2017.7.12 見知らぬ魚

二週間ほど前のことです。近くの漁場でスズキがあまり獲れなかったので、遠出していつもより水深の深い場所に行ったところ、見慣れない魚が一匹、網に入りました。

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横からの写真しか撮ってなかったのですが、前から見るとかなり平べったい魚です。全長は50センチほど。そしてこの写真では全体的に黒っぽいですが、生きているときは全身銀色に輝いていました。

とりあえず、なんという魚だろう?という話になり、仲間うちでは
「カガミダイかなあ?」
「マナガツオでしょ?」
「ロウニンアジじゃない?」
という声が挙がりましたが、どれもすぐに否定され、結局、船の仲間も卸会社の人たちも、誰もこの魚のことを知りませんでした。
けっこう立派な大きさの魚でしかも東京湾で獲れたもの。
知らないままでは東京湾漁師の沽券に関わるので、寮に帰って急いで図鑑を引っ張りだしこの魚を探しました。
図鑑で探す際に一つの手がかりとしたのが、この魚の目玉です。キンメダイ(深海魚)のように大きく透明で透き通っていたのです。そこでこの魚の生息域は深場なのだろう、とあたりをつけ、ページをシュババッと繰っていたところ、

「名前、わかりましたよ♪」
と、スマホを片手に仲間が部屋に入ってきました。
画面を見るとまさにこの魚で、「シマガツオ」であると判明。予想通り、通常は150~400メートルほどの深海に生息する魚でした。

魚の正体がわかったのはいいものの、私としては釈然としない思いが残りました。その思いとは「なぜ、仲間は自分より先に突き止められたのか?」ということです。
「東京湾 魚 珍しい」とかで検索したとしても、東京湾で確認された魚種は700種近くにのぼり、その膨大な数の中から短時間でシマガツオに辿り着くのは難しいはず。
生息域のあたりをつけて「東京湾 深海魚」で検索しても、でてくる画像はおどろおどろしいサメばかり。
では、どうやって私より早く突き止めたのか?
先を越されて悔しい気持ちを笑顔の仮面で隠しつつ、その仲間に問いました。
答えは画像検索アプリでした。
調べたい魚をスマホで写真に撮ってアプリで検索。すると特徴の似た魚がズラリと候補に並ぶのでその中から探すようです。
いやあ、そんな手があったとは。そんな調べ方は考えたこともなかった。便利な世の中になったもんです。
写真を撮って アプリを開いて 検索 。
鼻歌を歌いながら片手ですべてのコトが済んでしまいます。
そしてこのアプリは無料ときたもんです。

近い将来、ある種の職業は人工知能やロボットで代替され、人間が必要なくなるというニュースを見かけます。今回の件はレベルこそ低いもののまさにその将来の構図と同じですね。
便利で快適なことこの上ない。
が、しかし、なんか少し、味気無さを感じてしまうのは私がオッサンだからなのか、、、

このシマガツオ、深海魚釣りをする人たちには馴染みのある魚のようです。
そしてこのシマガツオ、とても変わった通称がありました。
その名も「エチオピア」。
エチオピアと聞けば多くの人はアフリカ大陸にある国家のことを思い浮かべるでしょうが、まさにそのエチオピアとこの魚が関係があったようです。
詳しくは次回に書こうとおもいます。