2021.10.12 すなめり?

一昨日、10日の午前11時頃なのですが、沖でスナメリの群れに遭遇しました。

今の時期は普段は夜に働いているのですが、この日は昼に魚を探していました。

ナギで天気が良いうえに波もなく、海面が遠くまで見渡せる状況で、魚群を探して航行していた時です。
親方が遠くの海面で何かが跳ねているのを見つけました。

私たちの漁場で跳ねる魚といえば、通常はボラかサワラの二択しかありません。そしてその時にいた海域は、過去にサワラが大量に獲れたことがある場所に近いところでした。
サワラは相場が良く獲れれば嬉しい魚です。

親方は、サワラが跳ね回るのはマヅメ(日の出もしくは日没の前後1時間ほど)じゃないかと疑問に思ったものの、しかし何かは継続して跳ね続けているので、気になりその場所に向けて舵をきりました。

近づくにつれ、それはやはりサワラとは違うようだとわかりました。
私は防振双眼鏡で見たところ、全身は見えなかったものの、黒っぽくてツルリと滑らかな体表の生物が水面で跳ねていました。

跳ねるといっても全身が水から飛び出すほどジャンプしているのではなく、水面に背中だけを出してすぐに潜るといった感じです。
しかしそれは大きいうえになかなかの勢いなので、背中を出す度にしぶきがあがり、遠目には魚が跳ねているように見えたのでした。
この光景が時間にして十数分、しかも同時にいくつかのしぶきあがることから、数匹以上いると思われる状況で繰り広げられました。

私は双眼鏡で見て、これはスナメリの群れだと確信しましたが、親方以下仲間のほとんどは肉眼だったのでよく見えず、「遠くで何かがパシャパシャしているのはわかったが、あれがスナメリなの?」という認識でした。

結局、こちらが近づこうとしてもその物も移動しており、肉眼で見定められる距離までは行けなかったのです。
また、遠すぎて写真は撮れなかったので証拠画像もありません。
しかし私は今回の事象は、スナメリの群れが水面で跳ね回っていたものと確信しております。

それでですね。
今回のこの出来事なんですが、私は怖いのです。

何が怖いかというと、地震です。
実はこのスナメリは、東京湾では通常はほとんど見かけない動物なのです。
私達にとっては、数年、下手したら十年に一度くらい、「お、今イルカが跳ねたぞ」  「え、どこどこ?」という会話があるくらいの頻度でしか現れません。

おりしも5日前、千葉県北西部を震源とするマグニチュード5.9の地震がありました。
一週間程度は同クラスの地震に注意と言われていますし、また最近、世界のあちこちで地震やら噴火やらが起きています。

そして大災害の前には動物の異常行動の事例がよく挙げられます。

このタイミングで、普段なら一頭みるのさえ稀なスナメリが群れて跳ね回っていたなんて、異常行動だよなあ、と不安になってしまいました。

まあ不安がってばかりいるだけでは精神的に参ってしまうので、できるかぎりの備蓄や備えをしておこうと思います。
皆さまも災害への備えは万端になされますよう。


底引き網漁船は巻き網より時化に強く、出漁回数が多いうえに昼間に働くことも多くいので、スナメリとの遭遇は多いようです。
底引きを数十年やっている人に聞いたところ、スナメリは年に2~3回は見かけ、必ず3~4頭ほどの群れでいるそうです。
しかしここ1年くらい、とんと見てないと言っていました。