同じ日に同じ網で獲れた2尾の魚です。
色も体型も殆ど同じにしか見えませんが、かたやマダイ、かたやチダイという魚で生物学上ちゃんと区別されており、値段も数倍の開きがあります。
どっちがどっちかおわかりでしょうか。
答えは上がチダイで下がマダイです。
見分けるポイントは3つあり、背びれ・エラの端の色、尾びれの縁です。
★背びれ
チダイは背びれの第3、第4棘が長い
★エラブタの端
チダイはエラブタの端が赤い
はっきり言って背びれ以外は個体差くらいにしか思えないような小さな違いですが、しかしこれらを知っていればまず間違えようがないほど、確実な見分け方です。
(例に挙げておいてなんですが、今回の個体は小さいせいかエラの縁の色がはっきりしません。いずれ、はっきりとした大きな個体の写真を載せます)
私たちの漁場で獲れるのはマダイ数百尾に対してチダイが一尾程度なのですが、先に書いたように値段が数倍も違うので、しっかり区別しなければなりません。
チダイというのは標準和名で正式なのですが、私たちを含め関東では「ハナダイ」と呼びます。
チダイの名の由来に「エラブタの赤さが血のようだから」という説があります。
市場で「血鯛」なんて名札を付けて売られていたら、なんか傷物っぽいというか、なんとなく購買欲がそそられないことでしょう。
冠婚葬祭にも敬遠されるような名です。
「ハナダイ」の由来は体色(花)や頭の形状(鼻)からきているらしいですが、まあこちらのほうが無難な名かと思います。
そして味ですが、世間の評価ではチダイはマダイに比べ多少水っぽいと言われていますが、食べても私には違いがわかりません。
卸会社からの報告をみるとチダイの相場は、マダイの三分の一から四分の一しかしません。
チダイが安いのは多く獲れるからだろうか?と思い全国の漁獲量を調べたところ、「食品データ館」というサイトを見つけ、それによると2019年の漁獲ですが
マダイ 16000トン
チダイ 2200トン
とのことでした。
希少価値でいえばチダイに軍配が上がります。
旬の違いによる価格の上下はあれど、それはどちらも同じことです。
結局のところチダイが安いのは、「マダイに似てるけどマダイじゃないから」という理由くらいしか思いつきません。
チダイが売っているのを見かけたら、ぜひ購入をお勧めいたします。
安くてもマダイと遜色ない味がお楽しみいただけます。