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2020.8.14 さかなクン

最近テレビで「さかなクン」をけっこう見かける気がします。

この方を芸能人と言っていいのかどうかわかりませんが、なかなかの個性と膨大な知識量で、相当な知名度があると思います。
私はテレビで初めて見たとき、魚を見るたびに叫び声をあげる変な人と思いました。
しかし人気が出てテレビ出演が増え、そのプロフィールが紹介されるにつけ、若くして多くの功績を挙げている立派な人物だと知りました。

そんなさかなクンが以前、何かの撮影で船に乗ってきました。
その番組の内容はさっぱり覚えていませんが、実際にさかなクンに接して、その人柄を素晴らしいと感じました。

一例を挙げますと、カメラがなくまわりにスタッフもいないような隙間時間に、仲間が色紙を出してサインを求めたところ、とても快く引き受けていました。
見ていて驚いたのが、芸能人のサインは普通、自分の名をディフォルメしたものを一筆書きで書いただけのものが多いと思うのですが、さかなクンは色紙に魚のイラストを描いていました。
それもしっかり丁寧な書き込みで、実にクオリティの高いものです。書きあげるのにはそれなりに時間がかかっていましたが、仲間と色々会話しながらスラスラと書いていました。
彼の座右の銘は、一期一会をもじった「一魚一会」というものらしいですが、ほんとうにその心がけを実践しているようで、サインのみならずその他の行動一つ一つにも誠意が感じられ、私はすっかりファンになってしまいました。

これは帰り際にもらったお礼カードですが、左上のもの以外、メッセージは全部手書きです。
こんなもんはマネージャーかスタッフが書いているに決まっているだろう、と言われそうですが、私はこれはさかなクンが実際に手書きしたものだと思っています。
(なんで手書きのカードを私が3枚も持っているのか、覚えていません)

それと呼び方ですが、さかなクンさん!とか、さかなクンくん!ではなく、そのまま普通に「さかなクン」と呼んでもらえればいいそうです。

しかし、例えば手紙などを書くとき、「拝啓 さかなクン」じゃ失礼にあたらないかな?
やはり「拝啓 さかなクン様」と書かないといけないかな?
また、喧嘩してムカついて呼び捨てにしたい時には、「おい!さかな!」と言うことになってしまうのか?
なんにしても、この「さかなクン」というのは実に絶妙な名前だと思います。

さかなクンの今後のさらなる活躍を期待します。

2020.7.28 梅雨が明けない

昨日、今年初めてセミの声を聞きました。
セミが鳴くと梅雨明けと昔から言い習わされていますが、そういえば、もう7月も終わりだってのに関東はまだ梅雨が明けてません。
梅雨明けってこんなに遅いもんだっけ?と思い気象庁の関東の梅雨明けの資料を見たら、1951年から始まって、早くは2018年の6月29日(次点で2001年7月1日、1978年7月4日)、遅いのは1982年の8月4日(次点で1998年と2003年8月2日)でした。
年によって梅雨明けは一か月近くも差があるんですね。
わざわざ次点の日付を書いたのは、過去の梅雨明けが極端に早い年と遅い年に、ちょっとした関連があるように思えたからです。
(早い)1978年7月4日 → (遅い)1982年8月4日
(早い)2001年7月1日 → (遅い)2003年8月2日
70年ほどの気象観測史のなかで、梅雨明けが早い年の数年後は梅雨明けが遅くなるのですね。
それを踏まえると、2018年は観測史上最速の梅雨明けであり、その2年後の今年、梅雨明けが遅いのは過去のパターンを踏襲しているともいえます。

というようなことを私は今回初めて気づいたので書いたのですが、実は教科書に載っているレベルの常識だったらどうしよう。
 

しかし、今年は台風が来ませんね。
各地で恐ろしいほどの豪雨が降っていますが、この雨を降らせている前線と台風は全く別物ですし。
このまま今月中に台風がこないとなると、観測史上初の出来事だとニュースになっています。台風の発生から到達までのタイムラグを考えたら、もう7月中に来ることはなさそうですね。

私としては台風なんて別に来てほしくないので今のところありがたいのですが、しかし、来るべき時期に来るものが来ないとなると、後になってしわ寄せがくるのではと不安になります。

9月あたりに「遅くなってごめん!今まで溜めてた分、一度に持ってきたから!遅くなったから、利息をつけて多く持ってきたから!」
という感じでやってきそうな気がして恐いです。

前回の記事で7月前半は、時化続きで出漁できなかったことを書きました。
その後、数回ナギの日があり出漁したところ、マサバが獲れました。
旬にはまだ少々早く、価格は低めですが、今の時世でも売れるうれしい獲物です。

マサバが網の中でグルグルと泳いでいるところを写真に撮りました。
サバが多く網に入っていると、緑と黒の模様の魚群が水面直下を走り回るのが見えます。
私たちとしては非常にうれしい場面です。


しかし、残念ながらこの写真では全く伝わりませんね。
そのうちに動画でアップできるようにしたいと思います。

2020.7.13 時化続き

七月になってから強風が続き、2週間出漁していません。
ここ最近、海の荒れる日が昔に比べ多くなっています。

去年の10月には台風とその余波の影響で、実に3週間連続で時化たことがありました。

こんなに時化ばかりで会社はやっていけるのか、と疑問に思われるかもしれませんが、私には内情は全くわかりませんが、今までちゃんと存続してきたのだから、なんとかなっていたのだろうと思います。

スズキを獲り、年によって魚種に変化はあるものの回遊魚を獲り、混じりの魚もしっかりと獲り、と、それを一年を通してトータルでならせば、ちゃんと採算はとれているのでしょう。
去年の10月以降を例に挙げれば、11月から翌年にかけてコノシロが前例のないほど獲れ、時化や不漁をいくらか補ってくれました。

ただやはり、私たちの漁獲のなかで一番の稼ぎ頭はスズキであり、トータル水揚げの中で大きな割合を占めています。
そのスズキの相場が、今年は全く振るいません。
もちろんコロナのせいで売れないのが理由です。

これは非常に由々しき事態であるといえます。

まあ、もうわかりきっているし愚痴ってもしょうがないし、なんとかスズキを売るうまいアイデアを出すしかありません。
思ってはいますが、なかなか浮かびません。
まあね、コロナなんて関係なく、昔から私よりはるかに頭の良い人たちがずっと考え続けてきた結果が今現在のやり方なわけだし、そんな簡単に良いアイデアが浮かんだら苦労はないですな。

というわけで思考から逃避してとりあえず目の前のできる仕事をやっておこうと、漁に使う道具の手入れをし、いたんでいたワイヤーを直しました。

途中からですが、ワイヤーの端に輪を作る作業です
ワイヤーは6本の鋼線と1本の繊維綱からできており、それをばらしてから編み込みます
編み込みは完了し、残すは6本の鋼線の端の処理 
端をワイヤー本体の中に入れ込み、これで完成
だいぶ使い込んだワイヤーなので固くなっており、あまりきれいにできてません
拡大なんかして見ちゃイヤですよ!

ちなみにワイヤーの編み込みは国家検定がありますが、このやり方は昔のベテランに教わったもので国家検定のやり方とは違います。
充分に実用に値するし、このやり方は網にひっかからないので私たちには適しています。
またいずれワイヤーについては書こうと思います。

2020.6.29 赤い海とアヤ

アカクラゲがすごいです。
まあ、もうここ数年、発生量が大幅に増えているのはわかっているので驚きはしませんが、やはり困りものです。

網の中が真っ赤です。

網から魚をすくうためにクレーンで大きなタモを使いますが、入るのはアカクラゲがほとんどです。


この大量のアカクラゲの中から、ビチビチはねるスズキを急いで拾って活魚水槽に入れねばなりません。
毎度のことですが大変です。
ここひと月ほどは出漁する度にそんな漁模様だったのですが、先日、大雨が降った次の日に出漁したとき、海の様子が一変していました。

アカクラゲがほとんどいなかったうえに、サバがなかなかの量、獲れたのです。

魚を網から船に揚げる作業は、スズキに比べるとサバはかなり楽です。
スズキの場合はオオダマから運搬船の甲板に一度おろし、クラゲや混じりをよけながら人力で一匹ずつ拾わねばなりませんが、サバの場合はカメという大きな入れ物に一気に入れてしまえるからです。

楽といっても、氷の量、魚と氷と水の撹拌、さらに氷水の温度をさらに下げる塩の使用など、難しい判断箇所はたくさんあるのですが、それでもスズキと比べるとサバは楽なのです。

そしておもしろかったのが、この日、船にお客さんが乗っていたことです。趣味のカメラマンのようでした。
これが「アヤ」です。

アヤとは以前に書きましたが、縁起担ぎみたいな概念に近いものです。

船に知らない人が乗ってきたときに、その日の漁の様子が良ければその人はアヤがいいと喜ばれ、不漁だったらアヤが悪いと嫌われてしまいます。
今回のお客さんはかなりアヤがいい、ということになります。

「アヤ」なんて私からすると非科学的で迷信にしか思えない概念なのですが、しかし、話をしていると現役で腕のいい漁師でも結構本気でアヤを気にする人がいます。

しかしやはり、今回の例みたいに海の様子が一変するような状況を実際に経験し、それが毎回とはいわずとも客が乗った2、3回に1回の頻度で起こると、なにかしら超自然的な力というか、そういうオカルト的なもの信じる人の気持ちもわからんでもない、という気分になります。

歳をとるってこういうことかも。

2020.6.15 東京湾アラート

アカクラゲの季節です。
どこで網を張っても必ずアカクラゲが入ります。
網の中は真っ赤です。

私たちがアカクラゲから受ける被害については過去に書いていますので、そちらをご覧ください。

今の時期はフェイスシールドが必需品です。

以前は自作したりネットで注文していましたが、コロナ対策に有効と認知されたことで近所のホームセンターなどでも売られるようになりました。
大量生産の恩恵を受けて安く入手できるようになればありがたいです。

そういえば東京のほうでは、夜に橋を赤くライトアップするショーが行われていたらしいですね。
え、ショーではない?
アラートですって?
アラートで橋を赤くするって、なんの意味があるの?
赤は危険っぽい色だから?

そんなこと言ったら、完成時から真っ赤っ赤な東京タワーさんの立場はどうなるの?
ねえ、東京タワーさんの立場は!?

まあ冗談はさておき。

アカクラゲの毒は痛いけど、まあ対処のしようはあります。
今の私達には、コロナに起因する経済の低迷がまさに死活問題です。
一刻も早い終息を望むばかりです。

2020.5.31 でかい太刀魚

大きな太刀魚(タチウオ)が網に入りました。

悔やまれることに魚体の採寸・計量をしなかったので具体的な数値を提示できないのですが、私が今までに見たなかでも最大のサイズです。

太刀魚は大きいほど単価が高くなるので、このサイズだと通常なら1尾で10000円以上します。

通常とは、コロナ前のことです。
今回獲れた太刀魚は、コロナ前に比べて半分の値にしかなりませんでした。
しかし半値ならまだマシなほうで、私たちのメインターゲットのスズキは半値どころではない値下がりをしています。

世間からの評価は市場価格に反映されますが、特に今の世情ではそれが顕著に表れます。
手ごろな価格の大衆魚は普通に売れていますが、お出かけ向きの高価格帯の魚は需要が低迷し、大幅に値下げしてやっと売れる状況です。

魚価の回復を願うばかりですが、収束の兆しが見えたかに思えたコロナの数値が、最近は微増の傾向にあるようだし、まだ明るい展望が開けたとは言い難いと思います。

ここはやはりですね、アフターコロナのニューワールドスタンダードのマーケットにおけるシーバスのニーズをクリアにキャッチするというイシューについて、我々フィッシャーマンがワンチームとなりイニシアティブをとってイノベーションを起こすべくコミットするスキームをサジェストするものでございます。

何を言っているかわからないですって?
大丈夫。
私もわかってない。

2020.5.17 魚が売れない

魚が売れません。
例年だとスズキの相場があがり始め、夏本番に向けてエンジンがかかってくる時期なのですが、今年はとにかくスズキが売れません。売れても非常に安いです。

市場には自粛で行き場を失った高級魚があふれており、ただでさえマイナー気味なスズキはその中でかすんでしまっているようです。

高級魚はだぶついて市場価値が落ちている反面、アジ、サバ、イワシといった、いわゆる大衆魚は通常通り売れているようです。

イワシといえば二十数年前、東京湾にアクアラインができる前までは、これからの梅雨時期にかけてたいへん脂ののったイワシが豊漁だったらしいです。

今、会社の経営は日々悪化していると会長と社長に言われました。
神頼みはしてもしょうがないけど、イワシが回遊してきてくれないかと天に祈るような気分です。

明るい見通しが全くないので、せめて癒しになるような写真をのせます。

猫を枕にする猫。
この2匹は親子で、手前の枕にされているのが息子、気持ちよさそうに寝ているのがお母さんです。

2020.4.28 コノシロの酢締め

今月はまだ2回しか出漁していません。 
事情についてはコロナ禍の影響であると前回書きました。
それ以降、特に状況に変化はありません。

一週間まえに出漁した日ですが、3回網を張り、コノシロが少し入った網がありました。2~3トンほどいたと思います。
しかしその網には同時にミズクラゲとアカクラゲもけっこう入っており、結局船にあげることなく逃がしました。
理由は親方には聞いていませんが、選別の手間に対する利益があまりに少ないからだと思います。
小さい群れでも数多くそこら中に居るのであれば、網の回数を多くしてコノシロを溜めていくという手がありますが、その日はさんざんあちこちを探し回ってやっとそれだけの量だったので、その後に獲れる見込みがありませんでした。
中途半端な量のコノシロを持ち帰ると、輸送の手間などで逆にマイナスになってしまいます。

その日は最終的に、水揚げはゼロで漁を終えました。

しかし網に出口を作って魚を逃がしている時に、運搬船の船長が、コノシロを少しみんなのオカズ用にと獲ってくれました。
帰り際に欲しい者たちで分けたのですが、、、
60尾ありましたが、50尾も残ってしましました。
コハダだとみんなけっこう持って帰るのですが、コノシロだと
「う~~ん、、、俺はいいや」と敬遠するのです。
やはり骨がごついから、というのがその理由です。

今回のコノシロ  頭を落としても22cm
前々回の記事にしたコハダ・ナカズミ 頭つきで15~18cm

それで私が残りを全部もらったのですが、さばいてみたら白子や卵巣が発達中でした。どうやら産卵に向けて栄養を蓄え始めた時期のようで、しかしまだ栄養は身にまわっているという、一番おいしい時期の魚でした。
刺身で食べたときに、コノシロってこんなにおいしかったっけ?と思ったほどでした。

酢締めも作りました。
実は私、コノシロで酢締めを作るのは初めてです。
さすがにこんな大きな魚の骨は溶けないだろうと、思い込んでいたのでやらなかったのですが、結果は見事に成功でした。
ちゃんと骨は溶けて全く口にあたりませんでした。
ただし時間を計ったところ、骨を溶かすには1時間近く酢に漬ける必要があったため、コハダやシンコのような繊細な酢加減はできません。
それでも完成品は充分においしかったです。
今後は私、自信をもって皆様にコノシロの酢締めをお勧めしていこうと思います。

2020.4.18 自粛

今月に入ってから一回しか出漁していません。
春の嵐といった感じの時化の日が多かったこともありますが、ナギの日でも出ませんでした。
コロナ禍のせいで魚の需要が少ないうえに安いのです。
特に船橋の売りであるスズキが例年に比べ非常に安く、スズキがメインの底引き網漁船は皆で揃って一か月ほどの出漁見合わせを決めたほどです。

私たち巻き網船団には底引き漁船の自粛決定は関係ないので、出ようと思えば好きに出漁できます。
しかし、出漁はできるけどスズキは獲っても意味がないのは前述のとおりなので、狙うのはコノシロになります。
そのコノシロは冬をピークにどんどん漁獲が減ってきているのは前回、前々回あたりの記事で書きました。

要するに獲る魚がいないのです。どうすればいいのやら。

などと私ごときが書いていますが、本当に頭を悩ませているのは親方ですよね。
魚が獲れなければ一銭の稼ぎにもならないのに、乗組員には給料を出してくれていますので。
しかしこの状況ではそれもいつまで続くのかわかりません。

私たちができることはあまりありませんが、
「魚が東京湾から逃げ出すわけではないのだから、景気が戻ったら自粛した分を取り戻す気持ちで頑張ろう!」
と考え、体力を落とさず、体調を万全にすることが大事だと思います。
腕立て伏せにスクワット、タタミ1畳あればトレーニングはいつでも可能。読書もよし。
余った時間を知力と体力に変えて、事態しゅうそくに備えましょう。

2020.3.30 コノシロ終了?

コノシロがだいぶ少なくなりました。
いるにはいるのですが、群れが小さく一回の網で獲れる量が減ったうえ群れ自体も多くない。

思えば去年の11月半ばから獲れはじめ、12月、1月とコノシロとしては良い漁獲をあげることができたので、私としては充分ありがたい気持ちです。
季節が変わって海の様子も変化してきて、コノシロの群れを狙った網の中に、コハダやナカズミが混じるようになりました。

コハダ・ナカズミとはコノシロの成長前の呼び名です。
同じ網に入ったコハダ・ナカズミ・コノシロは、用途によって売り先と価格が大幅に違うので選別をします。

コノシロの中から皆で小さいコハダを拾っています。
この日のコハダ1キロ当たりの相場は、コノシロの30倍でした。

コハダは高く売れるのでありがたいのですが、需要はそれほど多くありません。
この写真を撮った日はコハダが多く入り、鮮魚として高価格を保って出荷できる量を超えていました。
こういう場合、超過分のコハダは加工屋にいきます。

ここで価値の逆転がおこり、コハダはコノシロよりも安くなります。
1尾の魚としてみればコハダよりコノシロのほうがお肉がずっと多いのだから、うなずける話だと思います。

こんな時は親方のお許しが出るので、もらって帰って酢締めにします。

50尾近くさばいて、塩を振ってしばらく置き、洗って酢に漬けて、とやっていくと、2時間以上かかっちゃいます。
手間はかかりますが酢締めはほんとうにおいしいです。やはりこんなことを考えつく昔の人はすごいとしみじみ思います。

問題はひとつ。作るのに時間がかかるけど、食うと一瞬でなくなっちゃうんだよね。

とまあ、とりあえず私たちは今のところ通常とたいして変わらず仕事をできていますが、これからしばらく先はどうなっちゃうんでしょう。
アメリカとイタリアの例をみるに日本においても今後、コロナの脅威は増す一方だと私は思います。

来月、再来月あたりも、能天気な記事を書きたいものです。