先日、クロダイが大量に獲れました。
クロダイは普段は一日働いても数十尾、多くても二~三百尾程度しか網に入らないのですが、その日は一回の網で数千尾獲れました。
これだけ多くのクロダイがまとめて獲れたのは、私には初めてです。
ただ、これを獲った漁場は船橋港から数時間かかるので、普段は殆ど行くことはありません。
それゆえ、この漁場でクロダイが大量に獲れたのが珍しいことなのかどうか、私にはわかりません。
このブログで去年の暮れから書いていることですが、今冬は近場でのコノシロの成育が芳しくなく、仕方なくマダイや他の魚を狙って遠い漁場に赴いた結果として、大量のクロダイの漁獲となりました。
コノシロの発育不良とクロダイの漁獲には少し関連があります。
コノシロの発育が悪いのは餌の海苔が不足しているからであり、その海苔不足はクロダイが一因であるからです。
東京湾では江戸の昔から海苔の養殖が行われています。
海苔の養殖は、海面に網を浮かべて海苔の種をつけ、成長させるというものです。
この養殖網やそれがある場のことを私たちは「のりベタ」と呼びますが、このノリベタは海でむきだしなので、成長途中の海苔はコノシロの格好の餌になります。
養殖が現代まで続いていたからには、コノシロが海苔をつまみ食いする量はさほどのものではなかったのだと思われます。
クロダイは雑食性で様々なものを食べられるので、これまでは海苔に執着することはありませんでした。
ところが最近になって東京湾では、海水温の上昇で海苔を含め海藻類が減少しました。
クロダイは今まで餌にしていたワカメやコンブなどの海藻類がなくなってしまったため、海苔を狙って食べるようになってしまったのです。
ただでさえ不作のうえにクロダイの食害が重なり、多くの海苔漁師が辞めてしまい、のりベタが激減しました。
今まで冬に養殖海苔を食べて太っていたコノシロは餌場がなくなり、今冬のコノシロは全長に比して重量が軽くて釣り合わない、痩せたコノシロだらけになってしまったのでした。
痩せたコノシロは当然ながらたいして売れず、積極的に狙いたい獲物ではありません。
それで私たちは魚種が豊富な遠場の漁場に行った結果、クロダイが大量に獲れたのでした。
以上がコノシロの発育不足とクロダイ大量漁獲の関係になります。
長々と書いて何が言いたいかというと、今回私たちが漁獲したクロダイは、自分たちが海苔を食べたことが回りまわって私たちを呼び寄せ、漁獲されてしまったということです。
世界の因果って複雑だなあとしみじみ思うのであります。