大平丸ブログ」カテゴリーアーカイブ

2022.8.14 太刀魚の 尾(?)

以前、太刀魚の大きさを測るときは全長ではなく体高を、それも指何本という単位で測るという記事を書きました。

https://daiheimaru.com/daiheimaru/1672/

その記事の補足というか、関連記事です。

太刀魚を多く見ていると、百尾の中に最低でも一尾ほどの割合で体の後半が切断されてしまったかのような個体がいます。

漁の時に傷つけてしまったわけではなく、その証拠に傷口(?)は皮で覆われています。

太刀魚というのはどうやら、大きい個体が小さい個体を食べてしまうようです。
つまり体の後半がない個体は、小さい時に仲間に後ろをかじられてしまったものの、生き残って成長したということです。

このかじられた太刀魚の割合は1%くらいと先ほど書きましたが、全くもって適当な数値なのでさほど信用なさらぬよう。
漁をしているとそこそこ見かけるというというニュアンスです。

これは太刀魚を狙って釣る人には常識らしく、「タチウオの共食いパターン」などと呼ばれ、なんと、釣った太刀魚の尾を餌にしてそれでさらに太刀魚が釣れるらしいです。

太刀魚がなにかの刺激で興奮状態にあると、他の太刀魚のこの細い尻尾のヒラメキやキラメキに反応し、食いついてしまうらしいです。

とんでもない魚ですな。

まあそれはともかく。
この体の後半を食べられてしまった太刀魚ですが、以前、こんなに大きなものもいました。

指、七本はあろうかというビックサイズで、通常の太刀魚としては最大サイズに近いものです。
(下に敷いている発泡スチロールは、長辺79cmのものを2枚並べています)

これは、大きくなってから他の魚にかじられたというより、小さい頃にかじられたけれどそのまま大きく成長した、と考えるのが自然だと私には感じられます。

つまり、太刀魚の体の後半のこの部分は、無くてもなんとかなるってことですね。

無くてもなんとかなる上に、下手すると仲間を刺激して襲われる要因になるこの部分、いずれ進化するにつれて短くなり、最終的にはなくなるんじゃなかろうか。
つまり、今は少数派の、かじられて後半がない形態が通常の魚体になる感じ。

でもなあ。
尾までシュッとした刀のような姿だからこそ「太刀うお」な訳で、そのシュッとした部分がなくなっちゃったら、ただの「ナタうお」だなあ。

そんな風情のない名前になったら嫌だなあ。

 

2022.7.30 カキ落とし

暑い夏になりました。

夏になると人も魚も活発になります。

フジツボも活発になります。

フジツボは暑くなると元気になり、船の水面下のあらゆる箇所に取り付きます。

それは漁師のみならず、全ての船乗りに忌避されます。

フジツボが船乗りに嫌われるのはなぜかといいますと、フジツボが船底に大量に張り付いてしまうと、航走時の抵抗がとても大きくなるからです。

船の速力は大幅に落ち、燃費は悪くなり、船体に嫌な振動が発生します。

船乗りにはデメリットしかありません。

フジツボがどのようにして船底に付き、育つのか、細かいプロセスは私は知りません。

私の経験上から言えるのは、動かしていない船にはみるみる付着していくということです。

これは3か月の間、動かさなかった船の舵とプロペラです。
一面にフジツボが付着しています。
(プロペラシャフトの下半分はすでに軽くこすってしまっています)
ちなみに私たちが普段、漁に使っている網船はこの船の隣に係留していますが、舵や他の場所にもフジツボは殆ど付着していません。

ですから恒常的に強い水流を受ける場所にはフジツボは付着、もしくは成長できないのだと思います。

このフジツボを剥がす方法ですが、スクレイパーを使って地道にこそげ落とすしかありません。
大雑把にザッと剥がしても、フジツボ上部の殻は落ちますが、基部というか底部というか、張り付いていた基礎の部分はなかなかスクレイパーでは取れません。

しかし取れないまま放置するわけにはいかないので、高圧水流を当てたり、ディスクグラインダーという回転ヤスリで磨いて綺麗にします。
なかなか手間暇がかかります。

これがフジツボを落とし切った、通常の状態の舵とプロペラです。

今回の船の事例で言うと、これだけフジツボがついていると、通常の半分ほどの性能しか発揮できません。

動かさなければフジツボが付いてしまうけど、かといって用もないのに動かして油を無駄遣いするわけにもいきません。
フジツボの付着は船乗りにとっては本当にやっかいな問題で、いまだに世界共通の悩みです。

今回はフジツボの事しか書いていないのに、タイトルは「カキ落とし」です。

カキ(牡蛎、オイスター)も付くには付くんですが、私の体感では付着している99パーセントはフジツボです。

しかし、私の周りでは「フジツボ落とし」という人は一人もいません。
まあ、語感的に「かき落とし」のほうが言いやすいからなのだろうと思います。

もしくは、「カキ(牡蛎)を落とす」のではなく、「掻き落とす」という行為のことなのかな?

まあどちらが正しいのかはともかく、安価で安全なフジツボ除去の方法を考えれば、世界中から賞賛されること間違いなしでしょう。 (意: もうかりまっせ)

2022.7.16 アカエイの毒について

5月の終わりの記事で、スズキが常磐地方で大漁に揚がり相場が低いと書きましたが、大漁も長くは続かなかったようで今はスズキは旬時期の良い相場になりました。

新型コロナの感染者数が急激に増加していますが、行動制限は発令されないうえに感染症法上の分類を引き下げるべきとの提言も出ており、消費の拡大に少しばかりの光明が見えているように思います。

7月前半は台風4号の影響であまり出漁できなかったので、後半は頑張りたいところです。

タイトルのアカエイの毒についてですが、私が以前書いた記事に間違いがあったので訂正します。

上の記事内で私は、アカエイの毒は針を覆っている黒い粘膜である、と書きましたが、これは間違いでした。

正しくは「学研の図鑑 LIVE 危険生物 新版」より引用させてもらいますが、

「毒棘(どくきょく)の表皮の下に毒腺(どくせん)があり、毒棘が相手に刺さると表皮がはがれ、毒が傷口に流れ込みます」

というのがアカエイの毒の仕組みで、私が粘膜と思っていたヌルヌルしたものは表皮で、毒ではありませんでした。
道理でヌルヌルに触れても何のダメージもないわけと合点がいきました。
こちらが「学研の図鑑 LIVE 危険生物 新版」です。
今回、この図鑑に私の撮った写真が掲載されたことで間違いに気づけました。(赤丸で示した場所)
もし過去の私の記事を読んで、アカエイの毒は針の表面の粘膜である、と覚えてしまった方がおられたら、申し訳ありません。ヌルヌルはただの表皮で、その下の毒腺より毒が放出されるのでした。

2022.6.25 とど

とても大きなボラが網に入りました。
全長72cm、目方は4.6kgもあり、ズッシリと重たいです。

獲れたのは6月13日なのですが、この日はこのサイズのボラが数十尾獲れました。
不思議、というか面白いことに、それ以前もそれ以後も、同じ海域で漁をしているのに、このサイズのボラは1尾も網に入っていないのです。
ではこの6月13日の海況が特別だったのかといえば、この日はかなり北風が強く、普段なら時化るような海に出漁しました。
なぜ北風が強いと大きなボラが獲れるのか、因果関係はサッパリわかりませんが、まあボラも波がワチャワチャしているとちょっとテンションがあがっちゃって、いつもと違う場所で泳ぎたくなっちゃうのかもしれませんね。

この大きなボラのことを「トド」と呼ぶことをご存じの方も多いでしょう。

おぼこ→すばしり→いなっこ→ぼら→とど

それに付随して、「とどのつまり」という言葉の由来は、出世魚であるボラの最大形態はトドであり、それより後は無いことからこの言葉ができた、という説も広く知られていることと思います。
しかしこの、魚のトドが語源というのはただの俗説で、本当は「とどめ」の意味の「とど」が正しいようです。

まあ名前はともかく、どのような味がするのか知りたかったので貰って捌きました。
腹の皮は厚みこそありますが、2月に捌いたボラと違い、内臓脂肪は全くありませんでした。
ヘソ(幽門)もデカイです。
塩コショウで炒めましたが、焼き鳥の砂肝を柔らかくしたような食感で楽しくおいしいです。

身の味は、正直に言うとたいしたことはありませんでした。
カマを焼いたら脂はジュウジュウと大きな音をたててあふれてくるのに、身の味は淡泊でした。

旬を全く外しているうえに、大きすぎて大味ということなのかもしれません。

いつも私たちの魚を仕入れに来る、とある個人居酒屋の名店のマスターは、常に「ボラは1kgのものが一番うまい」と言っています。

大は小を兼ねるとは、魚には必ずしも当てはまることではないようです。

2022.6.12 ままかり

今年はコハダ漁が好調で、例年ならとっくにスズキ漁に移行している今の時期でも、まだコハダを狙っています。
このコハダの群れにサッパがごくわずかですが混じってきます。
サッパについては去年の2月に記事を書きましたが、その時は私たちの漁場には殆どいませんでした。去年の記事↓
しかし今年は、少ないとはいえ網を張ればいくらか獲れる程度には居ます。

回遊か発生かわかりませんが、魚の出現は全く読めないものです。

今年のサッパにはなかなか大きいものが居ます。

昔、私たちの網に大量に入って難儀させられたのは、下の13~14cmほどの小さなサイズで、上の大きなサイズは殆ど居ませんでした。

しかし今年は15~16cmと、サッパとしてはなかなかの大型が混じります。

偶然かもしれませんが、1cm大きくなる毎に約10グラム増えていくのが面白いですね。

今回、新鮮なものを30尾ほど先輩から頂いたので、調理しました。

最初は普通に酢締めにする、いわゆる「ままかり 酢漬け」にしようと思っていたのですが、ちょっとレシピを調べているうちに、いつの間にか酢漬けが頭からすっぽりと抜け落ちており、気付けば「サッパ焼き酢漬け」と「サッパのアヒージョ」が完成しておりました。

左が焼き酢漬けで中骨ごと、右のアヒージョは腹骨をつけたまま調理しました。

焼き酢漬けにした一番大きなサッパを食べたところ、中骨は溶け切っておらずに肉の中にあり、骨をかみ砕く感覚はありました。
まあでもそれは例えるならサバの缶詰の骨に近く、魚好きな人ならば気にならない程度です。

アヒージョの腹骨は全く気になりませんでした。

味の評価は、おいしいです。

おいしいといっても、御馳走ではなくお惣菜的な普通のおいしさですが。

ところで。このサッパの味についてですが。

このサッパを「ままかり」と呼び名産物としている地域があり、

そして「ままかり」の名の由来が、オカズにして食べるとあまりにおいしすぎて自家のご飯を食べつくしてしまい、隣家にご飯を借りに行かねばならないから、という説が代表的なのをご存知の方も多いでしょう。

これが私には不思議に思えるのです。

「飯借り」なんて、ご飯のオカズとしては最上級の呼称だと思います。
老若男女問わず1年を通して毎日必ず食べるご飯、毎日のことだから自分の食事量などわかりきっており、それに合わせてご飯を炊いている筈です。
それが足りなくなるだけならまだしも、さらに隣家に借りに行かせるほどの力を持ったオカズということです。

そんな「ままかり」というネーミングがなぜ、他に数多あるおいしい魚をさしおいて、サッパみたいな地味な魚につけられたのか?

別にサッパを貶めたい訳ではありません。
サッパはそれなりにおいしい。

しかし、しかしですよ、サッパ食べて感動して隣家にご飯を借りに行く人なら、他のどんな魚を食べても結局はご飯を借りに行くのではないか、と思えて仕方がないのです。

ここで私が考えたのが、「ままかり」とは「土用丑の日」みたいなものではないかということです。
「土用丑の日」とは江戸時代、夏場の売り上げ低迷を嘆いていたウナギ屋に、平賀源内がアイデアを与え売り上げ増加につなげ、現代にまで残っている販売促進戦略の見本のようなものです。
「ままかり」もこのように、あまり人気がなかったサッパを誰かが商品化しようとして名付けたら、意外やその名が実態以上に広まって人気を博した、という説はどうでしょうか。
商品名なんて先につけたもの勝ちですしね。

2022.5.28 魚の鮮度

スズキの旬が近くなり、身は太くなり脂ものり始めてきました。
それは嬉しいのですが、スズキの相場が「から安」です。
「からやす」とは辞書に載ってないので方言のようなものだと思いますが、「とにかく安い」というような意味で、
「スズキがから安で商売にならねえよ」といった使い方をします。
理由として、常磐地方で今、スズキが大漁らしいのです。
1日で十数トンも水揚げされる日もあるそうで、相場の暴落は必然の成り行きです。
スズキが安いのは辛いですが、今年は今のところコハダ漁がうまくいっており、いくらか助かっております。

さて本題の魚の鮮度の話です。
近所に「飲食店などプロ御用達」を掲げるスーパーがあり、そこの鮮魚売場では全国各地から集めた新鮮な魚を取り扱っています。
品物はとても良い状態で、当然ながら価格が高く私はあまりそこで魚を買うことはないのですが、色々な魚種を見られるのが楽しいのでたまに覗きにいきます。

先日その鮮魚売場に行ったら「見切り品コーナー」という札があり、丸ごとのタイやヒラメが驚くほど安価で売られていました。
見切り品とはどういうことか店員に聞いたところ、仕入れてから5日経っても売れ残っているものだとのことでした。
仕入れてから5日ということは、流通を考えると漁獲から一週間近く経っている可能性もあります。
私はその場にあった「天然ヒラメ 700円」に興味を惹かれました。
40cm程の大きさでしたが、天然のヒラメが700円で買えることなど普通はありません。
店員さんの承諾を得てから身を触ってみましたが、張りはないもののそこまでブヨブヨに柔らかくもなかったので、買って帰りました。

最短でも漁獲から6日は経っているであろう、内臓のついたままの魚。刺身で食べられるのだろうか?
魚はエラと内臓から悪くなっていきます。
私は頭と内臓を処理した魚なら一週間でも生でいけましたが、未処理のものは食べたことがありません。
捌いたところ、内臓は意外やしっかりと原型を留めており、大丈夫そうと思ったので刺身に挑戦することにしました。

他にはムニエル、塩焼き、煮付けを作りました。

ヒラメ尽くしの晩酌のツマミになりました。

食べた結果、刺身は問題なく頂けました。
ただ、実はそもそも今の時期はヒラメの旬から外れており、脂は全くなかったので、それほど旨味は感じませんでした。
もちろん、まずいわけではありません。
ムニエル、塩焼き、煮付けも、普通に「魚のムニエル」や「魚の塩焼き、煮付け」としておいしかったです。
しかし、一般的に高級魚である「ヒラメのムニエル」としてこれを売ろうとしたら、ヒラメってこの程度の味なの?と思われてしまうレベルです。
そう考えると今回の700円という値段は絶妙だったと思います。

さて、今回私は6日以上経った魚を刺身で食べても大丈夫でしたが、しかし、これが他の全ての魚にも当てはまるわけではありません。
魚種によって痛む速度は全く違うし、漁獲してから店頭に並ぶまで、そしてその後まで含めた鮮度管理の状況は千差万別です。
よって入手した魚を生で食べられるかの判断は、自身で経験を積んで自己責任でお願いします、としか言えません。

ちなみに私は昔ベテランから、
「生でダメなら焼いて食え、焼いてダメなら煮て食え」
と教わりました。
生はともかく、焼いてダメな物でも煮ればまだいける、というのは意外でした。
やはりグツグツと煮れば完全に中まで火が入るということなんでしょうね。

2022.5.14 イシモチ 耳石

一か月間の整備期間を終えて今月から出漁を開始しました。
我々のメインターゲットであるスズキの相場はまだ低いものの、コハダがなかなか良い値段で売れており、ありがたいです。
ただしコハダは一日ごとの需要が限られており、市場の需要以上の量を獲ると相場は一気に下がってしまいます。
なのでコハダが網に多く入っても、必要な分を確保したら後は逃がします。
一昔前は、「網に入ったものは安くたっていいから全部持って帰るんだ!」という風潮がありましたが、今は「何でも持って帰ればいいってもんじゃない」という考え方になっており、資源保護の観点からもよい変化を遂げております。

ここ最近はイシモチが網によく入ります。

網に入った最大と最小を並べてみました。
イシモチは大きくてもおいしいので、大サイズのグラム単価は小サイズの三倍もします。
小サイズはおいしくないのかと言えばそんなことは全くありません。
身の量が少ないだけで大サイズと変わらぬ味です。

この小サイズの食べ方ですが、普通に塩焼きや煮付けがおいしいのはわかっています。
そこで私は今回、以前コハダでやったお魚せんべいを試そうと考えました。
(↑コハダのお魚せんべい)

カリカリに焼きあがったコハダの頭のおいしさが忘れられず、イシモチの頭はどんな味がするのか知りたくなったのです。

それでまず腹開きにして頭を分割しようとしたら、包丁が「ガリッ」と不穏な音をたてました。
何事かと思ったら、白くて非常に硬い石のようなものが出てきました。

(これは大サイズイシモチのものですが、白い石の横幅は1cmあります)

これは耳石(じせき)といい、人間を含め殆どの生物が持っているものらしいですが、中でも特に、イシモチは大きな耳石を持つようです。
そもそも写真の魚の正式名称はシログチなのに、なぜイシモチと呼ばれるのかといえば、この石を持っているから、というのが由来だそうです。
ちなみに巷間では、色々な魚の耳石を収集する「耳石ハンター」なる趣味を持つ人がいるようです。

さて、この小イシモチの頭に話を戻しますと、結局私は食べませんでした。
この耳石のあった周辺の骨もやけに固く、焼いても食べられなさそうと思ったためです。
いやほんと、仮に小さなイシモチを丸焼きにして、勢いよく頭からかぶりついたりしたら、、、
歯、折れますよ。

2022.4.27 魚せんべい

一か月間に渡り船の整備と網の補修を行ってきましたが、まもなく終わり、来月からは沖に出漁します。
四月中の他船の漁獲を覗いてみた限りでは、さほど稼ぎになる魚はいないようですが、コロナも大分落ち着いてきたことだし、スズキの魚価が上がることを期待したいところです。

さて。
YouTubeのさかなクンのチャンネルを見ていたら、ホットサンドメーカーで魚を焼き、おせんべいみたいにするという企画をやっていました。

アジやイワシなどを開いたものをホットサンドメーカーではさんで潰すようにして焼き上げ、さかなクンは頭から丸ごと食べていました。

これは面白いアイディアです。
もしかして、うまいことやればコノシロの骨も気にせずに食べられるようになるかな?と思い、早速私もホットサンドメーカーを買って実験してみました。

コノシロを腹開きにして、さあ焼くぞ!と思ったらはみだしました。


私の買った機器に対してコノシロは大きすぎたので、ワンサイズ下のナカズミを使い、なんとか収まりました。


そしてこれが焼き上がりです。

とても良い具合に焦げ目がついておいしそうです。
私もさかなクンに習い、頭からかぶりつきました。
そしたら、頭のおいしいこと!
とても香ばしくてカリカリしていて、この頭だけでお酒のおつまみにできるレベルのおいしさでした。


一方、肝心の身のほうは普通の塩焼きと同じで、わざと取らないでいた中骨は固いままで邪魔な存在でした。

今回の実験から私が得た結論は、コハダの酢締めを作る際に今までは身だけ使って頭は捨てていましたが、今後は頭は取っておいてこのホットサンドメーカーで焼けば、素敵なおつまみがもう一品できるということです。

SDGs的にも非常によろしい。

でも刺身用に捌いた後の魚の頭なんて、普通は売ってないですよね。マグロくらい大きければ別ですが。

捨てるのはもったいないです。
頭はおいしいです。
魚の頭のおいしさを、もっと多くの人に知ってもらいたいです。

 

2022.4.14 網の補修

例年は二月に行っていた船の整備と網の補修を、今年は今月にやっています。
非常に大雑把に書いた図ですが、我々が使っている網のサイズは長さが750メートル、深さが100メートルほどあります。

これを船から降ろし陸上で補修するわけですが、さすがに丸々一本そのままでは網のカサ(体積)が大きすぎて大変です。
上の図では描写していませんが、この網は全部で9本の網に分割ができるようになっているので、一本ずつ修理していきます。

これが9分割中の一本ですが、これでも90メートルあります。

(拡大して見るとずっと奥に人とトラックが写っています)
私達の作業は屋外なので、散歩中の人に話しかけられることがあります。
よく、「大きな網ですね」と言われますが、これが全体のほんの一部だと伝えると、とても驚かれます。
まあ確かに、東京湾の最奥部でこんな大きな網を使った漁業が行われているとは、意外に思う人も多いのでしょうね。
ちなみに網は、深さが約100メートルあるのですが、私たちが普段、漁をする海域は水深がせいぜい十数メートルです。
深くても30メートルほどまでが私たちの狙える魚の限界です。
なのになぜ深さ100メートルもある網を使うのかというと、網の構造上の理由からなのです。
網は構造上、伸びやすい方向と伸びにくい方向があります。
漁師としては、伸びやすい方向を網の全長に使い、伸びにくい方向を深さに使うのが一般的です。

まあ文章だけでは伝わらないでしょうし、いずれ、機があればイラストでご説明しようと思います。

2022.3.29 コノシロ南蛮漬け

今の時期の私達が獲れる魚はコノシロがメインですが、残念ながらコノシロは日本においてはあまり人気がありません。
やはり身に入り込んでいる骨の太さが、敬遠される一番の要因と思われます。

そこで、南蛮漬けにして酢の力で骨を溶かしてみてはどうかと思い、試してみました。
前回コハダで試したところ、悪くはないが格別に良いというほどでもない、という結果でした。

2022.1.27 時化続き コハダ南蛮漬け

今回は完全な成魚のコノシロで試しました。


酢でどれほど骨が溶けるのかを試すため、三枚におろしただけで腹骨はそのまま残して揚げることにします。


揚げて漬け込み、一日おいてから食べたところ、腹骨はそのまま残っており、食べるのに邪魔でした。


しかし気になったのは腹骨だけで、それ以外の骨は全く感じられませんでした。

小骨が気にならないというのではなく、存在を感じられないレベルでした。

そしてコノシロはコハダに比べはるかに肉厚なので、旨味がしっかりとあり、とてもおいしい。
三枚におろして腹骨さえ取り除けば、間違いなく売り物になるおいしさでした。
本当に、自画自賛になりますが、居酒屋やスーパーのお惣菜コーナーに並べたくなるおいしさでした。

健康に良いとされる青魚のコノシロを、玉ねぎ・ニンジン・ピーマンといった栄養あるお野菜とともに、これまた健康効果の高いお酢に漬けこむ南蛮漬け。
おいしいうえに健康にもよい、素晴らしい調理です。
是非ともお試し頂きたいです。

ちなみに中骨も揚げて骨せんべいにしたのですが、これはちょっと固く、かみ砕くのにいささか苦労しました。
今回、私は時間の都合で出来なかったのですが、二度揚げしたほうがよいと思います。