2016.9.19 野締め

獲れたスズキは通常、運搬船の水槽に海水を張って泳がせ、活かしておきます。
スズキは生きた状態で港に持って帰った時が最も相場がよいのです。
相場とは、市場で魚が取引される値段のことで、活け(いけ)とは生きたまま水揚げする魚のことです。
それゆえスズキはできるだけ活かして持って帰りたい。
しかし、沢山獲れたからと言って水槽に入れすぎる訳にはいきません。水槽の大きさは限られているからです。
あまりに多く水槽に突っ込んで過密状態になってしまうと、スズキ同士がこすれあってウロコがはがれたり、お腹の白い部分が真っ赤になってしまったりと見た目が悪くなるうえ、ストレスで弱ってしまうのです。
かろうじて呼吸はしているものの、泳ぐこともできず水面にお腹を出して漂うという、ほぼ瀕死の状態になってしまうのです。
だから多く獲れたときは、そこそこ活かしたうえで後は氷締めにします。
海からタモですくったスズキを、直接氷水に入れて締めるのです。これを野締めといいます。
無理やり多量に活かして衰弱してしまった魚より、海で泳いでいる(網の中で泳いでいる)元気な状態の魚を手早く氷水で締めたほうが、魚体に傷もつかずストレスもなく良い状態で港に持って帰れるのです。
ただ、魚の状態いかんに関わらず、野締めの相場は活けに比べて大幅に落ちます。
世間の「野締め」に対するイメージのせいなのだと俺は思っていますが、鮮度はとても良いのに値段は安くなる。悲しくなっちゃいます。
そして。相場が安かったとしても、そのまま消費者の方に安く届くというなら、それは喜ばしいことですが。。。
しかし、スーパーでスズキが特売されるなんて話は聞いたことがありません。
スズキは高級魚だから安く売るわけにはいかない、という、ブランド価値を守りたい力が色々な場所で働いているのでしょうかねえ。