大平丸ブログ」カテゴリーアーカイブ

2023.12.12 サメ肉放置実験 結末

前回の記事の続きになります。

冷蔵庫で保存しているオナガザメの生肉は、三週間経過しても鮮度に何の変化もない、というのがこれまでの経緯です。

前回の記事を書いた三日後に袋を開けたら、いきなり強い臭いがしました。

その時の写真ですが、三日前に比べると色が悪くなっています。そして肉の表面がネットリとしてきて、触ると指に組織が幾らかついてくるようになりました。

これには意表をつかれました。
三週間も殆ど変化がなかったものが、その後たった三日で急速に悪くなりだしたのです。
前回取り出して写真を撮った日は、特に暑かった訳でもないし、無駄に触りまくって菌をつけてしまったという心当たりもありません。

鮮度を悪化させるような取り扱いはしていなかったと思いますが、なんにせよ、ちょっと嗅いだだけで危険物と思わせるアンモニア臭を発していました。

私は試食する気はとうに失せていましたが、さらなる経過観察のため、厳重に包みそっと冷蔵庫の奥に戻しました。

そして更に六日後。
漁獲から一か月と数日経過したサメ肉がこちらです。

表面はよりネッチャリとした質感になりました。
もちろん台所は強烈なアンモニア臭で満たされています。

肉塊の内部はどうかと割ってみると、意外ときれいです。
周りを削って小片を切り出してみました。

見た目はマグロのトロみたいで綺麗ですが、しっかりとしたアンモニア臭で、申し訳ないと思いつつ破棄しました。

本来ならばこのアンモニア臭が漂ってからがサメ肉の保存性の検証スタートになるのでしょうが、温室育ちの私には試食する勇気がありませんでした。

結果として、サメ肉は三週間まではほぼ無臭で食べられることがわかりました。それ以降もいけるのでしょうが、そこは未検証で終わります。

ただ今回の私の実験は捌いた肉での話で、捌かない丸のままだとだいぶ違う結果になると思われます。
その根拠ですが、下の写真で使ったメジャーです。

全長の計測に使った後、別に血などは付着していなかったのでそのまましまったのですが、翌日にものすごい悪臭を発していました。
特に粘液などは出ていなかったと思うのですが、重たい魚体を撮影のために動かしている間になんらかの体液が漏れ出て付着したのでしょう。
メジャーは水洗いしてこすったら臭いは落ちました。

しかし捌く過程でこの体液が肉に付着してしまったら、なんだか臭いは肉に浸み込んでしまいそうな気がします。
そのような理由から、サメを捌くときは広い場所で水を流しながらやるのが良いと私は思います。

 

2023.11.29 オナガザメ 三週間後の肉

前回の記事の続きになります。

前回、漁獲三日目のオナガザメを食べたら無味無臭であり、サメ肉の特徴とされるアンモニア臭が発生するのはいつ頃なのか、経過を追って報告すると書きました。

驚いたことに漁獲から三週間経過した現在、未だに無臭です。

保存方法は、捌いた肉の塊をキッチンペーパーでくるみ、それをビニール袋で包んだうえで冷蔵庫に入れておく、ただそれだけです。
しかもキッチンペーパーは10日目頃に一度交換しただけです。
普通の魚なら不気味な色とともに異臭を発していることでしょう。

なのにサメ肉は匂いどころか、血合い部分の色が少々くすんだだけで、全体的な色に変化は見られません。

とても三週間も前の肉には見えず、訳がわかりません。

サメ肉が保存性に優れている理由は、体内にため込んである尿素が死後はアンモニアに変化して腐敗を遅らせるから、という理屈らしいです。

ということは、漁獲後に日にちが経過するほどアンモニア臭は強くなる。そしてそれを裏返すと、アンモニア臭がしないということは腐敗が進むということ、と私は考えていました。

しかし事実は三週間たってもアンモニア臭も腐敗臭もしないうえに、見た目にも変化がないのです。

やはり訳がわかりません。

でもまあせっかくの機会なので食べてみることにしました。

やはり生はコワいのでフライにします。加熱は正義。

軽く塩コショウして衣をつけ、揚げたてを食べたらサックサクでとてもおいしい。

まあ揚げたてのおいしさの半分は衣の力だと思うので剥がして食べてみたところ、前回ソテーにした時と同じ、身は無味でかすかに酸味がある、という感想でした。

そして食後30時間たっても自身に食あたりの症状はなんら現れなかったので、保存したフライを若者たちに味見してもらったところ、おいしいとの評価でした。

今回の生サメ肉長期保存は、私には予想外の結果でした。

私は前回の記事を書いた後、数日もすれば冷蔵庫内のサメ肉は相当なアンモニア臭を発し、廃棄せざるをえなくなるのではと予想していたのです。
それが日々スメルチェックをすれども無臭のまま三週間も経ち、食べても問題ありませんでした。

もしやサメ肉にとって三週間は、まだカウントに入らない程度の期間なのでしょうか。

まだ身は残っているので、生サメ肉の長期冷蔵保存実験は継続しようと思います。

2023.11.14 オナガザメ

前回の記事でコノシロ漁は単調でネタに困ると書きましたが、先日、コノシロに混じって変わった獲物が網に入りました。

オナガザメです。
全長2メートル、重量は約17kgでした。

このサメは今までにも年に1,2回は網に入っており、そこまで珍しいわけではありません。
しかし過去に獲れたのは全て湾の真ん中あたりで、ある程度水深の深い場所でした。

それが今回は、東京湾のほぼ最奥部で、陸から100メートルも離れていない浅い場所で獲れました。

陸と目と鼻の先で獲れたのも、コノシロの群れに混じってきたのも初めてのことで驚きました。

なんでこんな湾奥部に入ってきたのか不思議に思いましたが、捌いてみたら胃から半分消化されたコノシロが出てきたので、コノシロの群れに付いていたのでしょうね。

なんでも、この長い尾をムチのように使い、小魚をひっぱたいて気絶させて捕食するそうです。

尾の始点がどこで、どのように計測すればいいのかわかりませんが、2メートルの全長のほぼ半分が尾です。

この尾は薄いけれど硬質ゴムのような質感でなかなかに硬く、これで引っぱたかれたら人間でも相当なダメージを被りそうですが、オナガザメは人を襲うことはほぼ無いそうです。

そんな無害なオナガザメですが、網に入ってきたからには頂いちゃいましょう。

ヒレを落としてから二枚おろしにしました。
肉質はぷるぷるした感じです。

世間一般に「サメはアンモニア臭い」というイメージを持たれていますが、この捌いている時は全くの無臭でした。

そして漁獲から三日目に塩コショウのみで焼いて食べましたが、この時も完全に無臭でした。
なんなら味も殆どありません。
箸でつかもうとするとちぎれてしまうほど柔らかい身を口に入れ、舌で押しつぶすようにして味わおうと試みても、何の味も感じられず、かすかな酸味のみが舌に残る。
そんなことあるかいな?ともう一口じっくり味わうも、やはり無味。
それが私の感想でした。

漁獲から6日が経過した現在、冷蔵保存してある塊を嗅いでみましたが未だに無臭です。

サメは体の構造的に体内に尿素というものを貯めこむそうで、死んでしまうとこの尿素がアンモニアに変化してニオイを発するそうです。
なので他の魚のように、鮮度の良いうちに内臓を抜いたり処理をしたからといって、ニオイが発生しないとはならないわけです。

ではいつ頃からアンモニア臭を発するようになるのか?

これより毎日、匂いを嗅いで変化があればいずれご報告します。

2023.10.30 コノシロ漁

唐突にコノシロ漁が始まりました。

例年のパターンでは夏のスズキ漁が終わると、10月から12月はイナダをメインにマダイや太刀魚、サワラなどが獲れるので、それを狙います。
コノシロ漁を始めるのは本格的な冬になってからでした。

しかし今年は今のところ、イナダの大きな群れが全く居ません。
それでコノシロ漁への移行が早まってしまいました。

コノシロ漁に不満があるような書き方をしましたが、コノシロ自体には何の問題もありません。

居てくれるのは大変にありがたいです。
そのうえ夏、秋の間は夜間操業で普通とは真逆な生活リズムが、コノシロ漁は朝に出港なので正しい生活になれるという大きなメリットがあります。

私にとって困るのは、コノシロ漁が単調だということです。

網に入る魚種は99パーセントがコノシロで、あとはスズキが1パーセントほど混ざるだけです。

魚種が乏しいうえに単純作業が殆どなので、話のネタに困ってしまうのです。

これが例年のように夜にマダイを狙いに行く漁場だと、今までに紹介したことのない魚もたくさん入るのでネタには事欠かないのですが。

まあそのような訳で今後、コノシロ関係の内容ばかりが続いてしまうかもしれませんが、なにとぞご容赦願います。

2023.10.16 シイラ

先月から今月にかけて時化が多く、10月になってからは月初めに一回、そして昨晩と、月の半ばになってもまだ二回しか出港していません。

今年の夏は久し振りにボーナスが出たから少々ゆとりを持っている、などというわけではありません。
単に風が強い日が多いだけです。

しばらく間が開いてからの出港だと、海の様子がけっこう変わることがあります。

特に季節の変わり目の今など、秋らしい回遊魚が入ってきていないかと期待が高まります。

結果としては期待していたイナダはいなかったのですが、珍しい魚が入りました。

シイラです。
年に数尾程度、小さいものが入ります。
今回の個体は50cmあり、我々の網に入る魚としてはまあまあ大きい部類といえるでしょう。

しかしご覧の通り薄っぺらく全長の割には軽いので、持ってみると何となく貧相に感じてしまいます。

ですが実際は釣りで針にかかると引きは強く、そして2メートルにも成長する力強い魚なのです。

シイラは近所のスーパーなどでは全く見かけないし、日本においてはそれほどメジャーな食材として扱われていないと思います。
しかし外国では高級魚扱いするところもあるほど人気があるようです。

これが私にはちょっと不思議に思えます。

こと魚介類に関して、外国で人気なのに日本ではそうでないことがあるなんて。
その逆ならわかるのです。例えばフグとか、魚ではないけれどタコとか。
海外では見向きもされないけれど日本人は好き、というものは多いと思うのです。

シイラを捌いたところがこちら。

普通においしそうな見た目です。

刺身の写真を撮り忘れてしまいましたが、クセもなくおいしい万人に向く味でした。

食べてみて思ったのは、普通においしい。けれど、特に秀でた何かがあるわけでなし、というところです。

そして今、気づいたのですが、もしやこの魚も歩留まりの問題があるとか?

頭がデカいうえに体は扁平しているので、歩留まりが良くなさそうに見えます。
そうなると、他においしいうえに歩留まりも良い魚がたくさんいる日本では、影が薄くなってしまうのでは。

まあ本当のところはわかりませんので、気になる方はご自身で研究なさってください。

2023.9.29 ダツの歩留まり

前回、ダツは加食部が少ないという記事を書きました。

今回は実際に捌いて重さを量り、実際にどれほどのものか見てもらおうと思います。

今回捌くのはこちら、80センチほどのダツです。

長さは充分にあるもののお腹がペッタンコで、ただでさえ細いのにさらに痩せています。

私はダツは夏の魚と思っていたのですが、実は旬は冬から初夏で、今と真逆の時期なのだそうです。

なので今回の歩留まり検証においても、身の厚さなどで歩留まり率は旬とはだいぶ異なる数値になると思われますが、それは大目に見て頂きたいです。

さて一尾丸ごとの重さを量りますと、555グラムでした。

風袋はもちろん引いた数値です。
風袋(ふうたい)とは、今回の写真だとダツを入れているボールのような容器の重量のことです。

80cmなのに555gしかないとは、思っていたより軽くて驚きました。
しかし計量には質実剛健にして安心と信頼のタニタ キッチンスケールを2個使いダブルチェックしましたので、間違いはございません。
信頼していると言いつつ2個使うという矛盾には、気付いても目をつぶって下さるとありがたいです。

そしていざ、捌いた後の加食部重量は

144gとなりました。

555gの魚体から加食部が144g、比率は25.9パーセントでした。

この数値を見て如何に思うかは人により立場により様々でしょうが、商売でこの魚を扱うとなると、やはり厳しいといわざるをえません。

ダツを大量に仕入れ、加工して加食部だけにして売るとして、全体の四分の三がゴミになっちゃうなんて、廃棄料が凄そうですし。

やはり未利用魚のダツがメジャーになる日は遠そうです。

2023.9.16 ダツ 売れない理由

九月も半ばを過ぎたというのに30度を大きく超える日が続き、暑いですね。

暑い季節はダツがちょくちょく網に入ります。

まあダツは一年中東京湾に居るのですが、私たちが漁をするのは夏場は主に夜なので、ダツは夜に光に集まる習性があるからよく網に入る、という理屈です。

大きいものは1メートルにもなる立派な魚ですが、

売れません。

毒は持ってないし食べれば良い味なのですが需要が無い、いわゆる未利用魚です。

ダツが売れない理由は主に二つ、歩留まりの悪さと骨の色の不気味さです。

それでは以下に、写真とともにご説明いたします。

まずは歩留まりの悪さについて。
魚の歩留まりとは、1尾丸ごとから取れる加食部の割合のことです。

これが捌いて半身にしたところですが、ダツは体の左右の幅が細いため、腹骨をすき取るとお腹側の身は殆ど無くなってしまいます。

なのでダツの加食部はこの写真の下半分、中骨を取り除いた後の背中側の身と、肛門より後ろのわずかな骨のない腹側の身だけになります。

すき取った腹骨ですが、骨は細いけど固いです。試してませんがフードプロセッサーですり身にしても口にあたるのではないかと思います。

次に骨の色です。

普通の魚と同じ手順で捌いていると、内臓を取って血合いを洗い流した時点でエメラルドグリーンの骨が見えてきます。

これが何とも不気味です。
透き通る白身がグリーンの骨のキモさを一層、際立たせます。

しかもこれは焼いても色が変わりません。

ダツと言われずに魚の塩焼きを出されて

身をむしっていたらこんな緑色の骨が出てきたら、私は叫んじゃいますよ。

以上二点がダツが売れない理由と思われます。

味は良いのです。
高級魚のサヨリに似た身質で、刺身も塩焼きも殆どの人に及第点をもらえる味です。
捌く手間さえいとわなければ一軍入りできる実力はあります。

でもダツの普及にはもう一つネックがありました。
ダツは一日でせいぜい数十尾しか獲れません。(私たちの場合です。よその海では知りません)

例えダツの宣伝が奏功し多くの人が興味を持ったとして、その人々の需要にたいして遅滞なく供給するのはたぶん無理です。

結局、未利用魚はそれなりの理由があるから未利用魚なのであって、世に広めるのは大変なことですね。

 

2023.8.28 新イカ

最近は例年と同じように沖中(沿岸から離れた水深のある場所)でスズキが獲れるようになりました。

クラゲは相変わらずいますが、ここ数回の漁のポイント付近では比較的少ないので助かります。

下の写真ですが、昨日のスズキ漁で網に混じってきた獲物です。

上からマダコ、アオリイカ(の子供)、スミイカ(の子供)、ヒイカです。
ヒイカは小さいですがこれでも立派な成体(大人)です。

一日でこんなに様々な軟体動物が獲れることはあまりないので、なんだか楽しいです。

さて。この四種の軟体動物ズの中に、ひとつだけ目が飛び出るほど高価なものがあるのですが、ご存じでしょうか。

正解はこちら、スミイカ(の子供)です。

スミイカの成体は最近は少なくなってきたものの東京湾に普通に生息しており、さほど高価ではありません。
しかしこの小さいスミイカは「新イカ」と呼ばれ、時として1kgあたり数万円もの値がつく高級品なのです。

その理由はコノシロの幼魚のシンコと同じで、江戸前寿司において季節の風物詩的な位置付けとして珍重されているからです。

スミイカの寿命は一年と短いです。
春先に卵から孵化したら夏にはこの新イカサイズになり、冬にはもう十数cmの成体になり、そして春に産卵をして寿命を終えるそうです。
この成長の速さ、新イカの期間の短さが希少性に拍車をかけ、高価になるのですね。

さてさて、そんな高価な新イカですが今回わたくし、漁師の特権でタダでいただいちゃいます。

こちら、東京湾に秋の涼風の訪れを感じさせる季節の一品
新イカ1杯まるごとお刺身 でございます。

サイズ比較の為、伊藤園 むぎ茶 たっぷり650mlペットボトルのフタを添えてございます。

いざ実食して味やいかにといいますと。

なんとも優しい歯応えを感じつつ噛みしめるたび、その柔らかい身の奥から淡くも確かな甘みが湧き出て口中を満たすが、嚥下すればすっきりとその存在を消し去る、儚さにも似た潔さ。

簡潔に述べますと、味うすい。

まあね、そりゃ成体に比べりゃ味が薄いのは当然ですな。

でも、薄くてもTPOによってそれはちゃんと意味を持つし、意味があります。

居酒屋で唐揚げとかシーザーサラダと並べて食べるもんじゃないってことですね。

ちなみにこちら、新イカより桁が二つくらい安いヒイカ。小さいので茹でて内臓ごといただけちゃうので、楽ちんなうえにおいしいですぞ。

2023.8.13 台風7号 漁の近況

台風7号が日本に迫っています。
私たちのお盆休み前の集合時時点では関東に直撃との可能性が報じられていた為、荒天準備をして係船索を通常の倍に増やしました。

(わかりづらいでしょうが、通常時の係船索は3cm程の太さの綱を一本だけですが、全船、同じ場所に同じ太さの綱をもう一本追加しています)

しかし日を追うごとに予報は変わり、台風7号は当初の予測より西にそれ、関東に影響はさほど無さそうになりました。
とはいえ今度は関西に直撃する様子なので、全くもって喜べる話ではありません。

まあ9,10月になればどのみち関東にも来るでしょうし、備えは怠らずにいようと思います。
台風は他の天災と違って事前に対策をある程度練れるのが少しは救いかと思います。

8月前半の我々の漁模様ですが、タカ(水深の浅い沿岸部)ではギマが多く、それを避けて沖に出ると今度はミズクラゲが大量に待ち構えているという、前門の虎後門の狼状態でした。

一度、マダイが大量に網に入った時、同時にミズクラゲも大量に網に入ってしまいました。

網の中の魚を運搬船に積むためには、網を小さくすぼめて魚を一か所に集めなければなりません。
するとクラゲも密集してしまい、鯛の泳ぐスペースがなくなってしまいます。
そしてマダイは一尾ずつエアー抜きをしなければならないので、網から船に移すのには時間がかかります。

密集したクラゲの中で思うように動けなくなった鯛は弱ってしまい、網の中で揚がりそうになってしまいました。
アガるというのは活かそうとしたのに死んでしまうことです。

マダイは活けと締めでは価格差が数倍になるのでなるべく活かしたかったのですが、かなりの量を氷締めにせざるをえませんでした。
まあクラゲのせいで動けないだけで普通に生きている魚を一瞬で氷締めにするので、鮮度はバッチリで魚体も綺麗です。
しかし、それでも活けとの価格差は大きく開いてしまいます。

もう、ほんとに。
クラゲとギマは消えてほしいです。

2023.7.28 クロダイとキビレ

今月はスズキ漁とコハダ漁が好調だったうえ、相場が良かったこともあり、久し振りに良いボーナスが期待できそうです。

私が大平丸に入った二十数年前は、夏はスズキ漁、秋はサバ漁が好調で、年に数回は月給が倍くらいになる月があるのが普通でした。

それがいつしかスズキもそれほどは獲れなくなり、サバも回遊が殆どなくなってしまい、大きなボーナスにはだいぶご無沙汰でした。

今月のボーナスはコハダの恩恵によるところが大きいですが、そろそろコハダのシーズンは終わりです。
これからは何が獲れるのかはわかりませんが、このまま良い漁が継続できれば嬉しいところです。

さて、前回の記事で書きましたが、今はタカ(沿岸沿いの浅い場所)で働くことが多いです。

タカではクロダイがよく獲れますが、その中に、姿はクロダイにそっくりなのに色がちょっと白っぽい魚が混じります。

それがキビレという魚です。

上がキビレ、下がクロダイです。

私達はキビレと呼んでいますが、標準和名はキチヌと言います。
クロダイは標準和名がクロダイで別称がチヌなのに、キビレは和名にチヌが使われているのがややこしいですね。

ご覧の通り、腹ビレ、シリビレ、尾びれ下部が黄色です。

このキビレですが昔は滅多に見かけなかったのに、最近はちょくちょく網に入るようになりました。
どうやらもともとは西に生息していたけれど、最近の気候の変化で東京湾にも進出してきたようです。

今、全国各地でクロダイによる海苔や貝の食害が報告され、クロダイは駆除対象魚という嫌われ者になってしまっていますが、このキビレも食性はクロダイとほぼ同じらしく、食害に拍車がかかってしまったら困りものですね。

まあ私にできることは食べて駆除に貢献、というところなので、おいしく頂こうと思います。

捌く際に気付いたのですが、キビレは骨が硬く感じました。

私は大きな魚を捌く際に、全てのヒレを前もってハサミで切り落とします。
ハサミといっても切断力の高い万能ハサミですが、キビレの尻ビレは硬すぎて切れませんでした。


全長は同じなのに、クロダイのシリビレは簡単に切れたのにキビレの尻ビレはゴツ過ぎて切れませんでした。

また、肛門からあご下まで包丁を入れて切り開く際、カマの部分が恐ろしく固く、切るのに難儀しました。

自惚れではありませんが、魚を捌き慣れている私が出刃包丁を使っても苦労したのだから、普通の方が薄い万能包丁などで捌こうとするのは危ないかもしれません。

旬はクロダイが秋から春、キビレは春から初夏とのことです。
クロダイは産卵後らしく痩せていますが、しかし身の味はよく、相場も安い魚なので、魚好きの仲間はよく親方にもらって食べています。
仲間内ではいま、クロダイの天ぷらがブームです。

うまそうではありますが、このク〇暑いなかで揚げ物をする元気は私にはありませんや。

キビレの味ですが、正直に申し上げて私にはクロダイとの違いがわかりませんでした。

どちらもおいしい。

語彙力がなくてスミマセン。

ちなみに今年の2月に獲れたクロダイがこちら

丸々と太っています。
上の写真の痩せたクロダイとはまるで別物です。

魚の旬と味について、いずれ記事にしたいと思います。