ゴンズイが網に入りました。
これは18cmくらいあり、けっこう大きめです
ゴンズイは東京湾に普通に生息していますが、主に岩礁帯などに居るため通常は巻き網にはあまり入りません。
年に数回程度、何の拍子かたまに網に入ることがあります。
ゴンズイが網の中に見えると、私は戦慄します。
一見、ヒゲだらけでとぼけたかわいい顔をしていますが、そのヒレに毒のトゲを隠し持っているのです。
背びれの始点と胸鰭(両側)の三か所、白で描いたところに毒トゲがあります。
致死性ではないものの強力な毒であり、刺されると非常に痛いです。
私は漁師になって数年目に、ゴンズイを掴んでしまい、刺されたことがあります。
刺された箇所は目立った傷もなく、少し紫色っぽくなっただけでたいして腫れもしませんでしたが、その痛みは強烈でした。
神経を握りつぶされるような、何とも形容しがたい重く大きな痛みが、心臓の鼓動くらいの間隔でズキン、ズキンと、数時間にわたり衰えることなく延々と襲ってくるのです。
もう漁師なんて辞めようと思ったほどでした。
その時は船頭をはじめ多くいたベテラン乗組員も、「エイやゴンズイにやられたらお湯に浸す」という対処法を知らなかったので、私は陸にあがるまでの数時間、苦痛に悶えながら早く帰港することを願うばかりでした。
とまあ私は過去に非常に痛い思いをしましたので、今でもゴンズイが網に入るとつい、
「ゴンズイだあぁ!ゴンズイがいるぞうぅ!」と叫びまくってしまいます。
ここ数年に入ってきた若者たちはゴンズイのことを知らない者ばかりだったので、叫んでいる私を見て、「このオッサンはなんで騒いでいるの?」という表情をします。
そこでとりあえず毒について説明すると、納得してくれます。
しかし彼らの反応を見る限りでは、それほど危機感をもったようには見えません。
私 「ゴンズイの毒はな!すごく!すごく痛いんだぞ!!(熱弁)」
若者 「はあ。そうなんですか(冷静)。」
といった感じです。
まあね、あの痛みは実際に刺されないことには想像がつかないので、しょうがないですがね。
昔、アカエイに初めて刺された新人が、「他人が刺されて痛がっているのをみて、大げさだなあ、と思っていたが、自分が刺されたら本当に痛いのが分かった」と言いました。
アカエイに刺されるとけっこう血がでますが、ゴンズイの場合はほとんど血が出ないので、なおのこと他人には痛みが伝わりにくいことでしょう。
ゴンズイを見かけたら、くれぐれも安易に触れぬようご注意ください。