先月、マダイの漁獲は私が入社して以来最多の量でしたが、最近はだいぶ少なくなりました。
しかしマダイの代わりに今度はイナダが獲れだし、これまた過去最多の漁獲の日があるほどでした。
イナダとはブリの幼魚ですが、だいたい40cm~60cmのものを指します。
幼魚とはいえ1尾あれば一家族分のお刺身は充分に取れるサイズはあり、知名度に恥じない味のおいしさもあり、良い値で売れるありがたい魚です。
しかしこのイナダはそもそも東京湾の外から回遊してくる魚なので、いなくなる時はあっという間に消え去って獲れなくなってしまいます。
いつまで獲れるかは運次第です。
もうしばらく湾奥に居てくれることを願うばかりです。
さて、ここで話をマダイに戻し、前回の記事の補足でエアー抜きについて書きます。
網に入ったマダイは膨張した浮袋を自力で元に戻せず、腹を上にして水面を漂いどんどん弱ってしまいます。
それを人力で処置して泳がせるようにする技がエアー抜きです。
網だけではなく釣られた鯛も同じ状態になるため、活けマダイを狙う漁師や釣り人には必須の技術といえるかもしれません。
エアー抜きとは、要は浮袋に穴を開けて空気を出すという単純な話なのですが、体の真ん中にある浮袋に、他の臓器を傷つけずにどうアクセスするかが問題になります。
調べるといくつかの方法がありますが、私達は肛門の後ろからエア抜き器具を差し込みます。
魚体を傷つけないように甲板に柔らかいクッションを敷き、そのうえでエア抜きをします。
この方法ですが一見簡単そうに見えるでしょうが、器具を差し込む角度を間違えると内臓を傷つけ、魚を死なせてしまいます。
活かしの水槽の中で死んでしまった鯛は、今度は浮かび上がらずにそのまま底に沈んでしまい、値段はもちろん生きているものとは天地の差があります。
私はこのエア抜き係の一人ですが、最初の頃はしょっちゅう内臓を傷つけてしまっていました。
しかしある時、運搬船の船長にコツを教えてもらってからは、エア抜きの成功率は99パーセントになりました。
コツは非常にわかりやすく、一度それを教われば後は間違えようがないほど簡単なことです。
ただ、もったいをつけるようで申し訳ないですが、それを私がここに書くのは筋違いなので書きません。
気になる方は運搬船の船長に教わってください。
船長はこういう技術や知識などを全く惜しむことなく教えてくれます。