九月も半ばを過ぎたというのに30度を大きく超える日が続き、暑いですね。
暑い季節はダツがちょくちょく網に入ります。
まあダツは一年中東京湾に居るのですが、私たちが漁をするのは夏場は主に夜なので、ダツは夜に光に集まる習性があるからよく網に入る、という理屈です。
大きいものは1メートルにもなる立派な魚ですが、
売れません。
毒は持ってないし食べれば良い味なのですが需要が無い、いわゆる未利用魚です。
ダツが売れない理由は主に二つ、歩留まりの悪さと骨の色の不気味さです。
それでは以下に、写真とともにご説明いたします。
まずは歩留まりの悪さについて。
魚の歩留まりとは、1尾丸ごとから取れる加食部の割合のことです。
これが捌いて半身にしたところですが、ダツは体の左右の幅が細いため、腹骨をすき取るとお腹側の身は殆ど無くなってしまいます。
なのでダツの加食部はこの写真の下半分、中骨を取り除いた後の背中側の身と、肛門より後ろのわずかな骨のない腹側の身だけになります。
すき取った腹骨ですが、骨は細いけど固いです。試してませんがフードプロセッサーですり身にしても口にあたるのではないかと思います。
次に骨の色です。
普通の魚と同じ手順で捌いていると、内臓を取って血合いを洗い流した時点でエメラルドグリーンの骨が見えてきます。
これが何とも不気味です。
透き通る白身がグリーンの骨のキモさを一層、際立たせます。
しかもこれは焼いても色が変わりません。
ダツと言われずに魚の塩焼きを出されて
身をむしっていたらこんな緑色の骨が出てきたら、私は叫んじゃいますよ。
以上二点がダツが売れない理由と思われます。
味は良いのです。
高級魚のサヨリに似た身質で、刺身も塩焼きも殆どの人に及第点をもらえる味です。
捌く手間さえいとわなければ一軍入りできる実力はあります。
でもダツの普及にはもう一つネックがありました。
ダツは一日でせいぜい数十尾しか獲れません。(私たちの場合です。よその海では知りません)
例えダツの宣伝が奏功し多くの人が興味を持ったとして、その人々の需要にたいして遅滞なく供給するのはたぶん無理です。
結局、未利用魚はそれなりの理由があるから未利用魚なのであって、世に広めるのは大変なことですね。