大平丸ブログ」カテゴリーアーカイブ

2020.5.31 でかい太刀魚

大きな太刀魚(タチウオ)が網に入りました。

悔やまれることに魚体の採寸・計量をしなかったので具体的な数値を提示できないのですが、私が今までに見たなかでも最大のサイズです。

太刀魚は大きいほど単価が高くなるので、このサイズだと通常なら1尾で10000円以上します。

通常とは、コロナ前のことです。
今回獲れた太刀魚は、コロナ前に比べて半分の値にしかなりませんでした。
しかし半値ならまだマシなほうで、私たちのメインターゲットのスズキは半値どころではない値下がりをしています。

世間からの評価は市場価格に反映されますが、特に今の世情ではそれが顕著に表れます。
手ごろな価格の大衆魚は普通に売れていますが、お出かけ向きの高価格帯の魚は需要が低迷し、大幅に値下げしてやっと売れる状況です。

魚価の回復を願うばかりですが、収束の兆しが見えたかに思えたコロナの数値が、最近は微増の傾向にあるようだし、まだ明るい展望が開けたとは言い難いと思います。

ここはやはりですね、アフターコロナのニューワールドスタンダードのマーケットにおけるシーバスのニーズをクリアにキャッチするというイシューについて、我々フィッシャーマンがワンチームとなりイニシアティブをとってイノベーションを起こすべくコミットするスキームをサジェストするものでございます。

何を言っているかわからないですって?
大丈夫。
私もわかってない。

2020.5.17 魚が売れない

魚が売れません。
例年だとスズキの相場があがり始め、夏本番に向けてエンジンがかかってくる時期なのですが、今年はとにかくスズキが売れません。売れても非常に安いです。

市場には自粛で行き場を失った高級魚があふれており、ただでさえマイナー気味なスズキはその中でかすんでしまっているようです。

高級魚はだぶついて市場価値が落ちている反面、アジ、サバ、イワシといった、いわゆる大衆魚は通常通り売れているようです。

イワシといえば二十数年前、東京湾にアクアラインができる前までは、これからの梅雨時期にかけてたいへん脂ののったイワシが豊漁だったらしいです。

今、会社の経営は日々悪化していると会長と社長に言われました。
神頼みはしてもしょうがないけど、イワシが回遊してきてくれないかと天に祈るような気分です。

明るい見通しが全くないので、せめて癒しになるような写真をのせます。

猫を枕にする猫。
この2匹は親子で、手前の枕にされているのが息子、気持ちよさそうに寝ているのがお母さんです。

2020.4.28 コノシロの酢締め

今月はまだ2回しか出漁していません。 
事情についてはコロナ禍の影響であると前回書きました。
それ以降、特に状況に変化はありません。

一週間まえに出漁した日ですが、3回網を張り、コノシロが少し入った網がありました。2~3トンほどいたと思います。
しかしその網には同時にミズクラゲとアカクラゲもけっこう入っており、結局船にあげることなく逃がしました。
理由は親方には聞いていませんが、選別の手間に対する利益があまりに少ないからだと思います。
小さい群れでも数多くそこら中に居るのであれば、網の回数を多くしてコノシロを溜めていくという手がありますが、その日はさんざんあちこちを探し回ってやっとそれだけの量だったので、その後に獲れる見込みがありませんでした。
中途半端な量のコノシロを持ち帰ると、輸送の手間などで逆にマイナスになってしまいます。

その日は最終的に、水揚げはゼロで漁を終えました。

しかし網に出口を作って魚を逃がしている時に、運搬船の船長が、コノシロを少しみんなのオカズ用にと獲ってくれました。
帰り際に欲しい者たちで分けたのですが、、、
60尾ありましたが、50尾も残ってしましました。
コハダだとみんなけっこう持って帰るのですが、コノシロだと
「う~~ん、、、俺はいいや」と敬遠するのです。
やはり骨がごついから、というのがその理由です。

今回のコノシロ  頭を落としても22cm
前々回の記事にしたコハダ・ナカズミ 頭つきで15~18cm

それで私が残りを全部もらったのですが、さばいてみたら白子や卵巣が発達中でした。どうやら産卵に向けて栄養を蓄え始めた時期のようで、しかしまだ栄養は身にまわっているという、一番おいしい時期の魚でした。
刺身で食べたときに、コノシロってこんなにおいしかったっけ?と思ったほどでした。

酢締めも作りました。
実は私、コノシロで酢締めを作るのは初めてです。
さすがにこんな大きな魚の骨は溶けないだろうと、思い込んでいたのでやらなかったのですが、結果は見事に成功でした。
ちゃんと骨は溶けて全く口にあたりませんでした。
ただし時間を計ったところ、骨を溶かすには1時間近く酢に漬ける必要があったため、コハダやシンコのような繊細な酢加減はできません。
それでも完成品は充分においしかったです。
今後は私、自信をもって皆様にコノシロの酢締めをお勧めしていこうと思います。

2020.4.18 自粛

今月に入ってから一回しか出漁していません。
春の嵐といった感じの時化の日が多かったこともありますが、ナギの日でも出ませんでした。
コロナ禍のせいで魚の需要が少ないうえに安いのです。
特に船橋の売りであるスズキが例年に比べ非常に安く、スズキがメインの底引き網漁船は皆で揃って一か月ほどの出漁見合わせを決めたほどです。

私たち巻き網船団には底引き漁船の自粛決定は関係ないので、出ようと思えば好きに出漁できます。
しかし、出漁はできるけどスズキは獲っても意味がないのは前述のとおりなので、狙うのはコノシロになります。
そのコノシロは冬をピークにどんどん漁獲が減ってきているのは前回、前々回あたりの記事で書きました。

要するに獲る魚がいないのです。どうすればいいのやら。

などと私ごときが書いていますが、本当に頭を悩ませているのは親方ですよね。
魚が獲れなければ一銭の稼ぎにもならないのに、乗組員には給料を出してくれていますので。
しかしこの状況ではそれもいつまで続くのかわかりません。

私たちができることはあまりありませんが、
「魚が東京湾から逃げ出すわけではないのだから、景気が戻ったら自粛した分を取り戻す気持ちで頑張ろう!」
と考え、体力を落とさず、体調を万全にすることが大事だと思います。
腕立て伏せにスクワット、タタミ1畳あればトレーニングはいつでも可能。読書もよし。
余った時間を知力と体力に変えて、事態しゅうそくに備えましょう。

2020.3.30 コノシロ終了?

コノシロがだいぶ少なくなりました。
いるにはいるのですが、群れが小さく一回の網で獲れる量が減ったうえ群れ自体も多くない。

思えば去年の11月半ばから獲れはじめ、12月、1月とコノシロとしては良い漁獲をあげることができたので、私としては充分ありがたい気持ちです。
季節が変わって海の様子も変化してきて、コノシロの群れを狙った網の中に、コハダやナカズミが混じるようになりました。

コハダ・ナカズミとはコノシロの成長前の呼び名です。
同じ網に入ったコハダ・ナカズミ・コノシロは、用途によって売り先と価格が大幅に違うので選別をします。

コノシロの中から皆で小さいコハダを拾っています。
この日のコハダ1キロ当たりの相場は、コノシロの30倍でした。

コハダは高く売れるのでありがたいのですが、需要はそれほど多くありません。
この写真を撮った日はコハダが多く入り、鮮魚として高価格を保って出荷できる量を超えていました。
こういう場合、超過分のコハダは加工屋にいきます。

ここで価値の逆転がおこり、コハダはコノシロよりも安くなります。
1尾の魚としてみればコハダよりコノシロのほうがお肉がずっと多いのだから、うなずける話だと思います。

こんな時は親方のお許しが出るので、もらって帰って酢締めにします。

50尾近くさばいて、塩を振ってしばらく置き、洗って酢に漬けて、とやっていくと、2時間以上かかっちゃいます。
手間はかかりますが酢締めはほんとうにおいしいです。やはりこんなことを考えつく昔の人はすごいとしみじみ思います。

問題はひとつ。作るのに時間がかかるけど、食うと一瞬でなくなっちゃうんだよね。

とまあ、とりあえず私たちは今のところ通常とたいして変わらず仕事をできていますが、これからしばらく先はどうなっちゃうんでしょう。
アメリカとイタリアの例をみるに日本においても今後、コロナの脅威は増す一方だと私は思います。

来月、再来月あたりも、能天気な記事を書きたいものです。

2020.3.18 コノシロ漁に群がる鳥

2月の整備期間が終わった後はしばらく強風で時化が続き、前回から数えると6週間ぶりくらいに出漁しました。
ありがたいことにコノシロが獲れたうえ、ありがたいことにそのコノシロはちゃんと売れました。

今月になっていきなり鳥が増えました。
これは網を張った直後の写真です。
カワウとウミネコが大量に寄ってきました。

この写真だとたいして多くは思えないかもしれませんが、実際に間近で見るとなかなかの数です。
不思議なのは、先月は鳥がこんなに集まることは全くなかったのに、今月になったら急に増えたことです。
まあ正確に言うと鳥の数自体は以前から多くいるのですが、網にこれだけ寄ってくるのが珍しいのです。

私は鳥のことは全然知らないので、もしかしてそろそろ繁殖期で餌をたくさん食べようとしているのか?というくらいしか考えつきません。
ちなみにこの鵜(う)ですが、けっこうかわいい顔をしています。

これは去年、なぜか陸で一羽だけウロウロしていた鵜の子供?
です。たぶん迷子にでもなっていたのかもしれません。
なんかかわいいから皆で魚をあげたのですが、サンマ1尾とイワシ4尾をペロリと丸飲みしました。
普通に生活しているぶんには鵜と接触する機会はまずないでしょうが、クチバシはけっこう硬くてとがっているので、触るときはご注意ください。

2020.2.29 網仕事

2月は出漁せず、船の整備と網の補修を行っていました。

ひとくちに網の補修といっても様々な作業がありますが、今回はキアミのセバについて書きます。
キアミとは新品の網のことで、セバとは網と網を縫い合わせることを言います。

なんだか細長いものが何本も地面においてありますが、これがキアミです。
キアミとは漢字で書くと生網だと思います。
親方が網会社に注文します。このキアミは長さが15メートル×3メートルあります。


私たちが漁に使う網は、長さ750×深さ100メートルくらいですが、これは小さな網をたくさん組み合わせることで出来ています。

網は使っていれば必ず切れたり穴が開いたりします。
網全体を構成するユニットを細分化すればするほど、修理の際に交換するユニットが少なくてすみます。

網を構成する穴を「目」といいます。
網の目は狙う魚の大きさによって千差万別で様々なサイズがありますが、私たちがメインに使う網は11節というもので、目のサイズは3センチです。

この網と網をつなぎ合わせるセバでは、1目に2回、網針で糸を通します。
2回手を動かして3センチずつ進む、これを繰り返して数十メートル仕上げます。
見た目も内容も、実に地味な作業です。

このような地味な作業を1日8時間、延々と繰り返すのが網仕事です。
何千回と網針を動かしますが、目をたがえることは許されません。
集中を持続させるのがなかなかつかれる作業です。

しかしずっと集中して手先を細かく使うので、脳の健康に良さそうな気がします。
漁師には老いてなおかくしゃくとした人が多い気がしますが、この網仕事が一役かっているのではないか、と私は考えています。

2020.1.31 コノシロ漁終了

前回の記事でも書きましたが今期のコノシロの獲れ具合はなかなかのもので、今月は1月としては過去最高の水揚げでした。
しかし漁獲が多かったのは中旬頃までで、後半はあまり獲れなくなりました。

出漁して目当ての魚が獲れないのは切ないものです。

期待をして気合を入れ、やる気満々で出漁するわけですが、
網を張っても魚が入らないことが続くと、網の数に反比例してやる気が下がってゆきます。

しかし獲れなくなったからといって、湾内のコノシロを獲り尽くしたということではありません。
その理由ですが、今期のコノシロが獲れた場所は船橋港からかなり近い場所だったからです。
例年だとコノシロが獲れる可能性のある場所まで行くのに1時間はかかりましたが、今期は出港してから30分もかからずに大きな群れにあたることが多々ありました。
なので近場をメインに探索し、近場でコノシロの群れが見えなければ諦めて帰港しました。
つまり今期は遠出を全然せず、去年やその前にコノシロを大量に獲った場所には行っていないのです。
それゆえ私としてはコノシロはまだまだたくさん湾内にいると思っています。

さて。
船橋の巻き網は2月は出漁しない決まりがあるので、明日から整備期間になります。
船と網を陸にあげて修理・補修をします。
整備についてはまたいずれ。

2020.1.18 コノシロ漁

正月明けもコノシロは居ました。
まだ2回しか出漁してませんが、私が2001年に入社してからの1月としてはすでに過去最高の水揚げとなっています。
コノシロはまだ居続けそうな気配なので、今月が終わるまでにはかなりの漁獲が期待できそうだと、私は思っています。

まあ過去最高とか言っても、私の知る限りでは1月に出漁するようになったのは10年前からなので、まだたいして日は経っていないのですが。

ちなみに昔、出漁していなかったときは何をしていたかというと、
1月・2月で船の整備と網の補修をしていました。
網の補修ですが、昔は仕事の早いベテランが多くいたので、1月中には終わっていました。
網が終わっても整備のほうは仕事がたくさんあるのですが、ベテラン達は網が終わった後は仕事を休みにし、3月までのんびりしていました。
(船橋巻き網は2月は出漁しない決まりがあります。理由は知りません。)
この2月、休めば当然給料は出ないのですが、しかし昔は夏場にかなり稼げたので、寒い中で働くより実家でのんびりするほうがいいというのがベテラン達の考えでした。

ここ数年、夏場の稼ぎが以前に比べてかなり少なくなっています。
個人的には魚の減少というより、時化の多さによるところが大きいと思っています。
今後も気候は激甚化していくと思われるので今年の夏・秋にどれだけ出漁できることか、予測はつきません。
まああまり先のことで不安になってもしょうがないし、とりあえず今月いっぱい、コノシロ漁を頑張りたいと思います。

2019.12.29 今年の漢字

大平丸の今年一年を漢字一文字で表すならば。
私は
「鮗」
を強力に推したい。

魚へんに冬と書いて「コノシロ」と読みます。

今年は稼ぎ時である夏から晩秋にかけて天候不順が続き、思うように出漁できず水揚げ高はここ二十年で最低レベルでした。

しかしこの12月。
例年ではほぼ消化試合に近くたいした水揚げのない12月に、コノシロ漁が好調になり、夏場の不足分をだいぶ補う漁獲をあげることができました。

今回、コノシロが獲れた漁場が総じて港の近くであり、運搬船の積載量やピストン輸送の手間などにおいて有利な条件であったことも好調の一因といえます。
もし漁場が片道2時間かかる場所であれば、時間やその他諸々の要因によって今回ほどの水揚げ量には至らなかったと思います。

2019年の漁は終わりましたが、最終的には結果を出せた上に、今年も無事故で皆たいした怪我(※)もなく終えられたことが嬉しいです。

来年も無事故・豊漁を願います!!

(※)
「たいした怪我」とはどの程度のものかに対する考えは人それぞれでしょうが、ここでは人命に関わる、後遺症が残る、入院する、骨折する、ことを言っています。
わざわざこんなことを書く理由は、今年は若者が4人、アカエイに刺されているからです。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1431/
アカエイに刺された記事

刺された当人からするとあの痛みはたぶん、年間で1,2を争うものだったはずなので、その痛みを「たいした怪我ではない」といわれたら悔しいかな、と。
まあ別に当人たちに聞いたわけではないので実際にどう感じているかはわかりませんが、アカエイ刺され経験者の私としてはそうおもうのです。