2018.8.18 アカエイ

今回はアカエイについて色々書こうと思います。

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アカエイについて知っていることは?と人に問えば、だいたい
「毒針をもった危険生物」か「おつまみのエイヒレの素材」の二点が挙げられることでしょう。
エイは自己防衛用に強力な毒針を尾に持っていますが、その毒は針に刺された時にのみ効果を発するもので、エイ自体の身には毒になる部位は全くありません。全身どこでも食べられます。
しかしエイヒレ以外でアカエイを食べたことがある人はあまり居ないと思います。そもそもアカエイの切り身が普通のスーパーで売られることも殆どありません。
なぜかというと、「エイはサメと同じ軟骨魚類で身にアンモニアを貯めるため、適切な処理を施さないと臭いから」
という回答が一般的かと思います。それはそれで正解として、さらに私が思うのは、エイは他の魚に比べると鮮度管理にそれほど注意が払われていない、というのがあります。
アカエイもサメも、新鮮なものに臭みは全然ありません。
しかしそもそも、アカエイを専門に漁獲する船はなく、エイはあくまで「混じり」や「外道」です。しかも形が特徴的でかさばるし毒針があるし、やっかいな邪魔者です。それゆえ普通の魚に比べて船上では雑に扱われることが多いです。雑というのはあまり鮮度や状態に気を配らないということです。
例えば、サバやイワシが獲れた時には鮮度維持の為に氷や塩を
惜しみなく使います。そして港に帰るまでの間、状態を始終チェックして気を配ります。
エイにはそんなに気を遣うことはありません。鮮度維持に何より重要な氷も、エイにはそんなに使いません。なぜなら船で使う氷は当然有料であり、エイを持ち帰って得られる利益を考えると割に合わないからです。
まあエイといえどもきっちり鮮度管理している船も当然あるでしょうが、全体として考えるとそれほど鮮度にこだわらずに水揚げや流通がなされているから、エイは臭いという評価が一般的であり、そして特筆すべき味でもないために一層、食材とは見なされないということになるのだと思います。

アカエイは船橋巻き網船の活動域には満遍なく存在し、一年を通して網に入ってきます。特に今、夏場に活発になるようで多くなります。水深の浅い場所からそれなりに深い場所まで、とにかく、一回網を張ればだいたい十数匹入ります。
しかしこのエイたちは前述の通り需要はほぼないため、私達は海に戻します。
この、網に入ってくるエイは本当にやっかいなのです。
網を絞っている時点で網にからみ、トゲで網を切り裂きます。タマで運搬船にすくいあげると、トゲ付きの尻尾を振り回すので近寄りがたい。非常に危険です。
非常に危険だからなるべく近寄りたくないのですが、そうもいかない理由があります。
網を張るのはスズキを獲るためです。
タマで網から運搬船に魚を揚げる時は、スズキも、その他の混じりものも全てごちゃ混ぜになっています。そのごちゃまぜ状態の中から即座にスズキを選別して活きのいいうちに水槽に入れなければなりません。
この時、ピチピチ跳ねるスズキたちの魚体の合間から、毒針付きの尾がフンフンとうごめいているのです。

そこで一人から二人、エイを海に返す専属の仕事をする必要があります。手鉤(てかぎ)という道具を使ってエイをひっかけ、海に返します。
うちの船は今人員不足なので、スズキを拾う人間が減ると大変なのですが、しかしスズキを拾う時点で誰かがアカエイに刺されてしまうと更なる戦力ダウンになってしまうので、アカエイ拾い専属の人間は大事な役目なのです。

さて、エイにやられるとそんなにやばいのか?という話ですが、長くなってしまうので、毒針の話は次回にします。
まあとりあえず、刺されたら、可能ならすぐに病院に行くこと。
病院が遠く救急車もすぐに来られない状態だったら、ちょっと熱めのお湯に患部をつけること、それを覚えておくと良いでしょう。