

コノシロの大きな群れは居なくなってしまったので、4月の整備期間前に少し早めに網仕事を始めました。
整備期間は船の整備と網の補修の2チームに分かれて行います。
網チームは、長さ750メートル、深さ100メートルの網(あみ)と綱(つな)を綺麗に補修します。
船チームは、網船2隻、運搬船1隻、高速船1隻、伝馬船2隻を、これからの1年間をトラブルなく使えるように整備と点検をします。
コノシロの大きな群れは居なくなってしまったので、4月の整備期間前に少し早めに網仕事を始めました。
整備期間は船の整備と網の補修の2チームに分かれて行います。
網チームは、長さ750メートル、深さ100メートルの網(あみ)と綱(つな)を綺麗に補修します。
船チームは、網船2隻、運搬船1隻、高速船1隻、伝馬船2隻を、これからの1年間をトラブルなく使えるように整備と点検をします。
コノシロが獲れなくなりました。
ボラはいますが、一度に売れる量が限られている為、毎日狙うとすぐ定量オーバーしてしまいます。
我々にとってめぼしい魚種は他には今はいないため、ナギでも出漁せずに網仕事をする日が増えました。
最近はアバづるとイワづるを作っています。
上の黄色いのがアバ、下の黒と白のロープがイワです。
アバとは「浮き」のことで網の端を海面に浮かべ、イワとは網の下端についている綱のことです。
このイワに使うロープが少し変わっているのでご紹介します。
網を海に投じたとき、下端の沈降速度が速いほうが魚の逃げ道を塞ぎやすくなります。
この白色ロープは柔軟で使い勝手がよいので網の端に取り付けるのですが、これはこのままだと軽くて水に浮いてしまうので、重い綱と組み合わせることで水に沈みやすくします。
この黒い綱は、白い綱と同じ太さでも重さは3.8倍もあります。
その秘密はこちら。
綱の中に金属製の鎖のようなものが入っているのです。
この鎖は小さな円柱状の金属が自由に可動するように組まれており、こんな小さいのにどうやって作るのか不思議です。
ちなみにこの黒いロープはクロスロープ(またはエイトロープ)といい、一般的に使われるロープとは作り方が違います。
上が一般的なロープの構成の「みつより(または三つ打ち)」といい、3本のストランド(子線)でできていますが、下のクロスロープは8本のストランドがあり、慣れないとスプライス(輪っか)を作るのにとまどいます。
重りの入った綱なんて私もうちの網で使うまで知りませんでした。
このようなものを考えて作る人もすごいですね。
コノシロの群れが今まで獲れていた近場から居なくなってしまったので別の漁場に行ったところ、ボラの群れが入りました。
なかなか良いサイズです。
しかし持ってみれば分かりますが、お腹の部分は膨らんでいるように見えてもたるんでいて、産卵後でした。
「寒ボラ(かんぼら)」と呼ばれ脂があっておいしいとされる時期は、産卵前の10月〜1月くらいまでとされていますが、私は過去に産卵後のボラを食べて充分においしかったので、今回も試しに食べてみました。
捌いてまずは刺身にしましたが、臭みは皆無で旨味しかありません。
捌いていると包丁に脂がベッタリと、まるでブリでも切ってるかのようにつきます。
私は今回は刺身しか作る暇がなかったのですが、先輩にフライとナメロウもすごくおいしいとお勧めされたので、また今度作ってレポートしたいと思います。
今月は時化が多く、15日現在、まだ一回も出漁していません。
そもそも昔から今の時期は時化が多いので、数年前までは二月は最初から船の整備と網の補修の期間だったし、またそれほど稼ぎになる魚が獲れることもないので、夏場に比べ漁にかける気合は少な目になります。
まあ時化が多いと言っても朝から晩まで風が吹き続けるのではなく、朝は完全な凪だけど昼以降に風が強くなってくる予報がでている日、があります。
午前中は普通に操業して、風が強くなってきたら帰ればいいんじゃないの?と考える向きもあるかもしれません。
スズキ漁ならそれは通じるのですが、コノシロ漁ではリスクを負うことになります。
なぜかというと、網を投じてから揚げて魚を積みこむまでにかかる時間が、スズキ漁は長くても30分程度なのに対し、コノシロ漁では大量に入ってしまうと3時間近くかかってしまうことがあるからです。
例えば3日前の2月12日のことです。
この日は午前中はベタ凪で、午後から大風(おおかぜ)になるという予報なので、出港しませんでした。
実際の海上保安庁の風速のデータをご覧ください。
下から上に30分刻みで時刻が進んでいきます。
(私達の小型二艘巻き網では、風速8メートル前後が時化のラインになります。)
朝6時半から昼の13時半まではずっと凪ていたのに、14時までの30分の間に急に強い南西の風が吹いてきて、16時には風速19メートルという台風並みの風になりました。
巻き網漁船は当然ながら、一度海中に網を投じたら網を揚げ終えるまでその場を動けません。
動けない状態で台風並みの風を受けたら危険です。
天気予報はよく当たりますが、実際に風の吹いてくる時間は数時間単位で前後することもあります。
風が吹いてくるのが予報より遅い分にはいいですが、早く吹いてきてしまったら、そしてその時に網を張っていたら、かなり危険です。
このように、コノシロ漁では少し先の予測もすることも必要なので、時化も多くなります。
今月のコノシロ漁はなかなかシビアでした。
まず前回の記事で書いたように初漁は漁獲無しで、その後も中旬から下旬まで、漁獲のあがらない日々が続きました。
つい先月までは網を張れば一回で数十トンのコノシロが入っていたのに、今月は魚群を探し回った挙句に張った一回の網には良くて数トンしか入らず、それを何回も繰り返してやっと先月の1日の水揚げの半分に届く程度しか獲れませんでした。
そんな獲れない漁が数回も続きました。
そういう時には脳裏に不安がよぎります。
もしかしてここ数年、獲りすぎたせいで我々の漁場からはコノシロは居なくなってしまったのかという不安です。
ところが月末になって突然、近場に大群が現れました。
27日のことですが、我々を含め船橋に3つある巻き網船団がどれも満船になる量のコノシロが獲れたのです。
(満船とは、運搬船の積載量の限界まで魚を積みこむことです。)
獲り尽くして居なくなってしまったのではないことが分かりほっと胸を撫で下ろしました。
しかし気になるのは、今まで一体どこに居たのか?ということと、また、一度消えてなんでまた戻ってきたのか?ということです。
まあこればっかりはいくら考えたところで人間には分かりようがないので、とりあえず居てくれたことに感謝です。
1月5日に今年の初漁に出ました。
網を2回張りましたが、全然だめでした。
一回目の網ではイナッコ(ボラの幼魚)が大量に入り、売れないので全てレッコしました。
(レッコとは海事関係で広く使われている言葉で、色々な使われ方をします。
私達の船では「網(あみ)の中の魚を逃がす・ものを捨てる」というような意味で使っていますが、他の船では「綱(つな)を離す」という意味で使われることもあるようです。)
2回目の網ではコノシロが200kgほど入りましたが、その程度の量では持って帰ってもしょうがないのでこれもレッコしました。
ここ数年ずっと獲れ続けていた近場の漁場からはコノシロの群れは姿を消しており、結果、今年の初漁は水揚げゼロでした。
船橋の私達の他の2つの巻き網船団もこの日に初漁に出て、近場だけでなく少し遠くのコノシロポイントにまで行ったようですが、そこにもコノシロは居らず、結局、網を張らずに帰ってきたようです。
このように船橋巻き網の初漁は漁獲ゼロでした。
それから時化が続き我々巻き網船団は漁には出ていないのですが、我々より時化に強い底引き網は出漁しており、その情報によるとコノシロはかなり網に入るとのことなのです。
まあこれからコノシロが獲れるかどうかはまだわかりませんが、我々の本命は初夏からのスズキ漁ですし、まだそんなに焦ることもないかと、一乗組員としては思っています。
今年もとにかく安全第一でやっていきたいと思います。
2024年の漁は20日の水揚げで終了しました。
しかし最後に沖で魚の居ないところで網を張って網をきれいに洗いたかったのですが、しばらく波が荒い日が続いてしまい、それができたのは25日でした。
船をデッキブラシでこすって、今年の仕事は終わりました。
今年は夏場のスズキとコハダの値がよいうえに量も獲れ、久し振りに悪くない成績が残せた年になりました。
来年も期待したいです。
2週間ほど前、知り合いの漁師が見たことない魚が獲れたといって見せてくれました。
10cmにも満たない小さなフグですが、私も知りませんでした。
画像検索したところ、サザナミフグの幼魚で間違いないでしょう。
このサザナミフグですが、サンゴ礁に生息するということ以外、あまり詳しい情報はネットに載っていませんでした。
ヒレが小さくてまん丸くてかわいい顔をしているから、生きてたら飼いたかったとアクアリウム好きの仲間が言ってました。
ほんとに、これから東京湾の魚種はどんどん変わっていくんだろうなあ、と思わずにいられません。
東京湾にまたクジラが現れたようです。
クジラが東京湾に入ってくることは過去にもたびたびあり、海ほたる周辺で跳ねている映像などがニュースで流れたり、また私の知り合いの漁師も直に目撃して動画を撮ったりしており、そこまで珍しいこととは感じられなくなっていました。
しかし今回クジラが出現したのは、東京湾の奥も奥、浦安沖です。
そして、現在我々がコノシロ漁をしているまさにその場所なのです。
ヤフーニュースでは発見した漁師が撮った写真が載っており、ほんとに、我々が昨日コノシロを獲ったのと同じ場所にクジラが浮いていました。
(権利の関係がよくわからないのでニュース記事を張り付けることはしませんが、気になる方は
「浦安 ザトウクジラ」と検索すればニュースが見られます)
いやあ、驚きました。そして驚きとともに若干の恐怖も覚えました。
以前、記事にしたのですが、クジラとの衝突が怖いのです。
https://daiheimaru.com/daiheimaru/1203/
冗談半分の例えですが、我々の船がクジラと衝突するのは、大相撲の横綱と小学生がぶつかり稽古をするようなものだからです。
クジラが横綱で小学生が船です。
ぶつかったりしたら我々はただでは済みません。
クジラが浮いている状態ならば、我々の船には常に船首で前方を警戒する係がいるので発見できますが、少しでも潜っていたらとても見えません。
まあ、魚群を探している時ならばソナーで発見できるかもしれませんが、なんにせよ、漁場に巨大な地雷があるようなもので、気分はよくありません。
今年はソウメ(小さいイワシ)が回遊してきたり、コノシロも湾奥にいることから、クジラにとっても好漁場なのでしょうが、正直に言って居てほしくないですね。
今年は夏ごろからマイワシの姿がちらほらと見えていましたが、ここ一週間ほどはかなりの群れが沿岸にまで押し寄せてきました。
ちょっとわかりづらくてすみませんが、夜の船橋港です。
マイワシの群れが水面スレスレにまで浮き上がり、港内をずっと泳ぎ回っています。
明るくなると下に潜るのか港外に出ていくのか、群れは見えなくなりますが、夜になるとまた同じ場所に出現します。
このマイワシの回遊は船橋だけではないようで、YOUTUBEの釣り動画を見ると東京湾奥 西側の若洲海浜公園でもマイワシの群れが来ている動画があがっており、東京湾奥 東側の市原の釣り公園でもマイワシの釣果報告が上がっています。
私がいちいち「マイワシ」と書くのは、東京湾には普段はマイワシはおらず、ここら界隈で「イワシが釣れた」といえばカタクチイワシを指すことが多いからです。
それと市原の釣り公園ではカタボシイワシがかなり釣れているようなので、それとも区別するためです。
市原にある釣り公園は正式名称を「オリジナルメーカー海づり公園」といい、有料ですがきれいでよく管理された施設です。
ここは数百人のお客の釣果を毎日一尾単位で集計し公表してくれており、頭が下がります。
そこの11月16日のデータを引用させてもらいますが、コノシロが1620尾、カタボシイワシが2000尾の釣果があったと報告されています。
このデータのカタボシイワシの量には私は驚きました。
なぜかというと、我々は先月からコノシロ漁を始めて数百トンのコノシロを獲りましたが、マイワシはともかくカタボシイワシは見ていないからです。
もしやカタボシイワシとマイワシを間違っているのでは?と勘ぐってしまいましたが、ちゃんと釣果とともに釣魚の写真もあり、間違いなくカタボシイワシでした。
マイワシとカタボシイワシは体型や顔つきなどがけっこう似ていますが、ウロコがあきらかに違います。
マイワシのウロコは指でこすった程度で落ちるほど薄く柔らかいですが、カタボシイワシのウロコは包丁を使って気合をいれないと剥がれない固さです。
さて現在、身近に押し寄せているマイワシの群れですが、サイズが小さくて我々の漁獲対象にはなりません。それどころか、網の目に刺さって網が揚げられなくなるトラブルの元なので、居てほしくないくらいです。
今は我々の前から消えて、もう少し大きくなってからまた現れておくれ、と願うばかりです。
網がネズミに食われました。
私たちの漁は日帰りなので、通常は船に食料品は備蓄しておらず、ネズミが住み着くことはありません。
しかしコノシロ漁をしているとどうしても網の中に取り除ききれない魚が入り込んでしまい、それを狙ってネズミが船に乗り込んできます。
野良ネズミは衛生的に非常によくないし、網をかじって穴だらけにしてしまうので、退治せねばなりません。
方法としては船には殺鼠剤を置き、そして陸から係船索を伝っての更なる侵入を防ぐためネズミ返しを仕掛けます。
ネズミ返しはいたって単純なもので、円形のお皿に綱を通す穴を開けるだけですが、「船 ネズミ返し」で画像検索すれば同じようなものが世界中で使われており効果のほどがわかります。
作製の際のポイントとしては、綱にしっかりと固定されないよう、中央の穴を少し大きめにすることでしょうか。
こうすると上から乗り越えようとして前足をかけても、皿がクルクルと回ってしまい、力が入らないことでしょう。
これで侵入防止は完璧。
と思っていたのですが、ふと、親方も我々も、ネズミのサイズを小さめのハムスターくらいと思い込んでいたことに気付きました。
世間ではスーパーラットという大型で賢いネズミの出現が取りざたされて久しいです。
その大きさたるや全長25cm、尻尾も25cmにもなるとのことです。
そこでもしスーパーラットが我々のネズミ返しと対峙したらどうなるかやってみました。
港周辺のネズミがスーパーラットだった場合は、もっと大きなネズミ返しを作らねばならないことがわかりました。
あまり大きいと、風であおられたりしてすぐに壊れてしまうんですよねえ。
困ったもんです。