2016.3.19 一間
世間一般と違う漁師の言葉。
前回は「時化」のことを書きました。
海の状況に関わらず沖に出ないことを漁師は時化と言う。
これはまあ、理解しやすいかと思います。
違う使い方のもう一つが「一間」。いっけんです。
漁師は網を測る単位に未だに寸・尺・間を使っています。
むかし使われていた尺貫法では1間=6尺=60寸と定められています。
1寸は約3センチなので1尺は30センチ、一間は180センチとなります。タタミ1枚の長さ。目にする機会も多いですし、長さの感覚がイメージしやすいですよね。
しかし漁師の世界ではなぜか、一間は5尺、150センチなのです。
私が知っている千葉県の船は皆そうですし、色々な漁船に乗っていたことのあるベテランに聞いても同じです。
うちが網を取り寄せている関西の魚網会社でも1間は5尺です。
なので、日本全国ではどうなのかは知りませんが、1間=5尺というのは漁師界に広く定着していると思われます。
なぜなのか。博識なベテランに理由を聞いたことがあります。
「さあなあ。。昔っからそうだからなあ。。」で終わりました。
網だけが特別とは考えにくいから、船の長さなども含め漁師及び海に携わる人々にとっては1間=5尺で統一していたと考えるのが自然です。
今はメートル法の普及でこんな尺貫法の単位など知らなくてもなんの問題もありませんが、一昔前はどうだったんでしょうね。
江戸時代の、家も船も全て木造なくらいの時期の材木屋にて。
宮大工「5間の木をくれ(9m欲しい)」
船大工「5間の木をくれ(7.5m欲しい)」
なんてことになる訳です。混乱必至です。
「起きて半畳寝て一畳」という言い回しがあります。
江戸時代半ばには使われた記録があるようですが、その時代の男性の平均身長は150台半ばと推測されています。
すると5尺のタタミじゃはみでちゃう。6尺のタタミならすっぽり収まります。となるとやはり陸の1間=6尺が正しいのか。。。
それとも。昔は陸も1間=5尺だったけど、都市部で肉食が広まって平均身長が高くなり、それにつれて尺を大きくした。しかし漁師は魚しか食べずたいして身長が伸びなかったから尺もそのままだったとか。。。
結局、私にはわかりません。今後誰かに聞かれたとしたら、
「さあなあ。。昔っからそうだからなあ。。」と答えます。