千葉県に甚大な被害をもたらした台風15号の通過から2週間ほどは、私達はまともに漁ができませんでした。
海面に漂う大量のゴミや台風と豪雨の影響による潮の速さなど、網を張るのに不都合な要因の他に、魚自体がいつもいる場所からいなくなってしまったのです。
ここで言う魚とは私達のメインターゲットのスズキのことですが、いなくなったといっても東京湾から出て行ってしまったわけではないようです。
先週のある夜、港のすぐ近くの川の水門あたりで数百尾のスズキの群れが泳いでいるのを見ました。
今の時期、スズキは餌を求めて陸近くまで来ます。毎年、今の時期にこの場所にスズキが居るのは珍しくないのですが、数百尾もいるのは初めてです。
親方曰く「沖の水を嫌って逃げてきたんだろう」とのことでした。
湾奥にそそぎこむ川は数多くあります。私達の目についた場所だけで数百尾のスズキがいるのだから、あちこちの川に逃げ込んだスズキの数は相当なものだろうな、と思います。
そしてここ数日の出漁ですが、台風15号通過から約三週間たち、やっと海の様子がよくなり始めてきたような感じです。
スズキがいくらか沖に出てきたし、青物が獲れるようになりました。
主な青物はサバ、ワラサ、アオアジ、サワラ、サゴシ(サワラの小さいもの)です。
特に今日はサゴシが私にとって過去最多の量が獲れ、この魚が湾奥にこれほど入ってきたことに驚きました。
私がこの大平丸ブログを書き始めたのは3年前からですが、その時あたりから「ブリや太刀魚、サワラなど、今まで湾奥では見かけなかったものがここ数年、入ってくるようになった。環境変化のせいだろうか」と何回か書いてきました。
しかし最近、『東京湾の魚類』(平凡社 2011年発行)という本を読み、ちょっとした発見をしました。
この本は東京湾で確認、そして記録された魚を写真付きで解説している本です。
これによると、ブリは「明治から昭和30年代まで、夏になると湾奥まで大型個体が回遊してくることがある」
という記録があり、またサワラの項目には「明治40年(1907)から昭和元年(1926)には浦安沖水深7~9mでサワラ漁が行われており、大正12~13年(1923~24)には、1年で150トンの漁獲があった」という記録があるようです。
これを読んでなんだかホッとしました。
数年前から突然、ブリやタチウオ、サワラが湾奥で獲れるようになったのが、異常気象による影響かと私は不安に思っていたのですが、100年前の東京湾奥にはこれらの魚が普通に回遊して来ていたのです。
逆に、これらが回遊してこなかった数年前までが東京湾の異常事態だったのかもしれません。
なんて言ってみたけどまあ結局、やっぱ海はわからねえなあ。