2月は出漁せず、船の整備と網の補修を行っていました。
ひとくちに網の補修といっても様々な作業がありますが、今回はキアミのセバについて書きます。
キアミとは新品の網のことで、セバとは網と網を縫い合わせることを言います。
なんだか細長いものが何本も地面においてありますが、これがキアミです。
キアミとは漢字で書くと生網だと思います。
親方が網会社に注文します。このキアミは長さが15メートル×3メートルあります。
私たちが漁に使う網は、長さ750×深さ100メートルくらいですが、これは小さな網をたくさん組み合わせることで出来ています。
網は使っていれば必ず切れたり穴が開いたりします。
網全体を構成するユニットを細分化すればするほど、修理の際に交換するユニットが少なくてすみます。
網を構成する穴を「目」といいます。
網の目は狙う魚の大きさによって千差万別で様々なサイズがありますが、私たちがメインに使う網は11節というもので、目のサイズは3センチです。
この網と網をつなぎ合わせるセバでは、1目に2回、網針で糸を通します。
2回手を動かして3センチずつ進む、これを繰り返して数十メートル仕上げます。
見た目も内容も、実に地味な作業です。
このような地味な作業を1日8時間、延々と繰り返すのが網仕事です。
何千回と網針を動かしますが、目をたがえることは許されません。
集中を持続させるのがなかなかつかれる作業です。
しかしずっと集中して手先を細かく使うので、脳の健康に良さそうな気がします。
漁師には老いてなおかくしゃくとした人が多い気がしますが、この網仕事が一役かっているのではないか、と私は考えています。