大平丸ブログ」カテゴリーアーカイブ

2025.5.17 川エビの季節

夜の港を散策してライトで護岸の際を照らすと、赤く光る小さな点が水中のあちらこちらに見えます。

エビの目が光っているのです。

エビが出てくる季節になりました。
毎年、夏が近づいてくるとどこからともなく現れます。

撮影用に1匹採取してきたのですが、名前がわかりません。

この個体を採取した場所はいつもテナガエビが群れているポイントなので、私はこれを捕まえるまではテナガエビと思っていました。
しかし網ですくってみたらテナガエビとはまるで違いました。
調べると、どうもミナミヌマエビというのに似ている気がしますが、スジエビというのも見た目が似ているうえに生息環境もほぼ同じなので、結局私には種を特定できませんでした。

まあ種はわからなくとも、今年も出てくる時期になったか、と、私なりの季節感の指標となる生物の一つが川エビなのでした。

温暖化だとか乱獲だとか黒潮大蛇行だとか、原因はよくわかりませんが東京湾に限らず魚種の変化が問題になる昨今、いつも通り居てくれた川エビに感謝です。

今回撮影用に採取した川エビですが、丁重に元の場所にお帰り頂きました。

いきなり話は変わりますが、居酒屋の「川えび唐揚げ」、おいしいですよね。

2025.4.30 出漁準備

四月いっぱいかけての船の整備と網の補修が終わりました。

綺麗に補修した網を縫い合わせて船に積みます。

運搬船に氷も積み込みました。

五月から出漁です。

四月いっぱいは朝6時仕事開始で規則正しい生活を送れていましたが、これからは夜に出漁する昼夜逆転生活になります。

去年の夏場はスズキとコハダの相場が良くて久し振りに良い成績が残せました。
今年の海はどんな様子か楽しみです。
まずは安全第一で漁を頑張りたいと思います。

2025.4.15 生網 静電気

網の修理をする日々です。

この写真は、新品の長さ15メートル、深さ3メートルの網をつなぎ合わせているところです。

新品の網は生網(きあみ)といいます。
私たちが使う網は全体で長さ750メートル、深さ100メートルほどの大きさがあります。
この大きさにするのに15×3メートルの網をつなぎ合わせていきます。
このようにすると網の補修の時に、悪い部分だけを交換しやすくなります。

網を組み合わせ終わったらトラックに積みますが、この時、ちょっと気を付けたいことがあります。
生網は新品なので当然、乾いています。
そして素材はポリエステルです。

網をトラックに積む際は、網をまとめて抱え込むようにして積んでいきます。
私達はこれを「網をたぐる、網たぐり」と言いますが、生網を手繰り続けると、体の表面が何やらチリチリしてきます。
帯電というのでしょうか、静電気がたまっていくのを感じます。

そして唐突に、手が金属に触れたりした途端にバチンッ!!と青白い火花が散ります。
当然痛いです。

静電気ってこう、常に不意打ちを仕掛けてくるので私は嫌いです。

生網に限らず中古網でも、屋内で保管されて乾いていればやはり静電気を発生させます。
冬場に乾燥した空気の室内で網仕事をすると、もう体中がピリピリします。

静電気は火事の原因になり得るし、こうした網を作る工場では多分、帯電防止のシステムがあるんだろうと想像しています。

できればそのシステムを知り、真似したいです。
静電気、痛いからキライです。

2025.3.31 整備期間へ

コノシロの大きな群れは居なくなってしまったので、4月の整備期間前に少し早めに網仕事を始めました。

整備期間は船の整備と網の補修の2チームに分かれて行います。

網チームは、長さ750メートル、深さ100メートルの網(あみ)と綱(つな)を綺麗に補修します。

船チームは、網船2隻、運搬船1隻、高速船1隻、伝馬船2隻を、これからの1年間をトラブルなく使えるように整備と点検をします。

2025.3.14 変わったロープ

コノシロが獲れなくなりました。

ボラはいますが、一度に売れる量が限られている為、毎日狙うとすぐ定量オーバーしてしまいます。

我々にとってめぼしい魚種は他には今はいないため、ナギでも出漁せずに網仕事をする日が増えました。

最近はアバづるとイワづるを作っています。

上の黄色いのがアバ、下の黒と白のロープがイワです。
アバとは「浮き」のことで網の端を海面に浮かべ、イワとは網の下端についている綱のことです。

このイワに使うロープが少し変わっているのでご紹介します。

網を海に投じたとき、下端の沈降速度が速いほうが魚の逃げ道を塞ぎやすくなります。
この白色ロープは柔軟で使い勝手がよいので網の端に取り付けるのですが、これはこのままだと軽くて水に浮いてしまうので、重い綱と組み合わせることで水に沈みやすくします。

この黒い綱は、白い綱と同じ太さでも重さは3.8倍もあります。

その秘密はこちら。

綱の中に金属製の鎖のようなものが入っているのです。

この鎖は小さな円柱状の金属が自由に可動するように組まれており、こんな小さいのにどうやって作るのか不思議です。

ちなみにこの黒いロープはクロスロープ(またはエイトロープ)といい、一般的に使われるロープとは作り方が違います。

上が一般的なロープの構成の「みつより(または三つ打ち)」といい、3本のストランド(子線)でできていますが、下のクロスロープは8本のストランドがあり、慣れないとスプライス(輪っか)を作るのにとまどいます。

重りの入った綱なんて私もうちの網で使うまで知りませんでした。

このようなものを考えて作る人もすごいですね。

2025.2.28 ボラのお刺身

コノシロの群れが今まで獲れていた近場から居なくなってしまったので別の漁場に行ったところ、ボラの群れが入りました。

なかなか良いサイズです。

しかし持ってみれば分かりますが、お腹の部分は膨らんでいるように見えてもたるんでいて、産卵後でした。

「寒ボラ(かんぼら)」と呼ばれ脂があっておいしいとされる時期は、産卵前の10月〜1月くらいまでとされていますが、私は過去に産卵後のボラを食べて充分においしかったので、今回も試しに食べてみました。

捌いてまずは刺身にしましたが、臭みは皆無で旨味しかありません。
捌いていると包丁に脂がベッタリと、まるでブリでも切ってるかのようにつきます。


私は今回は刺身しか作る暇がなかったのですが、先輩にフライとナメロウもすごくおいしいとお勧めされたので、また今度作ってレポートしたいと思います。

2025.2.15 コノシロ漁 時化の理由

今月は時化が多く、15日現在、まだ一回も出漁していません。

そもそも昔から今の時期は時化が多いので、数年前までは二月は最初から船の整備と網の補修の期間だったし、またそれほど稼ぎになる魚が獲れることもないので、夏場に比べ漁にかける気合は少な目になります。

まあ時化が多いと言っても朝から晩まで風が吹き続けるのではなく、朝は完全な凪だけど昼以降に風が強くなってくる予報がでている日、があります。

午前中は普通に操業して、風が強くなってきたら帰ればいいんじゃないの?と考える向きもあるかもしれません。

スズキ漁ならそれは通じるのですが、コノシロ漁ではリスクを負うことになります。

なぜかというと、網を投じてから揚げて魚を積みこむまでにかかる時間が、スズキ漁は長くても30分程度なのに対し、コノシロ漁では大量に入ってしまうと3時間近くかかってしまうことがあるからです。

例えば3日前の2月12日のことです。

この日は午前中はベタ凪で、午後から大風(おおかぜ)になるという予報なので、出港しませんでした。

実際の海上保安庁の風速のデータをご覧ください。
下から上に30分刻みで時刻が進んでいきます。
(私達の小型二艘巻き網では、風速8メートル前後が時化のラインになります。)

朝6時半から昼の13時半まではずっと凪ていたのに、14時までの30分の間に急に強い南西の風が吹いてきて、16時には風速19メートルという台風並みの風になりました。

巻き網漁船は当然ながら、一度海中に網を投じたら網を揚げ終えるまでその場を動けません。

動けない状態で台風並みの風を受けたら危険です。

天気予報はよく当たりますが、実際に風の吹いてくる時間は数時間単位で前後することもあります。

風が吹いてくるのが予報より遅い分にはいいですが、早く吹いてきてしまったら、そしてその時に網を張っていたら、かなり危険です。

このように、コノシロ漁では少し先の予測もすることも必要なので、時化も多くなります。

2025.1.31 今月のコノシロ漁

今月のコノシロ漁はなかなかシビアでした。

まず前回の記事で書いたように初漁は漁獲無しで、その後も中旬から下旬まで、漁獲のあがらない日々が続きました。

つい先月までは網を張れば一回で数十トンのコノシロが入っていたのに、今月は魚群を探し回った挙句に張った一回の網には良くて数トンしか入らず、それを何回も繰り返してやっと先月の1日の水揚げの半分に届く程度しか獲れませんでした。

そんな獲れない漁が数回も続きました。

そういう時には脳裏に不安がよぎります。
もしかしてここ数年、獲りすぎたせいで我々の漁場からはコノシロは居なくなってしまったのかという不安です。

ところが月末になって突然、近場に大群が現れました。

27日のことですが、我々を含め船橋に3つある巻き網船団がどれも満船になる量のコノシロが獲れたのです。
(満船とは、運搬船の積載量の限界まで魚を積みこむことです。)

獲り尽くして居なくなってしまったのではないことが分かりほっと胸を撫で下ろしました。

しかし気になるのは、今まで一体どこに居たのか?ということと、また、一度消えてなんでまた戻ってきたのか?ということです。

まあこればっかりはいくら考えたところで人間には分かりようがないので、とりあえず居てくれたことに感謝です。

2025.1.13 初漁

1月5日に今年の初漁に出ました。

網を2回張りましたが、全然だめでした。

一回目の網ではイナッコ(ボラの幼魚)が大量に入り、売れないので全てレッコしました。
(レッコとは海事関係で広く使われている言葉で、色々な使われ方をします。
私達の船では「網(あみ)の中の魚を逃がす・ものを捨てる」というような意味で使っていますが、他の船では「綱(つな)を離す」という意味で使われることもあるようです。)

2回目の網ではコノシロが200kgほど入りましたが、その程度の量では持って帰ってもしょうがないのでこれもレッコしました。

ここ数年ずっと獲れ続けていた近場の漁場からはコノシロの群れは姿を消しており、結果、今年の初漁は水揚げゼロでした。

船橋の私達の他の2つの巻き網船団もこの日に初漁に出て、近場だけでなく少し遠くのコノシロポイントにまで行ったようですが、そこにもコノシロは居らず、結局、網を張らずに帰ってきたようです。

このように船橋巻き網の初漁は漁獲ゼロでした。

それから時化が続き我々巻き網船団は漁には出ていないのですが、我々より時化に強い底引き網は出漁しており、その情報によるとコノシロはかなり網に入るとのことなのです。

まあこれからコノシロが獲れるかどうかはまだわかりませんが、我々の本命は初夏からのスズキ漁ですし、まだそんなに焦ることもないかと、一乗組員としては思っています。

今年もとにかく安全第一でやっていきたいと思います。

 

2024年 12.27 仕事終わりとサザナミフグ

2024年の漁は20日の水揚げで終了しました。

しかし最後に沖で魚の居ないところで網を張って網をきれいに洗いたかったのですが、しばらく波が荒い日が続いてしまい、それができたのは25日でした。

船をデッキブラシでこすって、今年の仕事は終わりました。

今年は夏場のスズキとコハダの値がよいうえに量も獲れ、久し振りに悪くない成績が残せた年になりました。

来年も期待したいです。

2週間ほど前、知り合いの漁師が見たことない魚が獲れたといって見せてくれました。

10cmにも満たない小さなフグですが、私も知りませんでした。

画像検索したところ、サザナミフグの幼魚で間違いないでしょう。

このサザナミフグですが、サンゴ礁に生息するということ以外、あまり詳しい情報はネットに載っていませんでした。

ヒレが小さくてまん丸くてかわいい顔をしているから、生きてたら飼いたかったとアクアリウム好きの仲間が言ってました。

ほんとに、これから東京湾の魚種はどんどん変わっていくんだろうなあ、と思わずにいられません。