イシモチが旬です。
ここ数年あまり獲れなかったのですが、今年はちょっと網に入ります。しかも全体的に大きめのものが多く、混じりとしてありがたいです。
私の回りでは皆この魚をイシモチと呼んでいるし、近所のスーパーでもそのように表記され売られていますが、実はこれは正確な呼び方ではありません。
イシモチというのは「シログチ」と「ニベ」という、形が非常に似ていて紛らわしい魚の総称のようなものなのです。
(どちらの写真も上がニベ、下がシログチです。)
見分け方としては、ニベは全体的に黒い小さな点のような模様があります。それとニベの方が大型化します。私達の網に主に入るのはシログチの方で、ニベはたまに混じってくる程度です。
私の回りというか船橋港全体の漁師や水産会社の人たちは殆ど、シログチのことをイシモチと呼びます。
シログチは内湾、ニベは外洋でまとまって獲れるようです。
なので、外洋では多く獲れるニベをイシモチと呼び、シログチのことは「グチ」と呼んで区別するらしいです。
ややこしいですね。
実はさらに、ニベにそっくりの「コイチ」という魚もいるのですが、そいつまで取り上げると収拾がつかなくなるので今回はスルーします。
シログチとは「白い」と「愚痴」という意味があるようです。
この魚は網に入ったり釣られたりすると、「グゥ、、、グゥ、、、」と音を出します。その音が漁獲されたことに不満、愚痴をこぼしているように聞こえるから、グチと名付けられた、という説があるのです。
この魚は船にあげられてもあまり跳ね回りません。
そっと静かに横たわり、そして低い声で「グゥ、、、グゥ、、、」と鳴きます。
私はいつも、なんというか、捕まえてごめんなさい、という気分にさせられます。
実際は鳴き声ではなく浮袋を振動させている音だそうですが、他の魚ではそんな声(?)というか音は聞きません。いったいなんの意味があるのか、不思議に思います。
海で漁獲したばかりのシログチは、ピンクがかった銀色に輝き、宝石みたいでとても美しい色をしています。
しかし死んでしまうとこの輝きは時間経過でどんどん失われてゆくので、売られる頃にはくすんだ色になってしまいます。
沖で見る元気なシログチを華やかな鎧武者に例えるならば、数日たったものはさながら刀折れ矢尽きた落武者。それぐらい見た目が違います。
ひどい例えをしましたが、しかし見た目はくすんでしまっても味は非常に良い魚です。
刺身でうまいのはもちろんですが、塩焼きや煮付けなど、火を通すのがおすすめです。
柔らかいながらしっかりと身に味があり、とてもおいしいです。
皮にうまみが強いので、皮付きのサクの皮だけを炙って刺身にする、焼霜作りもおいしいです。
シログチとニベでは、ニベの方が身に締まりがあります。味は私には大差は感じられません。どちらもおいしい!です。
旬のイシモチは鯛に勝るとも劣らない、などとも言われます。
みかけたら是非ご賞味を。