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2022.1.27 時化続き コハダ南蛮漬け

時化が続いています。今月はまだ2回しか出漁していません。

ここ数年の今の時期のパターンに従いコノシロを狙っているのですが、今年はコノシロの群れがいないのです。
コノシロより一回り小さいナカズミの群れはそこそこあるのですが、ナカズミにはコノシロほどの需要がありません。
特に今年は東京湾の近くでマイワシが豊漁とのことで、近辺の水産加工会社はそちらに多くのリソースを割いており、ナカズミはますます売れません。
なんとも困った状況ですが、なんとか売れる魚を獲ってしのぎたいところです。

とりあえず私の今できることといえば、いま獲れる魚のおいしい食べ方を紹介するくらいでしょうか。

そんなわけで、網に入ったコハダで南蛮漬けを作りました。
魚の南蛮漬けといえば、最近まで私はアジで作るものと思い込んでいたのですが、考えてみたらそんな約束事は無かったですね。

アジと同じように、指でエラと内臓をまとめて取る方法を試してみましたが、あまりうまくいきませんでした。

揚げたら即座に調味液に漬け込みます。

そしてにんじん、たまねぎ、ピーマンの千切りと一緒にいただきます。

食べてみると、骨は全く気にならずに頭ごといけました。

ただ同サイズのアジと比較すると、コハダは体型が薄いので身の量が少なく、少々物足りなく感じるかもしれません。

しかし味に遜色はなく、とてもおいしかったです。

そもそもこの南蛮漬けという調理法からして、素材の魚の味をとことん追求する類のものではありませんしね。

今回は漁の都合でコハダを使いましたが、いずれナカズミ、コノシロも南蛮漬けにして、骨の溶け具合や食感を試そうと思います。

2022.1.8 長靴

新年早々、久し振りの大雪でしたね。

船にもしっかりと積もりました。

我々の船はFRP、繊維強化プラスチックという材質で作られており、表面がツルツルしています。

FRPは濡れていなければたいして滑ることはありません。

しかし寒い日にはうっすらと氷の膜が張っていることがあり、そんな時に気付かずにいつも通り歩こうとするとツルリと滑って危険です。

また、イワシのような脂が多い魚が大量に獲れた時は、網からこぼれた魚が踏まれてそこら中が脂まみれになり、船のアチコチが滑るようになります。

それゆえ船上で働くには、長靴はなるべく滑らないものを選んだほうがよいです。

長靴を買いに行くと、「耐油(たいゆ)」と書いてあるものがあります。
なんとなくアブラに強そうな語感で、滑らない長靴との印象を受けます。
しかしこの「耐油」の意味は「素材が油による劣化をしにくい」ということで、長靴自体の品質の説明です。

「履いて滑らない長靴」ならば、「耐滑(たいかつ)」というものになります。
耐滑とはあまり聞きなれないし、スマホやPCの一括変換でも出てきません。
造語なのかもしれませんが、一字ずつでも入力すればちゃんと耐滑長靴の商品ページが出てきます。

右側が耐滑、左側が耐油の底面です。
耐滑はグリップのゴムのパターンが細かいことがわかると思います。
(右はだいぶ使用しているため、ゴムがかなりすり減ってしまっています。新品だとゴムのブロックは一つ一つエッジがキッチリと立っています。)

耐滑長靴は滑り止め性能はとても良いのですが、いささか高価です。

船上で履く長靴は機械の油に魚の脂と、色々な物に触れるので、耐油性はできれば欲しいところです。
私の周りの漁師はほとんど耐油長靴を使用していますが、今までにすっころんで怪我をした人はいません。
「耐油」としか書いていない長靴でも、必要充分程度の滑り止め性能はあるということです。
なので、耐滑性はあれば快適なオプション機能、といったところでしょうか。

多くの人が「耐油」で満足できてしまうから、高価な「耐滑」には手を出さず、それゆえ耐滑は需要が伸びずコストダウンしにくいのかもしれませんね。

最後に。
わかった風な説明をした後で恐縮ですが、わたくし、昨日調べるまで、「耐油」を「耐滑」という意味でとらえ、使っておりました。
今まで新人相手に、「長靴は耐油を選ぶといいぜ!滑らねぇからよ!」
なんて、いかにもベテランを気取って言っておりました。
私のせいで耐油の意味を間違って覚えてしまった人達、ごめんなさい。

2021.12.27 2021年漁 終了

24日に今年の漁は終了しました。


率直な感想としては今年も振るいませんでした。
魚が居ないわけではないのですが、獲れるものと需要のバランスが噛み合わなければ意味がありません。

最近見たニュースで、東京湾でサンゴが繁殖し始めて、代わりに海藻類が激減してると報じられていました。
環境自体が大きく変化し始め、全国各地で魚種交代などの異変が起こっている中で、今後の漁はどうなるかと私には予想もつかないのですが、なんとなく悲観的な気分になってしまいます。

そんな話をすると会長はよく、「良い時もあれば悪い時もある!あっはっは!!」と元気に笑います。
会長のこの発言は能天気な現実逃避ではなく、人事を尽くした後の天命を待つ姿勢であることがわかっているため、実に頼もしく思えます。

私もこの姿勢を見習いたく、来年こそは、全力をもって係る努力目標に向かって邁進すべく身を引き締めて事態に臨む決意を改めて心に刻まんと誓いを新たにする年の瀬でございます。

2021.12.13 太刀魚の歯 ちょっと詳細

10月に書いた記事の太刀魚の歯について、ちょっと説明不足な点があったので書こうと思います。

一番目立つ、上アゴ先端の牙のような前歯。

これは鎌(かま)のような形状をしていますが、鋭利で切れるのは先端のみです。
内側、外側のカーブ部は薄くなってはいるものの、ほとんど切れません。
以前、魚が網に穴を開けることの説明で、太刀魚が網にかみついたままぶらさがる絵をかきました。

口を閉じても網を切断できず、ひっかかってぶらさがってしまうのは、このような歯の構造が原因です。
噛みついても牙が深く刺さりこそすれ、肉を大きく切り裂くことはありません。

腕などをかまれると牙が突き刺さって抜けず、肉が切られることもないので、そのままぶらさげる状態になります。

このような場合、噛みついているヤツを外すには口をこじ開けるしかないのですが、それは片手ではできません。

私たちは常に周りに仲間がいるので誰かが噛まれてもすぐに助けられますが、一人で釣りをしている時などに大きなヤツに噛まれたら、外すのには相当難儀することでしょう。

他には、前歯以外の歯はどうなっているのかというと、生えている位置によって微妙に形が違います。

上顎は酷使されるのか歯並びはまちまちですが、下顎の歯はきれいに並んでおり、比較がしやすいです。

横から見ると、下あごはなだらかな山の形に歯が生えており、その山頂にあたる部分の長い歯はカエシがあり、他の短い歯はカエシがほぼ無い三角形をしています。

この山型の歯並びにどのような効果があるのかはわかりませんが、長めに成長する歯にはカエシができるようだ、といえます。
上顎の歯並びではなぜか、奥のほうで尖った先端が向かい合うような並び方をしています。
この並び方の意味が私にはさっぱりわかりません。

魚の歯なんて普段は全く気にもとめずに捨ててしまう部分ですが、ふと手にとって見つめると、思ってもみなかった発見や不思議がでてくるものですね。

2021.11.30 コノシロ漁へ

サワラやイナダも徐々に漁獲が少なくなってきたので、先週からコノシロ漁に移行することになりました。
網に穴が開く問題によりサワラ狙いとコノシロ狙いは両立不可能です。
詳しくは以前にも書いてますのでそちらをご覧ください。
↓「2019.11.30 網の穴」

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1484/

そんなわけで先週から、漁取り(りょうどり)の網をきれいなものに交換してコノシロ漁に出漁しました。
今のところ2回出漁して、2回とも運搬船を満船にできる量が獲れました。

漁場にはまだ魚の反応は多くあるので、この先もまだコノシロ漁は続けられそうです。

最近、北海道で、メインターゲットの鮭が全く獲れない代わりにブリが網に入り、あまつさえサバが超大漁というニュースを見ました。

魚種交代というのが本当に起こっているのかと考えさせられるニュースです。
このニュース、最終的にはサバが大漁で良かったですが、そこに至るまでの「鮭の記録的不漁」の時の漁師の焦燥感は察するに余りあります。

まあ正直なところ、私たちも人の心配などしていられる状況ではないのですが。
あぁ。コノシロが居てくれるのはありがたいけれど、それでもマサバかマイワシの大群にきてほしいなあ。

2021.11.15 ゴンズイ

ゴンズイが網に入りました。
これは18cmくらいあり、けっこう大きめです

ゴンズイは東京湾に普通に生息していますが、主に岩礁帯などに居るため通常は巻き網にはあまり入りません。
年に数回程度、何の拍子かたまに網に入ることがあります。

ゴンズイが網の中に見えると、私は戦慄します。

一見、ヒゲだらけでとぼけたかわいい顔をしていますが、そのヒレに毒のトゲを隠し持っているのです。

背びれの始点と胸鰭(両側)の三か所、白で描いたところに毒トゲがあります。
致死性ではないものの強力な毒であり、刺されると非常に痛いです。

私は漁師になって数年目に、ゴンズイを掴んでしまい、刺されたことがあります。
刺された箇所は目立った傷もなく、少し紫色っぽくなっただけでたいして腫れもしませんでしたが、その痛みは強烈でした。
神経を握りつぶされるような、何とも形容しがたい重く大きな痛みが、心臓の鼓動くらいの間隔でズキン、ズキンと、数時間にわたり衰えることなく延々と襲ってくるのです。
もう漁師なんて辞めようと思ったほどでした。
その時は船頭をはじめ多くいたベテラン乗組員も、「エイやゴンズイにやられたらお湯に浸す」という対処法を知らなかったので、私は陸にあがるまでの数時間、苦痛に悶えながら早く帰港することを願うばかりでした。

とまあ私は過去に非常に痛い思いをしましたので、今でもゴンズイが網に入るとつい、
「ゴンズイだあぁ!ゴンズイがいるぞうぅ!」と叫びまくってしまいます。

ここ数年に入ってきた若者たちはゴンズイのことを知らない者ばかりだったので、叫んでいる私を見て、「このオッサンはなんで騒いでいるの?」という表情をします。
そこでとりあえず毒について説明すると、納得してくれます。
しかし彼らの反応を見る限りでは、それほど危機感をもったようには見えません。

私  「ゴンズイの毒はな!すごく!すごく痛いんだぞ!!(熱弁)」
若者 「はあ。そうなんですか(冷静)。」

といった感じです。
まあね、あの痛みは実際に刺されないことには想像がつかないので、しょうがないですがね。

昔、アカエイに初めて刺された新人が、「他人が刺されて痛がっているのをみて、大げさだなあ、と思っていたが、自分が刺されたら本当に痛いのが分かった」と言いました。

アカエイに刺されるとけっこう血がでますが、ゴンズイの場合はほとんど血が出ないので、なおのこと他人には痛みが伝わりにくいことでしょう。

ゴンズイを見かけたら、くれぐれも安易に触れぬようご注意ください。

 

2021.10.29 サワラの歯

「漁取り」が穴だらけになってしまったので、新しい網に交換しました。
「漁取り(りょうどり)」とは海中に投じた網をすぼめていき最後に魚が残る場所で、ここに穴があったら魚がどんどん逃げてしまいます。
この漁取りは全体の中でも特に太い糸で作られた網で構成されており、普通に使っている分にはそれほど切れたり穴が開いたりはしません。そして穴はキオリという補修で部分的に直せるので、網を交換するまでにはいたりません。

しかしここ最近サワラが網に多く入る日があり、そうすると網はあっという間に、補修が追い付かないほどにボロボロになってしまいます。
サワラの歯で簡単に切られてしまうのです。

そんなサワラの歯はこちら。(過去画像の使いまわしですが)

見た感じでは、小さくてそんなに切れ味が鋭そうには思えないかもしれません。
比較として太刀魚の歯をご覧ください。

どちらかと言えば、太刀魚の歯のほうが凶悪で切れそうです。
もちろん太刀魚の歯でも網に穴はたくさん開きますが、しかしそれはサワラの比ではないのです。
以下にその理由を解説いたします。
サワラも太刀魚も、網を締めこむ作業の時に顔が網に触れることがあるのですが、その時に網が傷つきます。
まずは太刀魚から。
下の青で囲んだ丸二つが太刀魚の開けた穴です。

先ほどの写真でわかるように、太刀魚の歯は長いうえに先端にカエシがあるので、網にぶつかると網の目にひっかかってそのままぶら下がってしまいます。

それを手ではがす時に網が傷つきますが、小さな穴が開くだけです。

一方こちらの黄色い線の横の、長い穴がサワラのものです。

サワラの歯は小さくてひっかからない上に切れ味が良く、さらに自身の体重も重いものだから、顔を突っ込んでしまうと自重で落ちながら網を切り裂きます。

糸と糸の結び目は節(フシ)になっており固いので、フシを避けるように斜めに切れます。
サワラが自ら網に顔を突っ込んでくるのではないのですが、網を締めこむ際にはどうしてもそういう状況が起こります。
こうしてサワラや太刀魚が入る漁を一か月も続けると、漁取りは修理不能なほどにボロボロになるのです。

そんな、サワラのせいでボロボロになるならもっと頑丈な網を使えばいいじゃないか。
と思われるかもしれませんが、網は全体の重量や沈降スピード、多魚種への汎用性など、色々とバランスを考えて構成してあるので、そう簡単な話でもないのです。

何より、太刀魚やサワラが我々の漁場で多く獲れるようになったのが数年前からなので、対策に妙案がまだないのが実情といったところです。

たまにスーパーでサゴシ(小さいサワラ)を一尾で丸のまま売っているのを見かけます。
買って捌くときには歯に触れぬよう、ご注意ください。

2021.10.12 すなめり?

一昨日、10日の午前11時頃なのですが、沖でスナメリの群れに遭遇しました。

今の時期は普段は夜に働いているのですが、この日は昼に魚を探していました。

ナギで天気が良いうえに波もなく、海面が遠くまで見渡せる状況で、魚群を探して航行していた時です。
親方が遠くの海面で何かが跳ねているのを見つけました。

私たちの漁場で跳ねる魚といえば、通常はボラかサワラの二択しかありません。そしてその時にいた海域は、過去にサワラが大量に獲れたことがある場所に近いところでした。
サワラは相場が良く獲れれば嬉しい魚です。

親方は、サワラが跳ね回るのはマヅメ(日の出もしくは日没の前後1時間ほど)じゃないかと疑問に思ったものの、しかし何かは継続して跳ね続けているので、気になりその場所に向けて舵をきりました。

近づくにつれ、それはやはりサワラとは違うようだとわかりました。
私は防振双眼鏡で見たところ、全身は見えなかったものの、黒っぽくてツルリと滑らかな体表の生物が水面で跳ねていました。

跳ねるといっても全身が水から飛び出すほどジャンプしているのではなく、水面に背中だけを出してすぐに潜るといった感じです。
しかしそれは大きいうえになかなかの勢いなので、背中を出す度にしぶきがあがり、遠目には魚が跳ねているように見えたのでした。
この光景が時間にして十数分、しかも同時にいくつかのしぶきあがることから、数匹以上いると思われる状況で繰り広げられました。

私は双眼鏡で見て、これはスナメリの群れだと確信しましたが、親方以下仲間のほとんどは肉眼だったのでよく見えず、「遠くで何かがパシャパシャしているのはわかったが、あれがスナメリなの?」という認識でした。

結局、こちらが近づこうとしてもその物も移動しており、肉眼で見定められる距離までは行けなかったのです。
また、遠すぎて写真は撮れなかったので証拠画像もありません。
しかし私は今回の事象は、スナメリの群れが水面で跳ね回っていたものと確信しております。

それでですね。
今回のこの出来事なんですが、私は怖いのです。

何が怖いかというと、地震です。
実はこのスナメリは、東京湾では通常はほとんど見かけない動物なのです。
私達にとっては、数年、下手したら十年に一度くらい、「お、今イルカが跳ねたぞ」  「え、どこどこ?」という会話があるくらいの頻度でしか現れません。

おりしも5日前、千葉県北西部を震源とするマグニチュード5.9の地震がありました。
一週間程度は同クラスの地震に注意と言われていますし、また最近、世界のあちこちで地震やら噴火やらが起きています。

そして大災害の前には動物の異常行動の事例がよく挙げられます。

このタイミングで、普段なら一頭みるのさえ稀なスナメリが群れて跳ね回っていたなんて、異常行動だよなあ、と不安になってしまいました。

まあ不安がってばかりいるだけでは精神的に参ってしまうので、できるかぎりの備蓄や備えをしておこうと思います。
皆さまも災害への備えは万端になされますよう。


底引き網漁船は巻き網より時化に強く、出漁回数が多いうえに昼間に働くことも多くいので、スナメリとの遭遇は多いようです。
底引きを数十年やっている人に聞いたところ、スナメリは年に2~3回は見かけ、必ず3~4頭ほどの群れでいるそうです。
しかしここ1年くらい、とんと見てないと言っていました。

2021.9.28 時化とセバ

時化が続いており、かれこれ二週間、まともに出漁できていません。
十年ほど前に比べると風が吹く日が多くなったことに加え、魚種の変化、コロナ禍における魚価の低迷など、様々な理由があいまっての時化の日もあります。
緊急事態宣言はまもなく解除されますが、その後の情勢はどうなるのでしょうね。

時化の日には網仕事をします。
ここ最近の網仕事は、予備の網を作るためのキアミのセバです。

キアミとは、漢字で書くとたぶん「生網」で、新品の網のことです。新しい糸を生糸(きいと)と呼ぶのと同じことだと思います。

セバとは、網と網を縫い合わせる作業、及び縫い合わせた箇所のことです。

「網をセバする」「セバしたところが切れた」という使い方をします。

ふと、「セバ」とはどういう意味か?と気になりました。
今までは何の疑問も持たずに使っていましたが、よく考えると意味がわからない言葉です。

そこで「せば」とグーグル検索したら、
『連語 ~~せば 「き」の未然形+接続助詞「ば」』と出ました。
これは違うので次はカタカナで「セバ」と検索したら、今度は北欧のブランドとかオランダ人とか、セバスチャンとか、およそ網とは全く関係ないものがでてきました。

求めている回答とは違うので、検索ワードを追加して
「セバ 網」で検索したところ、、、

私が去年書いた記事が真っ先に出てきました。
次点で新潟県、栃木県の漁師のブログが掲載されていましたが、その次はもはやよくわからないタイトルだらけでした。
う~む。

網を使う漁師であれば、網を縫う作業は日常茶飯事のことです。YOUTUBEには漁師も多くおり、様々なことを題材にしています。
なのに、「網が切れちゃったからセバしてみた」とか、「セバのやり方 ~How to sew the net~」なんて動画は、ありそうなもんですが、ぱっと調べた限りでは上画像の一つしか無いようです。

「網をセバする」という言葉を使い、発信しているのは極めて少数ということになります。

セバのことを「網をからげる」とも言います。「からげる」の意味は「しばってたばねる、くくる、しばる」なので、これなら意味はわかりますが、しかし私たちは「セバ」を主に用います。
ほかの地域の漁師は網を縫うことを何と言うのか気になるところですが、頼みのグーグル様で検索して行き着く結果が自分の記事では、手詰まりですね。

「網 からげる」で画像検索してみたところ、
「ゼラチンゲルの融解抑制用組成物および融解促進用組成物、ゼラチンゲル、ゲル状食品ならびにゼラチンゲルの製造方法」
なる写真が上部にでてきました。

網となんの関係もないじゃないか!と思いましたが、もしかして「からげる」と「ゼラチンゲル」の「げる」が一致したから表示されたのか?

グーグルって、駄洒落大好きのオッサンが働いてるんだろうか?

もしそうなら、私とは気が合いそうです。

2021.9.11 ワカシの成長

イナダが湾奥にまで入ってきました。
イナダはブリの幼魚で、40cmから60cmほどの大きさのものを指します。
だいたい40cm未満はワカシ、60cm以上はワラサになります。

画像の下は45cmなのでイナダ、画像上は66cmあるのでワラサです。

私達の漁場で獲れるのはイナダまでの大きさがメインで、それ以上のものはかなり少ないです。
納豆はサイズ比較用です。油揚げに詰めて焼くのは私はひきわり派です。

冒頭でイナダが湾奥に入ってきたと述べましたが、もしかしたらそれは間違いかもしれません。

どういうことかというと、実は先月の始めから小さいワカシの群れが湾奥に入ってきていたのですが、このワカシが育ってイナダになったのか、それとも別にイナダの群れが新たに入ってきたのか、私にはわからないのです。
昔から「イナダ(ワカシ)はひとしお毎に大きくなる」と言われています。
「ひとしお」とは潮位が大潮から小潮まで一巡する期間のことで、二週間ほどです。

先月からいたワカシの群れは、トン単位で網に入ることもありましたが、全て逃がしていました。
サイズは計測していないのですが、30~35cmほどだったように思います。

ワカシにはほとんど需要がありませんが、イナダになれば売れるようになり、漁獲対象になります。
ワカシが獲れても逃がすと、しばらくするとイナダが獲れたことが過去に何度もあります。
その逆の、イナダが獲れた後にワカシが回遊してくるということは、私は今まで経験がありません。
ワカシの後にイナダあり、イナダの後にワカシなし。

それゆえ私は、獲れたイナダは過去に逃がしたワカシが育ったものと、今までは思い疑っていませんでした。
ワカシってほんとに成長が早いんだなー、としか思っていませんでした。

しかし最近、冷静に考えてみると、いくらなんでもそんなに早く育つかね?と疑問を感じるようになりました。

農林水産省のブリの成長関連の記述によれば、ブリは卵からかえって1年で約30cm、2年で約47cm、3年で約61cmに育つそうです。
30cmになった後は、1年で約15cm育つのですね。

今回の例では8月初めに30~35cmだったと思しきものが、1か月ほどで45cmに育ったということになります。
1か月で10~15cm大きくなった計算。
いくら東京湾が餌が豊富とはいえ、そんなに一気に育つかなあ?

しかしそうは思ったところで、どうやって検証すればよいのかわかりません。
結局、ワカシが育ったのか、イナダの群れが入ってきたのかは謎のままです。

刑事ドラマとかでよく、「あの小物は泳がせておけ。もっと大きな獲物が釣れるかもしれん」
なんて定番のセリフがありますよね。
東京湾のイナダの場合、泳がせておくと大物になる前に湾から出ていっちゃうので、そのままサヨナラです。