新型コロナのせいで日常が全く変わってしまった昨今。
恒常的な魚価の低迷が私たちの生活に大きく影響を及ぼしています。
それに加え、数年前から台風などで出漁できないことが多くなってきたこと、秋口にサバがほとんど来なかったことなどが合わさり、先月の水揚げは過去最低レベルでした。
数年前までだったら、これからの時期、狙える魚種は来年の春くらいまでほとんどなく、つまり今期の漁獲はもはや絶望的でした。
しかし去年は今の時期からしばらくコノシロが獲れ続け、いくらか稼ぎになったので、今年もそれを期待していたところ、ありがたいことに今年もコノシロが獲れました。
11月に入ってから3回、コノシロの漁獲があり、ちゃんと売れました。
漁獲と同じく大事なのが、獲った魚がちゃんと売れるかどうかです。
ありがたいことに私たちのコノシロは引き受けてくれる水産会社があるので、安心して漁獲できます。
今年は一回に引き受けてもらえる数量に制限がかかりました。
まあその制限量は、一回の漁獲としては程よい位の量だし、今のところ一回ごとにリセットされるので、大きな問題ではありません。
問題なのは、網に入る魚の量の調整が難しいことです。
昨日、網を張ったら、かなりの量のコノシロが入ってしまいました。
まずは全体の量をある程度、把握するために網を小さくします。
わかりづらいと思いますが、真ん中あたりで網を2つに区切っています。
この後、前方側の網の中の魚は元気なうちに全て逃がしました。
そして、残った網を締め込みました。
締めこむとは、魚が泳ぐスペースをなくすくらいまで網をあげることです。そうしないとタモで魚がすくえません。
そして運搬船に積んだのですが、網の中にいた魚が予測より多く、制限量を超えてしまいました。
水産会社は制限以上の量は引き受けられません。
かといって、網の中の魚をそこらに放つこともできません。
なぜかというと、いったん締めこんでしまった網の中の魚は、ほとんど死んでしまうのです。(コノシロやイワシなど、量を獲る魚の場合です)
普段、私たちは即座に運搬船に積み込んで氷締めにするから問題ありませんが、例えばこの魚をそのまま海に放つと、数日にわたって海面に漂い、鳥や他の魚に食べられなかった分は潮の流れによっては陸地に流れ着き、悪臭を放ちます。
私たちの漁場は海苔の養殖場にほど近いので、そちらに流れ着いても大きな迷惑をかけてしまうことになります。
そういった理由で、網の中の数十トンの魚をどうするか困った事態になりました。
最終的に、船橋港のほかの巻き網船団に引き取ってもらうことになり、他船団の運搬船に魚を積んでもらいました。
その船団は私たちとは別の卸先があり、そちらにはコノシロを引き受けられる余裕があったようです。
正直に言うと今回引き受けてくれた船団は、同じ船橋港で働く巻き網船団ではあるけれど会社が違い、親方同士は普段あまり交流はありません。
どちらかというと距離を置くような関係性ですが、
しかし今回、親方同士は話しあった結果、まさに助け船を出してくれました。
別に漁師に限ったことではないけど、こういう事態って意外と、思いもよらぬ方向から思いもよらぬ批判が飛んできたりすることがあります。
なのであくまで私個人の感想として書きますが、今回の事態はとてもありがたく思います。
N船団の親方はじめ皆さま、ありがとうございました。