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2025.1.31 今月のコノシロ漁

今月のコノシロ漁はなかなかシビアでした。

まず前回の記事で書いたように初漁は漁獲無しで、その後も中旬から下旬まで、漁獲のあがらない日々が続きました。

つい先月までは網を張れば一回で数十トンのコノシロが入っていたのに、今月は魚群を探し回った挙句に張った一回の網には良くて数トンしか入らず、それを何回も繰り返してやっと先月の1日の水揚げの半分に届く程度しか獲れませんでした。

そんな獲れない漁が数回も続きました。

そういう時には脳裏に不安がよぎります。
もしかしてここ数年、獲りすぎたせいで我々の漁場からはコノシロは居なくなってしまったのかという不安です。

ところが月末になって突然、近場に大群が現れました。

27日のことですが、我々を含め船橋に3つある巻き網船団がどれも満船になる量のコノシロが獲れたのです。
(満船とは、運搬船の積載量の限界まで魚を積みこむことです。)

獲り尽くして居なくなってしまったのではないことが分かりほっと胸を撫で下ろしました。

しかし気になるのは、今まで一体どこに居たのか?ということと、また、一度消えてなんでまた戻ってきたのか?ということです。

まあこればっかりはいくら考えたところで人間には分かりようがないので、とりあえず居てくれたことに感謝です。

2025.1.13 初漁

1月5日に今年の初漁に出ました。

網を2回張りましたが、全然だめでした。

一回目の網ではイナッコ(ボラの幼魚)が大量に入り、売れないので全てレッコしました。
(レッコとは海事関係で広く使われている言葉で、色々な使われ方をします。
私達の船では「網(あみ)の中の魚を逃がす・ものを捨てる」というような意味で使っていますが、他の船では「綱(つな)を離す」という意味で使われることもあるようです。)

2回目の網ではコノシロが200kgほど入りましたが、その程度の量では持って帰ってもしょうがないのでこれもレッコしました。

ここ数年ずっと獲れ続けていた近場の漁場からはコノシロの群れは姿を消しており、結果、今年の初漁は水揚げゼロでした。

船橋の私達の他の2つの巻き網船団もこの日に初漁に出て、近場だけでなく少し遠くのコノシロポイントにまで行ったようですが、そこにもコノシロは居らず、結局、網を張らずに帰ってきたようです。

このように船橋巻き網の初漁は漁獲ゼロでした。

それから時化が続き我々巻き網船団は漁には出ていないのですが、我々より時化に強い底引き網は出漁しており、その情報によるとコノシロはかなり網に入るとのことなのです。

まあこれからコノシロが獲れるかどうかはまだわかりませんが、我々の本命は初夏からのスズキ漁ですし、まだそんなに焦ることもないかと、一乗組員としては思っています。

今年もとにかく安全第一でやっていきたいと思います。

 

2024年 12.27 仕事終わりとサザナミフグ

2024年の漁は20日の水揚げで終了しました。

しかし最後に沖で魚の居ないところで網を張って網をきれいに洗いたかったのですが、しばらく波が荒い日が続いてしまい、それができたのは25日でした。

船をデッキブラシでこすって、今年の仕事は終わりました。

今年は夏場のスズキとコハダの値がよいうえに量も獲れ、久し振りに悪くない成績が残せた年になりました。

来年も期待したいです。

2週間ほど前、知り合いの漁師が見たことない魚が獲れたといって見せてくれました。

10cmにも満たない小さなフグですが、私も知りませんでした。

画像検索したところ、サザナミフグの幼魚で間違いないでしょう。

このサザナミフグですが、サンゴ礁に生息するということ以外、あまり詳しい情報はネットに載っていませんでした。

ヒレが小さくてまん丸くてかわいい顔をしているから、生きてたら飼いたかったとアクアリウム好きの仲間が言ってました。

ほんとに、これから東京湾の魚種はどんどん変わっていくんだろうなあ、と思わずにいられません。

2024.12.17 ザトウクジラ

東京湾にまたクジラが現れたようです。

クジラが東京湾に入ってくることは過去にもたびたびあり、海ほたる周辺で跳ねている映像などがニュースで流れたり、また私の知り合いの漁師も直に目撃して動画を撮ったりしており、そこまで珍しいこととは感じられなくなっていました。

しかし今回クジラが出現したのは、東京湾の奥も奥、浦安沖です。

そして、現在我々がコノシロ漁をしているまさにその場所なのです。

ヤフーニュースでは発見した漁師が撮った写真が載っており、ほんとに、我々が昨日コノシロを獲ったのと同じ場所にクジラが浮いていました。
(権利の関係がよくわからないのでニュース記事を張り付けることはしませんが、気になる方は
「浦安 ザトウクジラ」と検索すればニュースが見られます)

いやあ、驚きました。そして驚きとともに若干の恐怖も覚えました。

以前、記事にしたのですが、クジラとの衝突が怖いのです。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1203/

冗談半分の例えですが、我々の船がクジラと衝突するのは、大相撲の横綱と小学生がぶつかり稽古をするようなものだからです。
クジラが横綱で小学生が船です。

ぶつかったりしたら我々はただでは済みません。

クジラが浮いている状態ならば、我々の船には常に船首で前方を警戒する係がいるので発見できますが、少しでも潜っていたらとても見えません。

まあ、魚群を探している時ならばソナーで発見できるかもしれませんが、なんにせよ、漁場に巨大な地雷があるようなもので、気分はよくありません。

今年はソウメ(小さいイワシ)が回遊してきたり、コノシロも湾奥にいることから、クジラにとっても好漁場なのでしょうが、正直に言って居てほしくないですね。

2024.11.29 マイワシ大量

今年は夏ごろからマイワシの姿がちらほらと見えていましたが、ここ一週間ほどはかなりの群れが沿岸にまで押し寄せてきました。

ちょっとわかりづらくてすみませんが、夜の船橋港です。
マイワシの群れが水面スレスレにまで浮き上がり、港内をずっと泳ぎ回っています。

明るくなると下に潜るのか港外に出ていくのか、群れは見えなくなりますが、夜になるとまた同じ場所に出現します。

このマイワシの回遊は船橋だけではないようで、YOUTUBEの釣り動画を見ると東京湾奥 西側の若洲海浜公園でもマイワシの群れが来ている動画があがっており、東京湾奥 東側の市原の釣り公園でもマイワシの釣果報告が上がっています。

私がいちいち「マイワシ」と書くのは、東京湾には普段はマイワシはおらず、ここら界隈で「イワシが釣れた」といえばカタクチイワシを指すことが多いからです。

それと市原の釣り公園ではカタボシイワシがかなり釣れているようなので、それとも区別するためです。

市原にある釣り公園は正式名称を「オリジナルメーカー海づり公園」といい、有料ですがきれいでよく管理された施設です。
ここは数百人のお客の釣果を毎日一尾単位で集計し公表してくれており、頭が下がります。

そこの11月16日のデータを引用させてもらいますが、コノシロが1620尾、カタボシイワシが2000尾の釣果があったと報告されています。

このデータのカタボシイワシの量には私は驚きました。
なぜかというと、我々は先月からコノシロ漁を始めて数百トンのコノシロを獲りましたが、マイワシはともかくカタボシイワシは見ていないからです。

もしやカタボシイワシとマイワシを間違っているのでは?と勘ぐってしまいましたが、ちゃんと釣果とともに釣魚の写真もあり、間違いなくカタボシイワシでした。

マイワシとカタボシイワシは体型や顔つきなどがけっこう似ていますが、ウロコがあきらかに違います。
マイワシのウロコは指でこすった程度で落ちるほど薄く柔らかいですが、カタボシイワシのウロコは包丁を使って気合をいれないと剥がれない固さです。

さて現在、身近に押し寄せているマイワシの群れですが、サイズが小さくて我々の漁獲対象にはなりません。それどころか、網の目に刺さって網が揚げられなくなるトラブルの元なので、居てほしくないくらいです。
今は我々の前から消えて、もう少し大きくなってからまた現れておくれ、と願うばかりです。

2024.11.16 ネズミ返し

網がネズミに食われました。

私たちの漁は日帰りなので、通常は船に食料品は備蓄しておらず、ネズミが住み着くことはありません。
しかしコノシロ漁をしているとどうしても網の中に取り除ききれない魚が入り込んでしまい、それを狙ってネズミが船に乗り込んできます。

野良ネズミは衛生的に非常によくないし、網をかじって穴だらけにしてしまうので、退治せねばなりません。

方法としては船には殺鼠剤を置き、そして陸から係船索を伝っての更なる侵入を防ぐためネズミ返しを仕掛けます。

ネズミ返しはいたって単純なもので、円形のお皿に綱を通す穴を開けるだけですが、「船 ネズミ返し」で画像検索すれば同じようなものが世界中で使われており効果のほどがわかります。

親方がお皿を用意してくれたので、それで作ります。

作製の際のポイントとしては、綱にしっかりと固定されないよう、中央の穴を少し大きめにすることでしょうか。
こうすると上から乗り越えようとして前足をかけても、皿がクルクルと回ってしまい、力が入らないことでしょう。

これで侵入防止は完璧。
と思っていたのですが、ふと、親方も我々も、ネズミのサイズを小さめのハムスターくらいと思い込んでいたことに気付きました。

世間ではスーパーラットという大型で賢いネズミの出現が取りざたされて久しいです。
その大きさたるや全長25cm、尻尾も25cmにもなるとのことです。

そこでもしスーパーラットが我々のネズミ返しと対峙したらどうなるかやってみました。

余裕で越えてきますね。

港周辺のネズミがスーパーラットだった場合は、もっと大きなネズミ返しを作らねばならないことがわかりました。

あまり大きいと、風であおられたりしてすぐに壊れてしまうんですよねえ。
困ったもんです。

2024.10.31 コノシロ漁開始

コノシロ漁に移行しました。

前回記事を書いた時は夜に出港し、スズキをメインに狙いつつ混じってくる太刀魚を獲り、そして秋の気配と共に入ってきたイナダを漁獲していました。
スズキは夏に比べ沖で獲れる量は減ってきていましたが、私はまだしばらく夜の漁が続くと思っていました。

しかし10月の半ば辺りから、いよいよ涼しくなり始めたと思ったら突然、コノシロの群れが現れました。

この突然現れたコノシロの群れは大きく、一回網を張ればその日の必要量に充分に達する量が獲れるほどです。

しかもこの群れが港にほど近い場所にいます。

夜中にスズキを狙って遠出して何回も網を張るより、朝に出て近場で一回網を張るほうが効率は良いです。

私個人的には、漁は沖のほうが網に入る魚種が多いので楽しくて好きなのですが、好き嫌いを言っている場合ではありません。

今年もコノシロが獲れることに感謝しつつ安全第一で漁をしたいと思います。

2024.10.17 脂のないワラサ

イナダが網に200kgほど入り、その中に数尾、少し大きめのサイズも混じりました。

イナダはだいたい60cm、3kgまでとされますが、
この個体は67cmで3.5kgあったので、イナダより大きいワラサと呼んでさしつかえないと思います。

体高も体の厚みもあり悪くない魚と思い捌いてみましたが、結果、あまり脂がありませんでした。

身が全体的に黒っぽい感じだし、引いた皮にも脂のネトツキが見られません。

三枚におろして皮を引いた後の包丁です。
この大きな魚を捌いている途中に一度も拭いていませんが、殆ど脂が付いていません。

脂がない理由は明白で、この個体の胃袋は空っぽで何も入っていませんでした。
胃袋が空っぽなのに見た目は太り気味なのはどういうことかと言えば、これまでは順調に餌を食べて成長しながら回遊していたところ、しばらく餌に巡り合わない期間があり、胃の内容物を消化しきったところを私たちに漁獲されたということなのでしょう。

この個体はたぶん、東京湾に入ってきた直後に漁獲されたのだと思います。

何故ならば今、東京湾、しかも我々の主な漁場の東京湾奥には、ブリの好むエサが大量にいるからです。

先月の記事でソウメ(小さいマイワシ)が獲れたと書きましたが、その後もソウメは網に混じり続けています。
今月の12日には木更津でイワシが大量に打ち上げられたとニュースになり、そして昨日(16日)は私たちの網にソウメが大量に入り、網の目に刺さってしまい重くて揚げられなくなるトラブルが発生しました。

餌は豊富です!
ブリ及びイワシが好きなフィッシュイーターのお魚さん、是非とも東京湾奥にお出でになって!

 

2024.9.29 マルソウダ そうだがつお

スズキ漁の網にソウダガツオが混じって獲れました。

この魚は基本的には東京湾には居ませんが、年に数回、数十尾程度の単位で網に混じってきます。

鮮度落ちに厳しい魚なので鮮魚として売られることはあまりなく、知名度は低めかもしれません。

ひとことでソウダガツオと言いましたが、じつは「マルソウダ」と「ヒラソウダ」という二種が居り、両種の外見はとても似ているので普通の方には区別が難しいと思います。
上の写真はマルソウダです。

マルソウダとヒラソウダは一緒の網に入ることも多いのですが、今回はマルソウダしか居なかった為、外見の比較と見分け方はいずれヒラソウダが獲れたときにします。

さてマルソウダですが、漁獲されたものはほぼ「ソウダ節」に加工されます。
この魚は肉に血合いの部分が多いのです。

三枚におろしたところですが、身が真っ赤です。
血合い部分は生食ではきつくとも、加工すると今度はそれが濃いうまみのコクに変化しておいしくなるようです。

このマルソウダの血合いの多さは食中毒の一因にもなります。

血合いにはヒスチジンという成分が含まれているのですが、漁獲後に適切な温度管理をしないとこれがヒスタミンという成分に変化してゆき、このヒスタミンを多く摂取してしまうとヒスタミン中毒になってしまうのです。

食中毒というと怖いですが、症状としては顔の紅潮、蕁麻疹、吐き気、下痢、などがありますが、重篤化は滅多にないようです。

そもそもヒスチジンはアジ・サバ・イワシ・マグロなどにも普通に含まれており、過剰に恐れる必要はないかと思います。

ヒスタミンは一度生成されてしまうと加熱では破壊できないので、鮮度管理のなっていない魚にはそもそも手を出すべからずということですね。

今回私は刺身で食べました。

血合いの色は濃くとも血の臭みは全くありませんでした。

味は普通のカツオと同じですがややあっさりしており、脂はそれほどなく初ガツオに近い感じです。
特筆すべきは食感で、なんとももっちりと舌にまとわりつくような感じで面白くここちよいです。

小料理屋のマスターによると生姜を効かせた煮付けもこたえられないそうです。

漁師か釣り人でなければ入手は難しいかもしれませんが、もし機会があれば是非あじわってもらいたいと思います。

ヒスタミンですが、多量に含まれている物を口に入れると舌がピリピリとするらしいです。
何の魚を食べている時でも、薬味もいれてないのにピリピリしたらヒスタミン中毒を警戒する、という知識を頭の片隅に置いておくといいかもしれませんね。

2024.9.14 そうめの塩焼き

今年は6、7、8月とスズキ漁とコハダ漁が好調でしたが、9月に入った途端に調子が悪くなりました。

台風の影響などで9日に一回出漁できただけで、しかもその時はスズキ漁は芳しくなく、更にコハダも需要が無くなり大きく値下がりしてしまいました。

ここらでサバのような回遊魚が湾内に入ってきてくれると嬉しいのですが、昨今の高温化を思うと望みは薄そうです。

この9月で一度だけの出漁の時に、「そうめ」がほんの少し網に入りました。

そうめとは私たちは小さいマイワシのことを指して呼びますが、ネットで調べても出てきません。
おそらくここら地域限定の俗称なのでしょう。

このそうめは数キログラム程度の量では売り物にならないので普段は海に返してしまいますが、今回は運搬船の船長がオカズ用にといくらか取っておいてくれました。

このそうめの食べ方は塩焼きがお勧めです。
ウロコだけは落とす必要がありますが、あとは丸ごと塩を振って焼いて、頭から丸ごと頂きます。

頭は香ばしく、エラは甘く、内臓は苦すぎず、中骨は気にならず、身は当然おいしい。

じつに文句の付け所のない素敵なおつまみです。

以前に記事にしましたが、このそうめが湾内に大量にいると我々としては困ったことになります。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1207/

なので、もう一回り大きなサイズのイワシが回遊してきてくれると嬉しいのですが、なかなかうまくはいかないもんです