大平丸ブログ」カテゴリーアーカイブ

2017.5.17 アカクラゲ 魚編

今年はアカクラゲがとても多く、過去最高レベルです。
今年はと言ったものの、正直に言うと去年のこの時期も「今年はアカクラゲが多い!過去最多だ!」と感じていたし、一昨年も同じ事を言っていました。具体的なデータはなく私の感覚のみですが、東京湾では年々アカクラゲが増加しているように感じます。
アカクラゲが人間に与えるダメージについて前回書きました。仕事を放りだしたくなる程の痛みを与えてきます。しかしまあ所詮は一過性のもので後遺症もなく、フェイスガードなどの装着で防げる話です。

私達にとって本当に困るのは魚へのダメージです。

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氷締めされたスズキですが、なんだか非常にビックリしたような表情をしています。
口に棒がささっているみたいに見えますが、これはただの背景です。
よく見るとエラからちょろっと赤い糸が出ており、これを拡大すると

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このような感じになります。
赤クラゲの足が口から入り、エラにひっかかった状態です。

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通常海を泳いでいるぶんには絶対に入らないけど、密集した状況で暴れるから口に入っちゃうんでしょうね。
このように赤クラゲを吸い込んでしまったスズキは、もうダメです。
かなり弱っており、水槽に入れても港に運ぶまでの途中で死んでしまうものがけっこういます。
水槽の中で死んでしまった魚は「アガリ」といいます。

私達が普段やっているのは、網で獲った魚を魚種に応じて
スズキや鯛などは「元気に生きた状態で港まで運ぶ」
アジやサバ、イワシなどは「海からあげた瞬間に氷水に入れ、鮮度最高の状態で港まで運ぶ」です。
しかるに水槽の中で死んでしまったアガリは、生きてもなければ適時に氷締めもされていない、中途半端なものということになってしまいます。
実際のところは運搬船の船長と乗員は活魚の水槽に常に気を配っており、アガリが出たらすぐに氷締めにするので、アガリといえども鮮度は別に悪くありません。
しかし死んでしまった魚はもう、鮮度いかんに関わらず「活け」の魚より相場が大きく下がってしまいます。

活かしたい魚が赤クラゲと一緒に網にはいると、ほんとうに大変です。

以上、東京湾から居なくなってほしい生物として、ギマと同列で挙げられる赤クラゲのレポートでした。

2017.4.28 アカクラゲ

今月は10日まで時化や休日が重なり一度も出漁しませんでしたが、それ以降は順調に出漁できています。
海の様子ですが、スズキの漁獲は例年のこの時期と同じくらいで悪くはないのですが、今年はアカクラゲが非常に多く、とても困っています。
アカクラゲとは。この通り赤いクラゲです。

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直径10cmくらいの本体から細長くちぎれやすい糸みたいな足(?)が1メートルくらい伸びていて、ここに毒を持っています。
毒といっても手や足につくととヒリヒリするという程度のもので、フグ毒やヘビ毒のような致死性はありません。毒としては優しいレベルのものでしょう。

ではこのクラゲがいるとなぜ困るか。写真とともに解説してみます。
海中に投じた網を絞り込んで中の魚を運搬船に移す直前。

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ここからタマ(タモ。頑丈な虫取り網みたいなもの)でスズキをすくいます。

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アカクラゲが多すぎて海面が真っ赤です。

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運搬船のデッキで選別し、いいスズキは水槽で活かします。
1匹ずつ手で水槽に入れていきます。
この時、スズキはもちろん活きがいいのでビッタンバッタンと暴れまくり、周囲の海水とアカクラゲが混った液体が私らの顔面にかかってきます。
これがきついのです。このアカクラゲ汁が目に入ったら、痛みでしばらく目があけられません。
手足につく分にはたいしたことないのに、粘膜にこのアカクラゲがつくと嫌になるくらい痛いのです。
どれくらいの痛みか、例えるならば、、、
たいていのご家庭に常備されているであろう、ラー油の小瓶。
あれを目薬みたいに2,3滴、目に垂らしてみましょう。
ヒリヒリしそうでしょう?そんな感じです。 たぶん。 やったことないけど。
目のみならず鼻や口についてももちろん痛いし、もう一か所、ヤバイ箇所があります。
仕事の合間に急いで小用を足す時、こう、引っ張り出すわけですが、この時に手にアカクラゲがついてたりすると、、、
しばらくの間、己のうかつさを悔やみつつアカクラゲを恨みながら、股間を押さえて身もだえするハメになります。

アカクラゲが多くて困る理由のまず一点は、このように人間に与えるダメージが大きいこと。
そしてもう一つ、魚に対するダメージ、特に私たちの商売の要である「活けスズキ」に与える影響があります。
次回、アカクラゲが多くて困る理由 魚編を書こうと思います。

2017.4.4 さくらます

東京では桜が満開とニュースで言っていました。
船橋周辺では例年東京より少し遅れて開花するので、
まもなく花も見頃になるでしょう。

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先週獲れたサクラマスです。
写真写りは悪いですが、実物は細かい銀色のウロコがビッシリと体表をおおっていて、美しい魚です。
このサクラマスはもちろん海で獲りましたが、この魚は産卵は川でするらしいです。
そして生まれた稚魚は、海に下るものと川に留まるものがおり、海で育ったものがサクラマスで、川に残って育ったものがヤマメと呼ばれるようになります。
私は漁師になるまではヤマメは完全な川魚だと思っていました。まあ間違っちゃいないかもしれませんが、ヤマメが海に下るとサクラマスになるなんて、全く知りませんでした。
そういえば、ヤマメって私はスーパーなどで見たことがありません。
山奥の旅館にでも行くか自分で釣るかしないとあまり食べる機会がない魚かもしれません。

私は初めて食べます。塩焼きにしました。
脂がすごいです。焼いてるとジュワジュワボタボタと身から脂が流れ出てきます。
味は鮭みたい。というより、何も言われずに出されたら鮭と思っちゃうくらい似ています。
おいしいです。でも、なんかこれといった特徴もないので、なんとなく肩透かしをくった気分でした。
私の勝手な期待のせいでイマイチな感想を書いてしまいましたが、おいしいことには間違いありません。
桜の咲くころに獲れるから さくらます
という命名理由の説もあるそうで、味よし、見目よし、名前よし、なんとも風流な魚です。

2017.3.25 出港時間

今、夕方17時に出港しています。
冬より日照時間が伸びてきたから17時でも明るいし、日差しも徐々に春めいて暖かくなってきました。
しかし太陽が沈んでしまうと海上は一気に寒くなります。
まだまだ厚手の防寒着が手離せません。
帰港して水揚げが終わるのはだいたい1時から3時くらいの間です。まだスズキの相場は安いので、今の時期は夏場より仕事時間が短いのです。
それゆえ、仕事を終えて家に帰る時は、辺りはまだ真っ暗、車の通りも少なく静まり返っていて、これがなんとも寂しいです。
夏場なら出港は20時前後で、水揚げが終わる頃にはすっかり夜は明けて町も活気づいてくる時間なので、こちらの気分もいくらか明るくなるのですが。
やはり日の光って大事なんだなと感じます。

2017.3.15 のりおき

三月。今シーズンの漁が始まりました。
一月にも出漁はしていましたが時期的に時化が多く、そして二月は船橋の巻き網は出漁しないきまりがあるらしく、丸々一か月間、船の整備と網の補修作業を行うので沖に出ません。

なので感覚としては三月は新学期に近いです。
「のりおき」とは、この三月の一番初めに出漁する日のことを言います。
しかし別段これといって変わったことをするわけではなく、通常通り出漁し、帰港して水揚げするだけです。
昔はのりおきの日は帰港すると大漁祈念のお酒や寿司が振舞われましたが、いつの間にかやらなくなりました。
70代のベテラン数人に「のりおき」のことを聞いたことがありますが、ただ初出漁の日を指すだけで、言葉の意味や故事・由来などはみんな知りませんでした。
そんなわけでこの「のりおき」という言葉は知っていてもあまり意味がありません。使い道としては、新人の前で
「ふっ 明日はのりおきだな、、、」などとさりげなくつぶやき、ちょっとベテランぶるくらいですかね。

今年ののりおきの日は、まずまずの漁獲がありました。
今年も東京湾の豊漁を願うばかりです。

2016.12.9 青アジと黒アジ

先月はアジが多少獲れました。

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並べた2匹、似ていますが種類が違い、私達は上を黒アジ、下を青アジと呼びます。
正式名称は上がマアジ、下がマルアジです。
知名度の高いマアジをなぜわざわざ黒アジと呼ぶのかというと、マアジには回遊型と居着き型というものがあり、今回獲れたものは回遊型なのです。
回遊型の特徴は大型でスマートであり、居着き型はやや小さめでふっくらとしています。
居着き型のほうが脂がのっていて相場が高いため、マアジでも区別が必要になるのです。

そして青アジ(マルアジ)ですが、相場はマアジよりだいぶ安い魚です。
旬の時期の脂がのったものはマアジに勝るとも劣らないうまさなのですが、それ以外の時期では独特のクセがあるうえ、身が水っぽいのであまり刺身に向かないのです。

この黒アジと青アジですが、海ではそれぞれの魚群を形成して別に泳いでいるので、一緒になることはありません。
しかし私達が獲って運搬船に積む際に、ごっちゃ混ぜになってしまう場合があります。
そんな時は陸に帰ってから選別します。
しかし上の画像でおわかりのように、見た目はけっこう似ています。
そして魚は同じ群れでも個体によって成長具合は色々と違い、大きさや太り具合などはまちまちです。
痩せている黒アジと太っている青アジなんかだと咄嗟に見分けはつけづらいです。

ですが魚の選別は時間との勝負。
手作業で一匹づつ、数千匹の魚を鮮度の良いうちに箱詰めしなければならないので、迷っている暇はありません。しかも選別がいい加減では信用を失ってしまうから、間違いは許されません。

実はこの黒アジと青アジの選別には1つ必勝法があります。
目の色です。

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黒アジの目は普通の魚と同じですが、青アジの目は赤っぽいのです。
画像ではなんとなく色が違うな、という程度に思われるかもしれませんが、実物の青アジの目は赤っぽいうえに奥まで澄んでいて、ハッキリと区別できます。
それゆえ体型に惑わされることなく、とにかく目さえ見れば間違えることはありません。

私はスーパーの鮮魚売り場をよく覗きますが、たまにマサバとゴマサバが間違って売られているのを見かけます。わざととは思いませんが、プロでも間違いはあるということです。
マアジといって売っているものの中にも青アジが混ざってしまうこともあり得ます。
購入する側にも知識があれば間違いを防げますから、知っておいて損はないと思います。
いや、旬の青アジはほんとにうまいんですけどね。

2016.11.23 いか

イカがちょくちょく網に混じります。
イカと聞いて普通に思い浮かべるのはスルメイカのような細長いやつでしょうが、東京湾で主に獲れるのは「コウイカ」という種類で、こんな形のやつです。

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胴が肉厚で太く、足は短い。ころころとしてかわいいイカです。
2匹(2ハイ)写しましたが、このイカ達、体形は似ていますが種類が違います。
正式名称は上がシリヤケイカ、下がコウイカ。
ですが、私達は上をスミイカ、下をツノイカと呼んでいます。

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右がツノイカ(コウイカ)、左がスミイカ(シリヤケイカ)です。
コウイカ類は「ふね」と呼ばれる大きな骨のようなものがあるのですが、ツノイカの「ふね」の先端には尖ったツノがあるのです。
このツノは捌いていない状態でも触れば確実にわかるので、区別は容易です。
しかしこのイカ達は地方によって呼び方がまちまちで、私達がツノイカと呼んでいるコウイカのことをスミイカと言う場所もあるようです。
同じ魚でも地方によって名称が違うというのはよくあることですが、このイカ達を混同されたらうまくないです。
なぜならツノイカは、シリヤケイカ(私達のスミイカ)の3~5倍の値段で取引されるからです。
見た目はたいして変わらないのに値段に大きな差があるのです。
出荷される時には私たちの使う名称で出されるのだから、その先のスーパーや料理屋などでも同じ名称で売られるわけです。
すると、例えば旅行先のすし屋で「スミイカを握ってくれ」と言った時に、シリヤケイカとツノイカのどちらが出てくるのかわからない、ということになります。
安いシリヤケイカが出るか、お高いコウイカが出てくるか、どうなんでしょう?

このイカ達ですが、値段に3~5倍も差があるということは、スミイカ(シリヤケイカ)はまずいのか?と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。漁師のひいき目(?)を抜きにして、普通においしいイカです。
では、ツノイカ(コウイカ)が絶品なのか?といえば、いやあ、うまいにはうまいけど、そこまででは、、、という感じです。私には。
刺身で食べるとスミイカは食感がねっとりとしていますが、コウイカはパキッというかコリッとした感じです。
どちらも甘くておいしいです。味は同じ。イカあじ。
もう一度言いますが、「味は同じ」。
なんでこんなに値段に差があるのか私にはさっぱりわかりません。
まあ私たちの漁獲では、スミイカ(シリヤケイカ)とツノイカ(コウイカ)は10対1くらいなので、ツノイカのほうが希少価値があるとはいえます。
でも、味が同じなら希少価値なんて関係ないですよね。
結局、わたしには値段の差の理由がわかりません。
スミイカ(シリヤケイカ)、おいしいですよ。

2016・11・15 アカヤガラ

1メートル位のアカヤガラが網に入りました。
ヤガラは変わった形で、棒のように細長いうえ口と尾が長いのが特徴の魚です。

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東京湾内湾で獲れるのはかなり珍しいです。
魚を置いている発泡スチロールの横の長さは79センチあります。

魚の全長を測る時は普通、口の先端から尾びれの端までを測りますが、このヤガラの場合も同様にするのか、私は知りません。

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尾っぽ(?)と頭を大きく写しました。
下が尾っぽ(?)ですが、この糸のような細い部分まで測って全長というのでしょうか?
これまで含めるのは、身体測定の時につま先立ちをするような無理やりな感じがするのですが、、、
まあ魚の取り引きは重量、キロ単位で行うので、全長のことは深く考えないことにします。
この魚は白身でとてもおいしいのです。

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三枚におろしました。上から身・中骨(本体付き)・内臓・身です。
ご覧の通り、全長に対する可食部の少ない魚です。
これは私の感覚ですが、「全長1メートルのアカヤガラ」より、アジやサバなど普通の魚体の30センチもののほうが可食部はずっと多いです。
この写真を撮った時には思いつかなかったのですが、今度また獲れたら可食部の重さを量ってみたいと思います。

最初に書いたようにめったにとれないので、報告できるのはいつになるかわかりませんが。

2016.11.8 モクズガニ

時化が多くなりました。

時化た場合は翌日の朝に網仕事をします。
網仕事は日が出て明るくなってから始めるので、今だと朝6時から開始です。
夜21時に集合しているので、時化ると網仕事まで9時間も時間があきます。
それまでどう時間を潰すか。
酒を飲んだり遊びにいったり寝たり、各人それぞれです。
こんな時に私は探索をします。
近くの川や港の岸壁を懐中電灯で照らして、生き物を探すのです。
これがおもしろいんです。
ある日は生物の影は全く見えないのに、次の日にはハゼが岸壁にびっしり群れをなしていたりします。
初夏にはテナガエビが沢山いるし、クロダイの稚魚が泳ぎ回っていたりして、見ていて飽きません。

ここ最近はモクズガニが出現するようになりました。
岸壁の水面スレスレくらいの場所にいるので、タモ(虫取り網みたいなもの)で簡単に捕まえられます。
結構な大きさです。

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こんなのが30分ほどで10匹獲れました。
このモクズガニは有名な上海ガニの仲間で、食べるとうまいらしいです。
らしい、というのは、私は甲殻類が嫌いで食べたことがないものでわからないのです。捕まえるのは好きなんですが。
結局カニは写真撮影後にリリースしました。
こんな感じで夜の探索は発見や収穫が色々とあり、面白いのです。

まあ、網とバケツをもって深夜に徘徊しているので、過去に2回、職務質問されましたケド。

2016.10.21 とらふぐ

8月の終わりから豊漁が続いていたスズキですが、最近は漁獲が減って例年のこの時期と同じくらいに落ち着いてきました。
そろそろサバかイワシでも回遊してきてくれないかと期待しているのですが、今のところその兆候はありません。
それはさておき、今年は変わったことがありました。
スズキが獲れだしたのと同時に、トラフグが大量に獲れ始めたのです。
今までは年間を通して十数匹ほど網に入るだけだったのが、今年は一日で数十匹、多い日には100匹以上も獲れる日が続きました。漁師歴30年のオキエ(親方)も「こんなにトラフグが獲れるのは初めてだよ」と言うほどでした。
網に入るトラフグはもちろん天然物なので、旬の冬に大型のものが獲れるとすごい値段になります。

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このサイズで1・6キロ。私が手のひらに乗っけている写真です。ただ、今回獲れたのは全て手のひらに収まってしまうくらいの小型でしたが。

過去に5キロもののトラフグが獲れたことがあります。
5キロのトラフグを例えると、、、普通の猫1匹より少々大きく重いくらい、といえば伝わるでしょうか。
その5キロものは旬の真っ盛りに獲れたので、1キロ当たり8000円近い値段で売れたと記憶しています。
一匹のトラフグが4万円です。これが市場に行って料亭で調理され、お客の前に出されるまでには数倍になるので、末端価格での刺身一切れは恐ろしい値段になっているんでしょうね。
獲れたフグは、フグ専用の小さな水槽で活かして持って帰ります。
スズキと一緒の水槽に入れると、フグはスズキに噛みついて傷をつけてしまうからです。
フグでも種類によって気性が違うようで、よく獲れるアカメフグやショウサイフグはあまり噛みついてこないのですが、トラフグは油断するとガチッと食いついてくるのでヒヤリとします。
フグの歯は鋭く強く、人の指くらいは簡単に噛みちぎります。

そういえば先月、面白いことがありました。
網に入った魚を仕分けしていたら、先輩が「なんだこれ!?」と言ったので示す先を見たら。
野球ボールくらいの真ん丸なモノがありました。
手に取ってみましたが、全く動かないものの触感や質感から明らかに生物っぽい。しかしこんなモノ見たことない。
「新種の生物か!?」と思いじっくり観察したかったのですが、仕分けを早くしなければならないので、とりあえずフグを活かしている小さな水槽に入れておきました。
しばらくしてからその水槽を覗いたら、その丸い生物(?)は消えていて、フグが数匹泳いでいるだけでした。
水槽にはちゃんとフタがあるので逃げ場はないし、フグに食われたにしては残骸が見当たらない。
はて、あの丸いヤツは一体どこに行ったのか?
家に帰ってからしばらく考えてみて
、その球体はトラフグが膨らんだ姿だったのだろうという結論に達しました。
怒ったトラフグがパンパンに膨らんだけれど、水槽で落ち着いて普通の姿に戻ったのだと思われます。
そうとしか考えられません。
いやあ、写真に撮っていなかったのが悔やまれます。
ほんとに真ん丸だったのです。目もヒレも尻尾もない、どうみてもただのボールだったのです。
漁師歴15年以上の先輩と私ですら、魚と思わなかったくらい見事な真ん丸だったのです。

いずれまた今回みたいな真ん丸フグが居たら、その時は写真に撮ってご覧に入れたいと思います。