今月は時化が多く魚の話のタネがないので、今回は網仕事で使う道具の紹介をしようと思います。
網を作るのに欠かせない道具といえば糸をかける針で、私達は網針(あばり)と呼びます。
これが私たちが良く使うサイズの網針です。
オレンジ色の2本はプラスチック製で、左3本は竹で出来ています。
竹針はプラ針の数倍の値段です。
プラ針は一気に大量生産できますが、竹針は人が一本ずつ手作りするしかありません。
写真の竹針は引退したベテランから貰ったもので価格はわかりませんが、今、同じサイズの竹針を買おうとすると1本500円以上します。
同じサイズのプラ針は、上は300円近くするものもありますが、安いのは1本50円ほどで買えます。
そんな高価な竹針ですが、プラ針より優れた点として私が思いつくのは、幾分堅いことくらいです。
耐久性や使用感などに値段差ほどの大きな優劣は見出せません。
値段の差はハンドメイドの加工・技術料と言って差し支えないでしょう。
そうなると、仕事用に大量に網針を買うとなれば選択肢はプラ針しか考えられず、竹針は今後は廃れる一方となるでしょうね。
竹針を貶める感じになってしまいましたが、それは既製品に関しての話です。
自分好みの形状や長さの網針を欲して自作するとなると、竹のほうが加工が楽で作りやすいです。
そして何より、古い竹針には、何とも言えない味があるのです。
上の針は20年以上使っている物です。
数多の網目をくぐりこすられ、全ての角を削り取られた滑らかな形状。
持つ手の皮脂が自然のワックスとなり、磨きこまれた柔らかな光沢を放つ。
竹針には、プラスティックには到底出せぬ侘びと寂びが感じられるのです。
今後の網針界は、業務面ではプラ製が席巻し、竹製網針は伝統工芸品的な位置付けになってゆくでしょうなあ。