投稿者「daiheimaru」のアーカイブ

2020.3.30 コノシロ終了?

コノシロがだいぶ少なくなりました。
いるにはいるのですが、群れが小さく一回の網で獲れる量が減ったうえ群れ自体も多くない。

思えば去年の11月半ばから獲れはじめ、12月、1月とコノシロとしては良い漁獲をあげることができたので、私としては充分ありがたい気持ちです。
季節が変わって海の様子も変化してきて、コノシロの群れを狙った網の中に、コハダやナカズミが混じるようになりました。

コハダ・ナカズミとはコノシロの成長前の呼び名です。
同じ網に入ったコハダ・ナカズミ・コノシロは、用途によって売り先と価格が大幅に違うので選別をします。

コノシロの中から皆で小さいコハダを拾っています。
この日のコハダ1キロ当たりの相場は、コノシロの30倍でした。

コハダは高く売れるのでありがたいのですが、需要はそれほど多くありません。
この写真を撮った日はコハダが多く入り、鮮魚として高価格を保って出荷できる量を超えていました。
こういう場合、超過分のコハダは加工屋にいきます。

ここで価値の逆転がおこり、コハダはコノシロよりも安くなります。
1尾の魚としてみればコハダよりコノシロのほうがお肉がずっと多いのだから、うなずける話だと思います。

こんな時は親方のお許しが出るので、もらって帰って酢締めにします。

50尾近くさばいて、塩を振ってしばらく置き、洗って酢に漬けて、とやっていくと、2時間以上かかっちゃいます。
手間はかかりますが酢締めはほんとうにおいしいです。やはりこんなことを考えつく昔の人はすごいとしみじみ思います。

問題はひとつ。作るのに時間がかかるけど、食うと一瞬でなくなっちゃうんだよね。

とまあ、とりあえず私たちは今のところ通常とたいして変わらず仕事をできていますが、これからしばらく先はどうなっちゃうんでしょう。
アメリカとイタリアの例をみるに日本においても今後、コロナの脅威は増す一方だと私は思います。

来月、再来月あたりも、能天気な記事を書きたいものです。

2020.3.18 コノシロ漁に群がる鳥

2月の整備期間が終わった後はしばらく強風で時化が続き、前回から数えると6週間ぶりくらいに出漁しました。
ありがたいことにコノシロが獲れたうえ、ありがたいことにそのコノシロはちゃんと売れました。

今月になっていきなり鳥が増えました。
これは網を張った直後の写真です。
カワウとウミネコが大量に寄ってきました。

この写真だとたいして多くは思えないかもしれませんが、実際に間近で見るとなかなかの数です。
不思議なのは、先月は鳥がこんなに集まることは全くなかったのに、今月になったら急に増えたことです。
まあ正確に言うと鳥の数自体は以前から多くいるのですが、網にこれだけ寄ってくるのが珍しいのです。

私は鳥のことは全然知らないので、もしかしてそろそろ繁殖期で餌をたくさん食べようとしているのか?というくらいしか考えつきません。
ちなみにこの鵜(う)ですが、けっこうかわいい顔をしています。

これは去年、なぜか陸で一羽だけウロウロしていた鵜の子供?
です。たぶん迷子にでもなっていたのかもしれません。
なんかかわいいから皆で魚をあげたのですが、サンマ1尾とイワシ4尾をペロリと丸飲みしました。
普通に生活しているぶんには鵜と接触する機会はまずないでしょうが、クチバシはけっこう硬くてとがっているので、触るときはご注意ください。

2020.2.29 網仕事

2月は出漁せず、船の整備と網の補修を行っていました。

ひとくちに網の補修といっても様々な作業がありますが、今回はキアミのセバについて書きます。
キアミとは新品の網のことで、セバとは網と網を縫い合わせることを言います。

なんだか細長いものが何本も地面においてありますが、これがキアミです。
キアミとは漢字で書くと生網だと思います。
親方が網会社に注文します。このキアミは長さが15メートル×3メートルあります。


私たちが漁に使う網は、長さ750×深さ100メートルくらいですが、これは小さな網をたくさん組み合わせることで出来ています。

網は使っていれば必ず切れたり穴が開いたりします。
網全体を構成するユニットを細分化すればするほど、修理の際に交換するユニットが少なくてすみます。

網を構成する穴を「目」といいます。
網の目は狙う魚の大きさによって千差万別で様々なサイズがありますが、私たちがメインに使う網は11節というもので、目のサイズは3センチです。

この網と網をつなぎ合わせるセバでは、1目に2回、網針で糸を通します。
2回手を動かして3センチずつ進む、これを繰り返して数十メートル仕上げます。
見た目も内容も、実に地味な作業です。

このような地味な作業を1日8時間、延々と繰り返すのが網仕事です。
何千回と網針を動かしますが、目をたがえることは許されません。
集中を持続させるのがなかなかつかれる作業です。

しかしずっと集中して手先を細かく使うので、脳の健康に良さそうな気がします。
漁師には老いてなおかくしゃくとした人が多い気がしますが、この網仕事が一役かっているのではないか、と私は考えています。

2020.1.31 コノシロ漁終了

前回の記事でも書きましたが今期のコノシロの獲れ具合はなかなかのもので、今月は1月としては過去最高の水揚げでした。
しかし漁獲が多かったのは中旬頃までで、後半はあまり獲れなくなりました。

出漁して目当ての魚が獲れないのは切ないものです。

期待をして気合を入れ、やる気満々で出漁するわけですが、
網を張っても魚が入らないことが続くと、網の数に反比例してやる気が下がってゆきます。

しかし獲れなくなったからといって、湾内のコノシロを獲り尽くしたということではありません。
その理由ですが、今期のコノシロが獲れた場所は船橋港からかなり近い場所だったからです。
例年だとコノシロが獲れる可能性のある場所まで行くのに1時間はかかりましたが、今期は出港してから30分もかからずに大きな群れにあたることが多々ありました。
なので近場をメインに探索し、近場でコノシロの群れが見えなければ諦めて帰港しました。
つまり今期は遠出を全然せず、去年やその前にコノシロを大量に獲った場所には行っていないのです。
それゆえ私としてはコノシロはまだまだたくさん湾内にいると思っています。

さて。
船橋の巻き網は2月は出漁しない決まりがあるので、明日から整備期間になります。
船と網を陸にあげて修理・補修をします。
整備についてはまたいずれ。

2020.1.18 コノシロ漁

正月明けもコノシロは居ました。
まだ2回しか出漁してませんが、私が2001年に入社してからの1月としてはすでに過去最高の水揚げとなっています。
コノシロはまだ居続けそうな気配なので、今月が終わるまでにはかなりの漁獲が期待できそうだと、私は思っています。

まあ過去最高とか言っても、私の知る限りでは1月に出漁するようになったのは10年前からなので、まだたいして日は経っていないのですが。

ちなみに昔、出漁していなかったときは何をしていたかというと、
1月・2月で船の整備と網の補修をしていました。
網の補修ですが、昔は仕事の早いベテランが多くいたので、1月中には終わっていました。
網が終わっても整備のほうは仕事がたくさんあるのですが、ベテラン達は網が終わった後は仕事を休みにし、3月までのんびりしていました。
(船橋巻き網は2月は出漁しない決まりがあります。理由は知りません。)
この2月、休めば当然給料は出ないのですが、しかし昔は夏場にかなり稼げたので、寒い中で働くより実家でのんびりするほうがいいというのがベテラン達の考えでした。

ここ数年、夏場の稼ぎが以前に比べてかなり少なくなっています。
個人的には魚の減少というより、時化の多さによるところが大きいと思っています。
今後も気候は激甚化していくと思われるので今年の夏・秋にどれだけ出漁できることか、予測はつきません。
まああまり先のことで不安になってもしょうがないし、とりあえず今月いっぱい、コノシロ漁を頑張りたいと思います。

2019.12.29 今年の漢字

大平丸の今年一年を漢字一文字で表すならば。
私は
「鮗」
を強力に推したい。

魚へんに冬と書いて「コノシロ」と読みます。

今年は稼ぎ時である夏から晩秋にかけて天候不順が続き、思うように出漁できず水揚げ高はここ二十年で最低レベルでした。

しかしこの12月。
例年ではほぼ消化試合に近くたいした水揚げのない12月に、コノシロ漁が好調になり、夏場の不足分をだいぶ補う漁獲をあげることができました。

今回、コノシロが獲れた漁場が総じて港の近くであり、運搬船の積載量やピストン輸送の手間などにおいて有利な条件であったことも好調の一因といえます。
もし漁場が片道2時間かかる場所であれば、時間やその他諸々の要因によって今回ほどの水揚げ量には至らなかったと思います。

2019年の漁は終わりましたが、最終的には結果を出せた上に、今年も無事故で皆たいした怪我(※)もなく終えられたことが嬉しいです。

来年も無事故・豊漁を願います!!

(※)
「たいした怪我」とはどの程度のものかに対する考えは人それぞれでしょうが、ここでは人命に関わる、後遺症が残る、入院する、骨折する、ことを言っています。
わざわざこんなことを書く理由は、今年は若者が4人、アカエイに刺されているからです。

http://daiheimaru.com/daiheimaru/1431/
アカエイに刺された記事

刺された当人からするとあの痛みはたぶん、年間で1,2を争うものだったはずなので、その痛みを「たいした怪我ではない」といわれたら悔しいかな、と。
まあ別に当人たちに聞いたわけではないので実際にどう感じているかはわかりませんが、アカエイ刺され経験者の私としてはそうおもうのです。

2019.12.15 コノシロ好調

12月に入ってからコノシロ漁が好調です。

コノシロは大きな群れを作るため、うまくいくと一回の網に数十トン入ります。

締め上げた網にタモを入れ、魚をすくうところ


運搬船のキャパシティーを超える量が網に入った場合は、予備の運搬船を出動させたり、さらに一度満船にして帰港した運搬船が荷を降ろしてからまた沖に出る、いわゆるピストン輸送をして魚を運びます。

予備の運搬船に魚を積んでいるところ。
画面左f側がいつもの運搬船。

まだ月も半ばだし、この漁獲ペースが維持できれば12月としては稀にみる漁獲高が期待できそうです。

私達の給料体系では、ひと月の漁獲高が一定額を超えるとボーナスが出ます。
そのボーナスラインの漁獲高は一か月ごとにリセットされます。それゆえ月の前半から漁獲が好調だと、ボーナスへの期待が膨らみます。

しかしまあ、ちょっとひねくれた物言いをしますが、ここ最近のパターンでは残念ながら好調は長続きしないのです。

なので、過度な期待は持たないほうが獲れなかった場合の落胆が少なくてすみます。

ここ最近、月の前半に良い漁獲がありながらそれが後半は続かなかったり、時化が続いて出漁できないなど、肩透かしを食らうことが多々あり、どうせなら最初から期待なんてしないほうがいいという、負け犬根性のような悲しい気配が私の心の奥にそこはかとなく漂っています。

いや、
でも!
しかし!!

今月に入ってからのコノシロの漁獲量は、私が大平丸に入って以来、初めての量です。

今年の出漁日は予定表では残り10回ありますが、そのうち何回出漁できるのかは、天気と漁獲次第です。
まだまだコノシロはいると期待して、今年の終わりまで頑張りたいと思います!
結果は2週間後に書きます。

2019.11.30 網の穴

寒いですね。
東京湾も冬の海の様相を呈してきました。

私の漁師カレンダーでは今は、コノシロが獲れる、獲りたい時期です。他に良い稼ぎになる魚なんて、イワシが偶然回遊してくるくらいしかいない、というのが私の経験です。
と言ったものの、数年前からサワラや太刀魚の群れがどんどん北上してきて、ここ最近は湾内最奥部でもかなり獲れており、今の時期でもまだ獲れます。
色んな釣りブログやYouTubeなどでもこの情報が広められており、浦安沖あたりでは釣り船やプレジャーボートが今までみたことないくらいひしめきあっています。

11月になってから2回、コノシロのみを狙って漁に出ました。
結果は1日は運搬船が満船になるほど獲れましたが、もう1日は外れでした。
外れとは数トン程度しか獲れず、手間の割にはたいして稼ぎにならなかったということです。
コノシロ漁は、中途半端な量しか獲れないと手間だけかかってあまりメリットがないのです。
今の時期、湾内にコノシロの絶対量は多いのは間違いありません。しかしコノシロの群れの大きさや居場所は様々な要因で変化するので、出漁すれば大量に獲れるわけではないのです。

まあつまり、サワラやコノシロなど、魚は居るにはいるのです。
しかしこの両方が同じ漁場にいた場合、どちらを狙うべきか、これがちょっとした悩みどころなのです。
過去にも書きましたが、サワラが大量に獲れると、網を穴だらけにされてしまうのです。
コノシロは小さく、サワラでは抜けない穴からもどんどん出て行ってしまいます。
サワラを獲ったあとの網ではコノシロをまともに獲れないのです。

では実際に網を見てもらいましょう。

分かりづらいかもしれませんが画面全体に網が広がっています。そしてこの、ところどころ見える赤いスジみたいなものが、補修した箇所です。

拡大するとこんな感じ。
サイズ比較用に置いてある長靴は26センチです。

そして、この補修の糸を取り除くと、こんな大きさの穴になります。


穴の大きさはせいぜい10センチほどですが、スズキやサワラなど大きな魚でも、頭からスルンと抜け出てしまいます。

サワラにはこんな穴を次々と開けられてしまいます。
本当は網の穴は「きおり」という技術でちゃんと網の目を作って直さねばいけないのですが、キオリは時間がかかるので、海上では「沖セバ」という応急の補修をするのみです。
写真のこの網は魚を最終的に追い込む「りょうどり」という場所に使われているもので、他の部分より太い糸で作られています。
それでも、サワラが入ればあっというまにボロボロにされてしまいます。

しかし、サワラだけを相手にするなら、ボロボロの網でもなんとかごまかせるのです。
サワラは各個体が大きいし、一回の網で多くても数百キロしか入らないので、大きな穴さえ沖セバでふさいでおけばそこまで大量には逃がしません。

問題なのは、この状態の網に大量のコノシロが入った場合なのです。
魚が数十トン単位で入ると網の目への負荷は大きくなるので、沖セバで大雑把に直したところは破損しやすくなります。
そして沖セバが弾けた箇所からは、小さいコノシロは怒涛のように逃げていきます。
つまりコノシロを狙う網には、沖セバはあってはならないのです。

出漁してどの魚を狙うべきか、ほんとに親方(おきえ)の判断は難しいです。

今回の記事の参考に「きおり」と「沖セバ」の写真を撮りました。
同じ大きさの穴が二つあり、これを直します。

左がキオリ、右が沖セバです。
キオリは元と同じ網になるけれど、沖セバは無理やり左右を引っ張ってくっつけているのがわかるでしょうか。これは「つれる」という状態で、この部分の強度はがた落ちです。
まあまたの機会に詳しく書きたいと思います。

番外編

このキオリと沖セバの写真のために港で網を広げてました。
ちょうどキオリが終わった時に、野生の獣に襲われました。

獣は私の腹に散々アタックした挙句、網の上にどかっと居座りました。

私「こら。邪魔だ。どきなさい」ペシッ

猫「にゃーん」ペロペロ

うむ、言葉が通じない。しょせん獣だな。
どかないので、無視して沖セバをしました。

めっちゃ見てる。
なかなか勉強熱心だなお前!

2019.11.16 サゴシ

秋口になってからサゴシがよく獲れます。

サゴシとはサワラの小さいもののことです。
ネットで調べると、50センチまでをサゴシ、70センチまでをヤナギ、それ以上をサワラと呼ぶのが一つの目安のようです。

ちなみに私、今回の記事を書くために調べるまで「ヤナギ」という呼称を知りませんでした。私のまわりでは卸会社の人も含め、この魚に対して「サワラ」と「サゴシ」という区別しかしません。その前提で話をすすめていきます。

魚のサイズ別の呼称に統一規格はありません。

この写真のものは70センチあります。

通常ならサワラとして出荷されるサイズなのですが、11月初旬のこの日はサゴシで出荷されました。
今年は全国的にサワラ・サゴシの水揚げが多いそうです。
そうなると売れるのは必然的に鮮度とサイズがより良いものとなります。
サゴシからサワラへ昇格するハードルの高さはその時の漁獲の中で相対的に判断される場合が多く、漁獲が少ない時にはサワラとして充分に認められるサイズのものでも、多いとサゴシ扱いになってしまいます。
この魚は大きいほど脂がのって価値が高いので、サワラとサゴシでは単価が大きく違ってきます。

ここでちょっと不便なことがあります。
「サゴシ」のサイズの範囲が広すぎるのです。

40センチくらいのものが獲れることがありますが、サワラとしては小さすぎるので価値は低いです。しかしその小さいものも70センチの大きいものも、どちらも名称は同じ「サゴシ」です。
それゆえ「サゴシが獲れた」といっても、詳細を聞かねばその魚体のサイズがどれくらいなのか、わかりづらいということです。

スズキならば、セイゴ フッコ スズキ
ブリなら ワカシ イナダ ワラサ ブリというように区別されており、名称を聞けばだいたいの大きさの目安はつきます。

日本中の漁師および魚屋に「サゴシを用意してくれ」と言ったら、どうなるだろう。
いったい上から下でどれだけサイズに幅が出るのか、気になるところです。
それぞれの立場や状況によってかなりの差異が出ることでしょうな。

2019.10.30 2019年の10月

前回記事を書いたのは巨大で強力な台風19号が関東を直撃する直前でした。
その時は被害を覚悟していましたが、結果から言えば船橋周辺では私の知る限りではたいした被害はありませんでした。
しかし、強風による破壊や豪雨による浸水など、目に見えるような被害はなかったものの、間接的とはいえ台風19号とその後の21号の影響により、私達船橋巻き網は実に3週間も出漁できませんでした。3週間も沖に出なかったのは、私は初めての経験です。

関東地方で大雨が降ると、その水は川を下って東京湾に流れ込みます。豪雨の場合、多い雨量は川幅を広げ、河川敷にある物体を流れに巻き込んでいきます。
その結果、豪雨の後の東京湾海面には流木や草木が大量に浮いているのです。

それだけではなく海水(塩水)の湾に多量の真水が流れ込むのだから、塩分濃度がかなり変わります。
魚の動向はもちろん、潮の流れすら変わってしまいます。
「潮の流れ」なんて漁師や釣り人しか意識することがないでしょうが、魚を獲るためにはとても重要なことです。

ここ数日、やっと台風の影響が落ち着いて出漁できました。
漁の結果は、スズキとコノシロがまあまあ獲れたといったところでした。

前回の記事で次は真鯛について書くと宣言してましたが、ちょっと事情があり真鯛についてはまた別の機会に書こうと思います。