投稿者「daiheimaru」のアーカイブ

2026.6.16 いろいろなカレイ

四月からは近場でコハダ狙いの漁をしていましたが、そろそろコハダの需要が下火になってきたので、漁場を少し南まで広げて他の魚種を探ることにしました。

東京湾は南に行けば行くほど網に入る魚種が増えます。

この日、一回の網で四種類のカレイ目(かれいもく)の魚が入りました。

1番はイシガレイ。
イシガレイは背中の部分に非常に硬い突起があり、この特徴さえ知っていれば間違いようがありません。
このイシはとても固く、下手をすると包丁の刃が欠けるので、捌くときには注意が必要です。

2番はマコガレイです。
私としては外見的に「The・カレイ」と呼びたくなる、標準的なカレイの形をしていると思います。
私が漁師になった25年前にはよく見かけましたが、ここ十年くらいは巻き網ではあまり見かけなくなりました。

3番はウシノシタです。
正式名称はクロウシノシタですが、フランス料理で「シタビラメのムニエル」として出されているのがこのウシノシタです。
シタビラメと呼称されてはいますが分類学ではカレイ目ウシノシタ科なので、カレイの仲間として扱っています。
とてもおいしい魚です。

さて最後の4番目ですが、正体不明です。

体表がやけに荒れていますが、これは網でこすれてしまったのか元からこうなのか、わからないのです。
体型はカレイの標準型に比べ菱形っぽさが強く、イシガレイでもマコガレイでもないと思います。

そこでこの4番の写真を切りぬいて画像検索してみました。

すると、「全体的に黒いのでカラスガレイです」
と判定されました。

なるほどと思いつつカラスガレイの写真を検索してみると、この4番とは似ても似つかぬ細長いカレイでした。

カラスガレイではないのは明らかなのでもう一度4番の写真で画像検索をかけてみると、今度は「これはナメタガレイです」と判定されました。

そこでナメタガレイの写真を調べてみると、これまた4番とは体型が全然違うカレイでした。

同じ画像で同じアプリで検索したのに、一回目と二回目で全然違う結果が出ました。

じゃあもう一度検索したらどうなるのかと試したところ、

「これはクロガシラカレイです」
と言われました。

どないなっとんねん。

まあ、ピンボケ気味でハッキリしない写真だからしょうがないですね。
次に4番のカレイが獲れたら、その時は丁寧に写真を撮り、特徴も把握して何カレイか調べることにします。

 

2026.5.30 コハダとサッパ

暑くなってきて例年であればスズキ漁に活気が出始める時期なのですが、今のところスズキの売れ行きがよくありません。
常磐や日本海側などあちこちでスズキが多く揚がっているからのようです。

なので今はコハダ漁をしています。
ありがたいことにそこそこ獲れており、スズキが売れない代わりになってくれています。

コハダ漁をしているとサッパも網に混じってきます。

サッパというと岡山県の郷土料理の「ままかり」が有名ですが、東京湾にもけっこう生息しています。

先日、ある釣り公園のサイトを覗いていました。
そこには釣り人が自分の釣果を写真付きで載せるコーナーがあり、それを見ていたところ、
「コハダが大漁!!」というタイトルで大量のサッパが写っている写真がありました。

投稿したのは釣りの初心者なのか、コハダとサッパを間違えて覚えてしまっていたようです。

でもその間違いもわからなくはありません。

こうして並べてみれば違いはハッキリとわかります。
背中に点線が並んでおり、背びれの一部が長いのがコハダです。

しかし魚の模様って、小さい頃は大きなものと比べて不鮮明だったりします。

上の写真の上の魚を、瞬時にコハダかサッパかを言い当てるのは私には難しいです。
(正解はコハダです)

背中の模様と背びれの他の違いといえば、あとは顔つきです。

どの写真も上がコハダで下がサッパです。
コハダの口は下方向に開き、サッパの口は上方向に開きます。
この口の開き方の違いのせいで、アゴのラインがコハダとサッパで異なります。

とまあ、違いはあるのでじっくりみれば判別は難しくはありませんが、一番最初に間違って覚えちゃったらそれはもうどうしようもないですね。

2026.5.16 初漁の一番目

4月いっぱいの整備期間を終え、5月6日に1カ月ぶりの漁に出ました。

毎年の事ですがこの一カ月ぶりの出港の1番目の網を張る時、私はとても緊張します。

私達の使う全長750メートルの網(あみ)には、揚網(ようもう)作業の為に100本以上の綱(つな)がついています。その綱ツナは網アミの補修の際に全部取り外し、補修が終わってからまた取り付けます。

取り付けの際にこの綱ツナの取り付け位置や順番を間違えて絡まったりしてしまうと、網アミを張る時に大きなトラブルを起こし、網アミが切れてしまうおそれがあります。

逆網(サカアミ)の綱ツナの取り付けは私の仕事です。

1カ月かけて新品同様くらいにきれいに仕上げた網アミを私のミスでビリビリに破いてしまったら、もう当分の間立ち直れません。

取り付けにミスがあったかどうかは網を張るまでわからないので、1回目の網がトラブルなく揚がりきるまで、私はいつも落ち着きません。

まあ私が心配性なだけでそんなトラブルはそうそう起こらず、無事に初日の漁を終えました。

初日はスズキとコハダがほどほどに漁獲でき、その後も海の様子はそれほど悪くありません。
しかし例年に比べて魚の売れ行きがかんばしく無いうえ、更に中東情勢の悪化の影響もあり漁にはまだ活気が出てきません。

中東情勢の影響とは船の燃料費は言うに及ばず、我々の商売に必要不可欠な発泡スチロールの値段が3割以上もあがってしまったことです。

鮮魚を出荷、販売するうえで必需品の発泡スチロール、原料は石油です。
スズキにしろコハダにしろ他の魚にしろ、水揚げした魚は殆どの魚種を港で発泡スチロールに詰めてから市場に出荷します。

発砲スチロールの費用はこちら側(水産会社)持ちです。
つまり魚の卸値に含まれるわけですが、ただでさえ魚の売れ行きがよくないのに発泡スチロールの値上げ分を転嫁しようものなら、一層売れなくなってしまうでしょう。

天井まで高く積み上げられた大量の発泡スチロールですが、魚種と漁獲量次第では2回の漁で使い切ってしまいます。

必需品の値上がりは本当にどの業界にとっても死活問題ですし、早く落ち着いてほしいものです。

2026.4.30 整備期間終了

今月の整備期間で船の整備と網の補修が終わりました。

整備期間は船から網を全ておろし、船の整備と網の補修をそれぞれやります。

上の写真は二隻の船を後方から写しています。
左側のサカアミは網をおろし、右側のマアミは網を積んでいます。

2隻の網船から網を全部おろすのはかなりの手間がかかる為、この整備期間以外では滅多にありません。

なので船の整備も網の補修も、この時しかできないことをやれる良い機会なのです。

整備期間を終え5月からは我々にとっての新年度的な漁が始まりますが、今年はどんな漁になるか楽しみです。

この写真ではたいした量には見えませんが、右の真網に積んである網は全長350メートル、深さ100メートルに届く大きさの網です。

2026.4.19 綱(つな)の保護 「せる」効果

船にロープはつきものです。

使用箇所によっては頻繁に擦れる(こすれる)場合があります。

そのような箇所には擦れ防止の補強をします。

それが「せる」という作業です。

以前「走りモヤ」製作の記事中で紹介した例はロープに細いヒモを巻いて(せって)保護しました。

この時は保護する範囲が少しだったので紐を使いました。

しかし広範囲を保護する場合には細い紐でせっていくのには手間がかかるし、紐の使用量がかなりの量になってしまいます。

そこで目の細かいアミを使ってセルやり方があります。

上が普段私たちが使っている11節という網ですが、これでは目が大きすぎるので下の網を使います。
下の網は私たちの漁では使うことが無く、そして中古で網の目が縮んでしまっているので正確な目合い(網の目の大きさ)がわかりませんが、26節くらいかと思われます。

網を適当な大きさに切って二つ折りにし、それを保護対象に巻き付けます。

この保護の効果を写真に撮りました。

4年間使用し痛んで交換した走りモヤです。

せってある網を取り除きました。包丁の切っ先の左側がせってあった部分です。

全く無傷です。

こんなことなら走りモヤ全体をアミでせってしまえばかなり長持ちすると思われるでしょうが、そうもできないのです。

理由は、せった部分は曲げづらくなってしまうからです。

この走りモヤは網を張っている時には上のように丸めて船上に置くのですが、モヤ全体をせってしまうとこのような曲げ方はできなくなってしまいます。

船上は狭いので丸める以外に置き方はないので、モヤをせることは諦めるしかありません。
一つのアイディアとしてはこのモヤが擦れる船の部分に当て布をすればモヤへのダメージが減りますが、あまり現実的ではありません。

なにか安価で簡単な保護の仕方ってないもんですかね。

2026.3.31 今の時期のコノシロのパワー

三月の漁が終了しました。

四月は整備期間で、船の整備と修理、網全体の補修を一気に仕上げる為、沖には出ません。

五月からまた漁に出ますがその頃にはスズキ漁に切り替えるので、冬まではコノシロを狙うことはありません。

三月最後のコノシロ漁の一幕です。

今の時期のコノシロはかなりのパワーがあります。

私達は常に、網の中の魚の重量を気にしています。
魚を運搬船に積み込むために網を締めこみながら、手ごたえからどれだけのトン数のコノシロが入っているのかを予測します。

その予測が、去年の冬と今の時期ではかなりズレるのです。

冬の時期の予測はほぼ当たるのですが、今の時期、去年の冬と同じ感覚で網の中の魚の重量を計ろうとすると、実際の漁獲は予測の三分の二、下手すると半分しかないということが起こります。

網を締めこみながら「この重さなら20トンくらいは居るな」と思っていたら、実際に運搬船に積んだら12トンくらいしかなかった、ということがしばしば起こります。

冬場に比べてコノシロの量が少ないのに網が引き込まれるということは、コノシロ自体のパワーが増しているのでしょう。

産卵期が近くなってきて餌をたくさん食べ、体も大きくなることで個体ごとのパワーが上がっていると私は考えています。

しかしこの理屈が正しいならば釣りをする人の間で、コノシロに限らず「産卵期が近い魚はパワーが強いから引きが強くて楽しい」という話がありそうなものですが、旬によって魚の引きが変わるという話は私は聞いたことがありません。

まあ私が釣りにあまり詳しくないだけかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうね。

2026.3.19 アカクラゲ出現

アカクラゲが漁場に増えてきました。

先月までは全然いなかったのに、今はもう直径が15cmはある成体に近い大きさのものが網に入ってきます。

今の時期は夏に比べるとまだ毒を強く感じないので、我々への被害は大したことがありませんが、コノシロと一緒の網に入ってきてしまうのがやっかいです。

コノシロの群れの中のクラゲを手作業で取り除かねばならないからです。

時間も手間も、余計な苦労がかかります。

また運搬船にコノシロを積み込む際にクラゲが混じっていると、なぜか氷の効きが悪くなってしまうので、鮮度落ちが早くなってしまいます。

なのでクラゲが混じった魚を持っている場合は、普段より帰港を急がねばなりません。

クラゲはこのように鮮度を悪くする上に取り除く手間暇がかかり、我々にはなんのメリットもありません。

なにか、クラゲだけ退治してくれる特効薬みたいなものが開発されませんかねえ。

なんて妄想をすることがありますが、もし仮にそんなものができたとして、いざ使用して東京湾からクラゲが消え去ってしまってしまったら、それはそれで生態系のバランスが狂ってどこか予想もつかないところからしっぺ返しがきそうな気がします。

 

2026.2.28 転落

今月始めくらい、港での作業中に仲間が1人、海に落ちました。


ちょっと重い物を肩に抱えて陸から船に乗り移ろうとした時に、足を滑らせたようで海にスポンと落ちました。


私の目前のうえ周りに仲間が多くいたのですぐに手助けして引き揚げましたが、彼は落ちたときにはけっこうな恐怖を感じたそうです。


水泳が得意な人であっても、着衣で水に入るとなると勝手はまるで違うものです。


水を吸った衣服は想像以上に重く、手足にまといつき、動きの妨げになります。


また港で働く人たちはだいたい長靴を履いていますが、長靴はいったん水が入ると相当な重さになります。


なのでうちの船に新人が入った時は、海に落ちたときにすぐに脱げるように、長靴は大きめの物を買うように教えています。

私らのように水辺が仕事場だと海に落ちることは珍しくもなく、私の周りでは50%は転落経験があります。

我々は集団で漁をする為、常に周りには誰かしら人がいます。

なので誰かが海に落ちてもすぐに気付いて助けられるのですが、1人で沖に出ればそうはいきません。

海に落ちた状態から船にあがるのはとても大変です。

転落防止には注意深くなるしかありませんが、注意をしていても落ちる時は落ちるものです。

落ちた時に焦らない心構えと装備が大事だと思います。

日本は素晴らしいことに義務教育で水泳がありますが、その授業の中でたった一度でも着衣で水泳してみれば、安全意識の更なる向上に繋がるのではと思います。

2026.2.17 ボラ

近場の漁場からコノシロの大きな群れが居なくなりました。

前々回の漁ではコノシロの群れを探しつつも見当らなかったので、手ぶらで帰るわけにもいかないのでボラを獲りました。

今の時期はプランクトンが少ないので海水も澄んでおり、夏場には強くなることもあるボラの臭みがありません。

今回漁獲できたのは平均で1kg少しの型が揃ったボラでした。

ボラは単価が安いので親方に言えばオカズとしてもらえます。

入社3か月目の若者が自分で捌いて食べてみたいと言い、魚捌きに挑戦していました。

彼は魚を捌くのは初めてとのことでしたが、包丁の扱いのスジが良く、うまく捌けていました。
そして刺身で食べておいしいと感動していました。
(屋外のあまり衛生状態のよくない場所ですが、ここでやっているのはウロコ落としと内臓の処理までで、あとは家に持ち帰ってキッチンで捌いてます)

魚を捌くのがかなりおもしろかったらしく、今後もやっていきたいと言っていました。

この魚捌きを楽しいと思える感性はとてもお得です。

冬のボラや秋のイナダなど、おいしいのに価格が安い魚が大量に獲れた時、親方は好きにオカズにしてよいと言ってくれます。

しかしわが船団の大半は、捌くのが面倒だからと貰わないのです。

そこでこの新人君のように捌くのを楽しいと思えれば、それこそ獲れたての新鮮な魚をタダでおいしくいただけるのです。

趣味が実益を兼ねるのはお得だと思います。

2026.1.31 走りモヤ製作

今までの漁場からコノシロが居なくなりました。

直近の漁では網を5回張ってようやく20トン程獲れました。
ほんの2か月前は1回の網で50トンは獲れていたのが、年末年始の休みを挟んだら漁獲がこれだけになってしまいました。

何が原因でコノシロの群れが急に居場所を変えたのかは、私にはわかりません。
コノシロが今の漁場に戻ってくるか、それとも我々が漁場をかえるか、また結果は追って報告します。

コノシロが居ないので時化率が高くなっており、時化仕事で私は今、走りモヤを作っています。

走りモヤとは航行時に網船の船首を繋いでいるモヤのことです。
網船は航行時は船首を走りモヤ、船体後部を網で繋いで走ります。

走りモヤにはかなりの負荷がかかるので、太い綱と金属製のチェーンを用いて製作します。

チェーンを通す部分には「コース」と言うロープ保護具をつけます。
私が指さしているものがコースです。
ただこのコース自体も金属なので、ロープを更に保護する為にコースが当たる部分に細いロープを巻きます。

航行時にこの走りモヤが切れてしまうと2艘は急激にコントロール不能になり、転覆の危険性がかなりあります。

転覆は絶対に嫌なので、丁寧にしっかりと作ります。
このあと更に、細かい目の網を使って擦れ対策をするのですが、その作業はまたいずれご紹介したいと思います。

 

 

海が荒れていると走りモヤへのダメージはかなりのものです。

四年近く使用した現在の走りモヤです。かなり痛んでいます。
早く交換せねば。