いし、なんだかしっくりこない気がするのです。

まあ通じればなんでもいいんですがね。

このヒイラギですが、十数年前は漁場にたくさん居たのに、いつの間にか姿を見なくなっていた魚です。
それが今年はちょくちょく現れるようになりました。

この魚は関西方面では好む地域もあるようですが、関東ではあまり売れません。

最大で15cm程度な上にそれほど大きな群れは作らないので、網に入ったとしても精々が数十kgといったところであり、関西まで運ぶ労力を考えると儲けになりません。

それゆえ好きなだけお持ち帰りできます。

100尾ほどもらって帰り、刺身、塩焼き、干物、から揚げ、南蛮漬け、ホットサンドメーカーはさみ焼き、にしました。

このヒイラギの特徴として、「ぬめりが強い」と「トゲが鋭い」というのがあります。
ぬめりは調理をする過程で塩や酢を使えば除去できるからよいとして、トゲがやっかいです。

小さく短く目立たないけれど、硬く鋭い。
しかもそれが上下に三か所もあり、避けづらいのです。

船上で網を揚げている時など、見逃してうっかり網とともに掴んでしまうことがあります。
たいへん、痛いです。

トゲが硬いだけあってか中骨も全般的に硬く、塩焼き、干物にしたものは私は中骨は食べられず、身をむしって食べました。

そして南蛮漬けを作る際には二度揚げをしたうえに二日も漬け込んだのに、食べると骨がいくばくか口内で当たり、気になりました。


なかなか骨のあるヤツです。

骨のあるヤツは人間だと誉め言葉ですが、魚の場合は好ましくありませんな。

丸ごと焼くホットサンドメーカーはさみ焼きですが、頭も中骨も硬いうえ、内臓はかなり苦く、これは私には無理でした。

身の味はとても良いので、この魚を食べるには刺身が向いていると私は感じました。


関東では全く売られていませんが、料理屋などで見かけたら食べてみる価値はある魚です。

2022.8.14 太刀魚の 尾(?)

以前、太刀魚の大きさを測るときは全長ではなく体高を、それも指何本という単位で測るという記事を書きました。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1672/

その記事の補足というか、関連記事です。

太刀魚を多く見ていると、百尾の中に最低でも一尾ほどの割合で体の後半が切断されてしまったかのような個体がいます。

漁の時に傷つけてしまったわけではなく、その証拠に傷口(?)は皮で覆われています。

太刀魚というのはどうやら、大きい個体が小さい個体を食べてしまうようです。
つまり体の後半がない個体は、小さい時に仲間に後ろをかじられてしまったものの、生き残って成長したということです。

このかじられた太刀魚の割合は1%くらいと先ほど書きましたが、全くもって適当な数値なのでさほど信用なさらぬよう。
漁をしているとそこそこ見かけるというというニュアンスです。

これは太刀魚を狙って釣る人には常識らしく、「タチウオの共食いパターン」などと呼ばれ、なんと、釣った太刀魚の尾を餌にしてそれでさらに太刀魚が釣れるらしいです。

太刀魚がなにかの刺激で興奮状態にあると、他の太刀魚のこの細い尻尾のヒラメキやキラメキに反応し、食いついてしまうらしいです。

とんでもない魚ですな。

まあそれはともかく。
この体の後半を食べられてしまった太刀魚ですが、以前、こんなに大きなものもいました。

指、七本はあろうかというビックサイズで、通常の太刀魚としては最大サイズに近いものです。
(下に敷いている発泡スチロールは、長辺79cmのものを2枚並べています)

これは、大きくなってから他の魚にかじられたというより、小さい頃にかじられたけれどそのまま大きく成長した、と考えるのが自然だと私には感じられます。

つまり、太刀魚の体の後半のこの部分は、無くてもなんとかなるってことですね。

無くてもなんとかなる上に、下手すると仲間を刺激して襲われる要因になるこの部分、いずれ進化するにつれて短くなり、最終的にはなくなるんじゃなかろうか。
つまり、今は少数派の、かじられて後半がない形態が通常の魚体になる感じ。

でもなあ。
尾までシュッとした刀のような姿だからこそ「太刀うお」な訳で、そのシュッとした部分がなくなっちゃったら、ただの「ナタうお」だなあ。

そんな風情のない名前になったら嫌だなあ。

 

2022.7.30 カキ落とし

暑い夏になりました。

夏になると人も魚も活発になります。

フジツボも活発になります。

フジツボは暑くなると元気になり、船の水面下のあらゆる箇所に取り付きます。

それは漁師のみならず、全ての船乗りに忌避されます。

フジツボが船乗りに嫌われるのはなぜかといいますと、フジツボが船底に大量に張り付いてしまうと、航走時の抵抗がとても大きくなるからです。

船の速力は大幅に落ち、燃費は悪くなり、船体に嫌な振動が発生します。

船乗りにはデメリットしかありません。

フジツボがどのようにして船底に付き、育つのか、細かいプロセスは私は知りません。

私の経験上から言えるのは、動かしていない船にはみるみる付着していくということです。

これは3か月の間、動かさなかった船の舵とプロペラです。
一面にフジツボが付着しています。
(プロペラシャフトの下半分はすでに軽くこすってしまっています)
ちなみに私たちが普段、漁に使っている網船はこの船の隣に係留していますが、舵や他の場所にもフジツボは殆ど付着していません。

ですから恒常的に強い水流を受ける場所にはフジツボは付着、もしくは成長できないのだと思います。

このフジツボを剥がす方法ですが、スクレイパーを使って地道にこそげ落とすしかありません。
大雑把にザッと剥がしても、フジツボ上部の殻は落ちますが、基部というか底部というか、張り付いていた基礎の部分はなかなかスクレイパーでは取れません。

しかし取れないまま放置するわけにはいかないので、高圧水流を当てたり、ディスクグラインダーという回転ヤスリで磨いて綺麗にします。
なかなか手間暇がかかります。

これがフジツボを落とし切った、通常の状態の舵とプロペラです。

今回の船の事例で言うと、これだけフジツボがついていると、通常の半分ほどの性能しか発揮できません。

動かさなければフジツボが付いてしまうけど、かといって用もないのに動かして油を無駄遣いするわけにもいきません。
フジツボの付着は船乗りにとっては本当にやっかいな問題で、いまだに世界共通の悩みです。

今回はフジツボの事しか書いていないのに、タイトルは「カキ落とし」です。

カキ(牡蛎、オイスター)も付くには付くんですが、私の体感では付着している99パーセントはフジツボです。

しかし、私の周りでは「フジツボ落とし」という人は一人もいません。
まあ、語感的に「かき落とし」のほうが言いやすいからなのだろうと思います。

もしくは、「カキ(牡蛎)を落とす」のではなく、「掻き落とす」という行為のことなのかな?

まあどちらが正しいのかはともかく、安価で安全なフジツボ除去の方法を考えれば、世界中から賞賛されること間違いなしでしょう。 (意: もうかりまっせ)

2022.7.16 アカエイの毒について

5月の終わりの記事で、スズキが常磐地方で大漁に揚がり相場が低いと書きましたが、大漁も長くは続かなかったようで今はスズキは旬時期の良い相場になりました。

新型コロナの感染者数が急激に増加していますが、行動制限は発令されないうえに感染症法上の分類を引き下げるべきとの提言も出ており、消費の拡大に少しばかりの光明が見えているように思います。

7月前半は台風4号の影響であまり出漁できなかったので、後半は頑張りたいところです。

タイトルのアカエイの毒についてですが、私が以前書いた記事に間違いがあったので訂正します。

上の記事内で私は、アカエイの毒は針を覆っている黒い粘膜である、と書きましたが、これは間違いでした。

正しくは「学研の図鑑 LIVE 危険生物 新版」より引用させてもらいますが、

「毒棘(どくきょく)の表皮の下に毒腺(どくせん)があり、毒棘が相手に刺さると表皮がはがれ、毒が傷口に流れ込みます」

というのがアカエイの毒の仕組みで、私が粘膜と思っていたヌルヌルしたものは表皮で、毒ではありませんでした。
道理でヌルヌルに触れても何のダメージもないわけと合点がいきました。
こちらが「学研の図鑑 LIVE 危険生物 新版」です。
今回、この図鑑に私の撮った写真が掲載されたことで間違いに気づけました。(赤丸で示した場所)
もし過去の私の記事を読んで、アカエイの毒は針の表面の粘膜である、と覚えてしまった方がおられたら、申し訳ありません。ヌルヌルはただの表皮で、その下の毒腺より毒が放出されるのでした。