船で使う道具に「ひっかけ」というものがあります。
4~5メートルほどの竹の先にフックをつけたもので、文字通り遠くのものを引っ掛けて取るような使い方をします。
作りは金具を紐で縛り付けるだけの簡素なものです。
このひっかけの作り方に関して少々、思うところがあるので今回のネタにします。
この4本はそれぞれ別人が作りました。
左端が私、他は若者たちが作ったものです。
私は紐を単に巻き付けただけですが、若者たちは巻き結びを交互にやって縛り付けています。
この若者たちのやり方が私には理解できないのです。
交互に巻き結びをするやり方だと、ひと巻き毎に力を入れてしめ、その都度紐を持ち替えねばならず、手を動かす回数がだいぶ多いのです。
それに比べて私のやり方は、紐の端を固定したら後は竹をグルグルと回していくだけで、とても簡単です。
紐の締まり具合ですが、巻き結びでは手の力しか使えませんが、グルグル巻きは全身の力を使うことができ、下手をすると紐の圧で竹が割れてしまうほど強く締められます。
制作時間を計ってみたところ、グルグル巻きは約5分、交互巻き結びは約10分かかりました。
グルグル巻きが意外と時間を食ってしまいましたが、今回使用したのが「ひらいと」という、きし麺みたいな平たい紐だったので、よじれを直してきれいに巻くのに手間取りました。
普通の円形の紐ならば半分もかからずにできるでしょう。
楽なうえに強力に締まるグルグル巻きのデメリットは、一か所が切れると全体がほどけてしまうことです。
両方とも真ん中の一本を切った後、5回ほど素振りをした結果です。
このほどけ方は大きなデメリットといえますが、しかし、私たちの船上でのひっかけの使い方では紐が切れることはないので、グルグル巻きにはメリットしかありません。
と、以上のことをもれなく教えたのに若者達はなぜか、皆、交互巻き結びで作るのです。
何故わざわざ手間も時間もかかる巻き結びで作るのか?と問うたところ、
「グルグル巻きだと竹が割れちゃうから、、、」
というマッチョな返答がありました。
いやいや、そこは力加減をすればよいだけじゃない!
と言ったら、
「ええ、まあ、でも、、、こっち(交互まき結び)がいいんです」
という要領を得ない答えが返ってきただけでした。
う~む。
若いモンの考えることはよくわからんです。
まあ私なりに考えたところ、グルグル巻きだと手抜きみたいに見えるとか、交互巻き結びはなんか仕事をした達成感があるとか、ちょっとした見栄の張り合いのような感情が若者グループにはあるのかな?
そうだとしたら、仲間内で技術を競い合って高めあうのは良い関係ですな。