「大平丸ブログ」カテゴリーアーカイブ
2025.10.31 コノシロ漁 コノシロの食べ方
今年の夏場はスズキとコハダを狙う漁をして、そこそこの漁獲をあげられました。
涼しくなってからはサバやイナダの回遊を期待していたのですが、残念ながら我々の漁場にそれらの群れは入ってきませんでした。
しかしコノシロの大きな群れが見え始めたのでコノシロ漁に変更したら、今のところ2回出漁して2回とも大漁でした。

これから数ヶ月続くコノシロ漁の幕開けとして、幸先の良いスタートを切れたと思います。
コノシロといえば、数日前にユーチューブの「さかなクンチャンネル」が船橋のコノシロを扱っていました。
船橋漁協が船橋漁港内で運営している「みなとや」という売店で、さかなクンがコノシロを食べていました。
さかなクンは初めにコノシロのツミレ汁を食べました。
これは身に骨が入り込んでいるコノシロをミンチにすることで食べやすくしたもので、船橋の小学校の給食にも出されているそうです。
その次は刺身、フライ、そして塩焼きにして食べていました。
この時のさかなクンの塩焼きの食べ方に私は度肝を抜かれました。
20数センチはあろう立派なコノシロに頭からかぶりついたのです。
撮影していたカメラマンも「頭から?!」と驚いていたのには笑いました。
さかなクンは骨を出すこともなく、「身はふわふわ!骨は良いアクセント!おいしい!」と、そのままコノシロ1尾を丸ごと余すことなく完食しました。
私はこれに感動しました。
コノシロは昔から近海に大量に生息して漁獲も容易なのに、アジやイワシ、サンマなどのような大衆魚という地位は得ていません。
コノシロ普及のネックはなんといっても身に入り込んで取り除けない骨にあります。
それゆえコノシロの食べ方は、酢締めにして骨を溶かす、ツミレにして骨を砕く、細かく包丁を入れて骨を断ち切るなど、いかに骨があたらないようにするかという工夫をなされてきました。
しかるにさかなクンは、骨を気にせずむしろ楽しむという真逆のアプローチをしたのです。
なんの躊躇もなくコノシロの塩焼きに頭からかぶりつき、そのまま胴体もバクバクと食べ、最終的にお皿は真っさら。
この映像を見たさかなクンファンの子供達の中には、真似してみたいと思う子がきっと多く居るでしょう。
そして真似た結果、やはり骨は固いと諦める子もいれば、本当に骨はおいしいんだと思う子もいるでしょう。
さかなクンの影響力から考えると、骨を好むようになる子はけっこうな数にのぼるのではないでしょうか。
その骨好きな子供が大人になればその子供も骨好きになるでしょうし、そうして魚の骨をいとわないグループが多数形成されていけば、魚食普及に大きな広がりがでることでしょう。
さかなクンが魚を頭からおいしそうに食べる姿は、実に素晴らしい食育だと思います。
持ち上げておいてなんですが、正直に言うと私はコノシロの塩焼きを頭から丸ごと食べるのは真似できません。
大きなイワシやアユの塩焼きを頭から食べたことがありますが、たいしておいしいとは思えず、食感もそれほど好きになれそうにはないからです。
これは私だけではないと思います。
いい年した大人になってしまうと、今更食感の好みは変えようがありせん。
ただ、いま私は「普通の塩焼きの頭は無理」と書きましたが、これはよく火を通すと全く話が変わります。
コノシロをアジの開きのように頭から半分に割り、それを開いてホットサンドメーカーでこんがりと焼くと頭は絶品になります。
このホットサンドメーカーはさみ焼きもさかなクンちゃんねるで知りました。
私はいつでも何度でも言いますが、さかなクンは素晴らしい人だと思います。
2025.10.14 イトヒキアジ
上はウロコを剥がすべく尾から頭に向けて体表をこすったものの、ウロコが全く取れなかった包丁です。
ウロコが埋もれているせいで皮を引くのが少し難しいという意見があったうえ、たいていの魚の皮は焼くとおいしいことから、背身の皮はバーナーであぶりました。
他の魚なら普通に食べてくれる人達が皆、
2025.9.30 中途半端なイワシの群れ
魚が居てくれることは本当にありがたいことであるという前提のもとで話しますが、今、我々の漁場に、とても中途半端なマイワシの群れが点在しています。
数日前に一度の網に入ったマイワシです。
サイズがてんでバラバラです。比率は大きいのが一割程度で後は小さいものでした。
下の小さい2尾は網の目に刺さってしまうので、これが大量だと大変なことになります。
これらのイワシが入った時の網の状況をお話しします。
親方がソナーと魚探(魚群探知機)を使ってスズキを探していたところ、あるポイントでマイワシっぽい群れとスズキの群れが隣り合うほどの近さにありました。
ここ最近のパターンからイワシはソウメ(網に刺さってしまう小型)だろうと考え、イワシの群れを避けつつスズキが獲れるように網を張りました。
ですが、その時にイワシの群れを少しかすめてしまったそうです。
結果、その網はスズキが獲れましたがイワシも少々網に刺さってきました。
親方は今回はソウメの群れを警戒し把握してうまく避けましたが、毎回必ず避けられるとは限りません。
イワシに刺されるのが嫌ならば網の目を小さくすればよいし、実際に目の小さいイワシ用の網も持っています。
しかしイワシ用の網は他魚種への対応が難しくなるというデメリットがあり、そう簡単には交換できません。
まったくもって、サイズも量も中途半端なイワシの群れに困らされています。
食べればおいしいのでオカズとしては最高なのですが。
刺身、塩焼き、煮付け、フライと、どのようにしてもおいしいです。
今回は南蛮漬けを試してみました。
小さいイワシは骨が全く気になりません。
実験で大きいものも丸ごと揚げてみましたが、中骨は溶け切りませんでした。
私は平気でしたが、骨が嫌いな方は三枚におろして中骨を除いてから揚げるとよいでしょう。
2025.9.16 時化続き きおり
2025.8.30 ツバクロエイ
毎年、何がしかの魚が例年に比べて多く発生することがありますが、今年はツバクロエイが多いと感じます。

ある日の漁では運搬船のデッキ一面に溢れましたが、こんなに網に入ることはそうそうないです。
ツバクロは持って帰っても売れないし、こうして船上にあげてもすぐには死なないので、全部海に返します。
尻尾に針はあるもののかなり小さく、そしてアカエイと違い尻尾を振り回すこともありません。
私はこのエイを海に返す時は手づかみで戻しますが、刺されたことは一度もありません。
ネットで刺された事例を探してみましたが、アカエイにやられた例ばかりでツバクロに刺されたという話は見つけられませんでした。
私としては、ツバクロエイは尾の針を使う気はないと考えています。
このツバクロエイですが、私は漁の邪魔者としか思っておらず食べることなど考えたことも無かったのですが、最近の大量を機に調べてみたところ、味についての評価が実に高いことがわかりました。
試してみたくなったので運搬船の船長にお願いしたところ、かなり大きくて新鮮なものをもらえました。
ネットで下調べした食べ方で一番興味を惹かれたのが刺身です。
早速解体して生で食べたら、日を置いて熟成した白身魚のような旨味と味がして驚きました。
仲間が二人そばに居たので試食してもらいましたが、二人ともかけね無しにおいしいと評価してくれました。
ちなみに上の刺身ですが、私はエイを捌いたのが初めてで自己流でやってしまったため、切り身というよりほぐし身になってしまいました。
他には定番の煮付けと唐揚げにしました。

味はどちらもおいしく、普通に定食屋で出しても売れると思えるレベルです。
ただ私は一つ失敗してしまい、捌いた時に初めに皮を全て剝いでしまいました。

煮付けや唐揚げなど火を通す場合は皮はそのままのほうが旨味が更に増すようで、次回への教訓となりました。
ツバクロエイはおいしいことがわかりましたが、狙って獲れるものではないうえに、大量に網に入ったとはいえそれは「ツバクロエイとしては大量」という程度の話であり、魚種としてターゲットにはならず市場に出回ることもないと思われます。
入手のハードルは高いですが、釣りや何かしらの伝手で手に入ることがあれば是非食べてみてほしいと思います。
2025.8.13 ワカシとマイワシ
海の変化は急に訪れることがあります。
8月6日に出港した後に一日時化をはさみ8日に出たところ、たった1日あいただけなのに海の様子がだいぶ変わっていました。
6日には一尾も居なかったワカシ(ブリの幼魚)が、8日にはトン単位で網に入ったのです。
上は今回ワカシが入った網ですが、ブリ系は網を締めこむとこのように水面が賑やかになります。
そして同時にワカシだけではなくイワシもけっこう入ってきました。
これも今回の写真ですが、ワカシとは別の場所でマイワシが入った網です。
マイワシもこのように水面で跳ね回って壮観です。コノシロではこういう水しぶきはあがりません。
マイワシは去年の暮れに小羽と呼ばれる小さいサイズのものが湾内に巡ってきていましたが、ひと月ほどで消えました。
それからしばらくほとんど見かけなかったのが、8日にまたけっこうな量が網に入ってきたのです。
本当にたった1日で今まで居なかった魚がどっと入ってくるのだから、おもしろいものです。
おもしろいといえばもう一つ、今回入ってきたイワシの群れですが、小羽だけでなく大きいサイズも居たのです。
例えば去年の暮にきたイワシは全て、小羽と呼ばれる15cm程度の大きさでした。
去年獲れたサイズ↓
しかし今回私たちの網に入ったのは、大羽と呼ばれる20cm超えの立派なサイズでした。
今回獲れたもの↓
捌いてみたら脂もまあまあのっており、塩焼きにすると黄色い脂がポタポタと落ちるほどでした。

この大羽が獲れた日以降は時化と盆休みに入ったので出漁していませんが、次回の出漁では海の様子がどうなっているのか楽しみです。
2025.7.31 ゲート閉鎖
前回の記事で7月前半に3回出漁したと書きました。
3回目に出漁したのは13日でしたが、それから半月も時化が続き次に出漁できたのは28日でした。
28日は朝だけナギで昼には風が吹いてくる予報だったため、朝方の短時間だけコハダ漁をしたので、通常の漁より時間が短く、漁獲もそれほど多くはありませんでした。
次にまともに出漁できたのは29日の夜で、夜のうちにスズキが大量に獲れたうえに翌朝はコハダにも恵まれ、良い漁獲量で帰港できました。
帰港したのが30日の朝7時頃で、水揚げが終わったのが8時半くらいだったと思います。
ちょうどカムチャツカで大地震が発生したころです。
そして9時40分に東京湾に津波注意報が発表され、船橋市にも避難指示が出されました。
船橋漁港は高さ2メートル半のコンクリート製の防潮堤で周囲を囲まれた構造になっており、出入りは防潮堤に設けられたゲートから行います。
このゲートは殆ど年中開放されていますが、年に数回、台風や大雨のせいで潮位が通常の変動より大きく上がる際に閉められます。
今回は東京湾内湾の津波注意報により閉まりました。
これが普段の船橋漁港の入り口です。
これが防潮堤の側面です。左側のコンンクリートが防潮堤で右側の灰色の物体が可動式のゲートです。
かなり厚く安心感があります。
今回の地震の影響は船橋にはあまりありませんでしたが、こういう防災インフラの構築はとても大切なことと改めて考えさせられました。
2025.7.16 スズキ漁好調 アヤ
直近で漁に出た三回のうち二回、スズキがかなりの量獲れました。
本当だったら私は「大漁」と言いたいくらい獲れたのですが、「大漁」かどうかは親方が判断することであり、今回は親方は大漁とは判断しなかったために私もその言葉は使えません。
「大漁」かどうかは周囲の漁獲量や相場も考慮する必要があるので、なかなか判断は難しいのでしょう。
なので私は大漁ではなく大量という言葉を使います。
ところでこの二回のスズキ大量のうち、最初の一回には体験乗船の若者が乗っていました。
過去の記事を読まれている方ならわかるかもしれませんが、この若者はアヤがいいです。
六月中はさほど獲れていなかったスズキが、この若者が乗った日に大量だったのです。
私はこれはただの偶然としか思いませんが、昔ながらの漁師にはこういう縁起を気にする人が未だにいるのも事実です。
↓過去にアヤについて書いた記事です
https://daiheimaru.com/daiheimaru/822/
ちなみに5年前に高校生が体験乗船した日がありましたが、その日はいつもに比べスズキやサバが大量にとれました。
その高校生は今、網船(逆網)の船長をしています。
2025.6.30 ひやめしのにおい 消臭法
時化(しけ)たときの仕事ですが、私は船の網の補修を主にします。
補修をするにあたって、これからの時期はちょっと大変なことがあります。
網がくさいのです。
私達は今、スズキとコハダを狙って漁をしています。
コハダのような小型魚は海中から網を揚げる際に、網にくるまってしまって取り除けず、網の中に残ってしまうものがあります。
それがこの暑さで腐ってしまい、悪臭を放つのです。
写真ではわかりづらいと思いますが、黒い網に白いシミがついているのがわかるでしょうか。
これは腐った魚を取り除いた後に残ったシミです。
網を補修するにはこれに触れねばならないのですが、このシミ程度でもとにかくくさいです。
そしてこのにおいは、付着するとなかなか落ちません。
網仕事を終えた後、せっけんや台所洗剤を使い手を念入りに洗います。
しかし丁寧に洗ったつもりなのに手を嗅ぐと、いくらか軽減されている程度でにおいは消えていません。何回か手洗いを繰り返して、最終的にほんのりくさい程度で諦める、というレベルでなかなか消えないにおいなのです。
このにおいを消すにはどうすればいいか調べたところ、魚の腐敗臭のもとはトリメチルアミンというアルカリ性の物質であり、それは酸性のお酢で中和できるという結論に至りました。
実際にお酢で手洗いを試したところ、台所洗剤では落としきれなかったにおいが消えました。
調べてみるまではお酢で手を洗うなんて考えたこともありませんでした。
お酢は、コハダの酢締めはもとよりコハダの消臭までしてくれるなんて、素晴らしい調味料です。
ちなみに網を一回張れば綺麗になるので、漁獲した魚に匂いが付くことは全くないのでご安心ください。


















