投稿者「daiheimaru」のアーカイブ

2024.11.29 マイワシ大量

今年は夏ごろからマイワシの姿がちらほらと見えていましたが、ここ一週間ほどはかなりの群れが沿岸にまで押し寄せてきました。

ちょっとわかりづらくてすみませんが、夜の船橋港です。
マイワシの群れが水面スレスレにまで浮き上がり、港内をずっと泳ぎ回っています。

明るくなると下に潜るのか港外に出ていくのか、群れは見えなくなりますが、夜になるとまた同じ場所に出現します。

このマイワシの回遊は船橋だけではないようで、YOUTUBEの釣り動画を見ると東京湾奥 西側の若洲海浜公園でもマイワシの群れが来ている動画があがっており、東京湾奥 東側の市原の釣り公園でもマイワシの釣果報告が上がっています。

私がいちいち「マイワシ」と書くのは、東京湾には普段はマイワシはおらず、ここら界隈で「イワシが釣れた」といえばカタクチイワシを指すことが多いからです。

それと市原の釣り公園ではカタボシイワシがかなり釣れているようなので、それとも区別するためです。

市原にある釣り公園は正式名称を「オリジナルメーカー海づり公園」といい、有料ですがきれいでよく管理された施設です。
ここは数百人のお客の釣果を毎日一尾単位で集計し公表してくれており、頭が下がります。

そこの11月16日のデータを引用させてもらいますが、コノシロが1620尾、カタボシイワシが2000尾の釣果があったと報告されています。

このデータのカタボシイワシの量には私は驚きました。
なぜかというと、我々は先月からコノシロ漁を始めて数百トンのコノシロを獲りましたが、マイワシはともかくカタボシイワシは見ていないからです。

もしやカタボシイワシとマイワシを間違っているのでは?と勘ぐってしまいましたが、ちゃんと釣果とともに釣魚の写真もあり、間違いなくカタボシイワシでした。

マイワシとカタボシイワシは体型や顔つきなどがけっこう似ていますが、ウロコがあきらかに違います。
マイワシのウロコは指でこすった程度で落ちるほど薄く柔らかいですが、カタボシイワシのウロコは包丁を使って気合をいれないと剥がれない固さです。

さて現在、身近に押し寄せているマイワシの群れですが、サイズが小さくて我々の漁獲対象にはなりません。それどころか、網の目に刺さって網が揚げられなくなるトラブルの元なので、居てほしくないくらいです。
今は我々の前から消えて、もう少し大きくなってからまた現れておくれ、と願うばかりです。

2024.11.16 ネズミ返し

網がネズミに食われました。

私たちの漁は日帰りなので、通常は船に食料品は備蓄しておらず、ネズミが住み着くことはありません。
しかしコノシロ漁をしているとどうしても網の中に取り除ききれない魚が入り込んでしまい、それを狙ってネズミが船に乗り込んできます。

野良ネズミは衛生的に非常によくないし、網をかじって穴だらけにしてしまうので、退治せねばなりません。

方法としては船には殺鼠剤を置き、そして陸から係船索を伝っての更なる侵入を防ぐためネズミ返しを仕掛けます。

ネズミ返しはいたって単純なもので、円形のお皿に綱を通す穴を開けるだけですが、「船 ネズミ返し」で画像検索すれば同じようなものが世界中で使われており効果のほどがわかります。

親方がお皿を用意してくれたので、それで作ります。

作製の際のポイントとしては、綱にしっかりと固定されないよう、中央の穴を少し大きめにすることでしょうか。
こうすると上から乗り越えようとして前足をかけても、皿がクルクルと回ってしまい、力が入らないことでしょう。

これで侵入防止は完璧。
と思っていたのですが、ふと、親方も我々も、ネズミのサイズを小さめのハムスターくらいと思い込んでいたことに気付きました。

世間ではスーパーラットという大型で賢いネズミの出現が取りざたされて久しいです。
その大きさたるや全長25cm、尻尾も25cmにもなるとのことです。

そこでもしスーパーラットが我々のネズミ返しと対峙したらどうなるかやってみました。

余裕で越えてきますね。

港周辺のネズミがスーパーラットだった場合は、もっと大きなネズミ返しを作らねばならないことがわかりました。

あまり大きいと、風であおられたりしてすぐに壊れてしまうんですよねえ。
困ったもんです。

2024.10.31 コノシロ漁開始

コノシロ漁に移行しました。

前回記事を書いた時は夜に出港し、スズキをメインに狙いつつ混じってくる太刀魚を獲り、そして秋の気配と共に入ってきたイナダを漁獲していました。
スズキは夏に比べ沖で獲れる量は減ってきていましたが、私はまだしばらく夜の漁が続くと思っていました。

しかし10月の半ば辺りから、いよいよ涼しくなり始めたと思ったら突然、コノシロの群れが現れました。

この突然現れたコノシロの群れは大きく、一回網を張ればその日の必要量に充分に達する量が獲れるほどです。

しかもこの群れが港にほど近い場所にいます。

夜中にスズキを狙って遠出して何回も網を張るより、朝に出て近場で一回網を張るほうが効率は良いです。

私個人的には、漁は沖のほうが網に入る魚種が多いので楽しくて好きなのですが、好き嫌いを言っている場合ではありません。

今年もコノシロが獲れることに感謝しつつ安全第一で漁をしたいと思います。

2024.10.17 脂のないワラサ

イナダが網に200kgほど入り、その中に数尾、少し大きめのサイズも混じりました。

イナダはだいたい60cm、3kgまでとされますが、
この個体は67cmで3.5kgあったので、イナダより大きいワラサと呼んでさしつかえないと思います。

体高も体の厚みもあり悪くない魚と思い捌いてみましたが、結果、あまり脂がありませんでした。

身が全体的に黒っぽい感じだし、引いた皮にも脂のネトツキが見られません。

三枚におろして皮を引いた後の包丁です。
この大きな魚を捌いている途中に一度も拭いていませんが、殆ど脂が付いていません。

脂がない理由は明白で、この個体の胃袋は空っぽで何も入っていませんでした。
胃袋が空っぽなのに見た目は太り気味なのはどういうことかと言えば、これまでは順調に餌を食べて成長しながら回遊していたところ、しばらく餌に巡り合わない期間があり、胃の内容物を消化しきったところを私たちに漁獲されたということなのでしょう。

この個体はたぶん、東京湾に入ってきた直後に漁獲されたのだと思います。

何故ならば今、東京湾、しかも我々の主な漁場の東京湾奥には、ブリの好むエサが大量にいるからです。

先月の記事でソウメ(小さいマイワシ)が獲れたと書きましたが、その後もソウメは網に混じり続けています。
今月の12日には木更津でイワシが大量に打ち上げられたとニュースになり、そして昨日(16日)は私たちの網にソウメが大量に入り、網の目に刺さってしまい重くて揚げられなくなるトラブルが発生しました。

餌は豊富です!
ブリ及びイワシが好きなフィッシュイーターのお魚さん、是非とも東京湾奥にお出でになって!

 

2024.9.29 マルソウダ そうだがつお

スズキ漁の網にソウダガツオが混じって獲れました。

この魚は基本的には東京湾には居ませんが、年に数回、数十尾程度の単位で網に混じってきます。

鮮度落ちに厳しい魚なので鮮魚として売られることはあまりなく、知名度は低めかもしれません。

ひとことでソウダガツオと言いましたが、じつは「マルソウダ」と「ヒラソウダ」という二種が居り、両種の外見はとても似ているので普通の方には区別が難しいと思います。
上の写真はマルソウダです。

マルソウダとヒラソウダは一緒の網に入ることも多いのですが、今回はマルソウダしか居なかった為、外見の比較と見分け方はいずれヒラソウダが獲れたときにします。

さてマルソウダですが、漁獲されたものはほぼ「ソウダ節」に加工されます。
この魚は肉に血合いの部分が多いのです。

三枚におろしたところですが、身が真っ赤です。
血合い部分は生食ではきつくとも、加工すると今度はそれが濃いうまみのコクに変化しておいしくなるようです。

このマルソウダの血合いの多さは食中毒の一因にもなります。

血合いにはヒスチジンという成分が含まれているのですが、漁獲後に適切な温度管理をしないとこれがヒスタミンという成分に変化してゆき、このヒスタミンを多く摂取してしまうとヒスタミン中毒になってしまうのです。

食中毒というと怖いですが、症状としては顔の紅潮、蕁麻疹、吐き気、下痢、などがありますが、重篤化は滅多にないようです。

そもそもヒスチジンはアジ・サバ・イワシ・マグロなどにも普通に含まれており、過剰に恐れる必要はないかと思います。

ヒスタミンは一度生成されてしまうと加熱では破壊できないので、鮮度管理のなっていない魚にはそもそも手を出すべからずということですね。

今回私は刺身で食べました。

血合いの色は濃くとも血の臭みは全くありませんでした。

味は普通のカツオと同じですがややあっさりしており、脂はそれほどなく初ガツオに近い感じです。
特筆すべきは食感で、なんとももっちりと舌にまとわりつくような感じで面白くここちよいです。

小料理屋のマスターによると生姜を効かせた煮付けもこたえられないそうです。

漁師か釣り人でなければ入手は難しいかもしれませんが、もし機会があれば是非あじわってもらいたいと思います。

ヒスタミンですが、多量に含まれている物を口に入れると舌がピリピリとするらしいです。
何の魚を食べている時でも、薬味もいれてないのにピリピリしたらヒスタミン中毒を警戒する、という知識を頭の片隅に置いておくといいかもしれませんね。

2024.9.14 そうめの塩焼き

今年は6、7、8月とスズキ漁とコハダ漁が好調でしたが、9月に入った途端に調子が悪くなりました。

台風の影響などで9日に一回出漁できただけで、しかもその時はスズキ漁は芳しくなく、更にコハダも需要が無くなり大きく値下がりしてしまいました。

ここらでサバのような回遊魚が湾内に入ってきてくれると嬉しいのですが、昨今の高温化を思うと望みは薄そうです。

この9月で一度だけの出漁の時に、「そうめ」がほんの少し網に入りました。

そうめとは私たちは小さいマイワシのことを指して呼びますが、ネットで調べても出てきません。
おそらくここら地域限定の俗称なのでしょう。

このそうめは数キログラム程度の量では売り物にならないので普段は海に返してしまいますが、今回は運搬船の船長がオカズ用にといくらか取っておいてくれました。

このそうめの食べ方は塩焼きがお勧めです。
ウロコだけは落とす必要がありますが、あとは丸ごと塩を振って焼いて、頭から丸ごと頂きます。

頭は香ばしく、エラは甘く、内臓は苦すぎず、中骨は気にならず、身は当然おいしい。

じつに文句の付け所のない素敵なおつまみです。

以前に記事にしましたが、このそうめが湾内に大量にいると我々としては困ったことになります。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1207/

なので、もう一回り大きなサイズのイワシが回遊してきてくれると嬉しいのですが、なかなかうまくはいかないもんです

2024.8.31 えぼだいの酢締め

小さなエボダイが網に混じってきました。

エボダイとは俗称で標準和名はイボダイです。

おいしい魚なのに「イボ」なんて名ではあまり気分が良くないから、エボと呼ぶようになったと聞いたことがあります。

この魚は昔から夏場に網に混じってきますが、まとまって獲れることはなく、せいぜい数キログラム単位です。

大きさは大人の手の平くらいあれば良いサイズです。

今回網に入ったのは大きいものは14cmありましたが、小さいものは尾まで含めて10cm程度で、売り物にならないサイズでした。
生きていれば海に返すところですが、クラゲにもまれて死んでしまっており、もったいないからと運搬船の船長が私にくれました。

小さいから塩焼きでは身をほじるのが大変そうなので、三枚おろしで酢締めにして中骨を溶かし、なるべく大きな塊で食べられるようにしてみました。

結果は満足のいくものでした。
エボダイは小さくても旨味が強く、味がしっかりとしており、とてもおいしかったです。
(写真の一番右だけは違う魚、キビレです)

そういえばエボダイについては過去に取り上げた記憶がないので、大きいものが獲れたらまたリポートしたいと思います。

2024.8.16 コハダの握り

台風7号が関東に迫ってきており、豪雨と強風による災害が警戒されています。

先月は船橋の巻き網船団はスズキ漁が好調でしたが、この台風7号による強い北風と流れ込む大量の真水で、海の状況がだいぶ変わると思われます。
今後の漁にどのような影響が出るか気になるところです。

今年の夏は、夜にスズキ漁をして朝にコハダ漁をするというパターンでした。

このコハダ漁をやっている時、7月の終わりくらいから8月の初めまで、わずかな期間ですが、コハダより更に小さいシンコがいくらか獲れました。

シンコとされるのはだいたい4cmから7cmで、実際に見ると
「食べるところなんてあるの?」と思ってしまう大きさです。

そしてお寿司以外の活用は聞いたことがありません。

コハダの酢締めでさえあっさりした味なのに、それより小さいシンコはどんな味なのだろうかと思い、握りを自作してみることにしました。

いざ捌こうと思ったら本物のシンコはあまりに小さすぎて私には無理だったので、ちょっと大きいコハダを捌きました。

大きいと言っても11cmで、アジなら唐揚げにして丸ごと頂いちゃうサイズです。

捌くと身はいくらもありません。

そしてお寿司にしようと思い米を炊いて酢飯を準備したのですが、ここで問題がありました。

私はお寿司を握るのなんて簡単だろうと思っていたのですが、全く形ができませんでした。
シャリというのがうまく作れず、どうしてもおにぎりみたいな大きさと形になってしまうのです。
仕方ないのでシャリの自作は諦め、スーパーでお寿司セットを買ってきて載っている具を剥がし、コハダの酢締めを載せました。

そしてできたコハダの握りですが、正直にいって残念な味でした。
日持ちの為もあるのでしょうが寿司パックのシャリは酢が強すぎて、コハダの淡い味わいを消してしまっていました。

やはり、コハダ(シンコ)は江戸前寿司職人の腕前の見せ所と言われるだけあって、素人が簡単に真似できるようなものではありませんでした。

ちなみにこれが私の作ったコハダの握りです。
本当にオニギリみたいなサイズになってしまいました。

いやほんと、いつも思うことですが改めて、プロが簡単そうにやっていることを実際に自分でやると難しいですねえ。

 

2024.7.30 アカエイの持ち方 写真

前回アカエイの持ち方をイラストとともに解説しましたが、私のつたないイラストでは分かりづらかろうと思い、今回大きなエイが獲れたのでそれで写真を撮ってみました。

まず、私らが安全だと思い実践している持ち方を二点紹介します。
持っているのは22歳の細マッチョ君です。

持ち方①
噴水孔に指を入れ、エイのお腹側を自分に向け、自分の体からは離して持つ。

持ち方②
尻尾の先端をもって宙吊りにする。

①だとエイがどんなに尻尾を振り回しても、持っている本人には当たりません。
②ではエイは自身の重さにより全く身動きがとれず、毒針を振るえません。

では次に危険な持ち方です。

これは持ち方①と同じく噴水孔を持っていますが、エイの背面を自分に向けてしまっています。
この持ち方だと、尾が自由に動くので思い切り刺されます。

そして最後に、そもそもの掴みにいくときの姿勢です。
このように身を乗り出していくと、
尾が跳ねてきて危険です。
(もっともこの写真の位置取りだと毒針は届きませんが)

なので、
このようにとにかく尾から遠ざかる位置取りで噴水孔を掴んでください。

今回のエイはなかなかの大物で重量はかなりありましたが、目方を量るのを忘れていました。
モデルの若者に様々な持ち方をしてもらいましたが、彼の腕に浮き出ている血管や筋肉をみてもらえば、その重さを感じてもらえるのではないでしょうか。(10kg近くあったのではないかと思います)

こんな大物に刺されたら、ただの怪我ではすまないこともあり得ます。
皆さまがた、釣りや海水浴など、エイに遭遇する可能性がある場合は充分にご注意ください。

2024.6.29 アカエイの持ち方

仲間がアカエイに足を刺されました。

船のデッキ上で、大量のコノシロとクラゲの下に埋もれて見えなかったアカエイを踏んでしまい刺されたようです。

長靴をたやすく貫いた針は足の側面に深々と刺さり、大変痛そうでした。

思えば船団で仲間がエイに深く刺されたのは数年ぶりで、その苦しみようを久し振りに目の当たりにしてエイの危険性を再認識しました。

ただ、危険とはいってもエイから攻撃を仕掛けてくることはありません。
事故は、お互いが接近に気付かず触れ合ってしまった場合に起こります。

姿が見えない場合の対処法はありませんが、陸上で本体が見えている場合の安全な持ち方についてならば私達にはノウハウがあります。

持ち方は二つあり、噴水孔に指をいれるか、尾の先端を掴む方法です。


それぞれ長所と短所がありますが、まずは噴水孔から説明します。

噴水孔とは体の上面の前部、目のすぐ後ろにある二つの穴で、人間でいう鼻のようなものです。

ここに親指と中指を入れると大変持ちやすく、投げるのも楽なのですぐに海に返せます。

短所は、尾はフリーなのでエイはブンブン振り回すので、尾の可動範囲を見切っていないと自分にも周囲にも危険を及ぼすことです。

尾の先端をつかむのは、細くて動く先端をキャッチするのがちょっと難しいうえに毒針が近いので少々危険です。
しかしエイの尾はしなやかに動くもののパワーは全くないので、一度しっかりとつかんで持ち上げてしまえば、もう危険はありません。

噴水孔、尾、どちらをつかむにしても、自分の体がエイの上方向にあると刺される恐れがあります。

緑の範囲くらいが毒針の到達距離で、背面のほとんどは危険区域です。
なので前後方向、水平方向からつかみに行くのが安全です。