投稿者「daiheimaru」のアーカイブ

2024.9.14 そうめの塩焼き

今年は6、7、8月とスズキ漁とコハダ漁が好調でしたが、9月に入った途端に調子が悪くなりました。

台風の影響などで9日に一回出漁できただけで、しかもその時はスズキ漁は芳しくなく、更にコハダも需要が無くなり大きく値下がりしてしまいました。

ここらでサバのような回遊魚が湾内に入ってきてくれると嬉しいのですが、昨今の高温化を思うと望みは薄そうです。

この9月で一度だけの出漁の時に、「そうめ」がほんの少し網に入りました。

そうめとは私たちは小さいマイワシのことを指して呼びますが、ネットで調べても出てきません。
おそらくここら地域限定の俗称なのでしょう。

このそうめは数キログラム程度の量では売り物にならないので普段は海に返してしまいますが、今回は運搬船の船長がオカズ用にといくらか取っておいてくれました。

このそうめの食べ方は塩焼きがお勧めです。
ウロコだけは落とす必要がありますが、あとは丸ごと塩を振って焼いて、頭から丸ごと頂きます。

頭は香ばしく、エラは甘く、内臓は苦すぎず、中骨は気にならず、身は当然おいしい。

じつに文句の付け所のない素敵なおつまみです。

以前に記事にしましたが、このそうめが湾内に大量にいると我々としては困ったことになります。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1207/

なので、もう一回り大きなサイズのイワシが回遊してきてくれると嬉しいのですが、なかなかうまくはいかないもんです

2024.8.31 えぼだいの酢締め

小さなエボダイが網に混じってきました。

エボダイとは俗称で標準和名はイボダイです。

おいしい魚なのに「イボ」なんて名ではあまり気分が良くないから、エボと呼ぶようになったと聞いたことがあります。

この魚は昔から夏場に網に混じってきますが、まとまって獲れることはなく、せいぜい数キログラム単位です。

大きさは大人の手の平くらいあれば良いサイズです。

今回網に入ったのは大きいものは14cmありましたが、小さいものは尾まで含めて10cm程度で、売り物にならないサイズでした。
生きていれば海に返すところですが、クラゲにもまれて死んでしまっており、もったいないからと運搬船の船長が私にくれました。

小さいから塩焼きでは身をほじるのが大変そうなので、三枚おろしで酢締めにして中骨を溶かし、なるべく大きな塊で食べられるようにしてみました。

結果は満足のいくものでした。
エボダイは小さくても旨味が強く、味がしっかりとしており、とてもおいしかったです。
(写真の一番右だけは違う魚、キビレです)

そういえばエボダイについては過去に取り上げた記憶がないので、大きいものが獲れたらまたリポートしたいと思います。

2024.8.16 コハダの握り

台風7号が関東に迫ってきており、豪雨と強風による災害が警戒されています。

先月は船橋の巻き網船団はスズキ漁が好調でしたが、この台風7号による強い北風と流れ込む大量の真水で、海の状況がだいぶ変わると思われます。
今後の漁にどのような影響が出るか気になるところです。

今年の夏は、夜にスズキ漁をして朝にコハダ漁をするというパターンでした。

このコハダ漁をやっている時、7月の終わりくらいから8月の初めまで、わずかな期間ですが、コハダより更に小さいシンコがいくらか獲れました。

シンコとされるのはだいたい4cmから7cmで、実際に見ると
「食べるところなんてあるの?」と思ってしまう大きさです。

そしてお寿司以外の活用は聞いたことがありません。

コハダの酢締めでさえあっさりした味なのに、それより小さいシンコはどんな味なのだろうかと思い、握りを自作してみることにしました。

いざ捌こうと思ったら本物のシンコはあまりに小さすぎて私には無理だったので、ちょっと大きいコハダを捌きました。

大きいと言っても11cmで、アジなら唐揚げにして丸ごと頂いちゃうサイズです。

捌くと身はいくらもありません。

そしてお寿司にしようと思い米を炊いて酢飯を準備したのですが、ここで問題がありました。

私はお寿司を握るのなんて簡単だろうと思っていたのですが、全く形ができませんでした。
シャリというのがうまく作れず、どうしてもおにぎりみたいな大きさと形になってしまうのです。
仕方ないのでシャリの自作は諦め、スーパーでお寿司セットを買ってきて載っている具を剥がし、コハダの酢締めを載せました。

そしてできたコハダの握りですが、正直にいって残念な味でした。
日持ちの為もあるのでしょうが寿司パックのシャリは酢が強すぎて、コハダの淡い味わいを消してしまっていました。

やはり、コハダ(シンコ)は江戸前寿司職人の腕前の見せ所と言われるだけあって、素人が簡単に真似できるようなものではありませんでした。

ちなみにこれが私の作ったコハダの握りです。
本当にオニギリみたいなサイズになってしまいました。

いやほんと、いつも思うことですが改めて、プロが簡単そうにやっていることを実際に自分でやると難しいですねえ。

 

2024.7.30 アカエイの持ち方 写真

前回アカエイの持ち方をイラストとともに解説しましたが、私のつたないイラストでは分かりづらかろうと思い、今回大きなエイが獲れたのでそれで写真を撮ってみました。

まず、私らが安全だと思い実践している持ち方を二点紹介します。
持っているのは22歳の細マッチョ君です。

持ち方①
噴水孔に指を入れ、エイのお腹側を自分に向け、自分の体からは離して持つ。

持ち方②
尻尾の先端をもって宙吊りにする。

①だとエイがどんなに尻尾を振り回しても、持っている本人には当たりません。
②ではエイは自身の重さにより全く身動きがとれず、毒針を振るえません。

では次に危険な持ち方です。

これは持ち方①と同じく噴水孔を持っていますが、エイの背面を自分に向けてしまっています。
この持ち方だと、尾が自由に動くので思い切り刺されます。

そして最後に、そもそもの掴みにいくときの姿勢です。
このように身を乗り出していくと、
尾が跳ねてきて危険です。
(もっともこの写真の位置取りだと毒針は届きませんが)

なので、
このようにとにかく尾から遠ざかる位置取りで噴水孔を掴んでください。

今回のエイはなかなかの大物で重量はかなりありましたが、目方を量るのを忘れていました。
モデルの若者に様々な持ち方をしてもらいましたが、彼の腕に浮き出ている血管や筋肉をみてもらえば、その重さを感じてもらえるのではないでしょうか。(10kg近くあったのではないかと思います)

こんな大物に刺されたら、ただの怪我ではすまないこともあり得ます。
皆さまがた、釣りや海水浴など、エイに遭遇する可能性がある場合は充分にご注意ください。

2024.6.29 アカエイの持ち方

仲間がアカエイに足を刺されました。

船のデッキ上で、大量のコノシロとクラゲの下に埋もれて見えなかったアカエイを踏んでしまい刺されたようです。

長靴をたやすく貫いた針は足の側面に深々と刺さり、大変痛そうでした。

思えば船団で仲間がエイに深く刺されたのは数年ぶりで、その苦しみようを久し振りに目の当たりにしてエイの危険性を再認識しました。

ただ、危険とはいってもエイから攻撃を仕掛けてくることはありません。
事故は、お互いが接近に気付かず触れ合ってしまった場合に起こります。

姿が見えない場合の対処法はありませんが、陸上で本体が見えている場合の安全な持ち方についてならば私達にはノウハウがあります。

持ち方は二つあり、噴水孔に指をいれるか、尾の先端を掴む方法です。


それぞれ長所と短所がありますが、まずは噴水孔から説明します。

噴水孔とは体の上面の前部、目のすぐ後ろにある二つの穴で、人間でいう鼻のようなものです。

ここに親指と中指を入れると大変持ちやすく、投げるのも楽なのですぐに海に返せます。

短所は、尾はフリーなのでエイはブンブン振り回すので、尾の可動範囲を見切っていないと自分にも周囲にも危険を及ぼすことです。

尾の先端をつかむのは、細くて動く先端をキャッチするのがちょっと難しいうえに毒針が近いので少々危険です。
しかしエイの尾はしなやかに動くもののパワーは全くないので、一度しっかりとつかんで持ち上げてしまえば、もう危険はありません。

噴水孔、尾、どちらをつかむにしても、自分の体がエイの上方向にあると刺される恐れがあります。

緑の範囲くらいが毒針の到達距離で、背面のほとんどは危険区域です。
なので前後方向、水平方向からつかみに行くのが安全です。

2024.5.29 もじゃこ 漁業許可

コハダを狙って漁をしていたら、網に「もじゃこ」が混じってきました。

「もじゃこ」とはあまり耳慣れない言葉と思いますが、ブリの幼魚の事で過去に記事にしたことがあります。

「わかし?」↓

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1176/

混じってきたモジャコの扱いですが、小さすぎる上に数も数尾しかいないため廃棄されてしまいます。

もったいないので貰って帰り刺身で食べたところ、あっさりしているもののちゃんとブリ系のおいしい魚の味がして、良いオカズになりました。

さて、今回のタイトルの漁業許可についての話になります。

私は今までモジャコなんて売り物にならないだろうと思っていたのですが、実は養殖ブリの元になる重要な資源で、捕獲には許可が必要なものなのでした。

正確にいうと、千葉県ではモジャコは15cm未満と規定されており、今回私が食べたものはモジャコではなくワカシなのでセーフでした。

しかし私が過去記事で書いた時のものは12~3cmでした。

当然ながら狙って漁獲したものではありませんが、規則に照らせば違反になってしまいます。

六年前のことは今となってはどうしようもありませんが、今後、モジャコが網に入ったらはどうすればいいのか?

漁協の人に聞いてみたところ、
「生きていたらすぐに放流してください。死んでいたらそのまま処分してください。」
「他人に渡すのもいけません」とのことでした。

雑談の中で軽く聞いただけなので「処分」について詳しくは聞きませんでしたが、常識的に考えて廃棄のことでしょうね。

今後、もし漁の途中で生きているモジャコを見かけたら私は即座に海に返すし、仲間にも周知しておきます。

東京湾で釣りをなさる方も、もし15cm未満のブリが釣れたら生きているうちに海に戻してください。

2024.5.13 クロダイの旬は?

整備期間を終え五月一日に一か月振りに漁に出て、スズキやコハダを獲りました。

クロダイが少々混じりでいたので一尾もらってかえりました。

捌いている途中、中骨に身がいくらか残ってしまったのでそれをそぎ取って何気なく口に入れたところ、
あまりの甘さに思わず「あまっ!!」と叫んでしまいました。

大げさに思われるでしょうが、砂糖でもついていたのかというほどに甘く感じました。
強烈な甘みを持っているのに脂っこさは全く感じず、噛みしめていると甘みの後から旨味が出てきます。もちろん魚臭さは皆無です。
この時のクロダイの味は、私の人生における魚関係のおいしさランキングトップ3に入るほどの味でした。

さてでは、ここでクロダイの旬はいつかと調べますと。

ネットで検索すると「クロダイの旬は秋~春で冬が最も美味」と出てきます。
「春から夏が産卵期なので、産卵に備え身に脂を蓄える時期が一番おいしい」という理屈がついてきます。

要するに夏は四季の中でクロダイがおいしくない時期ということになります。

しかし今回私が食べた、人生で三本の指に入るおいしさのクロダイが漁獲されたのは五月一日。
暦の上では五月一日はまだ晩春で、初夏は五日からとなっていますが、体感的にはもう夏みたいなもんですよね。

この後は連休に入ったので、次に出漁した五月八日にまたクロダイを貰って帰りました。
五月一日のクロダイを食べたのが仲間内では私だけなので、皆の評価を聞きたかったのです。

5人に食べてもらった結果、元料理人を含む4人がおいしいと言いました。
ただ一人、味に一番厳しい親方だけは「そこまで言うほどでもない」と、つれない評価でした。
まあ確かに8日のクロダイは、おいしくはあれど1日のものには全然及ばない味でした。
(個体差でいうと1日のは卵巣が半分ほど発達、8日のは放卵直前くらいの発達具合でした)

結局のところ何が言いたいかというと、
魚の旬というものは全体としての目安にはなるものの、個体差による時期の開きはかなり大きい。
よって魚の目利きは重要だし難しい。
という、至極当たり前の話でした。

まあでも今回の件を踏まえてひとつ付け加えるならば、ネットや本の情報で「旬ではなくまずい」とされている時期でも、個体によっては旬の真っただ中でおいしいものもいる、ということですね。

うーむ。魚の目利き、私にはできるようになる気がしません。

2024.4.30 整備期間終了 ブラックコーヒー

四月いっぱいかけての船の機械整備、網補修が終わり、明日より出漁になります。

整備期間前の最後の漁は3月24日で、コノシロがまずまずの量が獲れましたが、それから一か月以上を経て海の様子は変わり、今後はスズキを狙っていくことになると思います。

このスズキ漁へ変わる時期というのが、毎年ちょっときついのです。

コノシロ漁及び整備期間は、仕事時間が朝から夕方までで、普通の生活時間帯と同じです。
しかしスズキ漁は夜がメインなので、これからは夜の20時くらいに出漁して朝まで働く日々になります。

やはり夜って、昼間に働くのと比べて眠くなりやすいですよね。

そんなわけで夜の仕事にブラックコーヒーは欠かせません。

私は普段、スーパーの特売缶コーヒーしか買ったことがないのですが、今回、近所のコンビニ3店の飲料水コーナーを覗いてきました。

最初に行ったのがセブンイレブンなんですが、なんと9種類ものブラックコーヒーが置いてありました。

驚きつつ次に近くのファミリーマートに行くと、こちらも9種類。

最後に行ったローソンでは7種類でした。

同じ銘柄なのに内容量が違うものや缶・ペットボトルの違いなどもあったので、その場合は一つだけをピックアップしたので、つまり売り場にはもっと多くのブラックコーヒーが置いてあったのです。

一昔前は、ブラックコーヒーなんて飲むのはたんにカッコつけているだけだ、なんて声がちらほら聞こえましたが、コンビニの飲料水コーナーのような激戦区にこれだけ多くの味のブラックコーヒーが置いてある事実を前にしたら、そんな言説は吹き飛んじゃいますね。

さて、これからの漁もカフェインで頭をしゃきっとさせ、まずは安全第一で頑張っていきたいと思います。

2024.4.16 包丁とハサミ

今月は整備期間なので沖に出ず、網チームの私は一日中、網の補修をしています。

網の修理に欠かせない道具が網針と包丁です。

包丁というと普通は出刃や三徳のような形がイメージされると思います。

しかしうちの船では昔から慣習的に刃物全般をひっくるめて包丁と呼んでおり、要は切れれば形は何でもよいのです。

ゆえに下のような肥後守も包丁と呼ぶし、

こんなゴツいナイフだって船にあれば包丁と呼ばれます。

まあナイフは冗談ですが。

網の補修作業ですが、縫い合わせている糸を切ったり、破れている個所を切りぬいて直す為には包丁(刃物)が無くては仕事になりません。
私が入社した二十数年前から、経験豊富な古参ベテラン達は全員包丁を使っていました。

包丁以外の道具を使うなど考えてみたこともありませんでしたが、4年ほど前のことです。

網長が包丁の代わりにハサミを使い始めました。

そして私達も勧められたので試しに使ってみたところ、驚くほど使い勝手がよく、瞬く間に皆がハサミを使うようになりました。

例えば網を菱形に切りぬくとします。

ハサミで切ったのがこちら

包丁(ナイフ)で切ったのがこちら

切った後の糸の端が、ハサミではきれいなのに包丁で切ったものはバラけてしまっています。

私たちの使っている無結節という網では、糸がほつれていると隣の網目もほどけてしまうのでよくありません。
ハサミを使って糸をきれいに切断できると、その後の仕事がとてもやり易くなります。
それにハサミは、切りたい場所を狙って切るのが包丁に比べて容易かつ正確にできます。

とにかく網の補修にはハサミが実に使いやすく、もう包丁には戻れないほどです。

今私たちが使っているハサミは、1200円の万能ハサミから100円ショップの裁縫ハサミまで人により様々ですが、100円のハサミでも充分実用に耐えるうえ、包丁より使いやすいです。
(ちなみに皆が使う包丁の値段は上は5000円から下は安くても600円ほどです)

値段で物の優劣を考えるのはナンですが、100円のハサミでさえ数千円の包丁より使いやすいという事実を目の当たりにすると、やはり「適材適所」という考えは大事なのだと改めて思わされます。

2024.3.30 濃霧

この写真が今朝午前6時53分。

約1時間後の7時51分に同じ場所、同じ向きで撮ったのがこちら。

今朝の船橋港の様子ですが、かなり濃い霧で、3~400メートル先は何も見えないほどでした。

沖でこのような濃霧にあったことがあります。

朝方、周囲にモヤがたちこめてきたと思ったら、今まで目標にして走っていた陸の光が見えなくなり、そして船の周りが全て真っ白なモヤに囲まれました。

沖でこういうモヤがたちこめる場合は、ほぼ無風に近い状態です。

この時、上を見れば霧、左右を見ても霧、下を見ても無風ゆえのナギの海面であり、周囲の環境に変化が何一つありません。

このような時にどうやって自分の位置を知ればよいのか?

現代はレーダーをはじめ色々とあるのでなんとかなりますが、昔の人はどうしていたのでしょうかねえ。