スズキの旬が近くなり、身は太くなり脂ものり始めてきました。
それは嬉しいのですが、スズキの相場が「から安」です。
「からやす」とは辞書に載ってないので方言のようなものだと思いますが、「とにかく安い」というような意味で、
「スズキがから安で商売にならねえよ」といった使い方をします。
理由として、常磐地方で今、スズキが大漁らしいのです。
1日で十数トンも水揚げされる日もあるそうで、相場の暴落は必然の成り行きです。
スズキが安いのは辛いですが、今年は今のところコハダ漁がうまくいっており、いくらか助かっております。
さて本題の魚の鮮度の話です。
近所に「飲食店などプロ御用達」を掲げるスーパーがあり、そこの鮮魚売場では全国各地から集めた新鮮な魚を取り扱っています。
品物はとても良い状態で、当然ながら価格が高く私はあまりそこで魚を買うことはないのですが、色々な魚種を見られるのが楽しいのでたまに覗きにいきます。
先日その鮮魚売場に行ったら「見切り品コーナー」という札があり、丸ごとのタイやヒラメが驚くほど安価で売られていました。
見切り品とはどういうことか店員に聞いたところ、仕入れてから5日経っても売れ残っているものだとのことでした。
仕入れてから5日ということは、流通を考えると漁獲から一週間近く経っている可能性もあります。
私はその場にあった「天然ヒラメ 700円」に興味を惹かれました。
40cm程の大きさでしたが、天然のヒラメが700円で買えることなど普通はありません。
店員さんの承諾を得てから身を触ってみましたが、張りはないもののそこまでブヨブヨに柔らかくもなかったので、買って帰りました。
最短でも漁獲から6日は経っているであろう、内臓のついたままの魚。刺身で食べられるのだろうか?
魚はエラと内臓から悪くなっていきます。
私は頭と内臓を処理した魚なら一週間でも生でいけましたが、未処理のものは食べたことがありません。
捌いたところ、内臓は意外やしっかりと原型を留めており、大丈夫そうと思ったので刺身に挑戦することにしました。
他にはムニエル、塩焼き、煮付けを作りました。
ヒラメ尽くしの晩酌のツマミになりました。
食べた結果、刺身は問題なく頂けました。
ただ、実はそもそも今の時期はヒラメの旬から外れており、脂は全くなかったので、それほど旨味は感じませんでした。
もちろん、まずいわけではありません。
ムニエル、塩焼き、煮付けも、普通に「魚のムニエル」や「魚の塩焼き、煮付け」としておいしかったです。
しかし、一般的に高級魚である「ヒラメのムニエル」としてこれを売ろうとしたら、ヒラメってこの程度の味なの?と思われてしまうレベルです。
そう考えると今回の700円という値段は絶妙だったと思います。
さて、今回私は6日以上経った魚を刺身で食べても大丈夫でしたが、しかし、これが他の全ての魚にも当てはまるわけではありません。
魚種によって痛む速度は全く違うし、漁獲してから店頭に並ぶまで、そしてその後まで含めた鮮度管理の状況は千差万別です。
よって入手した魚を生で食べられるかの判断は、自身で経験を積んで自己責任でお願いします、としか言えません。
ちなみに私は昔ベテランから、
「生でダメなら焼いて食え、焼いてダメなら煮て食え」
と教わりました。
生はともかく、焼いてダメな物でも煮ればまだいける、というのは意外でした。
やはりグツグツと煮れば完全に中まで火が入るということなんでしょうね。