8月の終わりから豊漁が続いていたスズキですが、最近は漁獲が減って例年のこの時期と同じくらいに落ち着いてきました。
そろそろサバかイワシでも回遊してきてくれないかと期待しているのですが、今のところその兆候はありません。
それはさておき、今年は変わったことがありました。
スズキが獲れだしたのと同時に、トラフグが大量に獲れ始めたのです。
今までは年間を通して十数匹ほど網に入るだけだったのが、今年は一日で数十匹、多い日には100匹以上も獲れる日が続きました。漁師歴30年のオキエ(親方)も「こんなにトラフグが獲れるのは初めてだよ」と言うほどでした。
網に入るトラフグはもちろん天然物なので、旬の冬に大型のものが獲れるとすごい値段になります。
このサイズで1・6キロ。私が手のひらに乗っけている写真です。ただ、今回獲れたのは全て手のひらに収まってしまうくらいの小型でしたが。
過去に5キロもののトラフグが獲れたことがあります。
5キロのトラフグを例えると、、、普通の猫1匹より少々大きく重いくらい、といえば伝わるでしょうか。
その5キロものは旬の真っ盛りに獲れたので、1キロ当たり8000円近い値段で売れたと記憶しています。
一匹のトラフグが4万円です。これが市場に行って料亭で調理され、お客の前に出されるまでには数倍になるので、末端価格での刺身一切れは恐ろしい値段になっているんでしょうね。
獲れたフグは、フグ専用の小さな水槽で活かして持って帰ります。
スズキと一緒の水槽に入れると、フグはスズキに噛みついて傷をつけてしまうからです。
フグでも種類によって気性が違うようで、よく獲れるアカメフグやショウサイフグはあまり噛みついてこないのですが、トラフグは油断するとガチッと食いついてくるのでヒヤリとします。
フグの歯は鋭く強く、人の指くらいは簡単に噛みちぎります。
そういえば先月、面白いことがありました。
網に入った魚を仕分けしていたら、先輩が「なんだこれ!?」と言ったので示す先を見たら。
野球ボールくらいの真ん丸なモノがありました。
手に取ってみましたが、全く動かないものの触感や質感から明らかに生物っぽい。しかしこんなモノ見たことない。
「新種の生物か!?」と思いじっくり観察したかったのですが、仕分けを早くしなければならないので、とりあえずフグを活かしている小さな水槽に入れておきました。
しばらくしてからその水槽を覗いたら、その丸い生物(?)は消えていて、フグが数匹泳いでいるだけでした。
水槽にはちゃんとフタがあるので逃げ場はないし、フグに食われたにしては残骸が見当たらない。
はて、あの丸いヤツは一体どこに行ったのか?
家に帰ってからしばらく考えてみて
、その球体はトラフグが膨らんだ姿だったのだろうという結論に達しました。
怒ったトラフグがパンパンに膨らんだけれど、水槽で落ち着いて普通の姿に戻ったのだと思われます。
そうとしか考えられません。
いやあ、写真に撮っていなかったのが悔やまれます。
ほんとに真ん丸だったのです。目もヒレも尻尾もない、どうみてもただのボールだったのです。
漁師歴15年以上の先輩と私ですら、魚と思わなかったくらい見事な真ん丸だったのです。
いずれまた今回みたいな真ん丸フグが居たら、その時は写真に撮ってご覧に入れたいと思います。