2023.4.16 網の補修 入れ網

四月は一か月かけて船の整備と網の補修をします。

私は網チームなので網の話になります。

以前にも書いたことがありますが、我々の網は長さが750メートル、深さが100メートルほどの大きさです。

これは全体が一枚の網で出来ているのではなく、15メートル×3メートルの小さな網がいくつも組み合わさってできています。

網補修のやり方ですが、この15×3メートルの一枚のユニットを基準に進め、全体が切れてしまっているような場合はそっくり新品と交換します。

 

しかし切れや穴が一部だけの場合は、その場所のみを直します。
これが「入れ網(いれあみ)、きりはぎ」「きおり」という作業です。
入れ網は破損個所を切り取って補修用の網をあてがう作業で、キオリは網の目を一つ一つ作る作業です。

大きな破れは入れ網、小さな穴はキオリで補修します。

ここに、「無結節網」の1メートルくらいの大きな切れがあります。

そして下は網長が「入れ網」で補修した見本です。


ちょっと専門的な話になってしまいますが、網には有結節網(ゆうけっせつあみ)と無結節網(むけっせつあみ)という種類があります。
双方に利点と欠点がありますが、我々は無結節網を使っています。

この無結節網の欠点の一つが、適切な処理が施されていないと網の端の目がほつれることであり、それをふせぐためにセバにしろキオリにしろ、有結節よりひと手間多くかけねばなりません。

通常のやり方だと下の写真のように、網の端を折り返したうえで一目(3cm)ごとに固め止めの処理をするので、非常に手間と時間がかかります。

なので先ほどの写真の、無結節網の1メートルほどの切れを通常のやり方で補修しようとすると、そうとうな時間をくいます。

しかし網長は手間をかけない方法を編み出し、それを皆に教えてくれたので、私達は無結節網の補修を通常よりずっと速く仕上げられます。
破れが大きくて通常のやり方で直したら数時間かかるようなものでも、20分ほどで直せます。

網長がこの方法を考案したのが3年前で、その時の入れ網が今でもほつれずに使えており、強度に問題ないことは実証済みです。

こういった網を作る、組み立てる作業を網の仕立て(したて)と言いますが、これには教科書的なものはありません。

ユーチューブで、水産高校で網の仕立てを教える授業風景がありましたが、先生が生徒に囲まれた中で、網針と網をもって実践で「こうして、こうして、こうやるんだ!わかったね!」と見本を示していました。
つまり網の仕立てを学ぶ方法は人から教わるか自分で考えるしかありません。

大平丸の網長は常に色々と改善と改良を模索しており、良い方法を考えつくと皆に惜しみなく教えてくれます。

網のことでお悩みの方がいらしたら、網長に相談することをお勧めします。