投稿者「daiheimaru」のアーカイブ

2022.9.30 さんま

秋も深まり日中もだいぶ過ごしやすくなってきました。
代表的な秋の魚といえばサンマ、サバ、イナダ、秋鮭、戻りガツオが挙げられます。

上記のうち私達の漁場で獲れるのはサバとイナダですが、今年はどちらもまとまった回遊はなく獲れていません。

サバに関しては、10年くらい前までは秋になれば連日10トン単位で獲れたものですが、魚種交代か何か原因はわかりませんが、ここ数年はたまにイレギュラー的に数トン獲れる程度しか漁獲はありません。
海流の影響で東京湾が回遊ルートから外れたのか、それともサバの絶対数が減ってしまったのか、理由はわかりません。でもまた、運搬船をサバでいっぱいにするくらい獲りたいものです。

ちょっと前の話題になりますが、サンマの初水揚げをニュースでやっていました。
サンマも昔と比べると漁獲の時期や場所がだいぶ変わってきているようで、インタビューから聞こえるサンマ漁師の声は「獲れねえなあ」という嘆きが多いように感じます。

サンマは漁獲がだいぶ減っているのは知っていましたが、今年は少ないうえに魚体が小さいようです。

スーパーで買ってきました。

売り場にはだいぶ見た目の異なる二種類のサンマが売られていました。

メジャーの上側は1尾108円で86グラムと81グラム。
下は1尾199円で123グラムと118グラムでした。
皆さんはどちらを買いますか?

上側は国産の新サンマで、下は台湾産の解凍物でした。

上のサンマ2尾は、間違いなく国産新サンマ(といって売られていたもの)ですが、お腹が破れてしまって鮮度が良くないように見えます。

これは私の推測ですが、初めはもう少し高めの価格で売っていたけれど、あまりに値段と釣り合わない貧相な型と皆に思われ売れ残ってしまい、しかたなく見切り処分の投げ売りをしたのではないかと思います。

さすがにこんな状態の内臓は火を通しても食べたくないので、腹を出してから塩焼きにしました。

上が国産の生、下が台湾産の冷凍です。

見た目にたがわず、冷凍もののほうがおいしかったことは言うまでもありません。

ちなみに皿の上部の白い物体は、さんま塩焼きには欠かせない大根おろしで、富士山をイメージしております。

なんとなく遊び心で大根おろしで富士山を作ったつもりでしたが、出来を見たら中心が押し固められた大根おろしが皿の上半分を占めているだけですね。

己の造形センスのなさに絶望です。

絶望に打ちひしがれたまま食べたサンマは、はらわたは抜いたはずなのになぜかほろ苦い味がしたのでございました。

2022.9.13 ジンタ 南蛮漬け

ジンタが少々、網に混じってきました。

ジンタとは小さいマアジの地方名で、だいたい10cm未満のものを指します。
一般的には豆アジというほうが通りが良いかもしれません。

「ジンタ」という語をネットで調べると、「明治中期に興った市中音楽隊につけられた愛称」という記事と、小アジの記事が半々の割合で出てきました。

私は「ジンタ」という言葉に小アジ以外の意味があることを初めて知りました。
この市中音楽隊と小アジに関係性があるのかどうかはわかりません。

ジンタ(豆アジ)はスーパーでパック詰めにされて売っているのを見かけますが、私たちの網に入る程度の量では売りに出しても全く採算が取れません。
なので、いつでもオカズとして持って帰れます。

私は今回、南蛮漬けを作りました。

この写真には数十尾しか写っていませんが、フレームの外にある発砲スチロールにたくさん入っており、全部で百数十尾を捌きました。

だいぶ涼しくなってきたとはいえ魚の調理をするにはまだまだ気温が高く、一度に全ての魚を捌こうとすると鮮度が悪くなってしまうので、半分くらいずつ処理していきます。

小アジの処理は他の小魚に比べてとても楽で、時間がかからないのがありがたいです。
ご存じの方も多いでしょうが、「エラ、内臓、胸ビレ、腹ビレ、ヒレの付け根の固いところ」が、ひとまとめでヒョイッときれいに取れます。

処理が簡単な上に、今回程度のサイズなら骨もさほど硬くないので二度揚げの必要がありません。

揚げたらタッパーに並べて

その上に野菜を敷き詰め

さらに魚を並べて

また野菜をのせ、漬け汁を注ぎます。

数時間、冷蔵庫で味をなじませればおいしい南蛮漬けの出来上がりです。

とっても楽!!(他の小魚に比べて)

南蛮漬けには制作途中のお楽しみもあります。

揚げたてをつまみ食いです。

始めは何も考えずに塩コショウを振りましたが、試しに何もまぶさずに食べたところ、それでも充分においしかったです。

塩を使わずともおいしいなら、使わないほうがヘルシーでよろしいですね。
まあ揚げ物を大量に作ってヘルシーもへったくれもあるかい、というご指摘もありそうですが。

そういえば、素揚げは唐揚げに比べてカロリーやGI値(※)が低いと言います。
私はいつも魚に片栗粉をつけて揚げていましたが、今度、素揚げで南蛮漬けも試してみようと思います。

(※)GI値とは食後血糖値の上昇を示す指標

2022.8.30 ぎら ぜんめ ぎんだべら

タイトルは何のことかと思われる方も多いでしょう。

これは下の魚の私の周りでの呼ばれ方です。

この魚の標準和名は「ヒイラギ」で、「ぎら」「ぜんめ」「ぎんだべら」は地方名であり、私の知る船橋界隈での呼ばれ方です。

普通、同一種で呼び名が複数ある場合というと、その大きさで呼称が変化することが多いと思います。

いわゆる出世魚のことで身近な例では

セイゴ→フッコ→スズキ

シンコ→コハダ→コノシロ

ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ
など、何cm~何cmはこの呼び方、となっています。

しかしヒイラギの場合は大きさによる区分はなく、単に呼ぶ人の好みで上記の名のいずれかが使われます。

私は「ぎら」という呼び方を好みます。
元の「ひいらぎ」の語感に近いうえに短くて言いやすいのが理由です。
「ぜんめ」だと元の「ひ」「い」「ら」「ぎ」の一文字も使われていないし、「ぎんだべら」だとヒイラギより一文字多くて長いし、なんだかしっくりこない気がするのです。

まあ通じればなんでもいいんですがね。

このヒイラギですが、十数年前は漁場にたくさん居たのに、いつの間にか姿を見なくなっていた魚です。
それが今年はちょくちょく現れるようになりました。

この魚は関西方面では好む地域もあるようですが、関東ではあまり売れません。

最大で15cm程度な上にそれほど大きな群れは作らないので、網に入ったとしても精々が数十kgといったところであり、関西まで運ぶ労力を考えると儲けになりません。

それゆえ好きなだけお持ち帰りできます。

100尾ほどもらって帰り、刺身、塩焼き、干物、から揚げ、南蛮漬け、ホットサンドメーカーはさみ焼き、にしました。

このヒイラギの特徴として、「ぬめりが強い」と「トゲが鋭い」というのがあります。
ぬめりは調理をする過程で塩や酢を使えば除去できるからよいとして、トゲがやっかいです。

小さく短く目立たないけれど、硬く鋭い。
しかもそれが上下に三か所もあり、避けづらいのです。

船上で網を揚げている時など、見逃してうっかり網とともに掴んでしまうことがあります。
たいへん、痛いです。

トゲが硬いだけあってか中骨も全般的に硬く、塩焼き、干物にしたものは私は中骨は食べられず、身をむしって食べました。

そして南蛮漬けを作る際には二度揚げをしたうえに二日も漬け込んだのに、食べると骨がいくばくか口内で当たり、気になりました。


なかなか骨のあるヤツです。

骨のあるヤツは人間だと誉め言葉ですが、魚の場合は好ましくありませんな。

丸ごと焼くホットサンドメーカーはさみ焼きですが、頭も中骨も硬いうえ、内臓はかなり苦く、これは私には無理でした。

身の味はとても良いので、この魚を食べるには刺身が向いていると私は感じました。


関東では全く売られていませんが、料理屋などで見かけたら食べてみる価値はある魚です。

2022.8.14 太刀魚の 尾(?)

以前、太刀魚の大きさを測るときは全長ではなく体高を、それも指何本という単位で測るという記事を書きました。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1672/

その記事の補足というか、関連記事です。

太刀魚を多く見ていると、百尾の中に最低でも一尾ほどの割合で体の後半が切断されてしまったかのような個体がいます。

漁の時に傷つけてしまったわけではなく、その証拠に傷口(?)は皮で覆われています。

太刀魚というのはどうやら、大きい個体が小さい個体を食べてしまうようです。
つまり体の後半がない個体は、小さい時に仲間に後ろをかじられてしまったものの、生き残って成長したということです。

このかじられた太刀魚の割合は1%くらいと先ほど書きましたが、全くもって適当な数値なのでさほど信用なさらぬよう。
漁をしているとそこそこ見かけるというというニュアンスです。

これは太刀魚を狙って釣る人には常識らしく、「タチウオの共食いパターン」などと呼ばれ、なんと、釣った太刀魚の尾を餌にしてそれでさらに太刀魚が釣れるらしいです。

太刀魚がなにかの刺激で興奮状態にあると、他の太刀魚のこの細い尻尾のヒラメキやキラメキに反応し、食いついてしまうらしいです。

とんでもない魚ですな。

まあそれはともかく。
この体の後半を食べられてしまった太刀魚ですが、以前、こんなに大きなものもいました。

指、七本はあろうかというビックサイズで、通常の太刀魚としては最大サイズに近いものです。
(下に敷いている発泡スチロールは、長辺79cmのものを2枚並べています)

これは、大きくなってから他の魚にかじられたというより、小さい頃にかじられたけれどそのまま大きく成長した、と考えるのが自然だと私には感じられます。

つまり、太刀魚の体の後半のこの部分は、無くてもなんとかなるってことですね。

無くてもなんとかなる上に、下手すると仲間を刺激して襲われる要因になるこの部分、いずれ進化するにつれて短くなり、最終的にはなくなるんじゃなかろうか。
つまり、今は少数派の、かじられて後半がない形態が通常の魚体になる感じ。

でもなあ。
尾までシュッとした刀のような姿だからこそ「太刀うお」な訳で、そのシュッとした部分がなくなっちゃったら、ただの「ナタうお」だなあ。

そんな風情のない名前になったら嫌だなあ。

 

2022.7.30 カキ落とし

暑い夏になりました。

夏になると人も魚も活発になります。

フジツボも活発になります。

フジツボは暑くなると元気になり、船の水面下のあらゆる箇所に取り付きます。

それは漁師のみならず、全ての船乗りに忌避されます。

フジツボが船乗りに嫌われるのはなぜかといいますと、フジツボが船底に大量に張り付いてしまうと、航走時の抵抗がとても大きくなるからです。

船の速力は大幅に落ち、燃費は悪くなり、船体に嫌な振動が発生します。

船乗りにはデメリットしかありません。

フジツボがどのようにして船底に付き、育つのか、細かいプロセスは私は知りません。

私の経験上から言えるのは、動かしていない船にはみるみる付着していくということです。

これは3か月の間、動かさなかった船の舵とプロペラです。
一面にフジツボが付着しています。
(プロペラシャフトの下半分はすでに軽くこすってしまっています)
ちなみに私たちが普段、漁に使っている網船はこの船の隣に係留していますが、舵や他の場所にもフジツボは殆ど付着していません。

ですから恒常的に強い水流を受ける場所にはフジツボは付着、もしくは成長できないのだと思います。

このフジツボを剥がす方法ですが、スクレイパーを使って地道にこそげ落とすしかありません。
大雑把にザッと剥がしても、フジツボ上部の殻は落ちますが、基部というか底部というか、張り付いていた基礎の部分はなかなかスクレイパーでは取れません。

しかし取れないまま放置するわけにはいかないので、高圧水流を当てたり、ディスクグラインダーという回転ヤスリで磨いて綺麗にします。
なかなか手間暇がかかります。

これがフジツボを落とし切った、通常の状態の舵とプロペラです。

今回の船の事例で言うと、これだけフジツボがついていると、通常の半分ほどの性能しか発揮できません。

動かさなければフジツボが付いてしまうけど、かといって用もないのに動かして油を無駄遣いするわけにもいきません。
フジツボの付着は船乗りにとっては本当にやっかいな問題で、いまだに世界共通の悩みです。

今回はフジツボの事しか書いていないのに、タイトルは「カキ落とし」です。

カキ(牡蛎、オイスター)も付くには付くんですが、私の体感では付着している99パーセントはフジツボです。

しかし、私の周りでは「フジツボ落とし」という人は一人もいません。
まあ、語感的に「かき落とし」のほうが言いやすいからなのだろうと思います。

もしくは、「カキ(牡蛎)を落とす」のではなく、「掻き落とす」という行為のことなのかな?

まあどちらが正しいのかはともかく、安価で安全なフジツボ除去の方法を考えれば、世界中から賞賛されること間違いなしでしょう。 (意: もうかりまっせ)

2022.7.16 アカエイの毒について

5月の終わりの記事で、スズキが常磐地方で大漁に揚がり相場が低いと書きましたが、大漁も長くは続かなかったようで今はスズキは旬時期の良い相場になりました。

新型コロナの感染者数が急激に増加していますが、行動制限は発令されないうえに感染症法上の分類を引き下げるべきとの提言も出ており、消費の拡大に少しばかりの光明が見えているように思います。

7月前半は台風4号の影響であまり出漁できなかったので、後半は頑張りたいところです。

タイトルのアカエイの毒についてですが、私が以前書いた記事に間違いがあったので訂正します。

上の記事内で私は、アカエイの毒は針を覆っている黒い粘膜である、と書きましたが、これは間違いでした。

正しくは「学研の図鑑 LIVE 危険生物 新版」より引用させてもらいますが、

「毒棘(どくきょく)の表皮の下に毒腺(どくせん)があり、毒棘が相手に刺さると表皮がはがれ、毒が傷口に流れ込みます」

というのがアカエイの毒の仕組みで、私が粘膜と思っていたヌルヌルしたものは表皮で、毒ではありませんでした。
道理でヌルヌルに触れても何のダメージもないわけと合点がいきました。
こちらが「学研の図鑑 LIVE 危険生物 新版」です。
今回、この図鑑に私の撮った写真が掲載されたことで間違いに気づけました。(赤丸で示した場所)
もし過去の私の記事を読んで、アカエイの毒は針の表面の粘膜である、と覚えてしまった方がおられたら、申し訳ありません。ヌルヌルはただの表皮で、その下の毒腺より毒が放出されるのでした。

2022.6.25 とど

とても大きなボラが網に入りました。
全長72cm、目方は4.6kgもあり、ズッシリと重たいです。

獲れたのは6月13日なのですが、この日はこのサイズのボラが数十尾獲れました。
不思議、というか面白いことに、それ以前もそれ以後も、同じ海域で漁をしているのに、このサイズのボラは1尾も網に入っていないのです。
ではこの6月13日の海況が特別だったのかといえば、この日はかなり北風が強く、普段なら時化るような海に出漁しました。
なぜ北風が強いと大きなボラが獲れるのか、因果関係はサッパリわかりませんが、まあボラも波がワチャワチャしているとちょっとテンションがあがっちゃって、いつもと違う場所で泳ぎたくなっちゃうのかもしれませんね。

この大きなボラのことを「トド」と呼ぶことをご存じの方も多いでしょう。

おぼこ→すばしり→いなっこ→ぼら→とど

それに付随して、「とどのつまり」という言葉の由来は、出世魚であるボラの最大形態はトドであり、それより後は無いことからこの言葉ができた、という説も広く知られていることと思います。
しかしこの、魚のトドが語源というのはただの俗説で、本当は「とどめ」の意味の「とど」が正しいようです。

まあ名前はともかく、どのような味がするのか知りたかったので貰って捌きました。
腹の皮は厚みこそありますが、2月に捌いたボラと違い、内臓脂肪は全くありませんでした。
ヘソ(幽門)もデカイです。
塩コショウで炒めましたが、焼き鳥の砂肝を柔らかくしたような食感で楽しくおいしいです。

身の味は、正直に言うとたいしたことはありませんでした。
カマを焼いたら脂はジュウジュウと大きな音をたててあふれてくるのに、身の味は淡泊でした。

旬を全く外しているうえに、大きすぎて大味ということなのかもしれません。

いつも私たちの魚を仕入れに来る、とある個人居酒屋の名店のマスターは、常に「ボラは1kgのものが一番うまい」と言っています。

大は小を兼ねるとは、魚には必ずしも当てはまることではないようです。

2022.6.12 ままかり

今年はコハダ漁が好調で、例年ならとっくにスズキ漁に移行している今の時期でも、まだコハダを狙っています。
このコハダの群れにサッパがごくわずかですが混じってきます。
サッパについては去年の2月に記事を書きましたが、その時は私たちの漁場には殆どいませんでした。去年の記事↓
しかし今年は、少ないとはいえ網を張ればいくらか獲れる程度には居ます。

回遊か発生かわかりませんが、魚の出現は全く読めないものです。

今年のサッパにはなかなか大きいものが居ます。

昔、私たちの網に大量に入って難儀させられたのは、下の13~14cmほどの小さなサイズで、上の大きなサイズは殆ど居ませんでした。

しかし今年は15~16cmと、サッパとしてはなかなかの大型が混じります。

偶然かもしれませんが、1cm大きくなる毎に約10グラム増えていくのが面白いですね。

今回、新鮮なものを30尾ほど先輩から頂いたので、調理しました。

最初は普通に酢締めにする、いわゆる「ままかり 酢漬け」にしようと思っていたのですが、ちょっとレシピを調べているうちに、いつの間にか酢漬けが頭からすっぽりと抜け落ちており、気付けば「サッパ焼き酢漬け」と「サッパのアヒージョ」が完成しておりました。

左が焼き酢漬けで中骨ごと、右のアヒージョは腹骨をつけたまま調理しました。

焼き酢漬けにした一番大きなサッパを食べたところ、中骨は溶け切っておらずに肉の中にあり、骨をかみ砕く感覚はありました。
まあでもそれは例えるならサバの缶詰の骨に近く、魚好きな人ならば気にならない程度です。

アヒージョの腹骨は全く気になりませんでした。

味の評価は、おいしいです。

おいしいといっても、御馳走ではなくお惣菜的な普通のおいしさですが。

ところで。このサッパの味についてですが。

このサッパを「ままかり」と呼び名産物としている地域があり、

そして「ままかり」の名の由来が、オカズにして食べるとあまりにおいしすぎて自家のご飯を食べつくしてしまい、隣家にご飯を借りに行かねばならないから、という説が代表的なのをご存知の方も多いでしょう。

これが私には不思議に思えるのです。

「飯借り」なんて、ご飯のオカズとしては最上級の呼称だと思います。
老若男女問わず1年を通して毎日必ず食べるご飯、毎日のことだから自分の食事量などわかりきっており、それに合わせてご飯を炊いている筈です。
それが足りなくなるだけならまだしも、さらに隣家に借りに行かせるほどの力を持ったオカズということです。

そんな「ままかり」というネーミングがなぜ、他に数多あるおいしい魚をさしおいて、サッパみたいな地味な魚につけられたのか?

別にサッパを貶めたい訳ではありません。
サッパはそれなりにおいしい。

しかし、しかしですよ、サッパ食べて感動して隣家にご飯を借りに行く人なら、他のどんな魚を食べても結局はご飯を借りに行くのではないか、と思えて仕方がないのです。

ここで私が考えたのが、「ままかり」とは「土用丑の日」みたいなものではないかということです。
「土用丑の日」とは江戸時代、夏場の売り上げ低迷を嘆いていたウナギ屋に、平賀源内がアイデアを与え売り上げ増加につなげ、現代にまで残っている販売促進戦略の見本のようなものです。
「ままかり」もこのように、あまり人気がなかったサッパを誰かが商品化しようとして名付けたら、意外やその名が実態以上に広まって人気を博した、という説はどうでしょうか。
商品名なんて先につけたもの勝ちですしね。

2022.5.28 魚の鮮度

スズキの旬が近くなり、身は太くなり脂ものり始めてきました。
それは嬉しいのですが、スズキの相場が「から安」です。
「からやす」とは辞書に載ってないので方言のようなものだと思いますが、「とにかく安い」というような意味で、
「スズキがから安で商売にならねえよ」といった使い方をします。
理由として、常磐地方で今、スズキが大漁らしいのです。
1日で十数トンも水揚げされる日もあるそうで、相場の暴落は必然の成り行きです。
スズキが安いのは辛いですが、今年は今のところコハダ漁がうまくいっており、いくらか助かっております。

さて本題の魚の鮮度の話です。
近所に「飲食店などプロ御用達」を掲げるスーパーがあり、そこの鮮魚売場では全国各地から集めた新鮮な魚を取り扱っています。
品物はとても良い状態で、当然ながら価格が高く私はあまりそこで魚を買うことはないのですが、色々な魚種を見られるのが楽しいのでたまに覗きにいきます。

先日その鮮魚売場に行ったら「見切り品コーナー」という札があり、丸ごとのタイやヒラメが驚くほど安価で売られていました。
見切り品とはどういうことか店員に聞いたところ、仕入れてから5日経っても売れ残っているものだとのことでした。
仕入れてから5日ということは、流通を考えると漁獲から一週間近く経っている可能性もあります。
私はその場にあった「天然ヒラメ 700円」に興味を惹かれました。
40cm程の大きさでしたが、天然のヒラメが700円で買えることなど普通はありません。
店員さんの承諾を得てから身を触ってみましたが、張りはないもののそこまでブヨブヨに柔らかくもなかったので、買って帰りました。

最短でも漁獲から6日は経っているであろう、内臓のついたままの魚。刺身で食べられるのだろうか?
魚はエラと内臓から悪くなっていきます。
私は頭と内臓を処理した魚なら一週間でも生でいけましたが、未処理のものは食べたことがありません。
捌いたところ、内臓は意外やしっかりと原型を留めており、大丈夫そうと思ったので刺身に挑戦することにしました。

他にはムニエル、塩焼き、煮付けを作りました。

ヒラメ尽くしの晩酌のツマミになりました。

食べた結果、刺身は問題なく頂けました。
ただ、実はそもそも今の時期はヒラメの旬から外れており、脂は全くなかったので、それほど旨味は感じませんでした。
もちろん、まずいわけではありません。
ムニエル、塩焼き、煮付けも、普通に「魚のムニエル」や「魚の塩焼き、煮付け」としておいしかったです。
しかし、一般的に高級魚である「ヒラメのムニエル」としてこれを売ろうとしたら、ヒラメってこの程度の味なの?と思われてしまうレベルです。
そう考えると今回の700円という値段は絶妙だったと思います。

さて、今回私は6日以上経った魚を刺身で食べても大丈夫でしたが、しかし、これが他の全ての魚にも当てはまるわけではありません。
魚種によって痛む速度は全く違うし、漁獲してから店頭に並ぶまで、そしてその後まで含めた鮮度管理の状況は千差万別です。
よって入手した魚を生で食べられるかの判断は、自身で経験を積んで自己責任でお願いします、としか言えません。

ちなみに私は昔ベテランから、
「生でダメなら焼いて食え、焼いてダメなら煮て食え」
と教わりました。
生はともかく、焼いてダメな物でも煮ればまだいける、というのは意外でした。
やはりグツグツと煮れば完全に中まで火が入るということなんでしょうね。

2022.5.14 イシモチ 耳石

一か月間の整備期間を終えて今月から出漁を開始しました。
我々のメインターゲットであるスズキの相場はまだ低いものの、コハダがなかなか良い値段で売れており、ありがたいです。
ただしコハダは一日ごとの需要が限られており、市場の需要以上の量を獲ると相場は一気に下がってしまいます。
なのでコハダが網に多く入っても、必要な分を確保したら後は逃がします。
一昔前は、「網に入ったものは安くたっていいから全部持って帰るんだ!」という風潮がありましたが、今は「何でも持って帰ればいいってもんじゃない」という考え方になっており、資源保護の観点からもよい変化を遂げております。

ここ最近はイシモチが網によく入ります。

網に入った最大と最小を並べてみました。
イシモチは大きくてもおいしいので、大サイズのグラム単価は小サイズの三倍もします。
小サイズはおいしくないのかと言えばそんなことは全くありません。
身の量が少ないだけで大サイズと変わらぬ味です。

この小サイズの食べ方ですが、普通に塩焼きや煮付けがおいしいのはわかっています。
そこで私は今回、以前コハダでやったお魚せんべいを試そうと考えました。
(↑コハダのお魚せんべい)

カリカリに焼きあがったコハダの頭のおいしさが忘れられず、イシモチの頭はどんな味がするのか知りたくなったのです。

それでまず腹開きにして頭を分割しようとしたら、包丁が「ガリッ」と不穏な音をたてました。
何事かと思ったら、白くて非常に硬い石のようなものが出てきました。

(これは大サイズイシモチのものですが、白い石の横幅は1cmあります)

これは耳石(じせき)といい、人間を含め殆どの生物が持っているものらしいですが、中でも特に、イシモチは大きな耳石を持つようです。
そもそも写真の魚の正式名称はシログチなのに、なぜイシモチと呼ばれるのかといえば、この石を持っているから、というのが由来だそうです。
ちなみに巷間では、色々な魚の耳石を収集する「耳石ハンター」なる趣味を持つ人がいるようです。

さて、この小イシモチの頭に話を戻しますと、結局私は食べませんでした。
この耳石のあった周辺の骨もやけに固く、焼いても食べられなさそうと思ったためです。
いやほんと、仮に小さなイシモチを丸焼きにして、勢いよく頭からかぶりついたりしたら、、、
歯、折れますよ。