最近は例年と同じように沖中(沿岸から離れた水深のある場所)でスズキが獲れるようになりました。
クラゲは相変わらずいますが、ここ数回の漁のポイント付近では比較的少ないので助かります。
下の写真ですが、昨日のスズキ漁で網に混じってきた獲物です。
上からマダコ、アオリイカ(の子供)、スミイカ(の子供)、ヒイカです。
ヒイカは小さいですがこれでも立派な成体(大人)です。
一日でこんなに様々な軟体動物が獲れることはあまりないので、なんだか楽しいです。
さて。この四種の軟体動物ズの中に、ひとつだけ目が飛び出るほど高価なものがあるのですが、ご存じでしょうか。
正解はこちら、スミイカ(の子供)です。
スミイカの成体は最近は少なくなってきたものの東京湾に普通に生息しており、さほど高価ではありません。
しかしこの小さいスミイカは「新イカ」と呼ばれ、時として1kgあたり数万円もの値がつく高級品なのです。
その理由はコノシロの幼魚のシンコと同じで、江戸前寿司において季節の風物詩的な位置付けとして珍重されているからです。
スミイカの寿命は一年と短いです。
春先に卵から孵化したら夏にはこの新イカサイズになり、冬にはもう十数cmの成体になり、そして春に産卵をして寿命を終えるそうです。
この成長の速さ、新イカの期間の短さが希少性に拍車をかけ、高価になるのですね。
さてさて、そんな高価な新イカですが今回わたくし、漁師の特権でタダでいただいちゃいます。
こちら、東京湾に秋の涼風の訪れを感じさせる季節の一品
新イカ1杯まるごとお刺身 でございます。
サイズ比較の為、伊藤園 むぎ茶 たっぷり650mlペットボトルのフタを添えてございます。
いざ実食して味やいかにといいますと。
なんとも優しい歯応えを感じつつ噛みしめるたび、その柔らかい身の奥から淡くも確かな甘みが湧き出て口中を満たすが、嚥下すればすっきりとその存在を消し去る、儚さにも似た潔さ。
簡潔に述べますと、味うすい。
まあね、そりゃ成体に比べりゃ味が薄いのは当然ですな。
でも、薄くてもTPOによってそれはちゃんと意味を持つし、意味があります。
居酒屋で唐揚げとかシーザーサラダと並べて食べるもんじゃないってことですね。
ちなみにこちら、新イカより桁が二つくらい安いヒイカ。小さいので茹でて内臓ごといただけちゃうので、楽ちんなうえにおいしいですぞ。