作成者別アーカイブ: daiheimaru

2017.10.16 鮎

唐突ですがお魚クイズです。
この魚はなんでしょうか。

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答えはあゆ。
天然物は減少しているようですが、養殖ものは幅広く流通しているので、スーパーなどで見かける機会も多いと思います。

鮎といえば友釣りが有名です。鮎の習性を利用した釣りで初夏に解禁され、季節の風物詩としてニュースなどで取り上げられたりもしますね。
胸まである合羽ズボンを着た釣り人が川に入り、長い竿を巧みに操って鮎を釣り上げるシーンを、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

鮎は淡水魚。川魚。
一昨日まで私はそう思っていました。
しかしその観念は覆されました。それも己の手によって!
どういうことかというと鮎が私達の網に入ったのです。
正確に言うと網の中で直接見たわけではありません。
水揚げした時に私達のダンベから鮎が出てきたようなのです。
ダンベとは人が2~3人、入れるほどの大きさの箱で、活かす必要のない魚を氷締めにして運ぶためのものです。
その中の一つから写真の鮎が出てきたと、選別をした卸会社の人から教えてもらったのです。
この日、私達が働いていたのはもちろん海であり、しかも河口からは離れた場所でした。汽水魚ならともかく、淡水魚は居るはずがない場所です。

なんで鮎が海に?

もしかして、以前記事にしたサクラマス(ヤマメ)のように、鮎にも降海型の奴がいるのだろうか?と思い調べてみたら、鮎は稚魚のうちは河口で過ごすと判りました。
ただ河口で過ごすのは稚魚時代だけで、少し成長して7センチ位になると川を上るとのことで、海にでてゆくとの記述は私が調べた限りではありませんでした。
しかるに今回の写真の個体ですが、どうみても成魚です。
持っている人の手と比較して、20センチはあります。
(この写真を撮ったのは私なのですが、この時点では写真を撮ったことで満足して終わってしまいました。いま思うと、この魚をもらい受けて体長や重さをはかっておけばよかったです。)

私にとっては、海で鮎が獲れたなど信じがたい出来事です。例えるならば、奥多摩の秘境でマグロを釣った!というほどのレベルです。
しかしまあ、普通の人にとっては
「え、鮎って川の魚でしょ。へえ~、海でも獲れるんだぁ」
で終わるでしょうな。

2017.9.28 ギンカガミ

面白い魚が網に入りました。
「ギンカガミ」という名の変わった体型の魚で、東京湾ではめったに見かけることはありません。
まず横から写した写真です。

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普通の魚と比べるとお腹が下方向に大きく膨らんでおり、全体的に丸い。かなりのメタボ体型に見えることでしょう。
しかし、こいつを上から見ると、、、

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このようにペッタンコなのです。
写真ではまあまあ厚みがあるように見えますが、実物を手にするとその薄っぺらさに驚きます。
横から見た時の大きさから全体の大きさを脳が予測しますが、それが裏切られたせいでいっそう細く感じるのかもしれません。
なんというか、画用紙に魚の絵を書いて切り抜いたら、それがそのまま命をもって泳ぎだしたような感じです。
とにかくペラペラ。

こいつはなんでこんな体型なのか、考えてみました。

こんな薄焼きせんべいみたいな体型じゃ、筋肉量が少なすぎて素早い遊泳力など期待しようもない。捕食者に見つかったらアウト。となるとこれは、捕食者から見えづらくするのが目的ではなかろうか。
前後左右上下360度からいつなんどき襲い掛かってくるかわからない敵を、目で見て警戒するには限度がある。睡眠時はそれこそ無防備になるし。
ならば被発見率を低くすればいい。
ギンカガミのこの体型は、体の体積の割りには上下・前後からは棒のようにしか見えない。そのうえ背中は黒っぽく、お腹は銀色と、魚類における迷彩のセオリーもしっかり心得ているから、真横からの敵以外にはかなり見つかりにくいと思われる。

まあなんとも月並みな結論ですが、私に思いつくのはこの程度です。
私がこの魚を見たのは6年前に一匹、そして今月に二匹だけです。
ネットで調べてみても、日本ではそんなに多く獲れる魚ではないようでたいした情報はありませんでした。
味はおいしいらしいです。が、もし生きたギンカガミを手に入れたら、私は食べるより水槽で眺めていたい。
ほんとに漫画チックで面白い形の魚です。

2017.8.29 シンコ

今月の初めは例年よりシンコが多く獲れました。
今回はシンコについて少々思うところを書きたいと思います。
シンコって何?と聞かれれば「コノシロの幼魚だよ」と答えるのが正解ですが、考えてみると「コノシロ」ってそんなに一般に馴染みがあるとは思えません。スーパーで「コノシロ」として一匹で売っているのを私は見たことがない。たまに切り身で酢締めにしたものがコハダとして売られているのを見かけますが、たいていの場合使われているのはコノシロです。体の模様の大きさから判断できます。
やはり世間一般ではコノシロより、コハダと言ったほうが通用しやすいのでしょう。

シンコ → コハダ → ナカズミ → コノシロ と、大きさによって名前が変化していく出世魚。
この魚に関して身近で一番耳にするのは「コハダの握り」ではないでしょうか。次点でおせち料理に入っている「コハダ粟漬け(あわづけ)」。あとは期間限定の「シンコの握り」
ナカズミやコノシロという名はあまり日常では耳にしないかと思います。
シンコはその需要の背景から異常ともいえる高値で取引され、獲れたタイミング次第で一キロあたり数万円になります。
八月初めに獲れたシンコです。

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6グラム。一円玉を6枚用意してもらえれば、大きさ、重さが実感できると思います。

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例えばキロ一万円で取引された場合、この一匹が60円。これは私達が港で水揚げした時の値段ですから、これが市場で売られる時には数倍になります。
まあ軽く見積もって3倍になるとしておきましょう。
一匹180円です。
このシンコの仕入れ先ですが、寿司屋以外にありません。そして使い道は「シンコの握り」のみ。
寿司ネタとして使う為には一匹分では小さすぎて足りないので、一貫に数匹使います。3匹使えば「さんまいづけ」4匹使えば「よんまいづけ」と言い、魚の原価だけで500円以上になります。
原価だけで相当な値段なうえに、こんな小さい魚を大量に捌いて調理する職人の手間・暇を考えると、完成品の寿司となればとんでもない高値になるのではないかと思われますが、そうでもないみたいです。
なんでも「シンコは心意気で握る」という風潮があるようです。
江戸前寿司の職人が作るシンコの握りは、己の技術や経験を集約し、自分の腕前を形として表現したものであり、採算は度外視で原料代のみで握るのが粋である、ということらしいです。

伝聞系なのは私はシンコの握りを食べたことがないので、味も値段も知らないからです。
周りの仲間に聞いたところ、3人がシンコの握りを食べたことがあるというので感想を聞きました。
寿司屋の人には不愉快でしょうが、まあ総じて「うまいけど、飛び跳ねて喜ぶほどうまいものではない」という意見でした。
三人とも違う店ですが、このうち一人が食べたのは四枚づけとのことだし、もう一人は値段を覚えていて一貫1500円だったというし、いずれもれっきとしたシンコの握りだったと思われます。
なんとも値段に比して期待外れな感想ですが、まあ、そんなもんでしょうな。
そもそも一番有名どころのコハダにしてからが、さっぱりとした味です。その幼魚であるシンコに至ってはさらに淡白であっさりとした味ということになるでしょう。

ひと昔前まではシンコといえば八月の初めから出回り、三枚から四枚づけ程のものだったようです。
しかし初物は破格の値がつくため、皆が競ってより早く、より小さなもの狙い、流通の発達でそれが素早く全国に届くようになった結果、現在ではシンコは六月から出始め、十二枚づけというものまであります。
さすがに十数枚づけまでいくともはや、そのさばく過程は調理というより細工ですね。手先が器用選手権みたい。
なんだかバカにするような文章になってしまいましたが、そんなつもりは毛頭ない。
ほんとに、小指ほどしかないシンコを大量にさばいて味付けする職人の技と意地には敬意を表します。
しかしまあこの魚、成長に伴い名前が変わるから出世魚なんて言われてますが、コノシロになるとキロ数十円、安い時などキロ数円になってしまいます。シンコの10000分の1です。
大きくなるにつれ価値が激減するのだから、実際は降格魚ですよね。
他にも昔から「コノシロを焼くのは『この城を焼く』に通じて縁起が悪い」と言われたり、鮮度が落ちるとお腹が破けるから切腹魚と言われたり、焼くと人を焼くのと同じ匂いがするとか言われたり。なぜか武士階級の方々にはかなり忌み嫌われていたようです。

コノシロは身の中に小骨が多く入り込んでいて、他の魚と同じやりかたで刺身や焼き物にすると、食べた時に口の中で小骨が当たります。
こういう小骨を許せない人が多数派でしょうが、一方であまり気にしないという派が一定数存在するのも事実。
朝市で魚を対面販売すると、「小骨?そんなの全然きにしないよ!」という人の声がけっこう聞こえてくるので為になります。
私もこの前コノシロを塩焼きで食べましたが、おいしかったです。

神童ともてはやされた子供が大人になるにつれ競争社会の中で埋もれて消えてゆく、ハリウッドで大成功した子役でたまにあるような、そんなうすら寂しいコノシロの人生。
私は声を大にして言いたい!
コノシロにもっと光を!!
シンコとコハダは光物だしね!

2017.8.19 今年の海

八月、ただいまスズキの旬 真っ盛りです。
今のところのスズキの漁獲ですが、獲れたり獲れなかったりで例年とさほど変わらない感じです。
相場が良い今の時期にたくさん獲って稼ぎたいですが、なかなかうまくいきません。

スズキに関しては例年とさして変わりはないものの、今年は混じりにちょっとした変化があります。
ワカシ(ブリの幼魚)やソウメ(マイワシの小さいサイズ)、シンコ(コノシロの幼魚)、そしてカマスが多く網に入るのです。
こういった魚たちがこの時期に多く網に入るのは数年ぶりです。
そしてこれは私には良い兆候に思えます。
10年前の10月、マイワシの大群が湾内に回遊してきていい稼ぎになったことがありますが、その年の海と似たような状況なのです。
今年の秋、イワシがきてくれるのを期待せずにはいられません。

2017.7.24 続・シマガツオ

前回の続きでシマガツオの話です。
今回はだいぶ長いのでご了承ください。

この魚の標準和名はシマガツオですが、なぜかエチオピアという通称があり、その名のインパクトから人々には「エチオピア」で認識されていることが多いようです。
なぜそんなあだ名がついているのか?
エチオピアで大量に漁獲される魚なのかと思って地図を見たら、エチオピアには海がありませんでした。

そこで本やホームページで由来を調べたところ、
「1935~37年にエチオピアから皇族を含む使節団が来日した時、相模湾でこの魚が大漁だった。当時、日本とエチオピアは友好関係を深めようととしていた時期でもあり、そこからこの魚がエチオピアと呼ばれるようになった」との説が有力なようです。

なんとも、安易で短絡的で大雑把なストーリーです。
今から80年ほど前、「シマガツオが大漁だ!ちょうどエチオピアから国賓が来てるぞ!よし、この魚をエチオピアと呼ぼう!!」といってこの名が広まったというわけです。

意味がわかりません。
しかし、現実にシマガツオはエチオピアと呼ばれ、近縁には「チカメエチオピア」や「ツルギエチオピア」など、標準和名の中に組み込まれている魚さえいる程、このエチオピアという呼称は漁師、魚屋、学者、などの魚関係の世界に浸透しています。
とにかく何か、魚(シマガツオ)と国(エチオピア)を結びつける事態で、それも大衆一般に違和感なく受け入れられる事実があったに違いありません。
気になるので調べているうちに、面白いものを見つけました。

高知県の和菓子屋が「エチオピア饅頭」なるものを販売しており、これはちょっとした名物であったらしいのです。
この饅頭は第二次世界大戦の前からあり、しかも1996年には在日エチオピア大使館公認のお菓子となっています。
この饅頭は製法や材料は和菓子のそれで、エチオピアの風土には全く関係ない純然たる和菓子でありながら、名前にエチオピアと冠しているのです。
なぜ?と名の由来を見ると
「1935年にイタリアがエチオピアに侵攻した。
強力な軍備を備えたイタリア軍に対し、エチオピア軍の装備は貧弱なものであったが、兵士は勇敢に戦った。
このニュースを知った和菓子屋の店主が、応援の意を込めて、それまで別名で売っていた饅頭をエチオピア饅頭と改名して売り出した」
ということでした。
この和菓子屋さんは2013年に閉店してしまいましたが、それまでエチオピア饅頭は看板商品であり、1935年から80年近くも愛されてきたわけです。
饅頭とエチオピア。なんの関係もないけれど、その名は普通に受け入れられることがこれでわかりました。
シマガツオがエチオピアと呼ばれるようになったのも、この饅頭と同じような流れなのだと思います。
そもそもこのシマガツオ、現代においても漁獲は少なく、したがってあまり流通することはなく知名度はかなり低い魚です。
しかし1930年代に、なんらかの理由によって群れが沿岸域にまで寄ってきて大漁ということがあったのでしょう。

1930年代の相模湾においてこんな会話があったのかもしれません。
漁師A「見たこともねえ魚が大漁だ!なんかの前触れか!?」
漁師B「う~ん、そういえば新聞で見たがエチオピアから皇族がいらしてるらしいぞ!」
漁師A「そうか、この魚たちは皇族の方々をお慕い申し上げて、エチオピアからついてきたにちげぇねえ!」

消費者「この魚は何?」
漁師「名前は知らねえが、エチオピアから来たに違いねえ。」
消費者「エチオピアから!?」
漁師「おうよ!エチオピア!!」
そんな問答が幾度も繰り返され、学者以外にはエチオピアという名が定着したのではなかろうか。
大漁の魚を皇族に結びつけるなど現在では一笑に付されて終わるでしょう。が、1930年代といえば第二次世界大戦がはじまるちょっと前くらい。かなりの科学力はありますが、一地方に目を向ければまだまだ牧歌的な世界が広がっており、このような迷信じみた話も受け入れることに抵抗はなかった時代だと思います。
以上、私なりにシマガツオがエチオピアと呼ばれるようになったわけを考察してみました。

実は本に書いてあるシマガツオの大漁時期と使節団の来日には数年のズレがあり、上に書いた会話は時系列がおかしくなります。
しかしまあ細かいことは抜きにして、実際にもこんな感じだったんではないでしょうか。
そういえばこの魚、ちゃんと食べました。なかなかおもしろい味でしたが、その話はまたいずれ。

2017.7.12 見知らぬ魚

二週間ほど前のことです。近くの漁場でスズキがあまり獲れなかったので、遠出していつもより水深の深い場所に行ったところ、見慣れない魚が一匹、網に入りました。

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横からの写真しか撮ってなかったのですが、前から見るとかなり平べったい魚です。全長は50センチほど。そしてこの写真では全体的に黒っぽいですが、生きているときは全身銀色に輝いていました。

とりあえず、なんという魚だろう?という話になり、仲間うちでは
「カガミダイかなあ?」
「マナガツオでしょ?」
「ロウニンアジじゃない?」
という声が挙がりましたが、どれもすぐに否定され、結局、船の仲間も卸会社の人たちも、誰もこの魚のことを知りませんでした。
けっこう立派な大きさの魚でしかも東京湾で獲れたもの。
知らないままでは東京湾漁師の沽券に関わるので、寮に帰って急いで図鑑を引っ張りだしこの魚を探しました。
図鑑で探す際に一つの手がかりとしたのが、この魚の目玉です。キンメダイ(深海魚)のように大きく透明で透き通っていたのです。そこでこの魚の生息域は深場なのだろう、とあたりをつけ、ページをシュババッと繰っていたところ、

「名前、わかりましたよ♪」
と、スマホを片手に仲間が部屋に入ってきました。
画面を見るとまさにこの魚で、「シマガツオ」であると判明。予想通り、通常は150~400メートルほどの深海に生息する魚でした。

魚の正体がわかったのはいいものの、私としては釈然としない思いが残りました。その思いとは「なぜ、仲間は自分より先に突き止められたのか?」ということです。
「東京湾 魚 珍しい」とかで検索したとしても、東京湾で確認された魚種は700種近くにのぼり、その膨大な数の中から短時間でシマガツオに辿り着くのは難しいはず。
生息域のあたりをつけて「東京湾 深海魚」で検索しても、でてくる画像はおどろおどろしいサメばかり。
では、どうやって私より早く突き止めたのか?
先を越されて悔しい気持ちを笑顔の仮面で隠しつつ、その仲間に問いました。
答えは画像検索アプリでした。
調べたい魚をスマホで写真に撮ってアプリで検索。すると特徴の似た魚がズラリと候補に並ぶのでその中から探すようです。
いやあ、そんな手があったとは。そんな調べ方は考えたこともなかった。便利な世の中になったもんです。
写真を撮って アプリを開いて 検索 。
鼻歌を歌いながら片手ですべてのコトが済んでしまいます。
そしてこのアプリは無料ときたもんです。

近い将来、ある種の職業は人工知能やロボットで代替され、人間が必要なくなるというニュースを見かけます。今回の件はレベルこそ低いもののまさにその将来の構図と同じですね。
便利で快適なことこの上ない。
が、しかし、なんか少し、味気無さを感じてしまうのは私がオッサンだからなのか、、、

このシマガツオ、深海魚釣りをする人たちには馴染みのある魚のようです。
そしてこのシマガツオ、とても変わった通称がありました。
その名も「エチオピア」。
エチオピアと聞けば多くの人はアフリカ大陸にある国家のことを思い浮かべるでしょうが、まさにそのエチオピアとこの魚が関係があったようです。
詳しくは次回に書こうとおもいます。

2017.6.23 イシガレイ

数日前のことです。
ネットでニュースを見ていたら、「トキオ、東京湾でまたも幻の魚を発見!」との記事がありました。
しばらく前にラブカという深海鮫を捕獲してニュースになったのは知っていたので、今度は何を捕まえたのだろうと思って記事を読んだところ、イシガレイの稚魚でした。
同行した学者さんは大事件と喜び、三年前には横浜市の調査で捕獲された際には記者発表が行われたほど珍しいものである、とのことです。

いやあ、驚きました。イシガレイが幻の魚だったなんて。
たしかに量は少ないものの、毎年寒い時期には港で必ずみかける魚なので、まさかマボロシ扱いされているとは思いもよりませんでした。

なんか、アイドルグループがこんなに幻の生物を発見しているのは悔しいので、私も一つとっておきのヤツをだしちゃいます。
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ユウレイイカというイカです。通常は200メートル以深の深海に生息しているらしいですが、なにかの具合で東京湾の真ん中あたりで獲れました。
学者さん!どうですか!これは事件になりますか!?
このイカについてはまたいずれ詳しく書こうと思います。

2017.6.2 アヤ2

以前「アヤ」という漁師言葉について書き、アヤとは縁起のようなものだと説明しました。
最近、ちょっとそれに関しておもしろいことが起こったので書いてみます。

年に数度、何らかの取材でテレビや雑誌のカメラマンが乗ってきますが、殆ど一回だけ、多くても二回も乗船すれば取材は終了です。
しかるに今年の4月の半ばに初めて乗ってきたテレビカメラマンのA氏は、最終的に10回も乗ってきました。
普通の取材の人は1,2回なのに、このA氏はなぜに10回も乗ってきたのかといいますと、
「魚が大量に入ったシーンを撮りたい」との理由からでした。
A氏が初めて乗った日に獲れたスズキの量を「1」とすると、その後9回目まで、1を超える漁獲の日がありませんでした。
しかし10回目の乗船の日、ついにスズキが「2」獲れました。
しかも、それまであまり居なかったコノシロが「5」獲れるおまけ付きで。
コノシロは値段が安いですが、なかなかの量の為にテレビの映像的には良かったのでしょう。
A氏はこれで満足し、その日で撮影終了となりました。

そしたらですね。
A氏がおりた翌日は強風で時化でしたが、その翌日。
スズキが「6」近く獲れました。しかもこの日はクラゲもなく、コノシロもなく、スズキのみ。ほんとに、一年に数回しかない完璧なスズキ漁でした。
見事にA氏はタイミングを外してしまいました。
大漁の翌日に漁港で朝市があり、そこで偶然A氏と会ったのでその話を伝えたら、「私って、いつもそうなんですよねぇ、、、」
と、ガッカリしていました。

他の船に乗っていたことのある乗組員たちとこの話をしていたら、A氏は「アヤの悪い男」で決定だそうです。
うちの親方はどう思うのか聞いてみたところ、
「アヤというより、持っているか持っていないか、じゃないかな」
と言っていました。今回の件はA氏はアヤが悪いのではなく、運とかツキというものがなかっただけだ、とのことでした。
たしかに、獲れていたのが獲れなくなったわけではないので、A氏を「アヤが悪い男」に認定するのは私も違和感があります。

この話、誇張はありません。ほんとにありのままを書きました。
A氏、あと一回だけ乗っていればなあ。
A氏は大量のスズキが撮影できたし、私たちは東京湾のスズキ漁の活気をアピールできたのに。
まあでもこれはしょうがないことです。毎度書きますが、自然相手の商売の難しいところです。
しかし実際にこういう経験をすると、「アヤ」という概念もいくらか真実味を帯びてきます。
「年寄りは迷信深い」というのも、長い人生を生きていればこういう偶然に出会うことも多くなるからなんでしょうね。

2017.5.17 アカクラゲ 魚編

今年はアカクラゲがとても多く、過去最高レベルです。
今年はと言ったものの、正直に言うと去年のこの時期も「今年はアカクラゲが多い!過去最多だ!」と感じていたし、一昨年も同じ事を言っていました。具体的なデータはなく私の感覚のみですが、東京湾では年々アカクラゲが増加しているように感じます。
アカクラゲが人間に与えるダメージについて前回書きました。仕事を放りだしたくなる程の痛みを与えてきます。しかしまあ所詮は一過性のもので後遺症もなく、フェイスガードなどの装着で防げる話です。

私達にとって本当に困るのは魚へのダメージです。

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氷締めされたスズキですが、なんだか非常にビックリしたような表情をしています。
口に棒がささっているみたいに見えますが、これはただの背景です。
よく見るとエラからちょろっと赤い糸が出ており、これを拡大すると

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このような感じになります。
赤クラゲの足が口から入り、エラにひっかかった状態です。

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通常海を泳いでいるぶんには絶対に入らないけど、密集した状況で暴れるから口に入っちゃうんでしょうね。
このように赤クラゲを吸い込んでしまったスズキは、もうダメです。
かなり弱っており、水槽に入れても港に運ぶまでの途中で死んでしまうものがけっこういます。
水槽の中で死んでしまった魚は「アガリ」といいます。

私達が普段やっているのは、網で獲った魚を魚種に応じて
スズキや鯛などは「元気に生きた状態で港まで運ぶ」
アジやサバ、イワシなどは「海からあげた瞬間に氷水に入れ、鮮度最高の状態で港まで運ぶ」です。
しかるに水槽の中で死んでしまったアガリは、生きてもなければ適時に氷締めもされていない、中途半端なものということになってしまいます。
実際のところは運搬船の船長と乗員は活魚の水槽に常に気を配っており、アガリが出たらすぐに氷締めにするので、アガリといえども鮮度は別に悪くありません。
しかし死んでしまった魚はもう、鮮度いかんに関わらず「活け」の魚より相場が大きく下がってしまいます。

活かしたい魚が赤クラゲと一緒に網にはいると、ほんとうに大変です。

以上、東京湾から居なくなってほしい生物として、ギマと同列で挙げられる赤クラゲのレポートでした。

2017.4.28 アカクラゲ

今月は10日まで時化や休日が重なり一度も出漁しませんでしたが、それ以降は順調に出漁できています。
海の様子ですが、スズキの漁獲は例年のこの時期と同じくらいで悪くはないのですが、今年はアカクラゲが非常に多く、とても困っています。
アカクラゲとは。この通り赤いクラゲです。

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直径10cmくらいの本体から細長くちぎれやすい糸みたいな足(?)が1メートルくらい伸びていて、ここに毒を持っています。
毒といっても手や足につくととヒリヒリするという程度のもので、フグ毒やヘビ毒のような致死性はありません。毒としては優しいレベルのものでしょう。

ではこのクラゲがいるとなぜ困るか。写真とともに解説してみます。
海中に投じた網を絞り込んで中の魚を運搬船に移す直前。

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ここからタマ(タモ。頑丈な虫取り網みたいなもの)でスズキをすくいます。

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アカクラゲが多すぎて海面が真っ赤です。

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運搬船のデッキで選別し、いいスズキは水槽で活かします。
1匹ずつ手で水槽に入れていきます。
この時、スズキはもちろん活きがいいのでビッタンバッタンと暴れまくり、周囲の海水とアカクラゲが混った液体が私らの顔面にかかってきます。
これがきついのです。このアカクラゲ汁が目に入ったら、痛みでしばらく目があけられません。
手足につく分にはたいしたことないのに、粘膜にこのアカクラゲがつくと嫌になるくらい痛いのです。
どれくらいの痛みか、例えるならば、、、
たいていのご家庭に常備されているであろう、ラー油の小瓶。
あれを目薬みたいに2,3滴、目に垂らしてみましょう。
ヒリヒリしそうでしょう?そんな感じです。 たぶん。 やったことないけど。
目のみならず鼻や口についてももちろん痛いし、もう一か所、ヤバイ箇所があります。
仕事の合間に急いで小用を足す時、こう、引っ張り出すわけですが、この時に手にアカクラゲがついてたりすると、、、
しばらくの間、己のうかつさを悔やみつつアカクラゲを恨みながら、股間を押さえて身もだえするハメになります。

アカクラゲが多くて困る理由のまず一点は、このように人間に与えるダメージが大きいこと。
そしてもう一つ、魚に対するダメージ、特に私たちの商売の要である「活けスズキ」に与える影響があります。
次回、アカクラゲが多くて困る理由 魚編を書こうと思います。