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2021.4.10 コノシロの抱卵と身の味について

巷間言われている
「子持ちの魚は卵に栄養が全ていくから身は痩せておいしくない」
という説が本当なのか、コノシロで検証を始めて1か月経ちました。
私がたどり着いた答えは、
「コノシロは卵を放つ直前までは身に脂があり、おいしい」でした。

以下に検証結果を画像付きで解説いたします。

3月30日、同じ網で漁獲したコノシロです。

別の魚種かと思えるほどに体形が違います。
重量は上の太いのが261グラム、下の細いのが203グラムでした。

捌いてみたところ、太いのは抱卵中で、細いのは放卵後でした。
(前回の記事で3/26に漁獲した抱卵中の大きな個体について、産卵まで半ばほどか?と書きました。しかし3/30の漁で放卵後の個体が同時に漁獲されたことを考えると、前回のも合わせ、これらの太った個体はほぼ放卵間近なのかもしれません。)

下の卵ですが、捌くときに失敗して傷付けたのではありません。状況的に、産卵後の収縮した卵巣とみて間違いないでしょう。

三枚におろしました。画像中の魚の位置関係は上が抱卵中の太いもので、2尾とも保存方法も捌き方も全く同じです。

歴然とした身質の違いが見て取れます。
子持ちのほうは全体に脂がまわっていて白いですが、産卵後は脂が抜けて筋肉本来の赤色が強く出ています。

刺身で食べたところ、どちらも見た目通りの味でした。
太いのは脂がのっており前回と変わらぬおいしさで、細いのは全然脂のない、純なコノシロ味でした。
純なコノシロ味というのは、コハダに比べて身の味や青臭さ(?)などを魚体サイズに比例して強くした感じで、率直に言って可もなく不可もなく、普通の青魚といった味です。

まあ私がおいしいとかまずいとか言ったところで、味覚や好みなんて人それぞれだし、私にはコノシロに対する贔屓目があるでしょうからなんのアテにもなりません。
しかし今回の画像をみれば、卵の成長度合いと身の脂の具合がわかり、味の想像もつきやすいかと思います。

最初の繰り返しになりますが、「身の栄養を卵に取られる」というのは、さもありなんという理屈ですが、実際のところは明確に知覚できるほどでもなく、卵を放出するまでは身に脂はしっかりとあっておいしい。
というのが私の結論です。

もっとも、今回の放卵前の魚は、1か月前の子持ち始めの魚と比べたら味は落ちているのかもしれません。
それと「脂があっておいしい」と書きましたが、脂の量のみが魚のおいしさを決めるとも思っていません。
言ってはナンですが、コノシロというのはそれほど厳密に味を追求されるような魚ではないと思っています。

子持ちのコノシロが売っていたら、「見た目は太いけど身は痩せてマズイんだろ」と敬遠するのではなく、「身は太いし卵(もしくは白子)も味わえるしラッキー♪」と手を伸ばせば、魚食ライフがいっそう豊かなものになるのでは、と思います。

2021.3.27 子持ちコノシロの成長

コノシロが産卵に向けて徐々に成長しています。
巷間では、魚は卵を持つと栄養が全てそちらに回るため、身がまずくなる、と言われます。
今回は子持ちの魚の味と価値について、私が思うところを書きます。

1月に漁獲したコノシロとカタボシイワシです。
(今回の記事にカタボシイワシは関係ありません)


そしてこちらが先日、3月26日に漁獲したコノシロです。
1月に比べ、体高がはるかに増しています。


上は3月のコノシロを捌いた画像で、卵と白子がだいぶ成長しています。時期的には産卵まで半ば程の育ち具合かと思います。
3月のコノシロを食べた感想ですが、卵に栄養が取られ身の味がなくなったとは思えず、脂も以前との変化は感じませんでした。
つまり抱卵前と変わらずにおいしい、という感想です。

以前から思うのは、「卵を持つとそちらに栄養が取られてしまうから身の味が落ちる」という説は、事実ではあるけれど大雑把すぎる認識だということです。
抱卵初期から産卵までは、詳しくは知りませんが一か月からそれ以上かかると思います。
身にエネルギーが最大限に蓄えられている抱卵初期の状態と、卵に持てるエネルギーの大部分を注いだ産卵直前の状態を、ひとくくりに「子持ちの魚」としてまとめて同列に扱うのは少々乱暴かと思います。
卵の成長とともに身の味が落ちるのは事実でしょうが、それがはっきりと知覚できるほどになるのはいつ頃なのか?
確定的なことは何も言えませんが、とりあえず私の感覚では、昨日漁獲したコノシロ(抱卵 中期くらい?)は以前と変わらぬ味でした。

子持ちの魚の価値に関してですが、
例えば高級な和食で白身の刺身をだす場合には、身の味を最大限の状態にすべく子持ちの魚は論外でしょう。
逆に定食屋で定番の子持ち鰈の煮付けなんかは、卵が充分に成長したものを使いますが、身もちゃんといただきますよね。「身はまずいから食わねえ!」なんて人は聞いたことありません。
つまるところ価値は魚種と料理目的によって評価は全く変わるので、一概には言えません。

「子持ちはおいしくない」は一般にも浸透し、それによって魚価が左右されるほどの言説ですが、それに縛られてしまってはもったいない、と私は思います。

以上、コノシロがまだ放卵していないために味の検証はまだ途中ですが、今後も継続して賞味し、いずれ結果を書きます。

最後に。
イクラとかハタハタみたいな特殊タイプ以外の、オーソドックスな魚卵についてなんですけど。黄色っぽい極小の粒が細長い膜に包まれているやつ。
あれって鯛もスズキもサワラもイナダもアジもコノシロも、卵はどれも全く同じ味よね。
それとも、わかる人には違いがわかるのかなあ。

2021.3.13 ほうらん

4日に今期初の漁にでました。
3月に入ってすぐに、大事なポジションを担うメンバーがイレギュラーで辞めてしまい、少々厳しいスタートになりました。
来月には高校を卒業したての若者が二人来る予定ですが、彼らが戦力になるには時間が必要でしょう。
しばらくは慌ただしい操業になりそうですが、とにかく怪我のないようにやりたいと思います。

漁の模様は、コノシロとコハダがそれなりに獲れています。


出漁前に仕入れた情報では、コノシロはもう抱卵している(卵を持っている)から売り物にならない、と言っている人がいました。
売り物にならない理由は、卵を持っていると栄養が全てそちらにいき、身はおいしくなくなるから、というのが通説です。
私はこの説には疑問に思うことがあるのですが、それについてはまたの機会に書きます。
今月に入って実際に漁獲したコノシロは、卵も白子も持っておらず、しかも丸々としていました。

放卵(卵を産んだ)後ならば、痩せてもっと細くなるはずなので、これは抱卵前の魚ということになります。

ここで書いていてモヤモヤするのが、「ほうらん」という言葉です。
卵を抱える、いわゆる子持ちになる「抱卵」と、卵を産む、放つ「放卵」。
意味は真逆なのに発音は全く同じで、じつにややこしいです。

普通に会話している時に同音異義語が出てきても、会話の脈絡や発音の抑揚からどの言葉を使っているかの判断はだいたいできますが、この「ほうらん」はどちらの意味か把握できません。
放卵は水中に卵を放つという意味に限定されるようで、特に魚や水生動物に使う言葉のようです。
以前に書きましたが「荒天」「好天」も同じく、真逆の意味で発音が同じ、紛らわしい言葉ですね。

と、ここまでの文章を5日に下書きしておりました。
その時点でのコノシロは卵を持っていなかったのですが、11日に漁獲したコノシロは小さいながら卵を持ち始めていました。
どうやらこれから卵は大きくなっていくようです。

この11日のコノシロは刺身にして食べましたが、普通においしかったです。
これから卵の成長とともに身の味は大きく変化していくのか、漁獲したら毎回食べて検証しようと思います。

2021.2.28 網仕事で日焼け

2月いっぱいは船の整備と網の補修で、それぞれのチームに分かれて働きました。

毎年のことですが太陽の力、紫外線の強さに驚かされます。

寒いので皆、服を何重にも着込み完全防御で仕事をするのですが、網仕事は基本的に指先を使う細かい作業です。

それゆえ手だけは常に露出しており、その結果、袖から出ている手先だけ日焼けします。

考えてみるとこういう日焼けのしかたってあまりないと思います。
手袋をした部分だけ日焼けせず、手先だけ白いというほうがよくあるパターンかな、と思います。
船橋港内の漁師を見ていると、手袋をして網仕事をしている人もいます。
手袋をはめて精密作業をこなす仕事もあるし、できる人にはできるのでしょう。

ちなみに大平丸で一番仕事が早くて正確な網長は、指先の開いたオープンフィンガーグローブをはめています。
私には網仕事は素手でないとやりづらく、今後も手袋はしないと思います。
素手感覚で仕事ができる手袋があれば、喜んで使うのですが。

さて、網補修も船の整備もそろそろ終わり、まもなく出漁です。

今期こそは良い漁を期待しております。

ただ今回は書く時間がなかったのですが、海の様子で変化がありました。
船を陸に上げたときに、船底に前例のない物体がへばりついていたのです。
どうやら「カンザシゴカイ」という生物の一種のようですが、近いうちに記事にしたいと思います。
少し下に写真を載せますが、ウネウネ系が苦手な方には目に毒なので、ご注意ください。

 

 

 

 

2021.2.13 サッパ

前回、東京湾のアクアライン以北からサッパが消えたと書きました。
私たちは今は漁に出ていませんが、底引き網は出漁しています。
そこで水産会社の人に、サッパを見かけたら取っておいてほしいとお願いしておいたら、手に入りました。
これがサッパです。

このサッパはウロコがだいぶ剥がれてしまっているので、そこまでカタボシイワシに似ているようには見えないかもしれませんね。
下の写真の一番上が小さいカタボシイワシです。

底引き網漁船の漁場は、私たち巻き網とそんなに変わらないので、サッパは東京湾に普通に居たということになります。
水産会社の人に聞いても、「前から居るよ」と言っていました。

持論に固執するわけではありませんが、ここ数年、私たちの網には全く入らなかったので、消えたものと思っていました。

サッパを全く見なかったということには、運搬船の船長も頷いてくれています。
網船が獲った魚は全て運搬船に揚げますが、船長は全ての魚を見ています。この人が見ていないと言うなら、網には間違いなく入っていません。

しかしまあ、そのうちにまた巻き網にも入ってくるようになるのかもしれません。
仲間が、サッパが居るならイワシを期待できるかな、と言いました。
以前、マイワシが大漁だった年に、サッパも多く沸いており、イワシと思って網を張ったら大量のサッパで難儀したことがあったからです。
いやほんと、マイワシがきてくれることを強く願います。

ところでせっかく久し振りのサッパなのでいただくことにしました。

こちら、希少な東京湾船橋産のサッパをふんだんに使用した、お造りと塩焼きの一皿でございます。

お皿がデカいという御指摘には当たりません。
サッパが小さいのでございます。

2021.1.30 一月の漁終了

今月は21日で漁を終了し、少し早めに整備期間に入りました。
5日の初漁から21日までに5回、コノシロ漁に出た漁獲は、満船が2回、中くらいが2回、空っぽが1回でした。
1月としてはまずまずの成果でした。

この満船になった2回ですが、獲れた漁場が離れていました。
一回は港のすぐ近くでしたが、もう一回は港から1時間ほど南下した場所でした。
面白いことに、南で獲れた日には、前回書いたカタボシイワシが多く混じっていました。
多いといっても、北では数10トンの中に数尾だったのが、南では数10トンの中に数10~百尾くらいになっただけで、全体からみれば誤差程度の量です。
しかし南でコノシロにカタボシイワシが多く混じった、その後日、北でコノシロを同量獲った時には、カタボシイワシは数尾しかいませんでした。
このことから私としては、カタボシイワシはやはり、南の湾口の方から徐々に東京湾内に浸透し始めてきているのだと思います。
十年後くらいには東京湾内で大群が獲れることもあるかもしれませんね。
まあ言っちゃなんですが、カタボシイワシが大漁でも全く嬉しくありませんが。

ところで、カタボシイワシについて書いているうちに、東京湾の異変に気付きました。

ここ数年、サッパが全く居なくなってしまったのです。

東京湾といっても、私の知るのはせいぜいアクアラインあたりまでの狭い範囲ですが、サッパが消えてしまいました。

昔、といっても精々5~6年ほど前だと思うのですが、そのころにはサッパは大量にいたのです。
それこそ、スズキを狙った網にサッパが大量に入り、重さに困り、サッパなんて居なくなればいいのにと思うほどに。
珍しくもなんともない魚だったので、写真すら撮っていませんでした。

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ちなみに上は11年前に、すごく大きなサッパが獲れた!と思い撮った写真なのですが、今見たらカタボシイワシでした。

サッパは酢締めにして名産品にしている地域もありますが、私たちの漁獲対象魚ではありません。
それゆえ、居なくなったことにみんな気づきませんでした。
「最近サッパを見たか?」と聞くと、「そういえば見ないね」という程度の認識です。

まあ、話はこの、「サッパが居なくなった」という事実だけで、原因や理由の考察は別にありません。
ただ、居ないのが一時的なのか恒久的なのか、気になるところではあります。
サッパについて、またわかることがあればいずれ書きます。

 

2021.1.9 カタボシイワシ

5日に今年初の漁に出たところ、うまくコノシロを獲れました。
幸先がよいことではありますが、年初から緊急事態宣言がでたことを考えると浮かれる気分には到底なれません。
幸先が良いけど先行きは不安、と、真逆な感情に心が揺れて何とも言い難い気分です。
心配してもしょうがないのでいつも通り気楽な文を書きます。

大量のコノシロの中によく見ると、似ているけど違う魚が混じっていることがあります。

カタボシイワシです。
画像 真ん中がコノシロ、上下がカタボシイワシです。
ニシン目ニシン科で、コノシロやサッパ、マイワシやカタクチイワシの同類です。

網に混じる比率としては、コノシロ数万尾に対して1尾といったくらいで、きわめて少ないです。

私がこのカタボシイワシを見るのは、大量のコノシロに数尾混じっている時のみです。
それ以外では1年の漁を通しても見かけることはありません。

いつも不思議に思うのは、このごく少数のカタボシイワシはいったい、どういう経緯でコノシロの群れに混じるのか?ということです。
さきほど挙げたニシン科の魚は全て、大きな群れを作ることから、このカタボシイワシも通常は大きな群れで生活していると考えられます。
しかし、東京湾内でカタボシイワシの群れを獲ったという話は、聞いたことがありません。
それどころか、この魚を知らない漁師も多いくらい、なじみがありません。

本来はどこか遠くで群れなしている魚が、数尾だけ東京湾内に泳いできてコノシロの群れに加わる、理由と目的は?

異国のカタボシイワシの群れからはぐれて迷子になったところに、たまたまコノシロの魚群に出会い、同類だからなんとなく混じってしまったうっかり者なのか?
それとも、生息域拡大のために東京湾進出をもくろみ、同類のコノシロの群れに紛れ込んで環境調査をするスパイ的な奴なのか?

答えはわかりようもないのですが、生物はほんとに不思議です。

このカタボシイワシは市場では全く人気がありません。
そもそもあまり馴染みがないうえに、小骨が多いのがその理由とされています。

どんなものか確かめようと捌いてみたところ、まずウロコの固さに驚きました。

写真のピンセットの先にあるのがそれぞれのウロコで、見やすいように黒く塗りました。
上がカタボシイワシ、下がコノシロです。

全長はほぼ同じなのに、ウロコの大きさが全く違うのがわかると思います。

コノシロのウロコは薄く小さく、爪でこすれば簡単に剥がれるほどです。
一方、カタボシイワシのウロコは厚く大きく、身をしっかりと覆っており、包丁を力強く当てなければ剥がれません。
そしてバリバリバリ!と大きな音を立ててあちこちに飛び散ります。

スーパーなどで売っているニシン系の魚のウロコは、こすれて殆ど剥がれているのが普通ですが、カタボシイワシは自然には剥がれない固さですね。

「ちょっと今日は魚の塩焼きにするか」、なんて考えて、マイワシと同じ感覚でカタボシイワシを買って帰ったら、家で1尾ずつウロコをバリバリ剥がさにゃならんのは手間ですね。
そして三枚に下ろそうと身に包丁を入れると、コノシロと同じように、身に小骨が多く入っていてそれを断ち切る感触があります。
刺身と酢締めにして食べましたが、私にはイワシ系よりコノシロ・サッパ系に近い味に感じられました。

おいしかったのですが、やはり捌く手間や小骨の多さから、敬遠されるのもむべなるかな、といった感想でした。

この魚は近年になり、相模湾あたりで漁獲されることが増えてきたそうです。
東京湾内湾まで入ってくるのも時間の問題なのかな、とも思います。

2020.12.26 今年終了

25日、出漁予定日でしたが北風が強めだったために時化、今年の漁は終わりました。
来年の初出漁までは10日近く間があるために、網の掃除をしました。

揚網作業中に網の中に巻き込まれてそのままになってしまった魚を、1尾残らず取り除きました。
この時は2日前に網を張った時の魚が残っていました。
こういうものを私たちは「ヒヤメシ」と呼びます。

寒い今の時期だし量が少なかったので今回のものは原型を留めていますが、気温の高い時期や量が多い時だと網の中で腐って発酵してしまい、むせかえるほどの匂いを発します。
ヒヤメシが体に付くと、ちょっとやそっと洗ったくらいでは匂いが落ちません。

なので防御は万全に。
網をきれいにしたところで、今年の仕事は終了しました。

今年は毎年恒例の会社の忘年会が行われず、区切りというかケジメのない、なんだか気分的にスッキリしない1年の終わりかたでした。

2020は率直に言って大変な年でしたが、2021は良い年になればいいですな。

 

2020.12.14 コノシロとジャコ

コノシロ漁を継続しています。

今のところ出漁回数は少ないですが、出れば獲れるのでありがたいです。

去年の12月は10回出漁し、年末までコノシロは獲れつづけたので、今月も同じように獲れればと希望をもっております。

コノシロが獲れるのはありがたいのですが、今年は「ジャコ」が非常に多く、だいぶ苦労を強いられています。
「ジャコ」とはコハダのことです。

上がジャコ、下がコノシロ


私たちが現在ターゲットにしているコノシロは、水産加工業者に引き取ってもらっています。
加工業者には、コノシロは大きいほど喜ばれ、小さいものは敬遠されます。
理由は聞いたことがないので私の推測ですが、要は処理の効率の問題なのではと思います。
機械にしろ人手にしろ、1尾の魚を捌いたときに取れる加食部の量は、全長に対する重量は倍以上の比率で上がっていきます。
10cmのコハダと20cmのコノシロでは、捌く手間はさほど変らなくても、加食部の重量に2倍以上の差がでます。

イワシやサバなどであれば、全長に関係なくぶつ切りにして缶詰にできるでしょうが、コノシロをぶつ切りにした缶詰はありません。
やはりコノシロ系は捌く必要があると思われ、そうなれば大きいほうが効率が良し、となるのではと思います。

現在、私たちは去年とほぼ同じ漁場で働いていますが、去年はこの漁場にはコノシロしかおらず、魚群探知機に大きな反応が映ればすぐに網を張れました。
しかし今年はこの漁場にジャコが大量に発生し、大きな魚群を作っているのです。

今年は、「コノシロ」、「ジャコ」、「コノシロとジャコの混じり」の魚群が存在します。(あとカタクチイワシも大量に居ますが、網の目をすり抜けるサイズなので問題にはなりません)

親方と運搬船の船長が使っている魚群探知機は、群れの中の魚のサイズがわかる高性能なものですが、さすがにコノシロとコハダはサイズが近すぎて見分けがつけがたいそうです。

網を張って入ったのがジャコの大群だった場合、全部逃がすので、時間も手間もだいぶ無駄になります。

今、船橋では、3つの船団がコノシロを狙って漁をしています。
そうすると、どこかの船が網を張るのを待ち、その結果を見て判断するという戦法も考えられます。
しかし、それは必ずしもうまくいくとは限りません。
なぜならこれらの魚群は近距離で混在していることが多いのです。
どこかの船がコノシロが大漁でも、そのすぐ横で網を張ってもそちらはジャコが大量ということが往々にして起こります。


コノシロは月単位でみると継続的に獲れてはいますが、一日単位でみると、その日に一番早くコノシロの魚群を見つけた船が量的に優位な傾向があります。

網は早く張りたいけどジャコは嫌だ。しかし魚群探知機ではサイズが判断できない。

そこで親方が苦肉の策で実行したのが、コレ。

船の舷側から竿を出して、釣りです。
これで魚探ではわからない群れのサイズを把握しよう!という考えです。

これまでに2回、竿をだして釣りをしてみましたが、釣れたのはカタクチイワシ1尾のみでした。

結局いまのところ、確証の持てないままに「コノシロっぽい」反応で網を張るしかありません。
実は釣りの他に一つ作戦があるのですが、それはまだ実行していないので、いずれまた。

2020.11.28 太刀魚

たちうお タチウオ 太刀魚。
漢字で書くとかっこいいですね。
ここ数年、東京湾の湾奥にどんどん進出してきています。
最奥部の船橋港内にまで入ってくることもあるようです。

なかなかの大物が獲れます。
大きな太刀魚の塩焼きは、私としては塩焼きの中でトップランクの味です。
釣ると引きが強くて面白いらしく、色々な情報媒体で紹介されているようで、休日ともなると釣りのボートが多く出ています。
釣りで引きを楽しんだうえに帰っておいしく頂けたら、もう、たまらんですね。

ときに、太刀魚の大きさを測る指標って、ちょっと変わっています。
魚の大きさは通常、頭から尾までの長さを計測し、センチメートル表記で表すのが一般的です。

しかし太刀魚の場合は、体高(腹ビレの付け根から背の縁)を測ります。
しかも何故か、計測の単位は「人の指の数」なのです。
サイズを人に伝える時は、「指2本、小さいよ」とか、「指4本!悪くないサイズだ!」というかんじです。

上は「指5本の太刀魚」となります。
「何cmの太刀魚」という表現を、私はしないし、あまり聞いたことがありません。水産会社の人とも「指何本」で話します。

初めて聞いた方は、なんで太刀魚は全長ではなく体高で表すの?と思うかもしれません。
私も気になって少し調べたことがありますが、その理由を明確に述べている文は見つけられませんでした。

そこで私が考えた理由がコレです。

尾っぽ。しっぽ?

ほとんど身がありません。
というか、どこが尾っぽの始点なのか、いや、そもそもこれは尾っぽなのか?ということすらわかりません。

全体像を見ればわかりやすいかと思いますが、この、細~い尾というか、体の後端。

こんなとこまで全長に含めるのは、詐欺のような気がしませんか。
食べられるトコないし。
太刀魚を捌くときに私は、上の写真のサイズの場合、後端20cmほどは切って捨てます。


そして私が今まで見た感じでは、太刀魚の全長と太さ(この場合は体高)は、必ずしも比例していないように思います。
上の2尾並べた写真の個体は指4本ちょいで全長120cmですが、先ほどの指5本の個体は118cmでした。
写真はありませんが、指5本でも1m以下のものも見たことがあります。

全長が当てにならなければ重量で計測しては?となりますが、それはそれで、季節により抱卵や、胃の内容物によって大きく変化します。

その点、魚の体高は時期や個体による変化は少なく、それらを勘案したうえで、太刀魚は体高で測るのが良いと落ち着いたのではないか、と思います。

そして何故、単位が指なのかといえば、「何cm幅」と言われるより「指 何本分」と言われたほうが、直感的に想像しやすいからではないでしょうか。
サッと自分の指を出して確認できるし。

以上が私の推測です。

しかしこの「指何本」というのは、あくまでも漁師や釣り人の仲間内での話であり、市場ではキッチリと重量で取引されています。
さきほど重量は個体差が大きいと書きましたが、その個体差は市場の人が目利きして単価で調節するから特に問題はないのでしょう。

太刀魚の尾っぽ?に関しては、もう少し書きたいことがあるのですが、それはまたの機会にします。