巷間言われている
「子持ちの魚は卵に栄養が全ていくから身は痩せておいしくない」
という説が本当なのか、コノシロで検証を始めて1か月経ちました。
私がたどり着いた答えは、
「コノシロは卵を放つ直前までは身に脂があり、おいしい」でした。
以下に検証結果を画像付きで解説いたします。
3月30日、同じ網で漁獲したコノシロです。
別の魚種かと思えるほどに体形が違います。
重量は上の太いのが261グラム、下の細いのが203グラムでした。
捌いてみたところ、太いのは抱卵中で、細いのは放卵後でした。
(前回の記事で3/26に漁獲した抱卵中の大きな個体について、産卵まで半ばほどか?と書きました。しかし3/30の漁で放卵後の個体が同時に漁獲されたことを考えると、前回のも合わせ、これらの太った個体はほぼ放卵間近なのかもしれません。)
下の卵ですが、捌くときに失敗して傷付けたのではありません。状況的に、産卵後の収縮した卵巣とみて間違いないでしょう。
三枚におろしました。画像中の魚の位置関係は上が抱卵中の太いもので、2尾とも保存方法も捌き方も全く同じです。
歴然とした身質の違いが見て取れます。
子持ちのほうは全体に脂がまわっていて白いですが、産卵後は脂が抜けて筋肉本来の赤色が強く出ています。
刺身で食べたところ、どちらも見た目通りの味でした。
太いのは脂がのっており前回と変わらぬおいしさで、細いのは全然脂のない、純なコノシロ味でした。
純なコノシロ味というのは、コハダに比べて身の味や青臭さ(?)などを魚体サイズに比例して強くした感じで、率直に言って可もなく不可もなく、普通の青魚といった味です。
まあ私がおいしいとかまずいとか言ったところで、味覚や好みなんて人それぞれだし、私にはコノシロに対する贔屓目があるでしょうからなんのアテにもなりません。
しかし今回の画像をみれば、卵の成長度合いと身の脂の具合がわかり、味の想像もつきやすいかと思います。
最初の繰り返しになりますが、「身の栄養を卵に取られる」というのは、さもありなんという理屈ですが、実際のところは明確に知覚できるほどでもなく、卵を放出するまでは身に脂はしっかりとあっておいしい。
というのが私の結論です。
もっとも、今回の放卵前の魚は、1か月前の子持ち始めの魚と比べたら味は落ちているのかもしれません。
それと「脂があっておいしい」と書きましたが、脂の量のみが魚のおいしさを決めるとも思っていません。
言ってはナンですが、コノシロというのはそれほど厳密に味を追求されるような魚ではないと思っています。
子持ちのコノシロが売っていたら、「見た目は太いけど身は痩せてマズイんだろ」と敬遠するのではなく、「身は太いし卵(もしくは白子)も味わえるしラッキー♪」と手を伸ばせば、魚食ライフがいっそう豊かなものになるのでは、と思います。