2019.3.30 ジェットフォイル 衝突

今月はじめ、日本海で高速船のジェットフォイルがクジラらしき海洋生物と衝突し、怪我人がでる事故がありました。
ジェットフォイルとは水中翼船という特殊な形状をした、海水を勢いよく噴射して進む船です。

去年は東京湾の、私達の働く海域でも大きなザトウクジラが出没したし、船乗りとして他人事ではないので、ニュースなどを注視していました。

事故の二日後の朝のニュースでちょっと長めに取り上げられていたのですが、その内容に事実と大きく異なる部分がありまして、それを指摘して訂正しておきたいと思います。
そのニュースでは海洋生物学の教授にインタビューをし、衝突の原因を推測していたのですが、教授いわく
「クジラは視力が0.1しかなく、水中翼船の小さな翼が見えなかったのでは」
「クジラの可聴域は低く、ジェットフォイルの高周波エンジン音は聞こえなかったのでは」
と述べていました。
つまりクジラはジェットフォイルの接近を感知できないので、逃げられなかった。クジラに罪はなくジェットフォイルの前方不注意が原因。と、遠回しに言ったに近いかと思います。
これは特に問題ありません。
クジラの種類によっては、エコロケーションといって音波を発して周囲を探る能力があるものもいる為、視力は関係ないと異論をはさむ余地もありますが、とにかくこの教授の見解は事実に基づいているので事故原因の一説として述べるにふさわしいです。
問題はこの後の、アナウンサーの締めの一言です。
「海中では音が伝わりづらく、魚群探知機のようなレーダーが有効(なので今後は活用し、衝突を防止する)」と述べ、このニュースは終わりました。
全体を正確に記憶していなかったので、上記の文中の(かっこ)内は私が勝手に加えましたが、
『海中では音が伝わりづらく、魚群探知機のようなレーダーが有効』
という部分は間違いなく言いました。

この発言ですが、何一つ合っていないのです。
「魚群探知機」や「レーダー」というのがどのような物かは、殆どの人がイメージできると思いますが、とりあえず事実を羅列しますと。
☆音は水中では大気中の約4倍の速度で伝わる
☆電波は水中では減衰が大きく役に立たない
☆魚群探知機は音波、レーダーは電波を使用する
☆魚群探知機は通常、自船の真下しか見えない
☆水中で周囲を探索する場合に使われるのはソナー

締めの一言を私なりにただしますと、
「海中では電波が伝わりづらいため、魚群探知機のように音波を使用するソナーが有効」ということになります。
まあ陸上生活の人ならばレーダーや魚探を使うことなどほとんどないだろうし、その作動方式が電波だろうが音波だろうが全くどうでもいいことでしょう。
ただこれは、娯楽番組などに比べ信頼性が一層重視されるであろうニュース番組での放送だったので、私には気になりました。
ソナーと魚探は近代漁師にとっては必須の利器なもんで、一言いわずにはいられませんでした