今月は整備期間なので沖に出ず、網チームの私は一日中、網の補修をしています。
網の修理に欠かせない道具が網針と包丁です。
包丁というと普通は出刃や三徳のような形がイメージされると思います。
しかしうちの船では昔から慣習的に刃物全般をひっくるめて包丁と呼んでおり、要は切れれば形は何でもよいのです。
まあナイフは冗談ですが。
網の補修作業ですが、縫い合わせている糸を切ったり、破れている個所を切りぬいて直す為には包丁(刃物)が無くては仕事になりません。
私が入社した二十数年前から、経験豊富な古参ベテラン達は全員包丁を使っていました。
包丁以外の道具を使うなど考えてみたこともありませんでしたが、4年ほど前のことです。
そして私達も勧められたので試しに使ってみたところ、驚くほど使い勝手がよく、瞬く間に皆がハサミを使うようになりました。
例えば網を菱形に切りぬくとします。
包丁(ナイフ)で切ったのがこちら
切った後の糸の端が、ハサミではきれいなのに包丁で切ったものはバラけてしまっています。
私たちの使っている無結節という網では、糸がほつれていると隣の網目もほどけてしまうのでよくありません。
ハサミを使って糸をきれいに切断できると、その後の仕事がとてもやり易くなります。
それにハサミは、切りたい場所を狙って切るのが包丁に比べて容易かつ正確にできます。
とにかく網の補修にはハサミが実に使いやすく、もう包丁には戻れないほどです。
今私たちが使っているハサミは、1200円の万能ハサミから100円ショップの裁縫ハサミまで人により様々ですが、100円のハサミでも充分実用に耐えるうえ、包丁より使いやすいです。
(ちなみに皆が使う包丁の値段は上は5000円から下は安くても600円ほどです)
値段で物の優劣を考えるのはナンですが、100円のハサミでさえ数千円の包丁より使いやすいという事実を目の当たりにすると、やはり「適材適所」という考えは大事なのだと改めて思わされます。