大平丸ブログ」カテゴリーアーカイブ

2025.7.16 スズキ漁好調 アヤ

直近で漁に出た三回のうち二回、スズキがかなりの量獲れました。

本当だったら私は「大漁」と言いたいくらい獲れたのですが、「大漁」かどうかは親方が判断することであり、今回は親方は大漁とは判断しなかったために私もその言葉は使えません。
「大漁」かどうかは周囲の漁獲量や相場も考慮する必要があるので、なかなか判断は難しいのでしょう。

なので私は大漁ではなく大量という言葉を使います。

ところでこの二回のスズキ大量のうち、最初の一回には体験乗船の若者が乗っていました。
過去の記事を読まれている方ならわかるかもしれませんが、この若者はアヤがいいです。

六月中はさほど獲れていなかったスズキが、この若者が乗った日に大量だったのです。
私はこんなものはただの偶然としか思いませんが、昔ながらの漁師にはこういう縁起を気にする人が未だにいるのも事実です。

ちなみに5年前に高校生が体験乗船した日がありましたが、その日はいつもに比べスズキやサバが大量にとれました。

その高校生は今、網船(逆網)の船長をしています。

 

2025.6.30 ひやめしのにおい 消臭法

網船のエンジンにトラブルがおきてしまい、出漁できません。

これから稼ぎ時真っ盛りなので早く修理せねばと気がはやりますが、機械屋(エンジンメーカーや修理業者の人を私達はこう呼びます)の都合もあり、すぐさま復旧というわけにはいかず、もどかしいです。

機械屋に来てもらうまで乗組員は各自、自分のできる仕事をします。
私は船の網を補修することになりました。

補修をするにあたって、これからの時期はちょっと大変なことがあります。

網がくさいのです。

私達は今、スズキとコハダを狙って漁をしています。
コハダのような小型魚は海中から網を揚げる際に、網にくるまってしまって取り除けず、網の中に残ってしまうものがあります。
それがこの暑さで腐ってしまい、悪臭を放つのです。

写真ではわかりづらいと思いますが、黒い網に白いシミがついているのがわかるでしょうか。
これは腐った魚を取り除いた後に残ったシミです。

網を補修するにはこれに触れねばならないのですが、このシミ程度でもとにかくくさいです。
そしてこのにおいは、付着するとなかなか落ちません。

網仕事を終えた後、せっけんや台所洗剤を使い手を念入りに洗います。
しかし丁寧に洗ったつもりなのに手を嗅ぐと、いくらか軽減されている程度でにおいは消えていません。何回か手洗いを繰り返して、最終的にほんのりくさい程度で諦める、というレベルでなかなか消えないにおいなのです。

このにおいを消すにはどうすればいいか調べたところ、魚の腐敗臭のもとはトリメチルアミンというアルカリ性の物質であり、それは酸性のお酢で中和できるという結論に至りました。

実際にお酢で手洗いを試したところ、台所洗剤では落としきれなかったにおいが消えました。

調べてみるまではお酢で手を洗うなんて考えたこともありませんでした。

お酢は、コハダの酢締めはもとよりコハダの消臭までしてくれるなんて、素晴らしい調味料です。

2025.6.17 シマフグ、ショウサイフグ、コモンフグ

フグが網に入りました。
上がシマフグ、下がショウサイフグです。

上のシマフグですが、模様だけでも怪しさ満点な上に、写真では分かりづらいですが背中の色はメタリックな緑色で、
「こいつは食ったらやばいヤツだ」と感じさせます。
しかし身には毒はないらしく、しかもかなりおいしいらしいです。

下のショウサイフグですが、こちらは知名度がいくらかあると思います。
ショウサイフグはそれ狙いで釣り船が出船するほどの人気があります。
釣るのは難しいけどそれをテクニックを駆使して釣るのが面白く、そして食べるとおいしいので、ショウサイ釣りにハマる釣り人が多いようです。

そしてもう一種、タイトルに書いたコモンフグです。

この写真の4尾のうち、一番上はショウサイフグで他は全部コモンフグです。

実は私、今回の記事を書くまでコモンフグを知りませんでした。

一番上と下の個体を見比べてもらえばわかると思いますが、パッと見た感じではかなり似ているのです。

見分け方を調べたところ、体の模様の形の違いやヒレの色、他に特定部位の皮膚の質感ので区別できるとわかりました。

とくに分かりやすいのが、ショウサイフグの模様は網目状で、コモンフグの模様はそれぞれが独立した紋であるということです。

よく見ると、確かにそのようになっています。

フグは全種類を合わせても一年を通しても数十キロ単位でしか漁獲できないので今まで気にしたことが無かったのですが、今後はもっと意識していきたいです。

やはり魚は面白いですなあ。

2025.5.31 うなぎ?

数日前、河口近くで網を張ったらこんなものが獲れました。

何かおわかりでしょうか。

ひょろ長い胴体にエラあたりがふっくらとした顔つきから、ウナギと思われる方が多いのではないでしょうか。

では顔はというと、こんな感じです。

この顔を見て、「ん?ウナギと違うな」と思われたならなかなか鋭い方です。

この魚はホタテウミヘビです。
名前にウミヘビと入ってはいますが、ウナギ目ウミヘビ科に属し生物学的にはウナギの仲間です。

元気が良くてウネウネするもんでうまく測れませんでしたが、全長80cmくらいあると思います。

ちなみに普通のウナギの顔はこうです。

ホタテウミヘビは顔や口の周辺に模様がありますが、ウナギにはありません。
なので顔をみれば区別はつきます。

区別の仕方は他にもあります。
身の質感がホタテウミヘビはウナギに比べてずっと硬質なのです。

例えばウナギをつついた時の質感を、普通の人の腕をつついた感覚とします。
ホタテウミヘビをつついた時の感覚は、ゴリゴリのマッチョが全力で筋肉に力を込めてポージングしているその腕をつつくような感じです。

ウナギは柔らかみがあるのに対し、ホタテウミヘビは硬質ゴムのような硬さです。

ホタテウミヘビは毒などなく、ウナギの仲間ということもあってか味はおいしいらしいです。
しかし、骨が硬いうえに全身に張り巡らされており、とても食べられたものではないようです。

先ほど「元気が良くて全長がうまく測れない」と書きましたが、実はこの魚、漁獲されてから4時間ほど野締めの状態にありました。

コハダの入った網に紛れており、コハダと共に野締めにされていたのです。野締めは普通の魚はすぐに死んでしまいます。

それが選別の際に見つかって、売り物にならないのでゴミ箱に入れられていました。
私がブログネタにしようとゴミ箱から取り出したらピクリと動いたので、試しに水槽に入れたら息を吹き返して元気になったのです。

ウナギと同じように皮膚呼吸ができるのかもしれません。

撮影後に海に離したら、元気に泳ぎ去っていきました。

2025.5.17 川エビの季節

夜の港を散策してライトで護岸の際を照らすと、赤く光る小さな点が水中のあちらこちらに見えます。

エビの目が光っているのです。

エビが出てくる季節になりました。
毎年、夏が近づいてくるとどこからともなく現れます。

撮影用に1匹採取してきたのですが、名前がわかりません。

この個体を採取した場所はいつもテナガエビが群れているポイントなので、私はこれを捕まえるまではテナガエビと思っていました。
しかし網ですくってみたらテナガエビとはまるで違いました。
調べると、どうもミナミヌマエビというのに似ている気がしますが、スジエビというのも見た目が似ているうえに生息環境もほぼ同じなので、結局私には種を特定できませんでした。

まあ種はわからなくとも、今年も出てくる時期になったか、と、私なりの季節感の指標となる生物の一つが川エビなのでした。

温暖化だとか乱獲だとか黒潮大蛇行だとか、原因はよくわかりませんが東京湾に限らず魚種の変化が問題になる昨今、いつも通り居てくれた川エビに感謝です。

今回撮影用に採取した川エビですが、丁重に元の場所にお帰り頂きました。

いきなり話は変わりますが、居酒屋の「川えび唐揚げ」、おいしいですよね。

2025.4.30 出漁準備

四月いっぱいかけての船の整備と網の補修が終わりました。

綺麗に補修した網を縫い合わせて船に積みます。

運搬船に氷も積み込みました。

五月から出漁です。

四月いっぱいは朝6時仕事開始で規則正しい生活を送れていましたが、これからは夜に出漁する昼夜逆転生活になります。

去年の夏場はスズキとコハダの相場が良くて久し振りに良い成績が残せました。
今年の海はどんな様子か楽しみです。
まずは安全第一で漁を頑張りたいと思います。

2025.4.15 生網 静電気

網の修理をする日々です。

この写真は、新品の長さ15メートル、深さ3メートルの網をつなぎ合わせているところです。

新品の網は生網(きあみ)といいます。
私たちが使う網は全体で長さ750メートル、深さ100メートルほどの大きさがあります。
この大きさにするのに15×3メートルの網をつなぎ合わせていきます。
このようにすると網の補修の時に、悪い部分だけを交換しやすくなります。

網を組み合わせ終わったらトラックに積みますが、この時、ちょっと気を付けたいことがあります。
生網は新品なので当然、乾いています。
そして素材はポリエステルです。

網をトラックに積む際は、網をまとめて抱え込むようにして積んでいきます。
私達はこれを「網をたぐる、網たぐり」と言いますが、生網を手繰り続けると、体の表面が何やらチリチリしてきます。
帯電というのでしょうか、静電気がたまっていくのを感じます。

そして唐突に、手が金属に触れたりした途端にバチンッ!!と青白い火花が散ります。
当然痛いです。

静電気ってこう、常に不意打ちを仕掛けてくるので私は嫌いです。

生網に限らず中古網でも、屋内で保管されて乾いていればやはり静電気を発生させます。
冬場に乾燥した空気の室内で網仕事をすると、もう体中がピリピリします。

静電気は火事の原因になり得るし、こうした網を作る工場では多分、帯電防止のシステムがあるんだろうと想像しています。

できればそのシステムを知り、真似したいです。
静電気、痛いからキライです。

2025.3.31 整備期間へ

コノシロの大きな群れは居なくなってしまったので、4月の整備期間前に少し早めに網仕事を始めました。

整備期間は船の整備と網の補修の2チームに分かれて行います。

網チームは、長さ750メートル、深さ100メートルの網(あみ)と綱(つな)を綺麗に補修します。

船チームは、網船2隻、運搬船1隻、高速船1隻、伝馬船2隻を、これからの1年間をトラブルなく使えるように整備と点検をします。

2025.3.14 変わったロープ

コノシロが獲れなくなりました。

ボラはいますが、一度に売れる量が限られている為、毎日狙うとすぐ定量オーバーしてしまいます。

我々にとってめぼしい魚種は他には今はいないため、ナギでも出漁せずに網仕事をする日が増えました。

最近はアバづるとイワづるを作っています。

上の黄色いのがアバ、下の黒と白のロープがイワです。
アバとは「浮き」のことで網の端を海面に浮かべ、イワとは網の下端についている綱のことです。

このイワに使うロープが少し変わっているのでご紹介します。

網を海に投じたとき、下端の沈降速度が速いほうが魚の逃げ道を塞ぎやすくなります。
この白色ロープは柔軟で使い勝手がよいので網の端に取り付けるのですが、これはこのままだと軽くて水に浮いてしまうので、重い綱と組み合わせることで水に沈みやすくします。

この黒い綱は、白い綱と同じ太さでも重さは3.8倍もあります。

その秘密はこちら。

綱の中に金属製の鎖のようなものが入っているのです。

この鎖は小さな円柱状の金属が自由に可動するように組まれており、こんな小さいのにどうやって作るのか不思議です。

ちなみにこの黒いロープはクロスロープ(またはエイトロープ)といい、一般的に使われるロープとは作り方が違います。

上が一般的なロープの構成の「みつより(または三つ打ち)」といい、3本のストランド(子線)でできていますが、下のクロスロープは8本のストランドがあり、慣れないとスプライス(輪っか)を作るのにとまどいます。

重りの入った綱なんて私もうちの網で使うまで知りませんでした。

このようなものを考えて作る人もすごいですね。

2025.2.28 ボラのお刺身

コノシロの群れが今まで獲れていた近場から居なくなってしまったので別の漁場に行ったところ、ボラの群れが入りました。

なかなか良いサイズです。

しかし持ってみれば分かりますが、お腹の部分は膨らんでいるように見えてもたるんでいて、産卵後でした。

「寒ボラ(かんぼら)」と呼ばれ脂があっておいしいとされる時期は、産卵前の10月〜1月くらいまでとされていますが、私は過去に産卵後のボラを食べて充分においしかったので、今回も試しに食べてみました。

捌いてまずは刺身にしましたが、臭みは皆無で旨味しかありません。
捌いていると包丁に脂がベッタリと、まるでブリでも切ってるかのようにつきます。


私は今回は刺身しか作る暇がなかったのですが、先輩にフライとナメロウもすごくおいしいとお勧めされたので、また今度作ってレポートしたいと思います。