2020.1.9 カタボシイワシ

5日に今年初の漁に出たところ、うまくコノシロを獲れました。
幸先がよいことではありますが、年初から緊急事態宣言がでたことを考えると浮かれる気分には到底なれません。
幸先が良いけど先行きは不安、と、真逆な感情に心が揺れて何とも言い難い気分です。
心配してもしょうがないのでいつも通り気楽な文を書きます。

大量のコノシロの中によく見ると、似ているけど違う魚が混じっていることがあります。

カタボシイワシです。
画像 真ん中がコノシロ、上下がカタボシイワシです。
ニシン目ニシン科で、コノシロやサッパ、マイワシやカタクチイワシの同類です。

網に混じる比率としては、コノシロ数万尾に対して1尾といったくらいで、きわめて少ないです。

私がこのカタボシイワシを見るのは、大量のコノシロに数尾混じっている時のみです。
それ以外では1年の漁を通しても見かけることはありません。

いつも不思議に思うのは、このごく少数のカタボシイワシはいったい、どういう経緯でコノシロの群れに混じるのか?ということです。
さきほど挙げたニシン科の魚は全て、大きな群れを作ることから、このカタボシイワシも通常は大きな群れで生活していると考えられます。
しかし、東京湾内でカタボシイワシの群れを獲ったという話は、聞いたことがありません。
それどころか、この魚を知らない漁師も多いくらい、なじみがありません。

本来はどこか遠くで群れなしている魚が、数尾だけ東京湾内に泳いできてコノシロの群れに加わる、理由と目的は?

異国のカタボシイワシの群れからはぐれて迷子になったところに、たまたまコノシロの魚群に出会い、同類だからなんとなく混じってしまったうっかり者なのか?
それとも、生息域拡大のために東京湾進出をもくろみ、同類のコノシロの群れに紛れ込んで環境調査をするスパイ的な奴なのか?

答えはわかりようもないのですが、生物はほんとに不思議です。

このカタボシイワシは市場では全く人気がありません。
そもそもあまり馴染みがないうえに、小骨が多いのがその理由とされています。

どんなものか確かめようと捌いてみたところ、まずウロコの固さに驚きました。

写真のピンセットの先にあるのがそれぞれのウロコで、見やすいように黒く塗りました。
上がカタボシイワシ、下がコノシロです。

全長はほぼ同じなのに、ウロコの大きさが全く違うのがわかると思います。

コノシロのウロコは薄く小さく、爪でこすれば簡単に剥がれるほどです。
一方、カタボシイワシのウロコは厚く大きく、身をしっかりと覆っており、包丁を力強く当てなければ剥がれません。
そしてバリバリバリ!と大きな音を立ててあちこちに飛び散ります。

スーパーなどで売っているニシン系の魚のウロコは、こすれて殆ど剥がれているのが普通ですが、カタボシイワシは自然には剥がれない固さですね。

「ちょっと今日は魚の塩焼きにするか」、なんて考えて、マイワシと同じ感覚でカタボシイワシを買って帰ったら、家で1尾ずつウロコをバリバリ剥がさにゃならんのは手間ですね。
そして三枚に下ろそうと身に包丁を入れると、コノシロと同じように、身に小骨が多く入っていてそれを断ち切る感触があります。
刺身と酢締めにして食べましたが、私にはイワシ系よりコノシロ・サッパ系に近い味に感じられました。

おいしかったのですが、やはり捌く手間や小骨の多さから、敬遠されるのもむべなるかな、といった感想でした。

この魚は近年になり、相模湾あたりで漁獲されることが増えてきたそうです。
東京湾内湾まで入ってくるのも時間の問題なのかな、とも思います。