投稿者「daiheimaru」のアーカイブ

2023.3.31 アカクラゲ発生

今月は出漁回数が少なかったうえにコノシロの大きな群れにあたることも無く、さほど実りのある月にはなりませんでした。

明日からの一か月間は「整備期間」となり、沖には出ずに船の整備と網の補修を行います。

3月の海の様子ですが、アカクラゲが発生しはじめました。

現在の大きさは直径7~8cmで、最盛期の夏と比べると半分ほどの大きさしかないうえに、毒が弱めに感じられます。

しかしコノシロに混じってきてしまうと、その量次第では選別せねばなりません。

今日は最終的にこの入れ物がいっぱいになるほどのアカクラゲが網に混じっていました。

廃棄するには業者を呼んで引き取ってもらうしかないのですが、毎度手間がかかります。
なんとか活用できないもんですかね。

このアカクラゲがひからびて粉末状態になったものが鼻に入ると、クシャミが止まらなくなります。
これを利用して天然由来の催涙材成分として需要がないかと考えたことがあります。

でもまあ、クラゲなんて95パーセントが水分だから、元の量から取れる粉末量が割に合わないだろうなあ。

と思い、では実際の催涙スプレーの原料にもなる唐辛子の水分量はどんなものかと調べたら、なんと唐辛子の水分量は90パーセントだそうです。

意外と唐辛子も水分量が多いのですね。
となると、乾燥・粉末にする手間は実はそれほど差がなかったりして?
これはもしや、アカクラゲスプレーにワンチャンあるかも?

2023.3.14 お魚ハッチ

先日の漁の最中、若者が毒魚に手を刺されました。

若いとはいえ船に乗って5年目で、毒魚を知らずに掴むといった愚を犯したわけではありません。
網にくるまっていた毒魚の毒背ビレが不可抗力で手にあたってしまったようです。

刺されたときに若者はこの魚を確保しましたが、それを見た私たちの誰も、この魚の名前すらわかりませんでした。

それがこちら。

ハチ という名の魚でした。
背びれに毒があります。

この魚を調べるにあたり「毒魚」「背びれ 毒 魚」で検索をかけましたが、かなりマイナーな魚のようで、5,6件のホームページを覗いてやっと1件に名前だけ出てくるといった具合でした。

マイナーではあれど、私の持っている「東京湾の魚類」という2011年初版の本にはちゃんと載っていたので、近年の温暖化で東京湾に紛れ込んできたというわけでもないようです。
単に、最大で15cmほどと小さいうえに群れないのでまとまった漁獲がなく、商用にならないので認知度が低いようです。

このハチですが、名の由来が「この魚に刺されると蜂(昆虫)に刺されたように痛いから」だそうで、この魚のハチにあてられた漢字も「蜂」だそうです。

今から百数十年前に名付けられたそうですが、なんともはや、おそろしく短絡的ですね。

それに漢字まで同じにしてしまったら、「蜂」と目にした時に昆虫か魚か区別がつかなくなってしまいます。

アホな名付けをするもんだなあ、と思っていましたところ、衝撃的なニュースを見つけました。

「2022年6月、アメリカの裁判所が、蜂(昆虫)を魚と認める」というものです。

細かい事情は書くと長くなるので「蜂 魚」で各自検索してご覧いただくとして、
「蜂(昆虫)は魚である」と、アメリカの裁判所が法的に認めたのです。

なんということでしょう。
アメリカが蜂は魚であると認める100年以上も前に、日本人は、ある種の魚は蜂であるとし、名付けていたのです。
おそるべき先見の明であるといえます。

ハチという名を馬鹿にしていた己の不明を恥じるばかりであります。

※関連させたのはただの冗談ですが、ハチ(魚)の命名と由来、アメリカにおける蜂(昆虫)は魚との判例はどちらも事実です。

2023.2.27 マダイとチダイ

同じ日に同じ網で獲れた2尾の魚です。

色も体型も殆ど同じにしか見えませんが、かたやマダイ、かたやチダイという魚で生物学上ちゃんと区別されており、値段も数倍の開きがあります。

どっちがどっちかおわかりでしょうか。

答えは上がチダイで下がマダイです。

見分けるポイントは3つあり、背びれ・エラの端の色、尾びれの縁です。

★背びれ
チダイは背びれの第3、第4棘が長い

★エラブタの端
チダイはエラブタの端が赤い

★尾びれの縁
チダイはピンク一色、マダイは縁が黒い

はっきり言って背びれ以外は個体差くらいにしか思えないような小さな違いですが、しかしこれらを知っていればまず間違えようがないほど、確実な見分け方です。
(例に挙げておいてなんですが、今回の個体は小さいせいかエラの縁の色がはっきりしません。いずれ、はっきりとした大きな個体の写真を載せます)

私たちの漁場で獲れるのはマダイ数百尾に対してチダイが一尾程度なのですが、先に書いたように値段が数倍も違うので、しっかり区別しなければなりません。

チダイというのは標準和名で正式なのですが、私たちを含め関東では「ハナダイ」と呼びます。

チダイの名の由来に「エラブタの赤さが血のようだから」という説があります。
市場で「血鯛」なんて名札を付けて売られていたら、なんか傷物っぽいというか、なんとなく購買欲がそそられないことでしょう。
冠婚葬祭にも敬遠されるような名です。

「ハナダイ」の由来は体色(花)や頭の形状(鼻)からきているらしいですが、まあこちらのほうが無難な名かと思います。

そして味ですが、世間の評価ではチダイはマダイに比べ多少水っぽいと言われていますが、食べても私には違いがわかりません。

卸会社からの報告をみるとチダイの相場は、マダイの三分の一から四分の一しかしません。

チダイが安いのは多く獲れるからだろうか?と思い全国の漁獲量を調べたところ、「食品データ館」というサイトを見つけ、それによると2019年の漁獲ですが
マダイ 16000トン
チダイ 2200トン
とのことでした。
希少価値でいえばチダイに軍配が上がります。

旬の違いによる価格の上下はあれど、それはどちらも同じことです。
結局のところチダイが安いのは、「マダイに似てるけどマダイじゃないから」という理由くらいしか思いつきません。

チダイが売っているのを見かけたら、ぜひ購入をお勧めいたします。
安くてもマダイと遜色ない味がお楽しみいただけます。

2023・2・14 大量のクロダイと痩せたコノシロの関係

先日、クロダイが大量に獲れました。

クロダイは普段は一日働いても数十尾、多くても二~三百尾程度しか網に入らないのですが、その日は一回の網で数千尾獲れました。

これだけ多くのクロダイがまとめて獲れたのは、私には初めてです。

ただ、これを獲った漁場は船橋港から数時間かかるので、普段は殆ど行くことはありません。
それゆえ、この漁場でクロダイが大量に獲れたのが珍しいことなのかどうか、私にはわかりません。

このブログで去年の暮れから書いていることですが、今冬は近場でのコノシロの成育が芳しくなく、仕方なくマダイや他の魚を狙って遠い漁場に赴いた結果として、大量のクロダイの漁獲となりました。

コノシロの発育不良とクロダイの漁獲には少し関連があります。
コノシロの発育が悪いのは餌の海苔が不足しているからであり、その海苔不足はクロダイが一因であるからです。

東京湾では江戸の昔から海苔の養殖が行われています。
海苔の養殖は、海面に網を浮かべて海苔の種をつけ、成長させるというものです。
この養殖網やそれがある場のことを私たちは「のりベタ」と呼びますが、このノリベタは海でむきだしなので、成長途中の海苔はコノシロの格好の餌になります。

養殖が現代まで続いていたからには、コノシロが海苔をつまみ食いする量はさほどのものではなかったのだと思われます。
クロダイは雑食性で様々なものを食べられるので、これまでは海苔に執着することはありませんでした。

ところが最近になって東京湾では、海水温の上昇で海苔を含め海藻類が減少しました。
クロダイは今まで餌にしていたワカメやコンブなどの海藻類がなくなってしまったため、海苔を狙って食べるようになってしまったのです。
ただでさえ不作のうえにクロダイの食害が重なり、多くの海苔漁師が辞めてしまい、のりベタが激減しました。

今まで冬に養殖海苔を食べて太っていたコノシロは餌場がなくなり、今冬のコノシロは全長に比して重量が軽くて釣り合わない、痩せたコノシロだらけになってしまったのでした。

痩せたコノシロは当然ながらたいして売れず、積極的に狙いたい獲物ではありません。
それで私たちは魚種が豊富な遠場の漁場に行った結果、クロダイが大量に獲れたのでした。

以上がコノシロの発育不足とクロダイ大量漁獲の関係になります。

長々と書いて何が言いたいかというと、今回私たちが漁獲したクロダイは、自分たちが海苔を食べたことが回りまわって私たちを呼び寄せ、漁獲されてしまったということです。

世界の因果って複雑だなあとしみじみ思うのであります。

2023.1.28 東京湾に珍しい生物

ここ2週間ほど、ニュースで東京湾がちょくちょく取り上げられていました。

羽田空港そばでトドが寝そべり、海ほたる近辺でクジラが泳ぎ回り、横須賀沖でイルカの大群が跳ね回るといったニュースが映像付きで出ていました。

イルカは昔から居るしクジラは2018年にも入ってきて記事にもしたくらいで、さほど珍しくもないと思いましたが、トドは初耳です。

いずれも続報はないのでその後どうなったのかは知りませんが、クジラもトドも、交通量が多くて危険な東京湾からは出ていったほうが安全でしょうね。

さて、こうした珍しい場所での生物出没ニュースがあると、よく、これは地震の前触れでは?という話題が上がってきます。

海底でなにか異変が起きているから、五感が鋭敏な生物は異常行動を取ってしまうのだ、と言われると、なんとももっともらしく聞こえます。
いわゆる「深海魚が打ち揚がると地震が起こる」といったような言い伝えや伝承の類ですが、これに関しては「関連がある」と科学的に検証されたデータはなく、逆にデータを揃えて「迷信である」とした論文が発表されています。

ちっぽけな話ですが私個人の体験では、私が東京湾で働いてきた22年間の間に、海ホタルのそばで1メートルあるマンボウが獲れたり、ユウレイイカという深海魚が生きたまま獲れたり、船橋漁港の中にイルカが迷い込んできたりと、とっさに思い出せるだけでまあまあ珍しいことは起きていますが、それらの出来事のあとに天災は起こりませんでした。

今回は東京湾を例にしましたが、ちょっと変わった生物が現れた時に、珍しいと話題にするのはよいが何かの前触れなどと恐れることはない、ということですね。

ちなみに私、
「地震の前兆だと?そんな訳あるか ばからしい」
と口で言いつつも、心の奥のほうで(いや、もしかしたらほんとうにデカイのがくるのかも、、、)  なんて、2日間くらいちょっぴりビビっているタイプです。

2023.1.14 イラッとするから

新年早々、穏やかでないタイトルをつけてしまいましたが、別に嫌なことがあったわけではありません。

嫌な事どころか逆に、今年は出漁二回にしてマダイ漁が好成績で、幸先が良いスタートをきっております。

では何がイラッとするかと言いますと。

まずマダイ漁のポイントなのですが、我々が普段漁をしている湾奥よりだいぶ南下した場所にあります。

東京湾では南に下がれば下がるほど外洋に近くなるせいか、湾奥より獲れる魚種が多くなります。

南に下がった場所で漁をすると、(我々には)珍しい魚がたくさん獲れるので面白いです。

そして今回獲れた珍しい魚がこちら。

「イラ」
スズキ目 ベラ科 イラ と、ちゃんとイラというのが和名です。

なんともカラフルで南国系に思える魚ですが、新潟あたりでも獲れるようです。

四角い頭も特徴的で、アマダイやブダイに似ています。


それでこのイラという名の由来が、
「捕まえようとすると逆に噛みついてくるから、イライラさせられる」
または「噛みついてくるくらいイライラしている魚」
という説が一般的らしいのです。

とにかく「イラッとする(している)」から、イラ。

たしかに、私がこの魚を活魚水槽に入れようと掴んだ時、軍手を嚙まれました。
釣りなどで生きているイラを触る場合は気を付けてください。


私達にとって珍しいだけでなく、あまり魚屋でも見かけないので味が気になるところです。

旬は晩秋から初夏らしく、いまはちょうど良い時期みたいなので、とりあえず刺身と塩焼きにしました。

身は柔らかく、加熱したらけっこう崩れてしまいました。

刺身は冷蔵庫で4日寝かせたのですが、たいして旨味は感じられず、塩焼きのほうが味がはっきりしておいしかったです。

今回私は切り身に塩を振ってすぐに焼いたのですが、次は塩を振って寝かせて水分をしっかりと抜けば、身は崩れず味もさらに凝縮しておいしくなると思いました。
刺身もクセはまったく感じなかったので、昆布締めなどで旨味を足せば化ける気がします。

扱いを知っていれば、かなりおいしく食べられる魚だと思います。

しかし、イラの名の由来。
ほんとなんですかね?イラッとするからイラだなんて。

そんな感じで名前をつけちゃうなら、
獲れたら嬉しくてニヤニヤしちゃうニヤとか、
獲れたら危なくてハラハラしちゃうハラとか、
獲れたら何となくムラムラしちゃうムラとか、

畳語(じょうご 同一の言葉を重ねてひとつの単語にしたもの)の数だけ魚の名が存在しちゃいそうなもんですが、現状ではそうはなっていません。
まあ普通に考えて、命名する人はそんな短絡的な名を和名にしようとは思わないでしょうね。

そう考えるとこの、「感情」を名に冠したイラって、面白いと思います。

2022.12.30 ほうぼう

今年の漁は26日に終了し、来年は5日から出漁予定となっています。
今年の冬は、ここ数年の漁の定番であるコノシロは狙いませんでした。
来年は何が獲れるかはわかりませんが、良い漁ができることを期待しております。

今年の最後の出漁の時に、大きなホウボウが獲れました。
(上がホウボウ)

この魚は東京湾に普通に生息していますが、群れないうえに底生魚なので、巻き網漁ではたまにしか取れません。

特徴はなんといっても、大きく美しい胸ビレです。

撮影の都合で私は下方向に引っ張ってしまいましたが、海中ではこの胸ビレは水平方向に広げています。

緑地の扇のヘリを水色で縁取り、中に水玉を散らすというおしゃれなヒレですが、これはなんの意味があるのでしょうね。

クジャクのように、オスが派手な色彩でメスにアピールするのかな?


と一瞬考えたけど、調べたらホウボウのヒレは雌雄どちらも派手でした。

気になるのでネットで調べたところ、胸ビレに関しては、それを使って海底を這いまわる、という記述が殆どでした。
この写真では非常にわかりづらいですが、胸ビレの付け根にヒレの一部が変化した足のようなものがあり、それを使って海底をテクテク歩くのです。
「ほうぼう 歩く」で検索すると、葛西臨海水族園が撮影したかわいい映像が見られます。

しかしその他に、上方からの捕食者を威嚇するという記述も発見できました。

確かに、この大きくカラフルな胸ビレを海中で左右同時にパッと開いたら、何か大きな生物が両目を開いたように見え、敵を撃退できるかもしれません。

水深の深い海中での光の透過率を考えたとき、赤い胴体は見えづらく胸ビレの青さは際立つという理屈が成り立つので、この配色には合理性があります。

私としてはホウボウの胸ビレのカラーリングは威嚇目的と結論付けたいところでした。

しかし。
しかしですね。

じつはホウボウにはそっくりさんが居ます。
カナガシラという魚で、見た目も生息場所も生態も似ており、今回もホウボウと同じ網で数尾、漁獲されました。

(上 下 どちらもカナガシラ)

そのカナガシラの胸ビレには、模様は何にもないのです。

画像の胸ビレは水揚げの時に傷ついて破れてしまっていますが、通常はホウボウのように扇状です。

う~ん。
ホウボウもカナガシラも、どちらも巻き網では獲り辛い魚だからあまり漁獲量を気にしたことがありませんが、どちらかが極端に少ないという話は聞いたことがありません。

胸ビレが派手だろうと地味だろうと生息数に大差ないとなると、模様の威嚇目的説に説得力がなくなってしまいます。

まあ結局のところなんで胸ビレが綺麗なのか、本当に知りたい方はホウボウに聞いてもらうしかないですね。

ホウボウ語が話せないなら、さかなクンに聞くのが最善策です。

 

2022.12.15 淋しい海

イナダがついに私たちの漁場から居なくなりました。
回遊魚はおもしろいもので、今までずっと獲れていた場所で網を張っても一尾も入らなくなりました。

まあ例年ならとっくに居なくなっている時期にもまだ獲れ、しかもそこそこ良い値で売れてくれたので、イナダにはおおいに感謝しております。

さてイナダが居なくなった今、次のターゲットは何にするかといいますと、例年ならコノシロになります。
ここ数年のパターンでは11月の初めからコノシロ狙いになり、それに伴って朝方の出港になります。

しかし今年はどうもコノシロの成育が芳しくなく、まともなコノシロサイズが少ないうえ、痩せているのです。

例年コノシロを引き受けてくれる水産会社が、引き受けに難色を示すほどの痩せっぷりです。

なのでコノシロ漁への移行はもう少し様子を見て、いましばらく夜の漁をすることになりそうです。

夜だとマダイの漁獲も期待できます。
今月に入ってから一度、マダイの漁獲がありましたが、量こそ少なかったもののなかなかの高額で売れたのです。

忘年会など組織だっての宴会は未だ自粛傾向にあるようですが、町の居酒屋をのぞくとそこそこ人は入っているように見えます。
仲間同士の小さな集まり等は復活の兆しが見え始め、それに伴い魚の需要も少しずつでも上向いてきたのかな?と思います。

今日は記事に関する写真がなくて殺風景なので、先月獲れた大物の鯛の写真を載せます。

8kgありました。

私が見たなかでは最大サイズです。

イナダやコノシロなど、自分の望む魚が獲れないから「淋しい海」なんてタイトルにしてしまいましたが、こんな大物が潜んでいる東京湾はやはり素晴らしいなあ。

2022.11.27 大物はロマン

今月半ば程まではイナダの漁獲が好調でしたが、最近はだいぶ減ってしまいました。

魚群探知機の反応を見るとイナダの群れはまだ居るのですが、獲りづらい場所のものが多くなりました。

漁の成否には潮流の速さや水深が大きくかかわり、条件がうまくないと、目の前に魚が居ても獲れるとは限らないのです。

まあそもそも湾内に居なければどうしようもないので、居てくれるだけでまだ希望が持てるのでありがたくはあります。

イナダ(ブリ)のような回遊魚は、殆ど同じ大きさの仲間で群れを構成します。
おもしろいもので、ワカシ(40cm未満)、イナダ(約40~60cm)、ワラサ(60~80cm)、ブリ(80cm以上)という呼称に準じた大きさの仲間で群れます。

例えば、イナダとワカシの割合が半々というような群れは、私は見たことがありません。

また、イナダが1万尾獲れた時その中にワラサが100尾ほど混じることはありますが、ブリが混じることはありません。

魚社会にも群れのルールがあるのでしょう。

しかし今回、おきて破りの大物が現れました。

イナダの群れに1尾だけ、全長110cm、重量なんと17,5kgもある超弩級のブリが混じってきたのです。

こういう大きな魚の写真を撮るとき、カメラに対して魚を突き出したくなるものです。
しかしそうすると遠近感が狂ってサイズがわかりづらくなるので、私は撮影の時には魚体を体に近づけて持ってもらいます。

今回魚を持ってもらったのはパワー溢れる若者なのですが、
「重たいっす!」と言っていました。
掴みどころがないうえに優しく持たなければならないから、確かにきつかったでしょうね。


こんな大きなブリ、私は初めて見ました。

ペットボトルを余裕で上回る体高があります。


もしかしたらブリの最大記録では?と思い調べてみたら、日本では115cm、22,1kgというのが釣りでの公式記録だそうです。
全長で5cm、重量で5kg弱及びませんでした。

まあ最大記録に及ばずとはいえ、それでも今回のブリは感嘆に値する大きさです。

写真では迫力が伝えられないのがもどかしいです。
ブリが大きすぎて周りのイナダが小さく見えます。
人で例えたら、少年野球チームの中にエンゼルスの大谷さんが居る感じですかね。

ちなみにこれほどのブリならお値段のほうもさぞかし、と思われるでしょうが、そうはなりませんでした。

このブリが入るサイズの発砲スチロールがなく、個別に出荷ということができなかったのです。

なので他のイナダとともに給食屋さんにまとめて出荷され、お値段もイナダと同じ単価で計算されました。

具体的な数字を書くのははばかられますが、福沢さんどころか樋口さんすらお呼びでないほどでした。

そんなんなら私が買いたかったくらいですが、まあ、この大きくて脂ののったおいしそうなブリを給食で食べることができた人がいると思えば、それで良しですね。

2022.11.14 マダイのエアー抜き

先月、マダイの漁獲は私が入社して以来最多の量でしたが、最近はだいぶ少なくなりました。

しかしマダイの代わりに今度はイナダが獲れだし、これまた過去最多の漁獲の日があるほどでした。

イナダとはブリの幼魚ですが、だいたい40cm~60cmのものを指します。

これは昨日のイナダです。

幼魚とはいえ1尾あれば一家族分のお刺身は充分に取れるサイズはあり、知名度に恥じない味のおいしさもあり、良い値で売れるありがたい魚です。

しかしこのイナダはそもそも東京湾の外から回遊してくる魚なので、いなくなる時はあっという間に消え去って獲れなくなってしまいます。

いつまで獲れるかは運次第です。
もうしばらく湾奥に居てくれることを願うばかりです。

さて、ここで話をマダイに戻し、前回の記事の補足でエアー抜きについて書きます。

網に入ったマダイは膨張した浮袋を自力で元に戻せず、腹を上にして水面を漂いどんどん弱ってしまいます。

それを人力で処置して泳がせるようにする技がエアー抜きです。

網だけではなく釣られた鯛も同じ状態になるため、活けマダイを狙う漁師や釣り人には必須の技術といえるかもしれません。

エアー抜きとは、要は浮袋に穴を開けて空気を出すという単純な話なのですが、体の真ん中にある浮袋に、他の臓器を傷つけずにどうアクセスするかが問題になります。

調べるといくつかの方法がありますが、私達は肛門の後ろからエア抜き器具を差し込みます。

魚体を傷つけないように甲板に柔らかいクッションを敷き、そのうえでエア抜きをします。

この方法ですが一見簡単そうに見えるでしょうが、器具を差し込む角度を間違えると内臓を傷つけ、魚を死なせてしまいます。

活かしの水槽の中で死んでしまった鯛は、今度は浮かび上がらずにそのまま底に沈んでしまい、値段はもちろん生きているものとは天地の差があります。

私はこのエア抜き係の一人ですが、最初の頃はしょっちゅう内臓を傷つけてしまっていました。

しかしある時、運搬船の船長にコツを教えてもらってからは、エア抜きの成功率は99パーセントになりました。

コツは非常にわかりやすく、一度それを教われば後は間違えようがないほど簡単なことです。

ただ、もったいをつけるようで申し訳ないですが、それを私がここに書くのは筋違いなので書きません。

気になる方は運搬船の船長に教わってください。
船長はこういう技術や知識などを全く惜しむことなく教えてくれます。